ヒシバッタの検索 ハラヒシバッタ?
ヒシバッタというのはこんなバッタです。
上から見ると菱型なので、ヒシバッタというのでしょう。ヒシバッタの仲間には似た種が多いので、名前調べがなかなか大変です。そこで、一度、検索表を用いてきちんと検索をしてみようと思ってやってみました。用いた検索表は、日本直翅類学会編、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」(北大出版、2006)です。なにぶん素人なので間違っているところも多いと思います。そのつもりで見てくださいね。
まずはじめに上科の検索です。バッタ目は大きく分けてバッタ亜目とキリギリス亜目に分かれます。ヒシバッタはバッタ亜目なので、バッタ亜目の上科への検索からやってみます。クビナガバッタとノミバッタを除く、バッタ亜目の検索表は次の通りです。
バッタ上科とヒシバッタ上科の違いは上表のようになります。これを確かめていくところから始めます。関連する図を載せます。
Fig. 1と2は上からと横からの写真です。この個体は体長7.8mmの小さなヒシバッタです。ヒシバッタの前胸は長く伸びて腹の先端まで覆っています。これが項目の1Bbbで、図を見るとその辺がよく分かると思います。背中にある白く伸びた部分は前翅のようにも見えますが、真ん中に切れ目がないので、翅ではなくて前胸が伸びたものだということが分かりますね。
項目1Baaの爪間盤については、Fig. 3あるいは4を見ると、爪の間に何もないので爪間盤はありません。よく見ると、爪には小さな歯がついていることも分かります。Fig. 3と4は中脚と後脚の跗節を表したものですが、全部で3節に分かれているようです。いずれにしてもこれでヒシバッタ上科になりました。
日本産ヒシバッタ上科にはヒシバッタ科しかないので、次にヒシバッタ科の検索を行います。ただし、上の写真の個体は、検索の結果、ハラヒシバッタになったので、それに必要なところだけを抜粋して書いておきます。
まず、検索表の1については、Fig. 1の矢印1を見ると、先端に窪みがないので、3に進みます。これでヒラタヒシバッタの仲間を除外できました。次に、3は前胸背板の側葉に刺がないかどうかですが、Fig. 1を見るとないので、8に進みます。8は前胸背板側葉の先端が丸いか裁断状かを尋ねているのですが、Fig. 2の矢印8に示すように丸いので、13に進みます。もう1枚図を追加します。
この図の13で示した部分が前胸背板前域ですが、この部分は横長になっています。次に、14については前胸背板側葉の拡大写真を載せます。
前胸背板側葉のえぐれ部分はFig. 6に示すように2箇所です。上の部分がえぐれていることにより、前翅がはっきりと見えています。15については、Fig. 2に示すように後翅は前胸背板末端から露出していないので23に進みます。前胸背板前縁はFig. 5に示すように、やや上に凸になっているもののほぼ直線的なので25に進みます。前胸背板側面のえぐれ部分はFig. 6でもはっきり見えるので、ヒシバッタ属であることが分かります。
次にヒシバッタ属の検索を行います。「大図鑑」の検索表の最初の部分は別の属の検索が含まれているので、その部分を割愛すると、いきなりハラヒシバッタかそうでないかという項目が出てきます。前胸背板を前から見て上面が膨らんでいるかどうかという内容ですが、次の写真から判断することになります。
丸みを帯びた感じに見えます。市川顕彦著、「絵解き検索日本全土のヒシバッタ類」、昆虫と自然 33(2), 43 (1998)の検索表を見ると、上面の2つの稜が少し膨らんいるかどうかで判断するようです。見てみるとそのようにも見えます。従って、ハラヒシバッタで良いのではと思いますが、「少し膨らんでいる」という表現は微妙なので、他の種と比較しないとはっきりしたことはいえません。でも、とりあえず、ハラヒシバッタにたどり着いたことになります。
ついでに撮った写真も載せておきます。
尾部の部分の拡大写真です。この部分の形から♂であることが分かります。実は、ヒシバッタの正確な検索は♀でないとはっきりとはできないようです。
これは後脚の跗節を別の角度から写したものですが、なかなかごつい感じですね。
検索を行ってみた後の感想ですが、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」では検索表に図がついているので非常に分かりやすかったです。しかし、最後の「前胸背板を前から見ると上面が少し膨らんでいる」というところはやや微妙な表現で、別の種と比較しないとはっきりとした判断がつきません。また、市川顕彦氏の論文によると、成虫と終齢幼虫との区別がつきにくいとのこと。この区別の仕方も勉強しておかないといけないですね。(追記:ほしさんから、「ヒシバッタ類の成虫・幼虫の識別点はバッタ大図鑑(p.495)に出ていて、後肢の膝直前、上面にくびれがあれば成虫とされています。肉眼やルーペで容易に確認できます。」というコメントをいただきました。どうも有難うございました。Fig. 2を見ると、この個体は後脚ひざ上のくびれから成虫のようです)
上から見ると菱型なので、ヒシバッタというのでしょう。ヒシバッタの仲間には似た種が多いので、名前調べがなかなか大変です。そこで、一度、検索表を用いてきちんと検索をしてみようと思ってやってみました。用いた検索表は、日本直翅類学会編、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」(北大出版、2006)です。なにぶん素人なので間違っているところも多いと思います。そのつもりで見てくださいね。
まずはじめに上科の検索です。バッタ目は大きく分けてバッタ亜目とキリギリス亜目に分かれます。ヒシバッタはバッタ亜目なので、バッタ亜目の上科への検索からやってみます。クビナガバッタとノミバッタを除く、バッタ亜目の検索表は次の通りです。
バッタ上科とヒシバッタ上科の違いは上表のようになります。これを確かめていくところから始めます。関連する図を載せます。
Fig. 1と2は上からと横からの写真です。この個体は体長7.8mmの小さなヒシバッタです。ヒシバッタの前胸は長く伸びて腹の先端まで覆っています。これが項目の1Bbbで、図を見るとその辺がよく分かると思います。背中にある白く伸びた部分は前翅のようにも見えますが、真ん中に切れ目がないので、翅ではなくて前胸が伸びたものだということが分かりますね。
項目1Baaの爪間盤については、Fig. 3あるいは4を見ると、爪の間に何もないので爪間盤はありません。よく見ると、爪には小さな歯がついていることも分かります。Fig. 3と4は中脚と後脚の跗節を表したものですが、全部で3節に分かれているようです。いずれにしてもこれでヒシバッタ上科になりました。
日本産ヒシバッタ上科にはヒシバッタ科しかないので、次にヒシバッタ科の検索を行います。ただし、上の写真の個体は、検索の結果、ハラヒシバッタになったので、それに必要なところだけを抜粋して書いておきます。
まず、検索表の1については、Fig. 1の矢印1を見ると、先端に窪みがないので、3に進みます。これでヒラタヒシバッタの仲間を除外できました。次に、3は前胸背板の側葉に刺がないかどうかですが、Fig. 1を見るとないので、8に進みます。8は前胸背板側葉の先端が丸いか裁断状かを尋ねているのですが、Fig. 2の矢印8に示すように丸いので、13に進みます。もう1枚図を追加します。
この図の13で示した部分が前胸背板前域ですが、この部分は横長になっています。次に、14については前胸背板側葉の拡大写真を載せます。
前胸背板側葉のえぐれ部分はFig. 6に示すように2箇所です。上の部分がえぐれていることにより、前翅がはっきりと見えています。15については、Fig. 2に示すように後翅は前胸背板末端から露出していないので23に進みます。前胸背板前縁はFig. 5に示すように、やや上に凸になっているもののほぼ直線的なので25に進みます。前胸背板側面のえぐれ部分はFig. 6でもはっきり見えるので、ヒシバッタ属であることが分かります。
次にヒシバッタ属の検索を行います。「大図鑑」の検索表の最初の部分は別の属の検索が含まれているので、その部分を割愛すると、いきなりハラヒシバッタかそうでないかという項目が出てきます。前胸背板を前から見て上面が膨らんでいるかどうかという内容ですが、次の写真から判断することになります。
丸みを帯びた感じに見えます。市川顕彦著、「絵解き検索日本全土のヒシバッタ類」、昆虫と自然 33(2), 43 (1998)の検索表を見ると、上面の2つの稜が少し膨らんいるかどうかで判断するようです。見てみるとそのようにも見えます。従って、ハラヒシバッタで良いのではと思いますが、「少し膨らんでいる」という表現は微妙なので、他の種と比較しないとはっきりしたことはいえません。でも、とりあえず、ハラヒシバッタにたどり着いたことになります。
ついでに撮った写真も載せておきます。
尾部の部分の拡大写真です。この部分の形から♂であることが分かります。実は、ヒシバッタの正確な検索は♀でないとはっきりとはできないようです。
これは後脚の跗節を別の角度から写したものですが、なかなかごつい感じですね。
検索を行ってみた後の感想ですが、「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」では検索表に図がついているので非常に分かりやすかったです。しかし、最後の「前胸背板を前から見ると上面が少し膨らんでいる」というところはやや微妙な表現で、別の種と比較しないとはっきりとした判断がつきません。また、市川顕彦氏の論文によると、成虫と終齢幼虫との区別がつきにくいとのこと。この区別の仕方も勉強しておかないといけないですね。(追記:ほしさんから、「ヒシバッタ類の成虫・幼虫の識別点はバッタ大図鑑(p.495)に出ていて、後肢の膝直前、上面にくびれがあれば成虫とされています。肉眼やルーペで容易に確認できます。」というコメントをいただきました。どうも有難うございました。Fig. 2を見ると、この個体は後脚ひざ上のくびれから成虫のようです)
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