虫を調べる ハッカハムシ
この間からハムシの仲間を調べています。今回はハッカハムシです。
調べたのは10月31日にマンションの廊下で見つけたこんなハムシです。上翅に斑点が並んでいるので、ハッカハムシであることは確かでしょう。それで安心して検索表で調べていけます。亜科の検索には、「原色日本甲虫図鑑IV」に載っている検索表を用いました。
まずは全体像です。体長は8.6mm。まあまあ大きなハムシです。上翅の黒い点が特徴的ですね。
亜科の検索はこのような手順で行います。全部で6項目。これをすべて確かめるとハムシ亜科になります。これをいつものように部位別の写真で確かめていきたいと思います。
まずは横からです。頭部には特に異常はありません。それで①はOKです。また、前胸背板側縁もはっきりしているので⑥もOKです。
次は頭部です。この間、ハムシの左右の触角の間隔を調べましたが、この個体はかなり離れていることが分かります。これで②はOKです。次の③は頭部が前胸の中に引き込まれているということですが、そんな感じに見えますね。
さらに拡大して、各部に名称を入れてみました。頭盾がこれでよいのかどうか不安なのですが、前額と頭盾の間には筋が入っているように見えます。それが頭盾会合部かなと思いました。(追記2017/11/10:頭盾の場所について不安だったので、少し調べてみました。そのものずばりではないのですが、同じハムシ亜科のChrysomela属については次の論文に出ていました。
M. Chujo, "A Taxonomic Study on the Chrysomelidae with Special Reference to the Fauna of Formosa", Tech. Bull. Kagawa Agr. Coll. 5, 19 (1953). (ここからダウンロードできます)
この論文はハムシ科の構造についての詳細な説明が載っているのですが、その中でChrysomela populiについては各部の名称が載っていました。それによると、この写真で前額と書いたところがpost-clypeus、頭盾と書いたところがante-clypeusとなっていました。前者は後頭盾、後者は前頭盾と訳せばよいと思われます。この場合の頭盾会合部は後頭盾の後側となり、はっきりした頭盾会合線があることになります。この後頭盾という名前、以前、「昆虫の頭の構造」というタイトルで書いた時にも出てきました。この時はチャタテムシが対象だったのですが、大きく膨らんだ顔の部分を前額とすべきか、後頭盾とすべきかでいろいろな議論があったという内容です。この時は、結局、頭蓋の構造を調べ、前額縫合線(ここでいう頭盾会合線)の位置から、後頭盾であるという結論に達しました。今回の場合がそれと全く同じかどうかまだよく分からないので、写真の訂正はもう少し保留しておきます)
前胸腹板あたりを拡大してみました。前胸側板には特に異常は見られません。それで、④はOKとしました。
腹部の節の中央にはくびれは見えません。それで⑤もOKです。
最後は跗節第3節です。ここが二つに割れているハムシもありますが、これは特に割れてはいません。それで、⑥もOKです。これですべての項目をチェックしたので、ハムシ亜科は大丈夫でしょう。
次は属と種の検索です。この検索には次の論文の検索表を用いました。
S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. V Subfamily Chrysomelinae", J. Fac. Agriculture, Kyushu Univ. 13, 263 (1964). (ここからダウンロードできます)
検索の結果、無事にハッカハムシにたどり着いたのですが、実は、ハッカハムシはヨモギハムシ属に属していました。ヨモギハムシについてはこの間調べたばかりです。したがって、ほとんど同じ道をたどることになります。その過程を書くと次のようになります。
ヨモギハムシとは最後の⑫のところだけが違っていました。⑩のカッコ内の表現についてはヨモギハムシのところにも書きましたが、かっこ内の方が標準的な表現だと思われます。今回も写真で確かめていきたいと思います。
⑫は文字通りです。体長もちゃんと範囲に入っていました。
上翅の斑紋のところを拡大してみました。ちょっと盛り上がっているみたいですね。不思議な構造です。
この写真は後胸腹板にあるintercoxal processの前縁が縁取られていることを示しています。
⑦の前基節窩の後方(矢印)が開いているのかどうかはっきりしないのですが、前胸腹板突起が中胸腹板のところまで伸びているので、それで前基節窩が後方に開いているのではと思いました。
上翅の縁にある上翅側片の内側にはこの写真のように毛が生えています。このハムシの場合はかなり後方にだけ毛が生えていました。
最後は先ほども出した脚の爪です。見るからに単純な形をしています。これで、すべての項目をクリアしたので、無事にハッカハムシになりました。ハッカハムシは特徴的な模様をしているので、安心して検索をすることができました。こうやって少し名前の分かる種について検索の練習をしておこうかなと思っています。
検索には使わなかった触角の写真もついでに出しておきます。
調べたのは10月31日にマンションの廊下で見つけたこんなハムシです。上翅に斑点が並んでいるので、ハッカハムシであることは確かでしょう。それで安心して検索表で調べていけます。亜科の検索には、「原色日本甲虫図鑑IV」に載っている検索表を用いました。
まずは全体像です。体長は8.6mm。まあまあ大きなハムシです。上翅の黒い点が特徴的ですね。
亜科の検索はこのような手順で行います。全部で6項目。これをすべて確かめるとハムシ亜科になります。これをいつものように部位別の写真で確かめていきたいと思います。
まずは横からです。頭部には特に異常はありません。それで①はOKです。また、前胸背板側縁もはっきりしているので⑥もOKです。
次は頭部です。この間、ハムシの左右の触角の間隔を調べましたが、この個体はかなり離れていることが分かります。これで②はOKです。次の③は頭部が前胸の中に引き込まれているということですが、そんな感じに見えますね。
さらに拡大して、各部に名称を入れてみました。頭盾がこれでよいのかどうか不安なのですが、前額と頭盾の間には筋が入っているように見えます。それが頭盾会合部かなと思いました。(追記2017/11/10:頭盾の場所について不安だったので、少し調べてみました。そのものずばりではないのですが、同じハムシ亜科のChrysomela属については次の論文に出ていました。
M. Chujo, "A Taxonomic Study on the Chrysomelidae with Special Reference to the Fauna of Formosa", Tech. Bull. Kagawa Agr. Coll. 5, 19 (1953). (ここからダウンロードできます)
この論文はハムシ科の構造についての詳細な説明が載っているのですが、その中でChrysomela populiについては各部の名称が載っていました。それによると、この写真で前額と書いたところがpost-clypeus、頭盾と書いたところがante-clypeusとなっていました。前者は後頭盾、後者は前頭盾と訳せばよいと思われます。この場合の頭盾会合部は後頭盾の後側となり、はっきりした頭盾会合線があることになります。この後頭盾という名前、以前、「昆虫の頭の構造」というタイトルで書いた時にも出てきました。この時はチャタテムシが対象だったのですが、大きく膨らんだ顔の部分を前額とすべきか、後頭盾とすべきかでいろいろな議論があったという内容です。この時は、結局、頭蓋の構造を調べ、前額縫合線(ここでいう頭盾会合線)の位置から、後頭盾であるという結論に達しました。今回の場合がそれと全く同じかどうかまだよく分からないので、写真の訂正はもう少し保留しておきます)
前胸腹板あたりを拡大してみました。前胸側板には特に異常は見られません。それで、④はOKとしました。
腹部の節の中央にはくびれは見えません。それで⑤もOKです。
最後は跗節第3節です。ここが二つに割れているハムシもありますが、これは特に割れてはいません。それで、⑥もOKです。これですべての項目をチェックしたので、ハムシ亜科は大丈夫でしょう。
次は属と種の検索です。この検索には次の論文の検索表を用いました。
S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. V Subfamily Chrysomelinae", J. Fac. Agriculture, Kyushu Univ. 13, 263 (1964). (ここからダウンロードできます)
検索の結果、無事にハッカハムシにたどり着いたのですが、実は、ハッカハムシはヨモギハムシ属に属していました。ヨモギハムシについてはこの間調べたばかりです。したがって、ほとんど同じ道をたどることになります。その過程を書くと次のようになります。
ヨモギハムシとは最後の⑫のところだけが違っていました。⑩のカッコ内の表現についてはヨモギハムシのところにも書きましたが、かっこ内の方が標準的な表現だと思われます。今回も写真で確かめていきたいと思います。
⑫は文字通りです。体長もちゃんと範囲に入っていました。
上翅の斑紋のところを拡大してみました。ちょっと盛り上がっているみたいですね。不思議な構造です。
この写真は後胸腹板にあるintercoxal processの前縁が縁取られていることを示しています。
⑦の前基節窩の後方(矢印)が開いているのかどうかはっきりしないのですが、前胸腹板突起が中胸腹板のところまで伸びているので、それで前基節窩が後方に開いているのではと思いました。
上翅の縁にある上翅側片の内側にはこの写真のように毛が生えています。このハムシの場合はかなり後方にだけ毛が生えていました。
最後は先ほども出した脚の爪です。見るからに単純な形をしています。これで、すべての項目をクリアしたので、無事にハッカハムシになりました。ハッカハムシは特徴的な模様をしているので、安心して検索をすることができました。こうやって少し名前の分かる種について検索の練習をしておこうかなと思っています。
検索には使わなかった触角の写真もついでに出しておきます。
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