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虫を調べる チャバネヒメクロバエ(続き)

昨日、イエバエ科のチャバネヒメクロバエらしいハエの検索をしてみました。でも、うっかりして属の検索をするのを忘れてしまっていました。それで、今日は改めて属の検索です。



対象とするのは昨年の9月6日に採集したこのハエです。たぶん、チャバネヒメクロバエだろうと思っていたのですが、一度、ちゃんと検索をして、その記録も残しておこうと思ってやってみました。亜科と種の検索は昨日のブログを見ていただくとして、残りの属の検索です。



属の検索には「日本のイエバエ科」に載っている日本語版の検索表を用いました。検索してみると、予想通り、チャバネヒメクロバエの属するHydrotaea属になったのですが、その過程を書くと上のようになります。これを写真で調べていきたいと思います。今日は検索の順番通りに見ていきます。



Ⓐの下部鱗片は基覆弁のことで、これが幅広く基部が小盾板の側方まで伸びているのがMusca typeで、幅が狭く舌状で小盾板側方まで伸びていないのがPhaonia typeです。この写真の場合は舌状になっているので、Phaonia typeです。翅側板は上後側板のことで、これに毛が生えていないのは昨日の写真で確かめました。これでⒶはOKです。



顔面の拡大です。Ⓑはサシバエを分ける項目で、サシバエのような口吻構造をしていないのでⒷは明らかです。



この写真は後脚基節を背側の斜め前から撮ったものです。昨日、写真がうまく撮れなかったので、今回は気合を入れて撮り直しました。昨日紹介した大石氏の論文によると、Ⓒは黄矢印の部分に剛毛が生えているかどうかです。細かい毛は生えているのですが、剛毛は生えていないので、ⒸはOKです。



次は腹胸側板上の剛毛です。腹胸側板は下前側板のことです。ここに前後に1本ずつ剛毛が生えていました。ここにはよく3本生えていることが多くて、これを前と後ろに分けて、1+2とか、2+1とか書きます。これは2本なので、1+1となるのでしょう。後ろの剛毛は特に長くなっていました。



これは昨日もお見せした触角刺毛です。これを端刺というようです。よく見ると、ここに細かい毛が生えています。Ⓓはその長さについて言っているようです。測ったわけではないのですが、たぶん、ⒹはOKでしょう。



次は前脚の腿節です。Hydrotaea属は異質な2群を含み、一群は♂前脚腿節の腹面に強い歯状の突起があったり剛棘があったりします。もう一群はそんな構造がない代わりに、胸部・腹部が光沢のある青藍色です。このハエは♂でこのような構造がない代わりに光沢があります。よって後者の一群に入りますが、とにかくⒺはOKです。



次は翅脈です。亜前縁脈はScのことです。これが「ほぼ直線状」というのですが、写真を見ると曲がっています。これは中央部で波型のようにうねる種もあるので、それに比べると「ほぼ直線状」なのでしょう。これで無事にチャバネヒメクロバエの属するモモエグリイエバエ属 Hydrotaeaになりました。たぶん、この写真の個体はチャバネヒメクロバエ H. chalcogaster♂で間違いないと思います。「日本のイエバエ科」によると、近縁種として、H. ignavaとH. hirtitibiaがいるみたいですが、前者は♂後脛節が強く湾曲、後者は後腿節基部に棘がないなど、この個体とは特徴が違いました。

上の写真では「新訂原色昆虫大図鑑III」を見て、翅脈に名称をつけておきました。翅の後方と基部が見にくいので、その部分を拡大してみました。



CuA+CuPが翅縁まで達していないこと、A1の延長線とCuA+CuPの延長線が翅上では交わらないことなど、イエバエ科の特徴がよく出ています。



上の写真を見ると、R1の基部とR2+3とR4+5の分岐点に何か変わった構造が見られます。そこで少し拡大してみました。Scが前縁脈に到達するところに切目(Sc切目)があり、そこから翅の中心部分に向かって白くなった部分が見えます。これはたぶん、翅の折れ目を表しています。先ほどの変わった構造はどうやらこの折れ目と関係しているようです。



遊びついでに偏光板を入れて撮ってみました。偏光板2枚を互いに直交するように入れ、その間に翅脈がだいたい45度になるように翅を入れて撮ったものがこの写真です(矢印の方向かそれに直角な方向がだいたいの偏光方向です)。翅脈の走っている方向とそれに垂直な方向では屈折率が異なり(異方性)、その部分で偏光が回転するので翅脈の部分だけがこんなに光ったように写りました。先ほどの変わった構造のところで何か変化があるかなと思ったのですが、特に変わったようすは見られませんでした。



これも蛇足なのですが、いつものように剛毛に名前を付けてみました。ac、ia辺りは剛毛が短くてどれを採用するかで結果が変わりそうです。下に書いたのは「日本のイエバエ科」のチャバネヒメクロバエの説明載っていたものです。比べてみると、hが3本あったこと、小盾板に亜端剛毛と側剛毛の間にもう一本ありそうなこと、それに後で述べるようにst1+1である点を除けばよく一致している感じです。



胸部を斜めから撮ってみました。この方が真上から撮るよりは分かりやすいみたいです。iaはもう一本増やしてもよさそうでした。



で、胸部側面です。だいぶ見直したのですが、やはりst 1+1でした。





蛇足の蛇足で、脚の爪があまりに目立っていたので撮ってみました。爪に毛が生えているところ、それに白く見えている側爪板が面白いです。



最後は腹部末端です。何が見えているのかよく分かりませんが・・・。

今までハエは気持ち悪い虫の一つだったのですが、こうやって検索をしながら各部を見ていくとなかなか面白いものです。まさに、「一寸のハエにも五分の大和魂」ですね。少しはハエにも慣れてきたみたいです。
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