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虫を調べる ハラアカアブヒメバチ(続き)

先日に引き続いてヒメバチの検索をしてみます。



対象とするのはこんな派手なハチで、外観からはヒメバチ科ヒラタアブヒメバチ亜科のハラアカアブヒメバチあたりであろうと思われます。でも、こういう分かった種で検索の練習をしておくことが大事かなと思って頑張ってやってみました。前回は亜科まで検索を進めたので、今回はその先の属と種の検索をしてみます。

属の検索表にはいつもお世話になっている"Information station of Parasitoid wasps"の属の検索表を使わせていただくことにしました。それを使うとDiplazon属になるのですが、検索の過程を示すと以下のようになります。



この3項目を調べることでDiplazon属であることが分かります。これをいつものように写真で確かめていきたいと思います。一部を除いてだいたいは検索順に見ていきます。



まず、最初は⑫の最初の項で、notaulusに関してです。notaulusについては以前、セイボウで調べたことがありました。そのときの知識によると、notaulusは体に沿った間接飛翔筋の縦走筋と背腹筋を分ける甲の境目(分隔甲)を表していて、前胸背板に縦に走る1対の溝として現れます。この個体では溝というほどは明確ではないのですが、縦の凹みが見えるので、たぶん、それがnotaulusだと思われます。明瞭といえば明瞭だと言えます。



次は翅脈で、黒矢印の部分にあるはずの鏡胞という翅室がありません。それで、この項目はOKです。



次は後体節(ハチでは胸部の端にある前伸腹節が腹部の一部となっているので、見かけの腹部をこんな呼び方をします)の気門に関してです。第3背板の端に矢印を示したように気門が見えます。これでこの項目もOKです。



顔面には艶がありません。もっともこの撮影は艶が出ないように撮っているのですけど・・・。また、垂直な窪みもありません。さらに複眼の内縁に白色の斑紋があります。これで、たぶん、⑬はOKで、この個体は♀だと思われます。



次は頭盾の先端を表したものです。矢印で示したように前縁に少し凹みが見られます。もう少し拡大してみます。



これを見ると、頭盾の先端中央は凹んでいて、中央に切れ込みのようなものが見られます。これでこの項目もOKでしょう。



次は前伸腹節の隆起線に関してです。これまでの検索の途中で隆起線があると言ったり、ないと言ったりするので複雑ですが、「明瞭な隆起線を欠く」かと言えば、この写真のように斜め下向きに明瞭な隆起線が見えます。ただし、横向きの隆起線はかすかに見える程度です。この後者の方を指しているのかなと思いました。ちょっと?マークです。



次は後脛節に白色の帯を持つことで、これは明確です。ということで、前伸腹節の隆起線のところは怪しかったのですが、それ以外はたぶん大丈夫で、無事にハラアカアブヒメバチの属するDiplazon属になりました。

"Information station of Parasitoid wasps"と「日本産ヒメバチ目録」には種のリストが載っているのですが、日本産Diplazon属には8種が記録されています。このうち、本州には6種。まだまだ先が長いかなと思っていたら、Diplazon属の種への検索表が見つかりました。

T. Uchida, "Beitraege zur Kenntnis der Diplazoninen-Fauna Japans und seiner Umgegenden(Hymenoptera, Ichneumonidae)", J. Fac. Agri. Hokkaido 50, 225 (1957). (ここからダウンロードできます)

ちょっと古い論文ですが、シノニムリストを調べてみると、この中には以降に記録されたryukyuensisを除いた7種すべてが含まれていました。ただ、ドイツ語です。普通のドイツ語だと辞書で調べれば何とか読めるのですが、専門用語が出てくるとどうしようもありません。諦めるかなと思っていたのですが、そんなときに「内田登一博士の論文で使用されたドイツ語形態用語」というサイトを見つけました。先ほどの"Information station of Parasitoid wasps"のヒメバチ科の中のページです。やはりドイツ語の論文を読むのにだいぶ苦労をされたのだろうなと思ったのですが、有難く使わせていただくことにしました。それで、Diplazon属の種の検索で必要なところだけを抜き出すと次のようになります。


この2項目を調べることで、ハラアカアブヒメバチ D. laetatoriusになります。これも写真で見ていきます。



⑮はまたnotaulusについてです。検索の項目ではnotaulusが"deutlich angedeutet"と書かれています。この"andeuten"は示唆する、暗示するという意味で、英語では"be indicated"となっています。とりあえず、「暗示する」と訳したのですが、ここではnotaulusがあることが暗示するような凹みが見られるというような意味だと思います。いずれにしても明確な溝ということではないということかなと思いました。⑯は胸にも顔面にも白い斑紋があり、OKです。



⑮は後体節(腹部と書いたのですが、後体節の方がよかったですね)第1から第4節には矢印で示すように強い横溝があります。⑯については、第4背板は赤く色づいていないのですが、第1から第4背板前半にかけては強い点刻が見られます。色の範囲については個体差があるのかもしれません。



最後は脚の色に関してで、書かれている通りだと思いました。特に後脛節の白い帯はよく目立ちます。ということで、すべての項目をチェックしたので、たぶん、ハラアカアブヒメバチ♀で合っているのではと思っています。

今回は後体節第1節が平板状の分かりやすいヒメバチだったのですが、今後少しずつ検索の練習をしていき、ヒメバチ科にも慣れていきたいと思っています。
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