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カメムシの検索 その1

先日から、ハエ目やトビケラ目の検索をしてきましたが、今回は陸生カメムシ類の検索をしてみました。その中でも、今回は特にヒメヘリカメムシについてです。これは、「通りすがり」さんから、名前が違っているのではと教えていただいたので、もう一度きちんとやってみようと思ったからです(「通りすがり」さん、どうも有難うございました)。

ちょっと長くなるので、その1(カメムシの検索)とその2(ヒメヘリカメムシの検索)に分けようと思います。なにぶん、カメムシについても素人なので、そのつもりで読んでくださいね。

まず初めに、いつものとおり、検索表を表の形にしてみます。ここで用いた検索表は、日本原色カメムシ図鑑第3巻に載っている「陸生カメムシ類の科への絵解き検索」です。



上の表の見方をもう一度説明しますが、検索表の項目番号に相当する内容に合致するものは黄色、合致しないものはその番号の下にある水色の部分になります。例えば、項目28に合致するものはカメムシ上科で、合致しないものはヘリカメムシ上科だと見ればよいのです。

さて、この図をみると、上1/3ほどは1つずつ科(または、下目)の特徴を調べていく部分です。この中には、サシガメ科が含まれますが、アメンボやタイコウチなども含まれています。そこで、とりあえず、ムクゲカメムシ下目より上を無視して考えていきます。その下の部分にはほとんどの陸生カメムシが含まれることになります。黄色の長い部分を探してみると、項目9、14、18、28という大きく4つの特徴で上科が分けられていることが分かります。

まず、9は「単眼がない」という特徴です。これを満たすものにはカスミカメムシ科が入っています。そこで、カスミカメムシを調べてみましょう。



これはカスミカメムシ科のコブヒゲカスミカメの標本写真ですが、複眼の間にあるはずの単眼がありません。



こちらはヒメヘリカメムシ科に属するアカヒメヘリカメムシですが、単眼があることが分かります。つまり、カスミカメムシの特徴は単眼がないのです(例外はダルマカメムシ亜科)。もう一つ、カスミカメムシの特徴は、検索項目14(前翅に楔状部がある)が該当します。検索項目14はハナカメムシ科やダルマカメムシ亜科などを規定する項目ですが、実際は、カスミカメムシ科の一般的な特徴でもあります。カスミカメムシは翅の後半部分が折れたような形状をとりますが、それが楔状部に関係します。



これは先ほどと同じ、コブヒゲカスミカメの後ろの部分の写真です。革質部と呼ばれる固い前翅の部分に切れ込みが入り、その部分で折れるようになっているのです。この折れた先の固いくさび状の部分を楔状部と呼んでいます(楔状の読み方がよく分かりませんが、ケツジョウと呼んでいるようです)。

単眼があって、楔状部のないものは、マキバサシガメ科を除いて、ナガカメムシ上科、カメムシ上科、ヘリカメムシ上科になります。そのうち、ナガカメムシ上科を特徴づけるものは、検索項目18で「前翅膜状部に5本以下の縦走する翅脈があり、網目状の翅脈にならない」というものです。この特徴で、ナガカメムシ上科を分けられます。ここで、膜質部と呼ばれるのは前翅の先にある柔らかい部分です。



これはマダラナガカメムシ科のヒメジュウジナガカメムシとヒメヘリカメムシ科のアカヒメヘリカメムシの膜質部を比べたものです。左側は単純な縦脈が5本あるだけですが、右側は大変複雑な翅脈をしています。左はナガカメムシ上科で、右はそれ以外ということになります(ついでに、Fig.3のカスミカメムシの単純な翅脈も見て下さい)。

最後は検索項目28で、「触角は4節または5節からなり、頭部側面の中央もしくは頭部腹面からでる」というものです。



この写真はカメムシ上科カメムシ科に属するクサギカメムシを横から見た写真です。頭部の背面と側面を分ける線(黄色の破線)の下側から触角が出ていることが分かります〈複眼はちょうどその境目に付いているようです)。



これに対して、上の写真はヘリカメムシ上科ヒメヘリカメムシ科のアカヒメヘリカメムシを横から見たものですが、触角が背面と側面を分ける線(黄色の破線)の上から出ていることが分かります(複眼も背側に付いているように見えます)。このことから、この種はカメムシ上科でないと判断できます。

アカヒメヘリカメムシは、以上のように、1)単眼があり、2)楔状部がなく、3)膜質部の翅脈が網目状になり、さらに、4)触角が頭部背面から出ていることで、ヘリカメムシ上科に属していることが分かります。これから先は次の回に回します。
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