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虫を調べる リンゴキジラミ属(挫折)

この間からキジラミの仲間を調べているのですが、種を決める段階になってどうにもうまくいかなくなりました。いつまで抱えていても仕方がないので、ここで一度出しておこうかなと思います。



対象としているのはこんな虫です。4月10日にマンションの渡り廊下で採集しました。チャック式ポリ袋に入れておいたら、つぶれてしまったのですが、とりあえず調べてみようと思って、先日、属までの検索をしました。その結果、キジラミ科のリンゴキジラミ属になりました。私は何となくベニウラジロノキキジラミで色の薄い個体ではと思っていたのですが、その後、通りすがりさんからヤツデキジラミの越冬世代ではというヒントをいただきました。種の検索をしてみると、いろいろ疑問になる点が出てきて、それぞれを留保しながら検索していったら、結局、6種が残ってしまいました。そのうちのどれかを決めようとしたのですが、実はどれも問題点があって決まりませんでした。今はそんな状況です。

とりあえず、検索の過程で調べたものを写真で見ていきたいと思います。検索表には、「絵解きで調べる昆虫2」に載っている検索表を用いました。リンゴキジラミ属までは前回出したので、その続きです。





嫌になるほどいっぱいあるでしょう。とりあえず、ヤツデキジラミに向かって進もうと思うのですが(黒字の部分)、途中、疑問になったところで別の選択肢を選ぶとこうなるというのを青字で示してあります。その部分はその都度触れることにします。また、属の検索表の中で問題になったところ(⑫)も加えておきました。


まずは翅の色に関する部分ですが、薄い色はついているものの褐色というほどではないと思って、⑲~㉒はいずれも翅に色がついていなくて、斑紋もないという方を選びました。なお、翅脈と翅室の名称は先ほどの本によっています。



次はこの間も出した触角の長さです。顕微鏡の倍率を固定したまま2か所を撮影しました。触角の長さは頭幅の1.53倍なので、㉓も㉔もOKだと思われます。



これは頭部を撮ったものですが、先端に突き出している部分が額錐です。これの形が問題になります。、㉔、㉝、㉟の項目はいずれも大丈夫だと思われます。




次は翅脈に関するものです。㉕は大丈夫だと思ったのですが、翅端より後縁部分にかけて薄茶色の部分が帯状と見えなくもないので、そちらを採用してマエジロキジラミを残しました。㉖はCu1aとCu1bのなす角ですが、実際に測ってみると77度になりました。直角に近いともいえるし、鋭角だとも取れるので、これも留保しました。ヤツデキジラミに進むには直角か鈍角を選ぶことになります。また、鋭角を選ぶとサツマキジラミになります。こちらも候補として残しておきます。㉗と㉞は共にOKだと思われます。㉚aは黒矢印で示した部分に黒っぽい斑紋があるかどうかです。あると言えばあるし、ないと言えばないような気もするしというので、ないという方も残しておきました。こちらを残すと、ミヤマヤナギキジラミやコリヤナギキジラミなどが残ります。

最後の㊱は迷いました。cu1室のどれを幅としてどれを長さとするのか分からなかったからです。文献も見たのですが、絵で説明してある文献は見つかりませんでした。それで、文献に出ている図を使っていろいろな場所を折れ線近似をして測ってみたのですが、もっとも単純にこの写真のような場所を測ると一番文献値に近いことが分かりました。これで測ると長さは幅の1.3倍になり、対抗する選択肢が1.6-1.7倍なので、㊱もまあ大丈夫かなというところです。



全体の体色を写した写真が一番最初の生態写真しかなかったので、頭部と胸部を写した写真を載せておきました。これは確かに鮮紅色ではないので、㉘bを選ぶのが妥当だと思うのですが、本に出ている額錐と触角先端の剛毛の図がこの個体とあまりによく似ていたので、ついそちらに惹かれ、ひょっとしたら薄い色の個体もあるかもと思って、先日はベニウラジロノキキジラミを選んでしまいました。ここではベニウラジロノキキジラミも候補に残しておきたいと思います。



これは後脚脛節基部の距棘です。これは大丈夫でしょう。



それから触角先端の剛毛です。短い方は長い方の2/3以上なのでこれも大丈夫そうです。



前翅長は2.5mmなので㉜もまぁ大丈夫でしょう。ついでに後で用いる翅端までの全長も見積もってみました。

ということで、いくつか候補は出てきたのですが、とりあえず検索表の上ではヤツデキジラミに到達しました。この後、額錐の写真が載っている本(次に示す[1, 2]の文献)があったので、比較してみるとかなり様相が違います。それで迷い始めました。それも含めて、ここまで出てきた候補を比較してみたいと思います。



候補に挙がった6種です。字が小さいので拡大してみてください。一番右は今回の個体について計測した値です。「日本昆虫目録第4巻」によると、マエジロキジラミはトドキジラミの別称となっているので、一緒にしておきました。表の中で〇〇×などの記号は三つの文献[1~3]に載っていたかどうかを示しています。三つの文献というのは次の三つです。

[1] 三枝豊平ほか、「九州でよく見られるウンカ・ヨコバイ・キジラミ類図鑑」(櫂歌書房、2013).
[2] 林成多、宮武頼夫「山陰地方のキジラミ図鑑」(ホシザキグリーン財団研究報告特別号第6号、2012).
[3] H. Inoue, "Descriptions of two new and one little known species of the genus Cacopsylla (Hemiptera: Psyllidae) on Sorbus japonica (Rosaceae) and an observation of their biology", Entomol. Sci. 7, 399 (2004). 

これらを眺めると、分布の上からミヤマヤナギははずしてよさそうです。全長には分布があるのであまりあてにはなりません。むしろ触角長などは使えるかもしれません。触角が圧倒的に短いサツマは除外してもよさそうです。額錐のかなり長いヤツデも除外してもよさそうな気がしました。後は説明を読んで、腹部が緑色のマエジロは除外しました。ベニウラジロノキも[3]が記載論文なので読んでみると、どうも違うような気がします。最後のコリヤナギも頭頂の模様が違います。こんな感じで、どれも当てはまりません。ここで挫折です。



あまり大した写真は残っていないのですが、一応、出しておきます。これは触角を撮ったものです。



うまく写らなかったのですが、一応、後翅です。

ということで、またまた挫折してしまいました。キクイムシで挫折して、コガネコバチで挫折して・・・。どれもこれも挫折で困ってしまいます。一度、種がはっきり分かった個体で練習をしないといけませんね。
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No title

額錐の形は重要な要素なので、そこが違うなら別種と考えて良い筈です。
それと30aも「ある」です。
体色に関しては、越冬世代なので、検索表の体色に当てはまらない可能性が大きいです。

やっぱり小型の同翅亜目は難しいですね。

No title

お早うございます。キジラミ、だいぶ苦労したのですが、結局、挫折でした。しばらくはキジラミを見たくない気分です。㉚aはやはり「ある」とした方がよさそうですか。疑い始めるとどの項目も疑わしく見えてしまいます。「ある」と言っていただけると安心します。体色があてにならないとすると、検索をもう一度、見直す必要がありますね。やはり、もう少し数をあたるか、ホストで見つけるかしないとなかなか進まないみたいです。コメント、どうも有難うございました。
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