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ウスバカゲロウの翅脈

この間から手作り図鑑を作っているのですが、今度はウスバカゲロウにしてみようと思って調べ始めました。文献を探していたら、日本産ウスバカゲロウ科を扱った次の論文を見つけました。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文は日本産17種すべての種の再記載をして、特に交尾器について詳細に書いたものです。また、種までの検索表も載っていました。これは助かったと思って、検索表で調べてみようと思ったら、翅脈の特徴が出てきました。翅脈は時代によっても、人によっても定義が異なるので、是非とも定義をはっきりさせてから使ってほしいと思っていたのですが、この論文にはそれがありませんでした。そこで、ほかにも翅脈を扱った論文はないかと探してみました。そして、次の論文を見つけました。

L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

この中でいくつかの属について翅脈が出ていて、その名称も出ていたのですが、かなり変わった名前の付け方をしています。それで、やはり翅脈は原点に戻らなければいけないな思って、いつものComstockの本を見てみました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

この本は古いのですが、発生過程で翅脈に先だって伸びていく気管をもとにしているので、ある程度、信頼性があります。それで、この本をもとにして、翅脈に名称を付けていき、検索表の内容を理解してみることにしました。


これは検索表のうち、翅脈に関するものだけを3族に関して抜き書きしたものです。翅脈を見るだけでも、このようにこの3族が見分けられることになっています。それぞれの族の代表種として、マダラウスバカゲロウ、カスリウスバカゲロウ、ウスバカゲロウの3種を選び、その翅脈を手元にある標本で調べてみました。



まず最初はウスバカゲロウです。これは2014年7月20日にマンションで撮影したものです。これの翅脈を見てみました。


検索表では①→②b→③bと進むのですが、それに関係したところに赤字で番号を入れておきました。基本的にComstockの名称を使っているのですが、M1+2→MA、M3+4→MP、Cu1→CuA、Cu2→CuPと名称を現代風に変えています。前翅で"*"で書いた脈はちょっと問題になる翅脈です。基部に近いところにある"*"はStange(1994)ではこれをMAとしています。この脈はその後、R脈と融合、あるいは並走し、次いで、Rsと融合しRs+MAとしています。ただ、実際に観察してみると、"*"で示した脈は硬化していなくて、MAとするには如何にも問題がありそうな気がしたので、この案は採用しませんでした。前翅の中央付近にある"*"はComstockによるもので、ここでM脈は分岐して、MAとMPになるということになっています。これは気管の発達が実際にそうなっているので、ある程度説得力があるかなと思い、ここでも採用しました。



前翅基部の拡大です。1Aと2Aの基部が接近して平行に走っているところ(赤矢印)と、その後、2Aと3Aが一時的に融合するところ(赤破線)がこの翅脈の特徴です。CuPはCuの基部で分岐し、その後、1Aと平行になりやがて両者は合流します。



こちらは後翅の基部です。やはりCuPと1Aが一時的に融合しています。



次はカスリウスバカゲロウです。これは2014年6月21日に撮影したものです。この場合は、①→②b→③aと検索は進んでいきます。



先ほどと異なるところは③で示したRsが分岐する前の横脈の数がウスバカゲロウでは5本だったのが、これでは1本しかないところです。これで族の違いが分かります。



次は前翅基部です。先ほどと同様に2Aは一時的に1Aに接近して平行に走り、その後、3Aと一時的に融合してから分離しています。



そして、これは後翅基部です。ウスバカゲロウに似ていますが、少し異なるところもあります。



最後はマダラウスバカゲロウです。これは2014年7月25日に撮影しました。この場合の検索は①→②aとなります。


今回も①で示す部分は同様です。ここはMP2とCuAが横脈で結びつくというところです。



このマダラウスバカゲロウは先ほどの2種と比べると2Aと3Aがだいぶ変わっています。2Aは1Aと接近することなく、また、3Aと融合することなく独立して走っています。その辺りがこの族の特徴です。



最後は後翅基部です。

ということで、ウスバカゲロウの翅脈の特徴を少しだけ理解することができました。これからウスバカゲロウ科をまとめてみようかなと思っています。
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