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虫を調べる キアシフンバエ

先日、こんなハエがいました。




ちょっと変わった感じのハエなので採集してきました。「原色昆虫大図鑑III」の科の検索表を使って調べてみると、フンバエ科にたどり着きました。私はそこでギブアップだったのですが、その後、通りすがりさんから、「キアシフンバエと思われます。」というコメントをいただきました。ハエ目は科がなんとか分かっても、種までたどり着けることはほとんどないので、チャンスだと思って少し調べてみました。

といっても、「大図鑑」には、「ヒメフンバエより個体数少なく、翅に暗斑なく、脚は橙黄色を呈する。」と書いてあるだけです。もう少し詳しく書いてある文献はないかなと思ってネットで探してみました。いろいろと見たのですが、結局、次の原記載論文が一番詳しいのではないかと思い、それを参考にすることにしました。

D. W. Coquillet, Proc. Unit. Stat. Natl. Museum 21, 301 (1898) (こちらからダウンロードできます)

まず、フンバエ科への検索から始めてみたいと思います。「原色昆虫大図鑑III」の有弁翅類という翅に覆弁がある仲間の科への検索をしてみます。その部分だけを抜き出すと、



のようになります。そこで、それに関連する写真を載せます。



まず、横からの写真です。脚が橙色であることが分かりますね。



少し拡大したものですが、口器が発達しているので、検索表の1はOKで、2に行きます。さらに拡大してみます。



中副基節に毛はありません。そこで、3に進みます。



3は翅脈に関するものなので、翅脈を見てみます。CuA+CuPと書いたものがCu融合脈です。これが翅縁まで達しているので、フンバエ科かハナバエ科かというところになるのですが、4のフンバエ科の特徴を見てみます。小楯板の下に毛はないので、前額を見てみます。



広々とした前額をしています。これは♀の個体なのですが、♂も同じだそうです。さらに、額内に刺毛はありません。後頭部についてはFig. 2を見ると、細かい毛がいっぱい生えています。下前側板はFig. 3を見ると分かりますが、一本だけ長い剛毛があります。基覆弁については翅の基部を拡大してみます。



覆弁は通常2種類あります。端覆弁と基覆弁です。このハエの場合、端覆弁はやや小型ですが、普通のものと変わらない感じです。ところが基覆弁は細い線状になって体にくっついているように見えます(おそらくこれでよいと思いますが、自信はありません)。とりあえず、これでフンバエ科であることが確かめられました。

Coquillet(1898)の論文でScatophaga mellipesと書かれている種が、「大図鑑」でScathophaga mellipesと書かれている種と同じようです。その説明は英文なので、なんとか訳してみました。ただ、専門用語が多くて誤訳も多いと思いますので、そのつもりで読んでくださいね。



関連する写真も追加します。(追記:脚の部分の訳の一部が不適当かなと思って書き換えました。『中脚の前面・・・・』の部分です。これは脚の色ではなくて、毛の色について書かれているようです









頭部はほぼ書かれている通りです。触角の各節の色ですが、触角第3節というのはFig. 5に書いてあります。この部分が黒く、後は黄色ないし茶色になっています(ちょっと写真では色がよく分からないのですが)。「触角第3節末端が黄色」というは何を指しているのか分かりませんでした。

胸部は最初の写真でも分かりますが、4本の黒い筋があります。正中部の5対の長刺毛はおそらく背中刺毛のことを指しているのだと思います(なお、刺毛の名前は適当につけているので、だいぶ間違っているのではと思っています)。次の中胸下前側板の長刺毛はFig. 3でも出てきましたが、Fig. 9に下前側板刺毛と書いてあるものです。小楯板の4本の刺毛はFig. 8に示したものかなと思います。ということでほぼ記述通りです。

腹部は黒で、Fig. 10で示すように、上面は若干の黒い刺毛とたくさんの短い毛が生えています。側面には黒い刺毛と薄い色の長毛がたくさん生えています。だいたい記述と合っているのかなというところです。

脚については、主に毛について書かれていて、♂については詳しいのですが、♀についてはほとんど書かれていません。さらに、♂と♀とはだいぶ違うようです。従って、この記述があっているのかどうかは判断できませんでした。ただ、Fig. 1や2を見ると前腿節の後半が黒いのですが、このことについてはどこにも書かれていないのが気になりました。

翅についてはFig. 6でも分かりますが、基部から前縁脈に沿った部分が少し茶色を帯びています。これも書かれている通りだと思われます。

ということで、若干の疑問は残っているのですが、ほぼ、キアシフンバエでよいかなという感じです。今後、♂がいたら、もう少し脚の毛について調べてみたいなと思っています。
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No title

拡大した昆虫は、生物というよりも精密な機械のようです。複眼も毛も関節も、生物を模倣した最新型戦闘機、本物の生物なのですが、SFに出てきそうな未来型戦闘機のような感じがしました

No title

ここまでやってもスッキリ分からないのがハエらしいですね。
専門家ではないので当然ですが。
でも、これでも交尾器云々と言われないだけマシですかね。

それにしても双翅とコバチすら殆ど見られない悪天候続きで、今年の冬は降水量、降雪量ともに多すぎです。

No title

> あおやまはるまさん、コメント有り難うございます。

この写真から最新型戦闘機を連想されるのはすごいですね。私は実物を見ているので、拡大してもやはりハエはハエなのですが・・・。それにしても、いろいろな形の部位があり、それにいろいろな種類の毛が生えていたりと、本当に多彩な様相をしているので、見ていても飽きません。ハエは肉眼で見るとハエだと思って触るのも嫌なのですが、いったん顕微鏡下に入ると、もう違った世界になりますね。

No title

> 通りすがりさん、コメント有り難うございます。

私はこんなもんだろうと思っていましたよ。最近は図鑑で似た種がいても、おそらく違うだろうと懐疑的になってしまっています。類似種の違いをすべて書いてくれている論文があるとよいのですが・・・。むしろ、原記載論文なのに、交尾器について触れていないのが不思議な感じでした。19世紀はそれで良かったのでしょうね。ケバエの論文では交尾器がみな描かれていたので、それと比較できて何となく納得していたのですが・・・。

昨日はこのハエを調べていたので、「廊下のむし探検」の報告が遅れてしまいました。また、ハエを捕まえてきたので、検索が必要で・・・(;_;)。長野は大変ですね。こちらでも、だんだん、蛾と蝿だけになってきた感じです。

No title

おはようございます ♪
凄~い!!!
としか 言いようがありません !!
本当に 色んな 毛が 生えていますね。硬いのやら 細いのやら 長いのやら ・・・虫で こんなに毛が生えてのは 蝿だけ??
あっ!!毛虫は いっぱい 毛がありますね (笑)

貴重面で 細かい作業が 得意なんですね 。
何時も 感心しています。^ ^♪

No title

tokoさん、こんにちは。

良く分かりましたね。そうなんです。細かい作業が好きで、また、何でもきちんとしたくて、ついついやってしまいました。ハエというのでだいぶ抵抗はあったのですが・・・。でも見て下さる方がおられるので、ちょっと励みになります。

どうしてハエにあれほど毛が生えているのでしょうね。細かい毛は濡れないためとか模様のためだとか考えられますが、あんなに大きな毛はどうしてか、ちょっと気になりますね。
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