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虫を調べる ルリマルノミハムシ

先日捕まえたハムシを調べてみました。



昨日出したのと同じ写真ですが、キバナコスモスの花にいたときの写真です。この写真からも、後脚腿節が太いことが見え、たぶん、ノミハムシの仲間だろうなということが分かります。これを検索表に従って調べていきました。




まずは全体像です。体長は測ってみると、4.2mmになりました。青光りしていて綺麗なハムシです。亜科の検索表は「原色日本甲虫図鑑IV」に載っているものを、また、属と種の検索には「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」に載っているものを用いました。まずは亜科の検索です。



実に、この3項目を調べるだけでノミハムシ亜科に達します。②ついては昨日も「ハムシの顔」と題して書きました。項目を見ただけだと簡単そうなのですが、この表現だけでは分からない、いろいろな苦労がありました。これを写真で見ていきたいと思います。



いつものように部位別に見ていきます。これは横から撮ったものですが、頭部には特に異常は見られませんでした。口器も矢印で示すように前側についています。これで①はOKです。



次は昨日問題にした左右の触角基部についてです。左右の触角はどう見ても離れているように見えたのですが、Mike's insect keysというサイトのハムシ科の亜科の検索に書かれているように触角第1節の長さと比較すると、同じ程度だと言えなくもありません。とにかく、これは接近していると解釈するようです。



ちょっと拡大してみました。ついでに各部の名称も入れておきました。



次の③の項目の後半部分も悩ましい表現です。前胸腹板突起は矢印で示した部分です。また、前肢基節窩は脚を除いた後の穴のことを言います。この写真からはどう見ても、「前胸腹板突起が幅広く、前肢基節窩を左右に広く分離する」とは言えません。でも、「一般に」という言葉が入っているので、この種は例外なのだろうと思いました。



ついでにちょっと拡大してみました。「原色日本甲虫図鑑IV」のルリマルノミハムシの説明では「前肢基節窩は後方に閉じる」と書かれています。また、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」のヒゲブトノミハムシ属の説明にも同様のことが書かれています。その部分が転節、腿節に隠れてよく見えません。ただ、矢印で示したように、中胸腹板の前縁部分(たぶん)が前肢基節間に入り込んでいるので、中胸腹板により前肢基節窩の後方が閉じられているのではと思いました。



それよりもこの③の前半部分の特徴の方がもっと顕著です。後脚腿節がこんなに太くなっているのでノミハムシ亜科で間違いないのではと思われます。モーリック器官については以前調べたことがあるので、そちらをご覧ください。ということで、悩んだところばかりだったのですが、無理やりノミハムシ亜科に到着しました。

次は属と種の検索です。



実は、属と種の検索も簡単でこの3項目を調べれば種まで到達します。



まずは触角の節数です。これが9節だということで、いきなりヒゲブトノミハムシ属に達します。⑥は種を分ける項目で、第4節が三角形か四角形かという選択です。これは見るからに三角形みたいです。



趣味的に拡大してみました。特に意味はありません。



⑤の上翅の点刻は比較の問題なので何とも言えません。ただ、この項目は前胸背板の色が異なるカワリヒゲブトノミハムシを除外する項目なので、たぶん、大丈夫でしょう。後半の色についてもOKです。



これも色に関する項目ですが、まあ、書いてある通りのようです。腹部がこんな黄褐色であることはひっくり返すまで分かりませんでした。ということで、ルリマルノミハムシに到達しました。

ところで、この腹部の色に関して、「原色日本甲虫図鑑IV」のルリマルノミハムシの説明には、「頭部・腹部腹面は黒藍色。腹部は黒褐色の末端2・3節を除き黒色」と書かれています。この記述はまるで違います。それで、いくつかの図鑑や論文を見てみました。



それをまとめたのがこの表です。大体は橙黄色ないしは赤褐色と書かれています。たぶん、「原色日本甲虫図鑑IV」の記述は、腹部腹面→胸部腹面、黒褐色の末端2・3節→黄褐色の末端4節と直す方がよいのではと思いました。その点、Kimoto(1965)やGressitt and Kimoto(1963)の記述は正確だなと思いました。色の表現の仕方については何とも言えませんが・・・。

ルリマルノミハムシらしき個体の検索をしてみました。検索自体は項目がわずか6項目だったので簡単でしたが、いろいろと悩むところが多かったです。これまでにいろいろな昆虫の検索を検索表に従って試してみたのですが、大きさ、長さ、形などに関しては主観的に表現されていることが多く、使い慣れている人には分かるのでしょうけど、素人がやろうとするといつも引っかかってしまいます。是非とも、文章だけではなく、絵も載せてほしいと思いました。また、検索表の記述が100%種や属を選択できるものではなく、必ず例外があるということをどこかに書いてほしいなと思いました。検索表によってはその記述が何%の種・属に適用できるかということが書かれているものもありますが、そこまでいかなくても、例外はこれこれなどと書いておいていただけるだけで大変助かります。使う方と違い、作る方は圧倒的に大変でしょうけど・・・。
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