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虫を調べる コマユバチ科(続き)

一昨日、コマユバチ科の科の検索過程を出しましたが、今日はその続きで、亜科と属の検索についてです。属の方はまだ怪しいので、そのつもりで見ていただけると幸いです。



対象とするのは11月27日に採集したこんなハチです。体長3.5mmとかなり小さいので、今までだったら、単にハチで済ましていたのですが、今回は頑張って調べてみました。一昨日は「絵解きで調べる昆虫」で科の検索をしたのですが、今回はその先をやってみます。

亜科の検索には次の論文の絵解き検索表を用いました。

[1] C. van Achterberg, "Illustrated key to the subfamilies of the Braconidae (Hymenoptera: Ichneumonoidea)", Zoologische Verhandelingen 283, 1 (1993).(ここからダウンロードできます)

コマユバチ科は亜科も多く、この論文はやや古いのですが、43亜科を扱っていて絵解きなので試してみました。



検索を始めるとすぐに候補となる亜科 Agathidinaeに到達しました。それで、たぶん、この亜科で大丈夫だろうと思っています。番号は一昨日の科の検索と続き番号になっています。これを一つずつ写真で確かめていこうと思います。



最初の⑨は大顎についてです。もともと小さなハチなのですが、その大顎となると、写真も大変です。



でも、頑張って拡大してみました。この左右の大顎が閉じたときに先が接触するかどうかは分かりませんが、大顎の先端が内側に曲がっているので、たぶん、接触するだろうと勝手に思って⑨の前半部分はOKとしました。後半は大顎の歯の数ですが、たぶん、2個くらいはあるのではと思います。



次は翅脈に関してです。項目は全部で4つあるので、それらを㋐~㋓までに分け、この写真ではそのうち、㋐~㋒を見てみます。まず、㋐は黒三角で示した外縁室が狭いという特徴です。この特徴はAgathidinae亜科ではかなり重要な特徴のようです。次の㋑は赤点線で示したようにm-cu脈と1-M脈の前半の部分を延長すると、後半で発散するという特徴です。これもOKでしょう。次は㋒で、黒矢印で示した部分に分岐するCu1b脈があるかどうかです。この写真ではよく分からないので、少し拡大してみました。



黒矢印で示した部分に3-CU1がCU1aとCU1bに分岐する様子は見られません。それで、これもOKとします。



最後は後翅翅脈についてです。㋓で示す部分にある2-CU脈は明瞭に存在します。それで、これもOKです。これで、すべての項目を調べたので、Agathidinae亜科は確かそうな感じがしました。

次は属の検索です。いつも利用させていただいている"Information station of Parasitoid wasps"にはAgathidinaeの日本産既知種のリストが載っています。たぶん、未記録種も多いと思うのですが、とりあえず、このリストを参考にさせてもらおうと思います。このリストでは12属が載っているのですが、これまでに公表された属の検索表がこれらを網羅しているかどうかをまず調べてみました。



下に示す4論文で扱われている属を調べて、日本産の属(左欄)が載っていたら〇をつけました。

[2] M. J. Sharkey, "The Agathidinae (Hymenoptera: Braconidae) of Japan", Bulletin of the National Institute of Agro-Environmental Sciences 13, 1 (1996).(ここからダウンロードできます)
[3] M. J. Sharkey, "Agathidinae" (in Russian with English translation). In: P. A. Ler, "Key to the insects of Russian Far East", Vol. 4. Neuropteroidea, Mecoptera, Hymenoptera. Pt 3. 708, 520 (1998).(ここからダウンロードできます)
[4] M. J. Sharkey and S. A. Clutts, "A revision of Thai Agathidinae (Hymenoptera: Braconidae), with descriptions of six new species", Journal of Hymenoptera Research 22, 69 (2011).(ここからダウンロードできます)
[5] C. van Achterberg and K. D. Long, "Revision of the Agathidinae (Hymenoptera, Braconidae) of Vietnam, with the description of forty-two new species and three new genera", ZooKeys 54, 1 (2010). (ここからダウンロードできます)

最下欄の小さな字で書いたのは日本産既知種には載っていない属を示しています。これを見ると、右の2つの欄に載っている検索表が日本産を網羅していてよさそうです。この中のSharkey (2011)を検索に用いることにしました。もっとも対象とする国がタイなので、種は違うでしょうけど。



それで、実際に検索をしてみると、Lytopylus属になりました。いくつか不安なところもあるのですが、とりあえず、この6項目を写真で見ていこうと思います。



まずは翅脈です。Sharkeyがどのような翅脈名を用いているのか調べても分からなかったのですが、絵解きなので、とりあえず自分なりの名称をつけてそれで説明することにします。⑪はRs脈が完全かどうかですが、写真で見るように完全です。また、黒三角⑭で示すように三角形の第2亜外縁室は確かに存在します。これで両方ともOKです。



これは翅脈の拡大です。Rs+M脈はこの写真でも分かるように両端があるだけで、中央はなくなっていました。これで⑬はOKです。また、先ほどの第2亜外縁室の一辺であるr-m脈には二次的な脈はありません。これで、⑯もOKになりました。





⑫は前脚と中脚の脚の爪に関してです。このハチの爪は小さくてなかなかうまく撮れません。何度も撮り直してやっとこの2枚の写真が得られました。上が前脚、下が中脚です。共に、爪の基部に突起部があります。この項目はもし論文に写真が載っていなかったら、basal lobeの意味が分からなかっただろうと思います。論文の検索表では、このbasal lobeを持つ爪のほか、爪先が2分するタイプ(cleft)、それに全く突起などのない単純な爪(simple)の3つのタイプに分けられていました。



これはすぐに分かります。notaulus(notauliは複数形)は明瞭にあります。



median tergiteとの訳が中央背板でよいのかどうか分かりませんが、背板には側面があるので、背板の中央部分という意味だと思います。この写真で分かるように縦の筋が第1節から第3節の後縁近くまでずっと入っています。これで⑭と⑮はOKにしました。



最後は後体部窩(MC)と後脚基節窩(CC)に挟まれた部分を腹側から見たものです。こんな部分を見たことがなかったのですが、論文の図を参考にしながら名称をつけてみました。「完全に背面に存在する」は腹面を見ているのに奇妙な表現なのですが、"metasomal cavity situated entirely dorsal to coxal cavities"の略です。たぶん、CCから少し離れて後ろ側にMCがあるという意味だと思います。後半の横隆起線(TC)は矢印の部分の高まりではないかと思ったのですが、よくは分かりません。でも、全体的な形状が論文の写真とよく似ているのでたぶん大丈夫かなと思っています。

ということで、とりあえずすべての項目を調べたので、おそらく、Lytopylus属でよいのではと思っています。さらに、産卵管がないので♂ではないかというのが今回の結論です。(追記2018/12/09:"Information station of Parasitoid wasps"には日本産Lytopylus属としてromaniとrufipesの2種が記録されています。それで、論文を調べたのですが、♂に関する記述がなかったので、今のところ種の方は保留としておきます
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