廊下のむし探検 ヤマトスジグロシロチョウ(雑談)
最近はどうも雑談が多くなっています。「虫を調べる」というタイトルで、検索をしたり、虫の各部を調べてみたりするために顕微鏡写真も撮りためているのですが、まとめるのが面倒でつい後回しになっています。
今日から市役所での自然展が開かれます。先日、「虫の眼の不思議」というタイトルで展示パネルを作り、担当の方に持っていっていただいたのですが、ついでに、「手作り図鑑」も展示できればと思ってばたばたと準備しています。結局、全部はほとんど間に合わないことが分かったので、とりあえず、できた分だけでも展示できればと思って準備しています。現在のところ、III巻のカメムシ目が終わり、次は、チョウとシャクガ科などをまとめたVII-I巻の仕上げをしています。もう、学名は全部付して、付録も準備したので、今は各所にコラムを入れる段階になっています。キタキチョウについて少し書いて、次はヤマトスジグロシロチョウについて書き始めたのですが、ここでハタと止まってしまいました。昔、チョウの写真を撮っていた頃には、エゾスジグロシロチョウと呼んでいたのですが、いつの間にかヤマトスジグロシロチョウという名前に代わったので、そのいきさつをちょっと書いておこうと思ったのですけど・・・。
重要な文献が手に入らないので、手元にある図鑑類とフリーでダウンロードできる論文だけが頼りなのですが、学名も和名もこの2、30年の間にいろいろと変化し、まだ、混乱が続いているような印象です。あまりにごちゃごちゃしているので、ちょっと表の形にまとめてみました。
本州と道南との境もあまり明確ではなく、山形あたりとしている論文もありますが、とりあえず、このように書いておきます。私が以前図鑑として使っていたのは上から2番目の「日本のチョウ」(学研、1990、初版は1981)でした。この図鑑では本州から北海道までエゾスジグロシロチョウ Pieris napiの1種だけになっていました。でも、一方、同じ年に出された「原色蝶類検索図鑑」(北隆館、1990)ではnapiは本州亜種 nesis と北海道亜種 pseudonapiに分けられ、しかも属名まで違っていました。さらに、もうちょっと前の藤岡氏の「図鑑日本の蝶」第2版(ニュー・サイエンス社、1981)では同じように亜種なのですが、亜種名が違っています(japonicaとnesis)。上から4番目の図鑑が手元にないので、他の論文に書いてある内容から判断すると、この図鑑では北海道産がさらに道南と道東で別種として区別されているようです。上から4番目の「日本産蝶類標準図鑑」では、北海道道東産はPieris dulcineaの北海道亜種 pseudonapi、本州山形県以南ではPieris nesis japonica、北海道道南産はPieris nesisで、たぶん、基亜種nesis、山形以北の諸県はその中間的な性質をもつと書かれていました。(追記2018/07/23:図書館で「日本産蝶類標準図鑑」を見てきました。それに従って、本文、および、上の表を書き換えました)
その後、松田氏、黒田氏、Tadokoro氏の論文では分類について考察ないしは実験をしているのですが、扱われ方は和名も含めてまちまちです。従って、Fujimori氏、Kitahara氏の論文でもさまざまな名前で書かれています。誠文堂新光社の「フィールドガイド日本のチョウ」(2012)は上から7番目になるのですが、本州産と道南産はPieris nesis ヤマト、道東産はPieris dulcinea エゾの全部で2種に分けられ、分布図も出ています。これらを決める根拠としては、翅の紋、発香鱗の形、交尾器、交配実験、DNAによる解析などですが、詳細は見てもよく分かりません。実際にはこれにスジグロシロウチョウ meleteも加わるので話はもっとややこしくなっています。さらには、Pieris japonica japonicaは植物のアセビだったりして・・・。関係ないか。とりあえず、「フィールドガイド日本のチョウ」ぐらいがよさそうな感じですが、「日本昆虫目録」(2013)ではどうなっているのかな。
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