サシバエを調べる
先日、マンションの廊下でハエを見つけました。
こんなハエです。その時は気が付かなかったのですが、後でよく見ると口の前に何か尖っています。こんな形の口吻を持っているのはイエバエ科のサシバエです。この日は採集したので、翌日、早速検索をしてみたら、案の定、サシバエ Stomoxys calcitransになりました。
検索をする前にはいつも、虫のいろいろな場所を顕微鏡下で撮影して、各部に名称をつけていくのですが、今回も同じように調べたので、検索の結果を出す前にその部分だけをまとめてみることにしました。
まずは気になる口吻です。生きていたときは前を向いていたのですが、毒ビンに入れておいたら、こんな風に横向いてしまいました。口吻は回転できるのかもしれません。それにしても立派な口吻ですね。
ちょっと拡大してみました。これは腹側から先端部分を撮ったものです。
そして、これは背側からの撮影です。吸血型の口吻なので先端に穴が開いているとばかり思っていたのですが、穴が見えません。
これは先端部分の拡大です。やはり穴は見えません。どうなっているのでしょう。
次は胸の部分を横から撮ったものです。検索のときに各部の名称が出てくるのですが、これがなかなか難しいので、予め調べておきました。
これは前半部分を拡大したものです。こうやって名前をつけていくと何となく分かったような気がして、安心感が出てきます。
これは後半の部分です。イエバエ科は中基腹節に毛列がないのが特徴ですが、やはりありませんね。また、中胸下前側板上の刺毛の配置は検索でよく問題になるのですが、これは後半に1本あるだけです。
次は翅脈です。イエバエ科はCuA+CuP脈が翅縁にまで達しないのですが、まさにその通りです。また、M1+2脈が奇妙な形で前方に曲がっています。
これは脚の爪の拡大です。爪の根元には側爪板というのが2つあります。その間には爪間板というのがあって、側爪板と同じような形の種もいるのですが、これは刺毛状です。爪もしげしげ見ると、なかなか美しいですね。
これからは刺毛に名前を付けていきました。次の表に略号をまとめてみました。
篠永哲、「日本のイエバエ科」(東海大学出版、2003)のサシバエの項にはfrではなくて、oriと書かれているのですが、刺毛の生える場所からはfrの方がよいような気がしました。
次は胸部の刺毛です。これも略号をまとめてみました。
大体はわかったのですが、この写真でも分かるように、刺毛が太くて長く、明らかに目立っている刺毛がそんなに多くはなくて、どこまでを数に入れるかでだいぶ迷いました。「日本のイエバエ科」のサシバエの項には、ac 0-1+1+2, dc 2-3+3-4, h 3-4, ph 1-2, ia 0+1, nt 2, pra 0, sa 1, pa 2, as 1, ls 2, ds 1, st 0+1となっていて、範囲で書かれているのが多いのはそのためでしょう。この中で、+で書かれているのは中胸盾板の中央を走る横線の前後の刺毛の数を表しています。合っているようなそうでもないような、よく分かりませんね。stのような重要な刺毛が合っているのでまあいいのかなと思っています。次回はこれらを使った検索の結果をお見せします。
こんなハエです。その時は気が付かなかったのですが、後でよく見ると口の前に何か尖っています。こんな形の口吻を持っているのはイエバエ科のサシバエです。この日は採集したので、翌日、早速検索をしてみたら、案の定、サシバエ Stomoxys calcitransになりました。
検索をする前にはいつも、虫のいろいろな場所を顕微鏡下で撮影して、各部に名称をつけていくのですが、今回も同じように調べたので、検索の結果を出す前にその部分だけをまとめてみることにしました。
まずは気になる口吻です。生きていたときは前を向いていたのですが、毒ビンに入れておいたら、こんな風に横向いてしまいました。口吻は回転できるのかもしれません。それにしても立派な口吻ですね。
ちょっと拡大してみました。これは腹側から先端部分を撮ったものです。
そして、これは背側からの撮影です。吸血型の口吻なので先端に穴が開いているとばかり思っていたのですが、穴が見えません。
これは先端部分の拡大です。やはり穴は見えません。どうなっているのでしょう。
次は胸の部分を横から撮ったものです。検索のときに各部の名称が出てくるのですが、これがなかなか難しいので、予め調べておきました。
これは前半部分を拡大したものです。こうやって名前をつけていくと何となく分かったような気がして、安心感が出てきます。
これは後半の部分です。イエバエ科は中基腹節に毛列がないのが特徴ですが、やはりありませんね。また、中胸下前側板上の刺毛の配置は検索でよく問題になるのですが、これは後半に1本あるだけです。
次は翅脈です。イエバエ科はCuA+CuP脈が翅縁にまで達しないのですが、まさにその通りです。また、M1+2脈が奇妙な形で前方に曲がっています。
これは脚の爪の拡大です。爪の根元には側爪板というのが2つあります。その間には爪間板というのがあって、側爪板と同じような形の種もいるのですが、これは刺毛状です。爪もしげしげ見ると、なかなか美しいですね。
これからは刺毛に名前を付けていきました。次の表に略号をまとめてみました。
篠永哲、「日本のイエバエ科」(東海大学出版、2003)のサシバエの項にはfrではなくて、oriと書かれているのですが、刺毛の生える場所からはfrの方がよいような気がしました。
次は胸部の刺毛です。これも略号をまとめてみました。
大体はわかったのですが、この写真でも分かるように、刺毛が太くて長く、明らかに目立っている刺毛がそんなに多くはなくて、どこまでを数に入れるかでだいぶ迷いました。「日本のイエバエ科」のサシバエの項には、ac 0-1+1+2, dc 2-3+3-4, h 3-4, ph 1-2, ia 0+1, nt 2, pra 0, sa 1, pa 2, as 1, ls 2, ds 1, st 0+1となっていて、範囲で書かれているのが多いのはそのためでしょう。この中で、+で書かれているのは中胸盾板の中央を走る横線の前後の刺毛の数を表しています。合っているようなそうでもないような、よく分かりませんね。stのような重要な刺毛が合っているのでまあいいのかなと思っています。次回はこれらを使った検索の結果をお見せします。
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