虫を調べる ヒメニセコガタクサカゲロウ?
先日、クロヒゲフタモンクサカゲロウやフタモンクサカゲロウに似ているのですが、ちょっと違うクサカゲロウを見つけました。検索してみると、ヒメニセコガタクサカゲロウという種になりました。ただ、この種は日本では琉球諸島と小笠原諸島で普通なのですが、他の地域では稀な種とされています。それで、あまり自信はないのですが、一応、記録のためにまとめてみました。
見つけたのは8月12日で、マンションの廊下です。見る限り普通のクサカゲロウみたいですが、あえて全体的な特徴を書くと、翅に黒色の横脈が多いとか、体の中心を走る黄色の帯が見られないなどが見て取れます。
これは計測のために撮影したものです。クサカゲロウを採集した時は、最近、チャック付きポリ袋に入れて冷凍庫に入れることにしています。以前は酢酸エチルを含む毒瓶に入れていたのですが、ほぼ間違いなく緑が黄色に変色してしまいます。こうやって冷凍庫に入れておくと緑が保たれてなかなか調子がよいです。ただ、観察のたびに、解凍、冷凍を繰り返しているので、何か変質するかもしれませんが・・・。この写真から計測すると、体長9.5mm、右触角の長さ10.5mm、前翅長13.5mmでした。触角は左右とも先端が切れている感じなので、あてにはなりません。
クサカゲロウの検索はだいぶ前から、次の本を使っています。
塚口茂彦、"Chrysopidae of Japan (Insecta, Neuroptera)" (1995).
この本は自費出版なので手に入れることが難しいのですが、大変よくまとめられた労作だと思います。
この本の検索表を使って上の種を調べていきたいと思います。クサカゲロウ族であることは間違いないので、その先の属の検索からしていきたいと思います。
以前から何度も出している検索表です。上記の本が英語なので、私のつたない語学力で訳しているの間違っているところも多々あると思います。ご了承ください。赤字は例によって、今回用いた検索の項目です。関連する写真を載せます。
これは頭部を前からと横から撮影したものです。検索表の項目と関連するところは図にその番号とともに内容を書き込んでいます。まず、①は腹部に書類差しのような構造(file-like structure)についてですが、私自身この構造を見たことがないので、こんな訳がよいのかどうか分かりません。ただ、本の図には載っているので、この個体にはないことはすぐに確かめられます。この構造は発音に関係した構造のようです。
③は頭部に紋があるかないかですが、写真を見るとあることは確かです。次は⑦で、額(fronsなので前額と訳すべきでした)に紋があるかどうかです。Fig. 2を見ると分かりますが、紋はありません。次の⑧と⑩は翅脈についてなので、前翅の写真を載せます。
この写真から横脈のどの部分が黄色ないし緑なのか分かりにくいのですが、翅の中頃右側で横脈が途中で薄くなって見える部分は途中から緑色になっている部分です。次の⑩の翅室imはこの図に示してありますが、その先端がRs-M横脈より翅端側にあるかどうかを尋ねています。間違いなく翅端側にあるので、これでニセコガタクサカゲロウ属になりました。
次は種への検索表です。また、訳した検索表を載せます。
⑪の前胸背板に茶色か黒のスポットがあるかどうかですが、Fig. 1を見ると分かりますが、そのようなスポットはありません。一応、その部分の拡大を載せておきます。
次の⑫は前額に紋がないということなので、⑦ですでに確かめました。また、頭盾両側の紋については、同じFig. 2に載せていますが、弱い線状の紋があります。次の⑮は触角柄節は色づかないということですが、注目する所は柄節外側の側面です。Fig. 2あるいはFig. 3で分かりますが、色づいていません。この特徴でクロヒゲフタモンクサカゲロウを除外することができます。最後の⑰は口肢が黒褐色に色づくかというという点ですが、Fig. 3を見ると分かりますが、口肢末端節の中央部が黒褐色に色づいています。また、腹部背面中央に縦筋があるかどうかですが、Fig. 1でも見れるように明瞭な縦筋はありません。細い縦筋が見えるのですが、これはフラッシュで光ってしまった部分です。ということこで、フタモンクサカゲロウを除外でき、ヒメニセコガタクサカゲロウになりました。
次に、本に載っている種の特徴についても読んでみました。前翅長はこの個体が13.5mmであるのに対し、本では11-13mmです。まぁいいのかもしれません。触角の長さは本では前翅長と同長とありますが、これはかなり短いです。でも、どうやら途中で切れてしまっているようです。クサカゲロウの翅には段横脈というのがあり、Fig. 4には番号を入れているのですが、上側は6、下側は7あります。これを6/7と書きます。本では4-6/4-7となっていて、範囲には入っています。
ということで、外形的な特徴はまぁよさそうなのですが、記述を読んでもどれが特徴なのかさっぱり分かりません。それは、紋があるか、弱いあるいはない場合があるというあいまいな記述ばかりなのです。おまけに琉球産と本州産では若干違いがあるようです。本州産では、前額の紋はまったくなく、暗褐色から黒褐色の頬の紋があり、頭楯両側の紋はわずかで、横脈の黒色部分はより黒いということで、今回の個体とはよく合っています。
ただ、口肢の色は本の図も参照しながら見てみると、小顎鬚(外側の大きな口肢)の第3節、第4節の外側が弱く着色、第5節(末端節)の中央部が全体に着色、下唇鬚(内側の小さな口肢)の末端節中央が全体に着色しているようです。この個体では小顎鬚は末端節中央部だけが着色しているので、ちょっと違うようです。でも、これも変異のうちかもしれません。いつももやもやで終わるのですが、だいたいヒメニセコガタクサカゲロウでよさそうです。でも、この種、もう少し細かく分かれるかもしれないなという感触を持ちました。
最後に今回の個体の顔写真を使って、クサカゲロウの頭部の着色部分をまとめてみました。*で書いてあるのはこの部分に着色斑が出ることもあるということを示しています。参考まで。
見つけたのは8月12日で、マンションの廊下です。見る限り普通のクサカゲロウみたいですが、あえて全体的な特徴を書くと、翅に黒色の横脈が多いとか、体の中心を走る黄色の帯が見られないなどが見て取れます。
これは計測のために撮影したものです。クサカゲロウを採集した時は、最近、チャック付きポリ袋に入れて冷凍庫に入れることにしています。以前は酢酸エチルを含む毒瓶に入れていたのですが、ほぼ間違いなく緑が黄色に変色してしまいます。こうやって冷凍庫に入れておくと緑が保たれてなかなか調子がよいです。ただ、観察のたびに、解凍、冷凍を繰り返しているので、何か変質するかもしれませんが・・・。この写真から計測すると、体長9.5mm、右触角の長さ10.5mm、前翅長13.5mmでした。触角は左右とも先端が切れている感じなので、あてにはなりません。
クサカゲロウの検索はだいぶ前から、次の本を使っています。
塚口茂彦、"Chrysopidae of Japan (Insecta, Neuroptera)" (1995).
この本は自費出版なので手に入れることが難しいのですが、大変よくまとめられた労作だと思います。
この本の検索表を使って上の種を調べていきたいと思います。クサカゲロウ族であることは間違いないので、その先の属の検索からしていきたいと思います。
以前から何度も出している検索表です。上記の本が英語なので、私のつたない語学力で訳しているの間違っているところも多々あると思います。ご了承ください。赤字は例によって、今回用いた検索の項目です。関連する写真を載せます。
これは頭部を前からと横から撮影したものです。検索表の項目と関連するところは図にその番号とともに内容を書き込んでいます。まず、①は腹部に書類差しのような構造(file-like structure)についてですが、私自身この構造を見たことがないので、こんな訳がよいのかどうか分かりません。ただ、本の図には載っているので、この個体にはないことはすぐに確かめられます。この構造は発音に関係した構造のようです。
③は頭部に紋があるかないかですが、写真を見るとあることは確かです。次は⑦で、額(fronsなので前額と訳すべきでした)に紋があるかどうかです。Fig. 2を見ると分かりますが、紋はありません。次の⑧と⑩は翅脈についてなので、前翅の写真を載せます。
この写真から横脈のどの部分が黄色ないし緑なのか分かりにくいのですが、翅の中頃右側で横脈が途中で薄くなって見える部分は途中から緑色になっている部分です。次の⑩の翅室imはこの図に示してありますが、その先端がRs-M横脈より翅端側にあるかどうかを尋ねています。間違いなく翅端側にあるので、これでニセコガタクサカゲロウ属になりました。
次は種への検索表です。また、訳した検索表を載せます。
⑪の前胸背板に茶色か黒のスポットがあるかどうかですが、Fig. 1を見ると分かりますが、そのようなスポットはありません。一応、その部分の拡大を載せておきます。
次の⑫は前額に紋がないということなので、⑦ですでに確かめました。また、頭盾両側の紋については、同じFig. 2に載せていますが、弱い線状の紋があります。次の⑮は触角柄節は色づかないということですが、注目する所は柄節外側の側面です。Fig. 2あるいはFig. 3で分かりますが、色づいていません。この特徴でクロヒゲフタモンクサカゲロウを除外することができます。最後の⑰は口肢が黒褐色に色づくかというという点ですが、Fig. 3を見ると分かりますが、口肢末端節の中央部が黒褐色に色づいています。また、腹部背面中央に縦筋があるかどうかですが、Fig. 1でも見れるように明瞭な縦筋はありません。細い縦筋が見えるのですが、これはフラッシュで光ってしまった部分です。ということこで、フタモンクサカゲロウを除外でき、ヒメニセコガタクサカゲロウになりました。
次に、本に載っている種の特徴についても読んでみました。前翅長はこの個体が13.5mmであるのに対し、本では11-13mmです。まぁいいのかもしれません。触角の長さは本では前翅長と同長とありますが、これはかなり短いです。でも、どうやら途中で切れてしまっているようです。クサカゲロウの翅には段横脈というのがあり、Fig. 4には番号を入れているのですが、上側は6、下側は7あります。これを6/7と書きます。本では4-6/4-7となっていて、範囲には入っています。
ということで、外形的な特徴はまぁよさそうなのですが、記述を読んでもどれが特徴なのかさっぱり分かりません。それは、紋があるか、弱いあるいはない場合があるというあいまいな記述ばかりなのです。おまけに琉球産と本州産では若干違いがあるようです。本州産では、前額の紋はまったくなく、暗褐色から黒褐色の頬の紋があり、頭楯両側の紋はわずかで、横脈の黒色部分はより黒いということで、今回の個体とはよく合っています。
ただ、口肢の色は本の図も参照しながら見てみると、小顎鬚(外側の大きな口肢)の第3節、第4節の外側が弱く着色、第5節(末端節)の中央部が全体に着色、下唇鬚(内側の小さな口肢)の末端節中央が全体に着色しているようです。この個体では小顎鬚は末端節中央部だけが着色しているので、ちょっと違うようです。でも、これも変異のうちかもしれません。いつももやもやで終わるのですが、だいたいヒメニセコガタクサカゲロウでよさそうです。でも、この種、もう少し細かく分かれるかもしれないなという感触を持ちました。
最後に今回の個体の顔写真を使って、クサカゲロウの頭部の着色部分をまとめてみました。*で書いてあるのはこの部分に着色斑が出ることもあるということを示しています。参考まで。
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