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廊下のむし探検 蛾、カメムシ、ハエなど

廊下のむし探検 第973弾

1月6日にマンションの廊下を歩いてみました。まぁ、虫はほとんど見かけなかったのですが、それでも、マンション中を探すとちょっとはいました。



まずはこんな蛾が廊下の蛍光灯に止まっていました。このような模様の蛾にはスギタニモンキリガ、ヤマノモンキリガ、スミレモンキリガという似た種がいます。「日本産蛾類標準図鑑」にはその違いが載っていて、次のような点に注目するとよいようです。



前縁の黒点の位置が内側の模様の外側で、2つの小黒点が比較的明瞭であることからスギタニモンを除外でき、さらに、前縁に台形の暗色影がないことでスミレモンが除外できます。残ったヤマノモンキリガが第1候補になります。





歩いているとこんなカメムシにも出会えました。上がクサギカメムシ、下がツヤアオカメムシです。冬になるころは山のようにいたのですが、この日は1匹ずつでした。



ナナホシテントウもいました。





この間も見たのですが、これはイダテンチャタテの♂でしょう。この冬2回目の観察です。



エビグモの仲間だと思うのですが、すごく小さいので幼体でしょう。



後はハエです。キモグリバエの仲間は相変わらずいっぱいいます。



これはシマバエ科で以前、Steganopsis dichroaとしたハエです。これについてはここに少し書きました。また、顕微鏡を使って観察したこともありました。「日本昆虫目録第8巻」を見ても和名はついていなくて、本州、九州に分布しているようです。





いつものノミバエです。後脚脛節背面に刺毛列が見えるのでMegaselia属だろうとは思うのですが、そこから先は分かりません。



今回一番時間がかかったのはこのガガンボダマシです。いつもガガンボダマシとだけ書くので、せめて属くらいは書けないかなと思って調べ始めました。「日本昆虫目録第8巻」を見ると、日本産ガガンボダマシ科は2亜科2属26種です。2属はParacladurinae(フユガガンボ亜科)Paracladura属とTrichocerinae(ガガンボダマシ亜科)Trichocera属です。しかも、本州近畿産は11種。これは何とかなるかもと思ったのが時間がかかったもとになってしまいました。



まずはガガンボダマシ科であることは単眼があることと、この写真のようにA1脈が強く湾曲することですぐに分かります。属の検索は次の本に載っていました。

P. M. Johns, "Trichoceridae of the Southern Islands of New Zealand", J. Roy. Soc. New Zealand 5, 493 (1975).

これによると、前脚跗節第1節が相対的に長いことと脛節棘があることで、Trichocera属であることが分かります。Trichocera属は大きな属で本州近畿産に限っても10種います。そこで、亜属を調べてみようと思いました。「日本昆虫目録第8巻」にはMetatrichocera、Saltrichocera、Trichoceraという3亜属が載っているのですが、論文を見ると、2亜属だったり、Oligotrichocera亜属があったり、さらには、いろいろな種群が出ていたりとまちまちです。これで混乱してしまいました。結局、次の4つの論文を読んで、その事情をまとめてみることにしました。

E. Krzeminska, "The hiemalis species group of the genus Trichocera Meigen (Diptera: Trichoceridae)", Pol J. Entomol. 65m 279 (1996). (ここからダウンロードできます)
E. Krzeminska, "A new subgenus and two new species of the genus Trichocera Meigen, 1803 (Diptera: Trichoceridae)", Annal. Zoolog. (Warszawa) 52, 155 (2002). (ここからダウンロードできます)
T. Nakamura and T. Saigusa, "A revision of the Japanese species of the subgenus Metatrichocera Dahl, 1966 of the genus Trichocera Meigen, 1803 (Diptera; Trichoceridae)", Nature and Human Activities 2, 59 (1997). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)
T. Nakamura and T. Saigusa, "A New Japanese Species of Trichoceridae (Diptera) Belonging to the Trichocera rectistylus Species Group Hitherto Unknown from East Asia", Esakia 52m 41 (2012). (ここからダウンロードできます)

それをまとめたのが次の表です。



いくつかの論文が手に入らないので、間違っているかもしれませんが、一応、時系列に従って説明していくと次のようになります。まず、Dahlが♂の特徴的な交尾器の形から、従来までTrichocera属にまとめられていた種の中からluteaを模式種としてMetatrichocera属を独立させました。これは後に、Trichocera属の亜属に降格されました。その後、この亜属にはぞくぞく種が入れられ膨らんでいきました。もともと、交尾器の形も独特の形のものもあれば中間的な形もあったからです。一方、Metatrichocera亜属に入らないものは、すべてTrichocera亜属に入れられたので、こちらもどんどん種が増えていきました。そこで、これらを整理するために、Krzeminskaはまず、Trichocera亜属の方を3つの種群(sp. g.)に分けました。ところが、Staryはそのうちhimemalis種群だけをとりだし、これをTrichocera亜属として、残りをMetatrichocera亜属にしてしまいました。また、同時にhimemalis種群に合わない一群をrectisylus種群としました。これに対して、KrzeminskaはMetatrichocera亜属に入れられたsaltator種群を亜属に格上げし、Satrichocera亜属としました。

たぶん、この状態が現在にまで続いているのではないかと思います。なお、Oligotrichocera亜属はバルチックアンバー(バルト海沿岸で採れる琥珀)内で見つかった始新紀の種について与えられた名前のようです。研究者がお互いに相談しながら分類を進めていけばよいのでしょうけど、それぞれに主義主張があって、それぞれが勝手に進めていくというのは分類だけに関わらずどの分野でも一緒です。でも、これが妥協せずに科学を発展させていった原動力にもなっていることも事実です。ただ、後から門外漢がその過程を見ると実にややこしいことになっています。いずれにしても、これらの分類は基本的に交尾器の形をもとにしているので、上の写真ではどうしようもありません。今度、一度捕まえて調べてみたいなと思います。
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