fc2ブログ

ハナアブの翅脈比べ

昨日、マンションの「廊下のむし探検」で見つけたハナアブを検索表で調べていたら、北海道だけに生息するラップホシヒラタアブに到達して悩んでいたところ、通りすがりさんから、全国的にいるコマバムツホシヒラタアブだと教えてもらいました。



見つけた個体は腹部に特徴的な模様のあるこんなハナアブです。両者の検索表上の最大の違いは翅脈のうち、R4+5脈とされる脈が、1)強く曲がる、2)弱く曲がる、3)真っ直ぐか、かすかに曲がるのどれかという点にかかっています。1)だとヘリヒラタアブなどに到達し、2)だとラップホシヒラタアブなどに到達し、3)となるとコマバムツホシヒラタアブを含む、まだ数多くの種が該当するようになります。




R4+5脈はこの図に示す通りです。曲がっているかどうかというのは赤い矢印で示したところです。なお、翅脈の名前は「原色昆虫大図鑑」に習ってつけたつもりですが、合っているどうかは分かりません。私はこの曲がり方が弱く曲がっていると判断して、ラップホシヒラタアブに到達してしまいました。コマバムツホシヒラタアブであるとすれば、かすかに曲がると判断しなければいけなかったようです。

ちょっと悔しくなったので、この部分の曲がり方が上記の2種でどの程度違うのか、今回の個体の写真をもとにして比べてみることにしました。なお、比較検討する個体はネット上の信頼の置けるサイトの標本写真から取りました。

まず、コマバムツホシヒラタアブ Scaeva komabensisについてです。



この両者を比べてみました。上は今回の個体、下は標本写真の明るさを適当に変え、黒白の二値化した上で、背景を透明にしました。重ねた結果がこれです。



実によく一致します。科捜研のドラマでいうと95%一致という程度ですね。よく見ると、m-cu横脈が少しずれていますが、少なくともR4+5脈の矢印で示した部分はほぼ完全に一致しています。

次はラップホシヒラタアブ Lapposyrphys lapponicusです。



この場合は標本写真の背景に腹部が写り込んでいたため、マンションで採集した個体写真の方を二値化しました。重ねた結果は次の通りです。



かなり一致はしていますが、細かな点で違っています。科捜研では60%一致ぐらいが出そうです。Cu脈の付近、擬脈の辺りにどうしても一致しない部分が出てしまいました。もちろん、写した時に翅が斜めになっていてずれているということも考えられますが、少なくともR4+5脈の曲がり具合(赤い矢印)は明らかに違うようで、ラップホシヒラタアブの方が強く曲がっています。でも、逆にいうと曲がり方の違いというのはこの程度だということです。これでは、比較してはじめて分かる程度で、個体1匹を見ただけでは相当熟練していないかぎり違いは分かりそうにありません。

今回の教訓としては、検索表で判断の難しい項目があったら、躊躇せずに、その両方の可能性を調べていき、ほかの特徴から判断していくこと。要は言葉にだまされないようにすることですね。通りすがりさん、どうも有難うございました。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

No title

困ったことに、検索表にある表現というのは他種との比較ですからね…
やはり素人の場合は使う方も工夫が必用ということでしょうか。

和名にしても、特徴を表してるとも言い難いものも多いですし、名付けだけでも数の多い昆虫相手だと苦労が偲ばれますね。
それを言葉の表現で検索表にする作業は、想像以上に大変な作業でしょう。

No title

今回の場合は、翅脈の絵まで出ていたので大変親切な検索表だったのですが、それでも惑わされてしまいました。専門家から見ると明確に違いが分かるのでしょうね。私は重ねてみて、初めて違うことが分かりました。でも、一旦違うことがわかると、それからは見ただけで違う気がするから、不思議ですね。やはり間違いを繰り返しながら学んでいくものなのでしょうね。
プロフィール

廊下のむし

Author:廊下のむし

カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
カウンター
月別アーカイブ