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虫を調べる クロモンナガレアブ?

先日(7/14)、家の近くの道路わきの茂みで変わったハエを見つけました。



翅に模様があるので、ひょっとして名前が分かるかもと思って採集しました。以前の記録を見てみると、こんな格好のハエをシギアブ科としていました。それで、そうブログに書いていたら、フトツリアブさんから、こんな模様のナガレアブ科もあると教えていただき、それで一度調べてみることにしました。

まずは検索です。いつものように、「原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表で調べてみました。その結果、教えていただいた通り、ナガレアブ科らしいことが分かりました。



採集したハエは100均で買ったノンアセトンタイプのエナメルリムーバーを入れたニューPPサンプル管に入れておきました。こうすると、エナメルリムーバーの中の水分がハエを乾燥から防ぎ、何日も入れておいてから取り出してもそのままの形で観察することができます。と、思っていたのですが、最近の暑さのためか、観察してしばらくしたら乾燥し始めてしまいました。ともかく、体長を測ってみると、6.2mmくらいでした。



無額嚢類から始めてナガレアブ科であることを確かめるにはこの7個の項目を調べればよいのです。これをいつものように写真で調べていきたいと思います。今回はだいだい検索順に見ていきます。



まずは頭部です。額嚢溝は左右の触角を取り囲むように掘られた溝ですが、これにはありません。この個体は最終的にAsuragina属だろうと思っているのですが、この属では♂は合眼的です。この写真の個体は左右の複眼が離れているので、♀ということになります。これで①と③はOKです。この間のミズアブのように複眼の中央に帯があります。



次は跗節先端の写真です。爪の間に側爪板があり、その間には同じような形の爪間板があります。これで②もOKです。



これは背側から写したものです。腹部はもうだいぶ乾燥が始まっています。③はまずOKですね。



基覆弁は胸部についている覆弁ですが、この写真ではどれがどれだかよくは分かりません。これはちょっと保留です。



次は翅脈です。翅脈の名称はこの間のミズアブの翅脈を参考にしながらつけてみました。④はまず大丈夫でしょう。⑦はR1とR2+3が前縁脈上でほぼ一点で交わっています。それで、r1室が閉じるというのでまさにその通りでした。この性質はナガレアブ科に特有かもしれません。



前縁脈はCと書いた脈ですが、矢印のところで急に細くなっていますが、特に途切れることがなく、後縁に続いています。⑤はこのことだと思います。



小盾板の下には下小盾板があります。



最後は触角です。この⑦の文章は誤解を生みやすいのですが、鞭節が細長いというわけではなく、「鞭節は」の後に「、」を入れ、「細長く関節構造を欠く触角刺毛を生じる」と読むと意味が通じます。これは環状構造を持つ触角筆突起のあるアブ科などを除外する項目です。ということで、ナガレアブ科になりました。たぶん、下小盾板があることと、R1脈とR2+3脈がほぼ一点で交わるという2点が重要だと思われます。

「日本昆虫目録第8巻」によると、日本産ナガレアブ科にはAsuragina、Atherix、Atrichops、Suraginaの4属9種が記載されています。次にその属を調べてみようと思いました。

A. Nagatomi and B. R. Stickenberg, "Insecta: Diptera, Athericidae", in "Freshwater Invertebrates of the Malaysian Region", eds. C. M. Yule and Y. H. Sen, Akademi Sains Malaysia (2004). (ここからダウンロードできます)

この本の章の中にAsuragina、Atrichops、Suraginaの3属についての検索表が載っていました。さらに、「日本産水生昆虫」のナガレアブ科の章には「翅は全体黒く染まるが、2つの白帯をもつ。後肢基節先端は尖る。これはナガレアブ属Atherixを除いた3属の共通特徴である。」と書かれているので、Atherixは除いても大丈夫なのではと思いました。それで、残り3属で検索をしてみると、Asuragina属になりました。これも写真で見ていきたいと思います。



この2項目を調べればよいのですが、⑨は意外に大変です。



まず、⑧はこの写真のように1本の刺があるだけでした。それで、まず、Suragina属を除外します。



次は、「左右の触角が離れ複眼の縁に非常に近寄る」というのはかなり微妙です。左右の触角が接近しているとも言えるし、離れているとも言えそうです。その次の♀の前額については頭頂に向かってほぼ平行になっていました。さらに、前額にある黒い紋はかなり特徴的です。ということで、⑨のうち、ここに書いた項目はだいたいはOKみたいです。



側顔というのは矢印で示した部分だと思うのですが、直線的みたいな感じです。先端は白矢印で示したように角になっています。というので、これもOKだと思われます。



前胸側板はどれなのか分かりませんが、特に突起はなさそうです。ついでに後基節の先端が尖っているのも見えます。



この写真を撮る頃にはかなり乾燥が進み、複眼もこんな姿になってしまいました。でも、後頭が膨れているのは白矢印の部分が前から見えることで確かめられます。ということで、この項目もOKです。

ということで、たぶん、Asuragina属でよいのではないかと思います。「日本昆虫目録第8巻」によると、この属にはA.suragina caerulescens クロモンナガレアブ1種だけが載っているので、この種ではないかと思われます。この属については次の論文が記載論文になっています。

D. Yang and A. Nagatomi, "Asuragina, a New Genus of Athericidae (Insecta: Diptera)", Proc. Japan. Soc. Syst. Zool. 48, 54 (1992). (ここからダウンロードできます)

この論文の中にも、「日本産水生昆虫」にもクロモンナガレアブの頭部の絵が載っているのですが、例の黒い紋が描かれています。たぶん、大丈夫でしょう。



ついでに腹部末端も撮っておきました。何が何だか分かりませんが・・・。
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