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虫を調べる アシアカツヤアシブトコバチ?

10月29日に採集したコバチを調べてみました。



調べたのはこんなコバチです。後脚腿節が太いのでアシブトコバチ科であることは確かでしょう。昨日、各部の名称を調べたので、今回は実際に検索をしてみます。用いた検索表は昨日も利用させていただいたこの論文です。

A. Habu, "A Revision of the Chalcididae (Hymenoptera) of Japan, with Descriptions of Sixteen New Species", 農業技術研究所報告 C. 病理・昆虫 11, 131 (1960). (ここからダウンロードできます)

まずは亜科、族、属の検索です。



検索をしてみると、Antrocephalus属になったのですが、その検索の過程を示すとこのようになります。逆にこの6項目を調べることで、Antrocephalus属であることが確かめられます。それを写真で見ていきたいと思います。今回はほぼ検索順に見ていきます。



まず、腹部に明瞭な腹柄がないことはこの写真でも分かります。頭部は昨日も示した通り奇妙な形なのですが、これに対抗する項目を選ぶと、角のある種になるので、それに比べると普通ということになります。



触角挿入口は複眼下縁レベルよりは明らかに下にあります。これはアカアシブトコバチなどが含まれるBrachymeriinae亜科を除外する項目になっています。また、この個体は♀なので、触角挿入口は頭盾のすぐ上にあります。



後脚脛節末端が垂直に切られたようになっているというのがこの項目です。これに対抗するのは先ほども出てきたBrachymeriinae亜科で、この部分が斜めに切られています。



次は翅脈です。これは書かれている通りだと思われます。



次は顔面にある複眼内縁隆起線に関するものです。④も⑤もこの写真でよく分かります。




これは先ほどの複眼内縁隆起線がどこまで伸びているのかということなのですが、調べてみると赤矢印辺りまで伸びているようです。先ほどのHabu(1960)のAntrocephalus apicalisの図を見ると、黄矢印で示したあたりから下に黄点線で示したfronto-genal suture(顔面―頬溝)があるようなので、その辺りまで届いていることになります。ついでに、後で出てくるgenotemporal furrowについても同じ図を参考にして黄点線で描いておきました。

これですべての項目を確かめたことになるので、Antrocephalus属であることは確かそうです。次は種の検索です。ここからどう進めるか、かなり迷ってしまいました。というのは、"Information station of Parasitoid wasps"にはAntrocephalus属の日本産の種リストが載っているのですが、全部で7種記録されています。このうち、Habu(1960)には5種しか載っていません。一方、載っていない分を含めて次の論文には4種が載っていました。

T. C. Narendran, "Oriental Chalcididae (Hymenoptera: Chalcidoidea)", Zool. Monograph, Dep. Zool., U. Calicut (1989).(ここからダウンロードできます)



表にまとめてみると、こんな風になります。従って、この二つの論文を用いることにより日本産7種について調べることができると思われます。それで、まず、Habu(1960)に載っている種の検索表で調べてみます。



この検索表では全部で5種載っているのですが、実際に検索してみると、⑦b→⑧aとなり、apicalisになります。この種は現在ではdividensのシノニムということになっています。これらの項目を写真で見ていきます。



小盾板の先端は特に凹んでいないのですが、murakamiiやsatoiiはここが大きく凹んでいたり、二峰性になっているので、これとは明らかに異なります。また、点刻の大きさと間隔はほぼ同程度です。ということで、⑦bはOKとしました。



⑧bを選ぶと、黄矢印辺りに突起がありますが、これにはありません。また、色に関しては書いてある通りです。ということで、この検索表を用いると、apicalis(=dividens)になります。

次はNarendran(1989)の検索表です。この論文は東洋区の種をすべて扱っているので、かなり数が多いのですが、そのうち、日本産だけを拾うと次のようになります。


この場合も先ほどと同様に結果的にはdividensになるのですが、検索の経路としては、Ⓐb→Ⓑb→Ⓒbと進んでいきます。



Ⓐbは先ほど同様、黄矢印の部分に歯がないことを見ます。また、Ⓒbの色はその通りです。



genotemporal furrowは先ほど示した通りなのですが、後縁に沿ってかなり深いことが分かります。これで、ⒷbもⒸbもOKです。



Ⓒbの鋭尖形というのはたぶん、大丈夫でしょう。



最後のこのcarinaについては迷いに迷いました。たぶん、矢印で示した部分だろうなと思ったのですが、はっきりとはしません。一つ前の写真でも同様の弱い隆起線が見えます。いずれも第1背板の長さよりは圧倒的に短いので、たぶん、大丈夫でしょう。どうしてこんなに写真が難しいかというと、前伸腹節と後体節の間の狭い隙間にあって、なおかつ、後体節第1節がまるで鏡みたいにつるつるで、前伸腹節の隆起線が写ってしまい、どれが本物かよく分からなかったためです。

ということで、紆余曲折はありましたが、一応、こちらもdividensになりました。たぶん、アシアカツヤアシブトコバチ Antrocephalus dividensで大丈夫だろうと思われます。虫を一匹ずつをこんな風に検索表で調べていくのは相当に大変ですが、それでも、細かく調べることでいろいろと新しいことが分かるので、やっていて結構楽しいです。これからも続けていこうと思います。
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