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植物観察会で見た虫えいと菌えい

淀川、木津川、桂川の三川合流域で5月5日に開かれた植物観察会に参加しました。私はもっぱら虫を撮っていたのですが、その中でエノキの虫こぶとセイヨウカラシナの変形について話題にのぼりました。それで、少し調べてみました。



まずはエノキにこんな虫こぶが付いていました。観察会では虫こぶですという説明で終わってしまったのですが、かなり大きな虫こぶだったのでちょっと気になって調べてみました。



まずは虫こぶの拡大です。高さが数ミリはありそうな巨大なものです。これはエノキハトガリタマフシと呼ばれている虫こぶで、エノキトガリタマバエが作るそうです。これについては次の論文に詳しく載っていました。

J. Yukawa and K. Tsuda, "A New Gall Midge (Diptera, Cecidomyiidae) Causing Conical Leaf Galls on Celtis (Ulmaceae) in Japan", Kontyu, Tokyo 55, 123 (1987). (ここからダウンロードできます)

この論文はエノキトガリタマバエ Celticecis japonoicaの記載論文になっていて、この種の特徴から生活史、このタマバエに対する寄生種などの記述があり、大変興味深い論文でした。まず、タマバエの♂は春早く地面近くを飛び回り♀を探します。♀は低いエノキの葉や幹に止まっていることが多いのですが、これを見つけて交尾します。その後、♀はエノキの芽に卵を産みます。そこから孵化した1齢幼虫は葉に虫こぶを作り始め、その中に入り込みます。虫こぶの中は空洞になっていて、その中で脱皮を繰り返し3齢幼虫にまで成長します。6月を過ぎると虫こぶは葉からはずれ、下に落ちます。そしてこのまま3齢幼虫で越冬します。翌年2月頃になると虫こぶ内部で蛹になり、3月が過ぎるころになると虫こぶを破り外に出てきます。この様子は論文ではグラフとして描かれていますが、その概略を描くと次のようになります。


実際には、1か月ほどの時間の幅があるのですが、それを簡単のため縦の破線で描いてあります。緑の部分が植物体の上にある状態を示しています。このグラフに虫こぶの大きさの変化を示すグラフを時期を合わせて重ねてみました。虫こぶは1齢幼虫の場合は2mm以下と小さいのですが、落下時期になると高さが6mm前後にもなっています。

このような虫こぶをつくる意義については次の論文に載っていました。

徳田誠、「虫こぶ・虫えいー昆虫がつくる植物の奇形」、農業および園芸 88, 636 (2013). (ここからダウンロードできます)

要は、1)養分の効率的な摂取、2)天敵からの回避、3)乾燥などの環境変化の緩和の3点だそうです。でも、こんな虫こぶの中にいてもやはり天敵はいるようです。Yukawaらの論文によると、落下した虫こぶを飼育して調べてみると、オナガコバチ科やナガコバチ科の成虫が出てきたそうです。これらの幼虫はタマバエの2齢、3齢幼虫を攻撃するようです。このような外部寄生だけではなく、タマバエの体内に寄生する内部寄生も見られたそうで、虫こぶの中といえども安全ではないようです。

このような虫こぶがどうやってできるかについては意外にまだ分かってないようです。摂食刺激や産卵刺激で虫こぶが形成されるので、一般には摂食や産卵の時に注入される化学物質がもとになって作られると考えられています。一部の虫こぶ形成昆虫には植物ホルモンを合成する能力を持っているそうです。



次はアブラナ科に見られるこんな変形についてです。観察会の時に質問を受けたので、アブラムシのせいかもと答えたのですが、この写真ではアブラムシの姿は見られませんね。アブラナ科は野菜に多く使われているので、この現象は古くから知られていました。原因としては白さび菌に感染して、このような変形を起こしているそうです。白さび菌はAlbugo macrosporaという種で、分類的には卵菌門(Oomycota)―卵菌綱(Oomycetes)―ツユカビ目(Peronosporales)―シロサビキン科(Albuginceae)―シロサビキン属(Albugo)となっています。卵菌というのは有性生殖時に生卵器および造精器をつくる菌という意味のようです。

これについて総合的に書かれた文献は見つかりませんでしたが、次の論文に少し載っていました。

野津幹雄、石原義光、「カラシナ白さび病肥大組織の電子顕微鏡による観察」、島根大農学部研究報告 10, 74 (1976).(ここからダウンロードできます)
今村有希ほか、「コマツナ白さび病菌完全世代の確認」、関東東山病害虫研究会報 60, 41 (2013).(ここからダウンロードできます)

白さび菌による病変は葉、茎、花柄に現れますが、特に花柄に出た場合が顕著で、茎が肥大し、湾曲し、花弁が緑色になったり肥大化することがあるそうです。このように菌による植物体が変形することを菌えいと呼ぶそうです。
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