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カバエ科の再検討

先日、「手作り図鑑」の一部としてカバエ科をまとめました。



カバエ科というのはこんなハエです。これは2015/03/08にマンションの廊下で撮影したものです。検索はそれよりちょっと前に行ったのですが、詳しくはそのときの記事を見てください。その時は、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のNo. 2977(2007/02/03)のスレッドに載っている検索表を利用して検索してみたら、マダラカバエ Sylvicola japonicusになりました。

でも、そのスレッドをよく読むと、その後、松村氏の論文に書かれている原記載とその後に出された岡田氏の記載は合うのですが、付図として描かれた交尾器が合致しないことが分かり、北大に残っているsyntypeと比較した結果、むしろ、付図に載っている方が合致することが分かりました。ただ、北大に残っている標本は胸背に4本線があり、主に北海道などの北方に分布する種です。結局、これがjaponicusになってしまったのです。これに対して、全国的に普通にいる種は3本線でしたが、突然名前がなくなってしまいました。同時にマダラカバエという和名もSylvicola japonicusにくっついていったので、普通種に和名もなくなってしまいました。この辺りの事情については「大図鑑」のマダラカバエの解説にも書かれています。というわけで、「手作り図鑑」には、今回の種は仮にSylvicola sp. 2 (以前のS. japonicus)だと書きました。フトツリアブさんからSylvicolaの種数に関するコメントをいただいたのですが、私がスレッドの時系列を誤解してしまい、変なお返事を差し上げてしまいました。そこで、もう一度、この辺りのことをまとめ直してみようと思って書きました。

たぶん、時系列的には「手作り図鑑」に載せた通りではないかと思うのですが、折角なので、そのスレッドに出てくる文献の検索表を使って検索をしてみました。

I. Okada, "Ueber die Gattung Phryne Meigen (Phryneidae) (Neue und wenig bekannte Dipteren aus Japan. II)", Insecta Matsumurana 9, 166 (1935). (ここからダウンロードできます)

まずはこの1935年の岡田氏の論文に載っている検索表からです。



これはスレッドに出てくるsuzukii、matsumurai、japonicusに限って検索表の一部を抜き出して翻訳したものです。いつものように〔 〕は私が入れた注釈です。①のMと②のRはそれぞれm1室とr室ではないかと思いました。まずはこれらの項目を写真で確かめてみたいと思います。検索は①→②b→③bと進みます。



これは翅脈ですが、翅脈の名称は特に差し支えないので「大図鑑」の方式を採用しています。検索表に出てくるところは矢印で示してあります。



胸背には3本の縦条があります。



後腿節には暗色環などはないので、以上の検索の結果、この個体はjaponicaになります。しかし、この検索表では特に交尾器の特徴を使っていないので、これは先ほど書いたようにjaponicus→sp.2となります。これに対して付図として載っている交尾器はjaponicusのものだということになります。

次はKrivosheina(1998)の論文の検索表です。

N. P. Krivosheina and F. Menzel, "The Palaearctic species of the genus Sylvicola Harris, 1776 (Diptera, Anisopodidae)", Beitr. Ent. 48, 1 (1998). (ここからダウンロードできます)

同じく、3種に限定した検索表は以下のようになります。



この場合の検索は①→②→③b→④→⑤aと進みます。それを同様に見ていきます。



最初は翅脈です。検索上では特に問題なくすべての項目を確かめられます。



複眼は間違いなく合眼的です。





最後の⑤aの後半は♂交尾器に関するものですが、これが何を意味しているのかよくは分かりません。しかし、この写真の構造は明らかにKrivosheina(1998)に描かれたものともOkada(1935)のものとも異なります。むしろ、先ほどのスレッドに描かれたjaponicus(これは後のsp.2)のものと生殖端節の辺りは似ています。スレッドに書かれている通り、KrivosheinaはOkadaの論文を参考にしたので、同じ交尾器をもつものをjaponicusとしたと考えられます。でも、これは先ほどの話でまさにjaponicusになったということで、検索表は変更なしでそのまま使えることにはなったのですが、日本で普通種のsp. 2については行き先がなくなってしまいました。

最後はスレッドに載せられていた検索表です。



こちらは少し変更があります。まず、⑤aのjaponicusはsp.2になり、④bのsp. 2はjaponicusになります。ついでに新しく見つかったとされるsp. 4も加えておきました。この場合、検索をしていくと、①→②a→③→④a→⑤aとなり、最終的にsp. 2になります。これも一応、写真で見てみます。







今回は交尾器が検索表に含まれていないので、そのまま素直にjaponicus→sp. 2に到達しました。

とにかく、ややこしい話だったので、私も頭がこんがらがってしまいました。普通種に早く名前がつくとよいなと思っています。

雑談)今回はカバエでだいぶオタオタしました。虫一匹でもちゃんと調べようとすると本当に大変ですね。「一寸のハエにも五分の大和魂」という言葉の意味が少し分かってきたような感じです。先ほど、HPの方にカバエ科のpdfを出しました。今度はクサカゲロウ科をまとめようと頑張っています。これもなかなか大変です。
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