虫を調べる ヒラフシアリ(再々)
先日、マンションの廊下で小さな羽アリを見つけました。
上は翅の生えているもの、下は翅が脱落したもので、たぶん、同じ種だろうと思っています。両方とも採集したつもりだったのですが、毒瓶を見てみると上の有翅アリだけが入っていました。一応、検索をしてみようと思ってやってみたのですが、腹部末端が円形でなくて楕円形なのであれっと思いました。たぶん、カタアリ亜科。さらに、検索を進めると、結局、ヒラフシアリになりました。名前は聞いたことがあったので過去の記録を見てみると、実は過去に2度も検索をしてブログに出していました(こちらとこちら)。でも、折角、顕微鏡写真を撮ったし、過去2回は翅が脱落した個体だったのですが、今回は有翅アリだったので、確認のためにもう一度出しておくことにしました。
検索にはいつものように、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いました。この図鑑の検索表は基本的に働きアリ用なので、そのままでは♀有翅アリには使えません。というのは、羽アリでは飛翔筋が発達するために中胸が発達し、それにより後胸や前伸腹節の形も変わってしまうからです。この検索表でいえば、赤字で書いた⑤がそれになります。そこで、その部分を除いて検索をしました。一応、今回も写真で簡単に見ていきたいと思います。
体長は3.3mm。かなり小さな羽アリです。①も⑥もOKでしょう。
これは背側から写したものです。
頭部の写真です。①は問題ないでしょう。大顎の歯がずいぶん細かいですね。
②と④はOKでしょう。腹柄節に腹部が覆いかぶさっているというのはこの写真でよく分かりますね。
②、⑤、⑥も大丈夫だと思います。腹部第5節が辛うじて見えています。
腹部を腹側から見た写真です。tは背板、sは腹板を意味します。第1節は背板と腹板に分かれています。
これは腹部末端の写真です。先端に穴が開いていますが、形は楕円形です。ヤマアリ亜科はここが円形になっています。ということで、赤字で表した部分を除けば、ほぼ、書いてある通りだと思われます。従って、ヒラフシアリということになります。
以前検索したときは翅の脱落した個体だったのですが、今回は翅がついていたので、翅脈を見てみることにしました。毒瓶に入れておいたので、翅がクシャクシャになっていたのですが、何とか伸ばして撮りました。翅脈はいつものように次の論文に載っている名称を用いました。
K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)
いつもの翅脈と比べるとM脈辺りがちょっと変です。この論文では羽アリの翅脈をいろいろと分類しているのですが、それによればこれはIIIb型だと思われます。この型を持つのは、カタアリ亜科とフタフシアリ亜科が多いのですが、それも合っていました。
最後は前伸腹節気門で、これは円形でした。
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