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虫を調べる ♀有翅オオアリ属2

最近、羽アリの勉強をしています。というのは、マンションの廊下にやたらいっぱいいるからです。せめて、名前ぐらいは分からないかと思って調べ始めました。最初、♂有翅アリを調べてオオアリ属らしいというところまでたどり着きました。次に、♀有翅アリを調べてクサオオアリかもしれないというところまで到達しました。前者は「日本産アリ類画像データベース」に載っている♂アリの検索表を用いましたが、残念なことに属までの検索表しか載っていません。後者は「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いましたが、これは働きアリ用です。いずれももやもや感が残る結果になり、「名前ぐらい」という言葉の重みを実感しています。

さて、今回は別の♀有翅アリです。勉強中なので、間違っているところも多いと思いますので、そのつもりで見ていただければ幸いです。



今回は25日採集したこの♀有翅アリです。有翅アリはみな似ていて、私は見ただけではほとんど何も分かりません。それで、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いて、属と種の検索をしてみました。今のところ、ヤマアリ亜科オオアリ属のウメマツオオアリの可能性が高いのですが、とりあえず、オオアリ属に至る過程を見ていきたいと思います。



これは前回と同じ検索表の抜粋です。この検索表は働きアリに関するものなので、赤字のところは判断できない部分です。それで、⑦aと⑦bの両方を進む過程を書いてみました。青字はこの個体の特徴とは異なる記述です。従って、⑦bに進むと、いずれ青字の項目に至るので、こちらの道は違うと判断しました。消去法にはなりますが、よって、オオアリ属ということになります。いつものようにそれらを写真で確かめていきたいと思います。



まずは全体像です。体長は7.6mmでした。頭部が斜め下を向いているので、折れ線を使って体長を測りました。この写真では①の腹柄節が1節であることと、④の胸部の突起などがないことを見ます。



次は腹部末端の写真です。①、②、③はいずれもOKだと思われます。



次は頭部です。①の頭盾前縁側方には特に突起などは見当たりません。また、大腮は三角形です。これで⑤もOKです。



次は腹部背板の写真です。第1節と第2節の間に特にくびれはありません。検索表の②にある、「腹部第1節背板と腹板が融合していない」という項目については写真を撮り忘れました。たぶん、大丈夫でしょう。



腹柄節は前伸腹節(向かって左)と腹部(向かって右)の間の節を指し、丘部は飛び出している部分を指しています。いずれも書いてある通りだと思います。



触角は12節です。

これで①から⑥までの項目を一部を除いてすべて確かめたことになります。次はいよいよ⑦についてです。すっかり忘れていたのですが、有翅アリの中胸気門については以前調べたことがありました。それによると、女王アリの中胸気門は中胸側板と後胸側板の溝の間にあり、クチクラの表面から陥入した状態にあるようです。先日調べた♀有翅オオアリ属の場合は、その位置がはっきり分かりました。この個体はその位置に膨らみはあるのですが、穴はよく分かりませんでした。いずれにしても、翅が生えて、中胸が大きく変形した有翅アリでは⑦の項目は使えないと思われます。

それで、両方の道を進むことになるのですが、まず、⑦bの道を進んでみます。⑧については次の写真を見てください。



前伸腹節気門は矢印で示した部分ですが、少なくとも丸くはありません。従って、⑧bは違います。⑧aに関しては縦に長い楕円形というよりは横に長いスリット状のように見えますが、とりあえずこちらを進んでみます。次の⑨は色に関するものなので、OKでしょう。次の⑩については、ヤマアリ属は腹部背板が細かい軟毛で覆われ、その毛の密度に関する内容です。この個体では3つ上の腹部の写真でも分かるように軟毛はほとんど生えていません。それで、⑩で行き詰ってしまいます。従って、この個体はヤマアリ属などではなく、オオアリ属だと推定されます。

というまどろっこしい方法を使ったのですが、とりあえずオオアリ属らしいことは分かりました。たぶん、前伸腹節気門の形と腹部の密な軟毛の有無でオオアリ属であることが分かるのではないかと思うのですが、もう少し、いろいろな個体で当たってみます。種の検索は次回に回します。
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