虫を調べる シリボソハナレメイエバエ属
先日、マンションの廊下でイエバエ科のハナレメイエバエらしきハエを見つけました。
こんなハエです。以前、似たようなハエを調べたことがあって、その時は検索をした結果、シリモチハナレメイエバエ Pygophora confusaになったので、たぶん、同じだろうと思っていました。先日見た個体は採集したので、昨日、以前の結果と比較しながら調べてみました。その結果、どうやら違う種のような気がしてきました。この二匹の個体を並べてみます。
左は今年の1月に採集したハエで、このときはシリモチハナレメイエバエだとしてた個体の腹部です。そして、右が今回の個体です。腹部第5背板の形がかなり違います。右の個体は先端が急激に細くなっていますが、左の個体は穏やかに細くなっています。
これは腹部末端を横から撮ったものです。以前の個体には黄色の丸で示した部分に上向きの短い剛毛が生えていましたが、今回の個体にはありません。これは検索表でシリモチを決める重要な特徴になっています。全般的に第5節の上部の形も違いますし、剛毛も右の個体の方がはるかに密に生えています。
そこで、今回の個体も「日本のイエバエ科」に載っている検索表で調べてみることにしました。科、亜科、属の検索は省略して、Pygophora属の種の検索表の部分だけ書くと次のようになります。
シリモチに至るには①→②→③aと進みます。そこで、とりあえず、①と②を調べてみます。
今回の個体は体長5.9mmでした。以前の個体は5.6mm。大体、同じですね。①はこの写真から、もよく分かると思います。
②もOKだと思われます。③aに進まないとすれば、③bに進むことになるのですが、第5背板には上向きの剛毛は生えていません。したがって、③bに進んでも大丈夫そうです。この先にはリュウキュウシリボソハナレメイエバエなど3種いますが、まず、④aを見てみます。
「日本のイエバエ科」の図版によると、黄色の丸で示した部分に黒色斑紋があるはずなのですが、これにはありません。
ただ、黒矢印で示したように、後脚脛節には先端には明確に切れ込みがあります。ひょっとすると斑紋のない種もあるのかなと思って、一応、保留としておきます。さらに、④bの「褐色に斑紋がない」方を選ぶと、次の⑤aも⑤bも共に特徴が合いません。さらに、この2種は南西諸島や小笠原諸島に分布する種で本州にはいそうにありません。ということで、ここで迷子になってしまいました。
先ほど保留したリュウキュウシリボソハナレメイエバエには琉球という名前がついていますが、東京でも採集記録があるようなので、本州に分布している可能性があります。ただ、「日本のイエバエ科」の説明によると、翅の黒い斑紋は必須のようです。それで、そのほかの特徴として、頭部、胸部、脚の剛毛についても調べてみました。
これは頭部です。記号については「日本のイエバエ」に載っているものを用いました。
そして、これは胸部背面です。
そして、胸部側面です。stが逆三角形になるのが、ハナレメイエバエ族の特徴です。
前脚、中脚、後脚脛節の剛毛を写したものです。これらをまとめたのが次の表です。(追記2017/12/27:前脚の写真に2adを入れていなかったので、写真に書き入れておきました。この刺毛は「日本のイエバエ科」には載っていなかったのですが、観察結果なので加えておきます)
左から、シリモチ、リュウキュウシリボソ、それに、今年1月に採集した個体、それに今回の個体で調べた結果です。実は、どれも殆ど違いがありませんでした。ただ、赤字で示した中脚脛節(t2)のad(前側を向いた背側剛毛)がシリモチと今年1月の個体にはありましたが、リュウキュウシリボソと今回の個体にはありませんでした。こういうところから判断して、今回の個体はリュウキュウシリボソハナレメイエバエの個体変異か、それに極めて近い種というところになります。私の住んでいる地域のPygophora属に少なくとも2種はいることが分かったので、これからも注目していきたいと思います。
後は検索には使わなかった写真で、これは顔面です。
腹部背面です。
腹部末端、反対側からです。
腹部腹面からの写真です。何が見えているのかよく分かりません。
ということで、今回はハナレメイエバエの仲間の検索をしてみました。とりあえず、以前見た個体と違っていそうだという結論になって正直驚いています。シリボソハナレメイエバエ(Pygophora属)の仲間は眼が綺麗なので、ハエの仲間では好きな方です。
こんなハエです。以前、似たようなハエを調べたことがあって、その時は検索をした結果、シリモチハナレメイエバエ Pygophora confusaになったので、たぶん、同じだろうと思っていました。先日見た個体は採集したので、昨日、以前の結果と比較しながら調べてみました。その結果、どうやら違う種のような気がしてきました。この二匹の個体を並べてみます。
左は今年の1月に採集したハエで、このときはシリモチハナレメイエバエだとしてた個体の腹部です。そして、右が今回の個体です。腹部第5背板の形がかなり違います。右の個体は先端が急激に細くなっていますが、左の個体は穏やかに細くなっています。
これは腹部末端を横から撮ったものです。以前の個体には黄色の丸で示した部分に上向きの短い剛毛が生えていましたが、今回の個体にはありません。これは検索表でシリモチを決める重要な特徴になっています。全般的に第5節の上部の形も違いますし、剛毛も右の個体の方がはるかに密に生えています。
そこで、今回の個体も「日本のイエバエ科」に載っている検索表で調べてみることにしました。科、亜科、属の検索は省略して、Pygophora属の種の検索表の部分だけ書くと次のようになります。
シリモチに至るには①→②→③aと進みます。そこで、とりあえず、①と②を調べてみます。
今回の個体は体長5.9mmでした。以前の個体は5.6mm。大体、同じですね。①はこの写真から、もよく分かると思います。
②もOKだと思われます。③aに進まないとすれば、③bに進むことになるのですが、第5背板には上向きの剛毛は生えていません。したがって、③bに進んでも大丈夫そうです。この先にはリュウキュウシリボソハナレメイエバエなど3種いますが、まず、④aを見てみます。
「日本のイエバエ科」の図版によると、黄色の丸で示した部分に黒色斑紋があるはずなのですが、これにはありません。
ただ、黒矢印で示したように、後脚脛節には先端には明確に切れ込みがあります。ひょっとすると斑紋のない種もあるのかなと思って、一応、保留としておきます。さらに、④bの「褐色に斑紋がない」方を選ぶと、次の⑤aも⑤bも共に特徴が合いません。さらに、この2種は南西諸島や小笠原諸島に分布する種で本州にはいそうにありません。ということで、ここで迷子になってしまいました。
先ほど保留したリュウキュウシリボソハナレメイエバエには琉球という名前がついていますが、東京でも採集記録があるようなので、本州に分布している可能性があります。ただ、「日本のイエバエ科」の説明によると、翅の黒い斑紋は必須のようです。それで、そのほかの特徴として、頭部、胸部、脚の剛毛についても調べてみました。
これは頭部です。記号については「日本のイエバエ」に載っているものを用いました。
そして、これは胸部背面です。
そして、胸部側面です。stが逆三角形になるのが、ハナレメイエバエ族の特徴です。
前脚、中脚、後脚脛節の剛毛を写したものです。これらをまとめたのが次の表です。(追記2017/12/27:前脚の写真に2adを入れていなかったので、写真に書き入れておきました。この刺毛は「日本のイエバエ科」には載っていなかったのですが、観察結果なので加えておきます)
左から、シリモチ、リュウキュウシリボソ、それに、今年1月に採集した個体、それに今回の個体で調べた結果です。実は、どれも殆ど違いがありませんでした。ただ、赤字で示した中脚脛節(t2)のad(前側を向いた背側剛毛)がシリモチと今年1月の個体にはありましたが、リュウキュウシリボソと今回の個体にはありませんでした。こういうところから判断して、今回の個体はリュウキュウシリボソハナレメイエバエの個体変異か、それに極めて近い種というところになります。私の住んでいる地域のPygophora属に少なくとも2種はいることが分かったので、これからも注目していきたいと思います。
後は検索には使わなかった写真で、これは顔面です。
腹部背面です。
腹部末端、反対側からです。
腹部腹面からの写真です。何が見えているのかよく分かりません。
ということで、今回はハナレメイエバエの仲間の検索をしてみました。とりあえず、以前見た個体と違っていそうだという結論になって正直驚いています。シリボソハナレメイエバエ(Pygophora属)の仲間は眼が綺麗なので、ハエの仲間では好きな方です。
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