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虫を調べる キクイムシ(その二)

今回は前回とは別種のキクイムシを調べてみました。



対象としたのはこんなキクイムシで1月18日にマンションの廊下で見つけたものです。触角の先端が丸いところと、前胸背板に細かな突起があるところが気になります。検索表には以前と同じ、次の論文の検索表を用いました。

A. Nobuchi, "Studies of Scolytidae IX (Coleoptera) Key to the Subfamilies, Tribes and Genera of Japan", Bull. Gov. For. Exp. Sta. 238, 149 (1971). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索をしてみると、前回はHylesininae亜科になったのですが、今回はIpinae亜科になりました。その後、族の検索ではCryphalini、さらに、属の検索ではCosmoderesになりました。それぞれの検索過程が短かったので、一気に調べていきたいと思います。



全部でこの6項目を調べればよいのですが、⑤がやや怪しかったので、もう一つの選択肢も書いておきました。これを写真で調べていきたいと思います。いつものように検索の順ではなくて、部位別に見ていきます。



まずは全体像です。体長は2.1mmでした。左側の丸い部分全体が前胸背板になります。この写真ではその前胸背板の基半部(黒矢印)の部分が凹んでいないこと、黄矢印の部分に孔の空いていないことを見ます。



今度は横からです。頭部が下側についているので、上から見ると頭部が見えません。これが③です。②は側縁の縁取りがないのですが、どちらでもよいみたいです。



次は頭部の写真です。前胸背板が凸凹しているのはよく分かります。それで、③はたぶんOKです。④は複眼が二分するかどうかですが、触角が邪魔をしてよくは分かりません。ただ、おそらく二分はしてないと思われます。複眼の中ほどに触角柄節に沿ってちょっと切目のようなものが見えますが・・・。また、触角の付け根で複眼が少しえぐられていますが、深くえぐられてはいないので、④はOKにしました。



④と⑥はこの写真で分かると思います。④では球桿部に溝か刺毛列があるように書かれているのですが、⑥には「欠く」と書かれているので大丈夫だと思います。



maxillary lobesがどれかいつもどれか分からないのですが、論文に出ている絵を参考にして今日は各部に名称を付けてみました。たぶん、小顎に出ている毛のことを言っているのだろうと思うのですが、よくは分かりません。たぶん、解剖が必要?



これは前胸背板と上翅の基部を写したものです。③については、この間調べたキクイムシではこれとは違う選択肢を選んだのですが、今回は特に異常が見られません。⑤aはやや怪しいとして⑤bの選択肢も書いたのですが、ここで見る大きな起伏についてはたぶん大丈夫だと思います。変わった構造ですね。黄矢印の部分が頂点だと思うのですが、それほど明確な頂点ではなさそうです。



⑤aで迷ったのは上翅に生えているという「鱗状」の毛でした。



拡大してみました。鱗状とは思えないのですが、普通の毛とはちょっと違っています。⑤aの最初の項目があっていそうなので、たぶん、大丈夫だと思いますが・・・。



次は前脚脛節についてです。この背側に歯状の突起が並んでいるのですが、上からの照明で撮ると綺麗に写るのですが、毛が邪魔で突起についてはよく分かりません。



それで、下側に白くて光を拡散する板を置いて透過光を増すように撮ってみました。突起列がよく見えるようになりました。①はたぶんOKでしょう。②については8本程度の突起列が見えています。また、先端の突起(黒矢印②)はまっすぐ向いているのでOKでしょう。これですべての項目がチェックできたので、たぶん、Cosmoderes属でよいのではと思っています。

ついでに撮った写真も載せておきます。



前脚脛節と中脚脛節が一緒に撮れたので載せておきます。中脚脛節には突起列が見えませんね。



これは腹側からの写真です。



それに口のあたりの拡大です。

次の論文によると、日本産のCosmoderes属にはC. consobrinus ホソコキクイムシとC. monilicollis  ツルノコキクイムシの2種が載っています。

後藤秀章、「日本産キクイムシ類分類学研究の歴史と種のリスト」、日林誌 91, 479 (2009). (ここからダウンロードできます)

このうち、ツルノコキクイムシは野淵輝氏が1981年が新属新種 Pseudocosmoderes attenatusとして記載しました。

A. Nobuchi, "Studies on Scolytidae (Coleoptera) XXI. Three New Genera and Species from Japan", Kontyu, Tokyo 49, 12 (1981). (ここからダウンロードできます)

その後、Woodが1992年にこの種がCosmoderes monilicollisのシノニムだという主張を載せました。理由はあまり書かれていないのですが・・・。

S. L. Wood, "Nomenclatural changes and new species in Platypodidae and Scolyidae (Coleoptera), Part II", Great Basin Naturalist 52, 78 (1992).(ここからダウンロードできます)

ということで、今のところ、Cosmoderes属のどちらの種かは分かっていないのですが、記載論文をもう少し詳しく読んで調べてみたいと思っています。ただ、野淵氏の論文には触角中間節が4節になっていて、4節目が球桿部に隠れているように描かれているのが気になりました。

追記2018/03/21:アメリカのフロリダ大学のAndrew Johnson氏から、この個体はCosmoderes attentuatusだというコメントをいただきました。C. consobrinusは体がそれほど長くなく、後胸腹板に羽毛状の毛が生えているそうです。また、C. monillicolisのsynonymであるというWoodの主張は現在では認められていなくて、C. attentuatusがaccepted nameになっているそうです。貴重なコメントをどうも有難うございました
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No title

ご無沙汰しています。
キクイムシは、自分も採集したことがありますが、識別はしていないので参考になるなあと思いました。
分類でいつも思うのですが、「歯状の突起物」や「複眼は二分」など文章が難しく、実際に標本を見比べてみないと分かりづらいと思います。
キクイムシの前胸アップ格好いいですね、自分も時間があれば見てみようと思います。

No title

こんばんは。
キクイムシはずっと前から調べてみたいなと思っていたのですが、やっと糸口が得られたような気がします。「歯状の突起物」、「複眼は二分」など確かにいろいろな種類が手元にあると比べながら調べられるのでいいですね。でも、実際にはないので、仕方なく文献を探してその中の絵や写真を参考にしてやっています。冷凍庫にはまだナガキクイムシが1種入っています。今度はこれを調べようと思っています。私も頑張っていきますので、タイコウッチ君も頑張ってください。
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