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虫を調べる ヨシブエナガキクイムシ

この間、ナガキクイムシを見つけ、前胸背に共生菌類の胞子を入れておく胞子貯蔵器官があることを知りました。このときは採集をしなかったのですが、そういえば、以前にも捕まえたことがあったなぁと思い出して、冷凍庫から取り出して調べてみました。今年の3月15日に採集したものです。



これはその時の写真です。古いので、さすがに冷凍庫に入れておいても乾燥して固まっていました。これにも胞子貯蔵器官らしきものがあったのですが、この個体は実は♂で小さくて目立たないものでした。

とりあえず、名前を調べてみようと思って、検索をしてみました。検索には次の論文の検索表を用いました。

野淵輝、「日本のナガキクイムシ科」、家屋害虫 15, 33 (1993).(ここからダウンロードできます)

若干途中で問題があったのですが、とりあえず検索表で調べてみると、ヨシブエナガキクイムシ♂であることが分かりました。たぶん、検索をしなくても胞子貯蔵器官の形や上翅斜面部の形状でこの種で間違いないと思うのですが、検索をしてみると、なかなか難しいところもありました。いつものように写真で確かめていきたいと思います。



検索は①→②b→③→④b→⑤と進んでいくのですが、実は②aはこの条件では除外できません。こちらの道を進むと、②a→⑥→⑦→⑧と若干の違和感を伴いながら進んでいくのですが、最後の種に至るところで、上翅斜面部の形がまるで違うので、否定することができました。今回はこちらの過程はパスします。



とりあえず背側から撮った写真です。検索表では③くらいが関係しますが、これは大丈夫でしょうね。



体長は3.3mmだったので、⑤の条件には合致していると思われます。でも、ともかく変わった虫ですね。後脚がこんなに後方にあります。と同時に、腹部がほとんどありません。c、f、tはそれぞれ基節、腿節、脛節を意味します。



これは横からです。上翅末端が急激に折れ曲がっている感じですが、この部分が斜面部です。



まず、前脚基節が接しているというのは、まず間違いないでしょう。これでナガキクイムシ亜科になりました。



この②はオオナガキクイムシ属とナガキクイムシ属を分ける項目なのですが、ここがよく分かりません。先ほどの論文を読むと、下唇鬚は解剖しないと分からないというので、たぶん、大顎の下に見えている突起は下顎鬚だろうと思うのですけど・・・。



一応、倍率を上げて撮ってみましたが、下唇鬚らしいものは見えません。なお、上の写真に書き入れた各部の名称は次の論文に載っている図を参考にしました。

B. J. Kaston, "The Morphology of the Elm Bark Beetle Hylurgopinus rufipes (Eichhoff)", Connecticut Agricultural Experiment Station (1936). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文はキクイムシ科について書かれたものなので、形状がだいぶ違うのですが、ナガキクイムシ科については各部の名称の載っている文献が見つからなかったので、やむをえず参考にしました。



これは上翅基部の拡大です。点刻列がいくつも並んでいますが、第1列だけが凹んでいます。これが③の意味だと思われます。



これは前脚脛節の拡大です。こんな横皺列があります。この個体が♀だったら、この形状を見て、②でオオナガキクイムシ属とナガキクイムシ属を見分けることができるのですが、これは♂なので見分けられません。



これは上翅斜面部の写真です。中心にいるのはダニですが、半年余り冷凍庫に入れていたので、これも死んでしまっています。斜面部は全体に凹んで、側縁は竜骨状です。さらに、後縁はえぐられていますが、それほど深くえぐられているわけでもありません。こんなところが③、④、⑤の内容です。



これはその部分を拡大したものです。



この写真は前胸背の拡大ですが、後縁近くに中心線があり、その周りにかすかに点刻群が見られます。♀だともっとはっきりしているのですが、♂だとこんなものみたいです。



ちょっと拡大してみました。



さらに拡大して見ました。穴が開いているとばかり思ったのですが、ほとんどみな塞がっています。雄では退化して本来の役目を果たしていないのかもしれません。

これで、一応、検索項目をすべて確認したので、たぶん、ヨシブエナガキクイムシ♂で間違いないのではと思っています。ついでに撮った写真も載せておきます。



これは顔です。悪さをする割に意外に可愛い顔をしていますね。



これはちょっと横からです。



腹部は後脚基節で隠れていたので、少し斜めにして撮りました。先ほどの論文によれば、腹部腹板は第3節から見えるようなので、そのように番号を振りました。

本当は胞子貯蔵器官を拡大して撮るのが目的だったのですが、♀ではなく♂だったので、貯蔵器官そのものははっきりとは写りませんでした。胞子貯蔵器官の構造や貯蔵される菌類の種類については文献がいくつか見つかったので、また、今度出すことにします。

追記2018/12/30:立西さんから、「『ぼくらの昆虫採集』という本の中で,養老孟司さんが電子顕微鏡を通して撮影したカシノナガキクイムシのメスの胞子貯蔵器官の写真を載せていました。本文の言葉を引用すると,まるでパンチで開けたような綺麗な穴だったので驚きました。」というコメントをいただきました。いくつかの論文に走査電顕写真が載っていました。綺麗に写っていて、まるで機械の一部みたいでした。光顕写真はやはり分解能の上では電顕にははるかに負けてしまいます。でも、今度♀を見つけたら、頑張って撮ってみます。コメント、どうも有難うございました
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No title

「ぼくらの昆虫採集」という本の中で,養老孟司さんが電子顕微鏡を通して撮影したカシノナガキクイムシのメスの胞子貯蔵器官の写真を載せていました。本文の言葉を引用すると,まるでパンチで開けたような綺麗な穴だったので驚きました。そちらでもメスが採集されるといいですね。

No title

立西さん、こんにちは。コメント有難うございます。

養老さんの本にも出ているのですね。いくつかの論文に走査電顕写真が載っていました。綺麗に写っていて、まるで機械の一部みたいでした。光顕写真はやはり分解能の上では電顕にははるかに負けてしまいます。でも、カラーで撮れるから、本物っぽいところがいいところかな。そういえば、胞子貯蔵器官の構造や貯蔵される菌類の種類について紹介するつもりだと書いていたのに、忘れてしまっていました。
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