ニクバエを調べる
先日来、マンションの廊下で採集したハエが10匹ほどにもなって、小さな毒瓶にいっぱいなっています。ハエは顕微鏡で見たときに、体に剛毛がいっぱい生えているので、どうにも気持ち悪くて観察が進みませんでした。でも、少しずつ調べてみようと思って、昨日、意を決して調べ始めました。
昨日はこんなハエから調べてみました。いかにもハエという感じのハエなのですが、胸に3本線があるので、おそらくニクバエかなと思われる個体です。
ハエ目の検索表は、「新訂 原色昆虫大図鑑III」(北隆館、2008)に詳しく載っています。このうち、有弁翅類という仲間についての検索で、ニクバエ科の部分だけを抜粋すると次のようになります。
有弁翅類というのは、上の写真のように、翅の根元に覆弁と呼ばれる膜があるものをさしています。覆弁には、端覆弁、基覆弁という2種類があります。とりあえず、この検索表に従って、ニクバエ科の特徴を追いかけてみました。いつもいっていますが、ハエには全くの素人なので、間違っていることが多いことをご承知おきください(特にハエは難しいので、その可能性大です)。
まず、口器は普通通りなので、これはパスします。次の「中脚の副基節はほぼ縦に並んだ剛毛列を生じる」というのは上の写真を見てください。脚の付け根の節を基節といい、それに接続した部分を副基節と呼んでいるようです。この写真でも剛毛列がよく見えます。イエバエ科ではこの部分に剛毛列がないので、すぐに見分けられます。次の項目は翅の翅脈に関するものなので、翅の写真を載せます。
M1脈というのは図で示した通りですが、途中で急に上側に曲がっています。これもイエバエの仲間には曲がらないものがあります。ハエの翅を見るときの見方の一つのポイントですね。ともかく、この2つの条件で、イエバエ、ヒメイエバエ、ハナバエ、フンバエと区別することができます。次は下小盾板についてです。
小盾板というのは胸の下にある三角形の部分です。その下側に下小盾板という出っ張りがあるかどうかという項目です。写真がうまく撮れなかったのですが、上の写真では下小盾板が土手状に出っ張るというヤドリバエ科と対照させて載せています。ヤドリバエ科では小盾板と同じような形の出っ張りがありますが、このハエでははっきりしません。これで、ヤドリバエ科と区別ができます。
次はニクバエ科の特徴を書いた部分です。もう1枚写真を載せます。
4aの肩後剛毛と横線前剛毛はこの写真に矢印で示しているものだと思うのですが、これが縦に並んでいることがニクバエ科の特徴になります。4bは背側剛毛に関してです。これは上から見た写真でも、横から見た写真でも見えます。太い剛毛が2本(赤矢印)あり、その他に細い剛毛が2本(白矢印)あるのですが、そのことを言っているようです。4cはM1脈の曲がる位置が、翅端よりも中室に近いということを言っています。翅脈の写真を見るとそのようですね。4dは中胸盾板に3本の黒い線があることで、これはすぐに分かります。次の腹の部分は見なかったのですが、とにかく、ニクバエ科でよさそうです。
ハエというと剛毛がたくさんあって、それぞれの存在や場所を問題にするので、何かと大変です。そこで、上の写真を使って剛毛の位置をなぞり、それぞれに「大図鑑」の図を参考に名前を付けてみました。
これがその写真です。実はこれを作るのが一番大変でした。剛毛には太い剛毛、中くらいの太さの剛毛、細い剛毛があって、そのどこまでを注目するのが分かりにくかったのと、写真では剛毛がうまく写らなかったので、実体顕微鏡で覗いて実物と対比させながら名前をつけていったので、時間がかかりました。剛毛の付け根には黄色の点をつけています。基本的には部位別に名前がついていて、同じ部位にあるものは破線で結んでいます。だいぶ間違っていそうですが、ともかく、見える部分の剛毛の名前は付けられた感じです。「大図鑑」の図には中刺毛が中央に2列並んでいるのですが、この個体では盾板-小盾板線の上にある1対の剛毛を除いて後は細いものばかりでした。
いずれにしても、結構、大変な作業だったのですが、こんな作業をすると少しはハエの剛毛にも慣れてきた感じです。
(追記:頭部と腹部の写真を撮ったので、追加で載せておきます)
触角には羽毛のような毛が生えています。"Manual of Nearctic Diptera" vol. 2 (ここでpdfダウンロード可能)によると、ニクバエ科の属への検索の最初の項目は、触角が羽毛状かどうかでした。羽毛状だとニクバエ亜科になるようです。
「大図鑑」によると、ニクバエ科の腹部は通常、「市松模様、条、帯、斑点などを表す。」とのことです。これはどれに該当するのでしょうね。
昨日はこんなハエから調べてみました。いかにもハエという感じのハエなのですが、胸に3本線があるので、おそらくニクバエかなと思われる個体です。
ハエ目の検索表は、「新訂 原色昆虫大図鑑III」(北隆館、2008)に詳しく載っています。このうち、有弁翅類という仲間についての検索で、ニクバエ科の部分だけを抜粋すると次のようになります。
有弁翅類というのは、上の写真のように、翅の根元に覆弁と呼ばれる膜があるものをさしています。覆弁には、端覆弁、基覆弁という2種類があります。とりあえず、この検索表に従って、ニクバエ科の特徴を追いかけてみました。いつもいっていますが、ハエには全くの素人なので、間違っていることが多いことをご承知おきください(特にハエは難しいので、その可能性大です)。
まず、口器は普通通りなので、これはパスします。次の「中脚の副基節はほぼ縦に並んだ剛毛列を生じる」というのは上の写真を見てください。脚の付け根の節を基節といい、それに接続した部分を副基節と呼んでいるようです。この写真でも剛毛列がよく見えます。イエバエ科ではこの部分に剛毛列がないので、すぐに見分けられます。次の項目は翅の翅脈に関するものなので、翅の写真を載せます。
M1脈というのは図で示した通りですが、途中で急に上側に曲がっています。これもイエバエの仲間には曲がらないものがあります。ハエの翅を見るときの見方の一つのポイントですね。ともかく、この2つの条件で、イエバエ、ヒメイエバエ、ハナバエ、フンバエと区別することができます。次は下小盾板についてです。
小盾板というのは胸の下にある三角形の部分です。その下側に下小盾板という出っ張りがあるかどうかという項目です。写真がうまく撮れなかったのですが、上の写真では下小盾板が土手状に出っ張るというヤドリバエ科と対照させて載せています。ヤドリバエ科では小盾板と同じような形の出っ張りがありますが、このハエでははっきりしません。これで、ヤドリバエ科と区別ができます。
次はニクバエ科の特徴を書いた部分です。もう1枚写真を載せます。
4aの肩後剛毛と横線前剛毛はこの写真に矢印で示しているものだと思うのですが、これが縦に並んでいることがニクバエ科の特徴になります。4bは背側剛毛に関してです。これは上から見た写真でも、横から見た写真でも見えます。太い剛毛が2本(赤矢印)あり、その他に細い剛毛が2本(白矢印)あるのですが、そのことを言っているようです。4cはM1脈の曲がる位置が、翅端よりも中室に近いということを言っています。翅脈の写真を見るとそのようですね。4dは中胸盾板に3本の黒い線があることで、これはすぐに分かります。次の腹の部分は見なかったのですが、とにかく、ニクバエ科でよさそうです。
ハエというと剛毛がたくさんあって、それぞれの存在や場所を問題にするので、何かと大変です。そこで、上の写真を使って剛毛の位置をなぞり、それぞれに「大図鑑」の図を参考に名前を付けてみました。
これがその写真です。実はこれを作るのが一番大変でした。剛毛には太い剛毛、中くらいの太さの剛毛、細い剛毛があって、そのどこまでを注目するのが分かりにくかったのと、写真では剛毛がうまく写らなかったので、実体顕微鏡で覗いて実物と対比させながら名前をつけていったので、時間がかかりました。剛毛の付け根には黄色の点をつけています。基本的には部位別に名前がついていて、同じ部位にあるものは破線で結んでいます。だいぶ間違っていそうですが、ともかく、見える部分の剛毛の名前は付けられた感じです。「大図鑑」の図には中刺毛が中央に2列並んでいるのですが、この個体では盾板-小盾板線の上にある1対の剛毛を除いて後は細いものばかりでした。
いずれにしても、結構、大変な作業だったのですが、こんな作業をすると少しはハエの剛毛にも慣れてきた感じです。
(追記:頭部と腹部の写真を撮ったので、追加で載せておきます)
触角には羽毛のような毛が生えています。"Manual of Nearctic Diptera" vol. 2 (ここでpdfダウンロード可能)によると、ニクバエ科の属への検索の最初の項目は、触角が羽毛状かどうかでした。羽毛状だとニクバエ亜科になるようです。
「大図鑑」によると、ニクバエ科の腹部は通常、「市松模様、条、帯、斑点などを表す。」とのことです。これはどれに該当するのでしょうね。
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