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淀川べりの虫

10月8日に淀川の土手を歩く植物の観察会がありました。植物の勉強をしようと思って、それに参加したのですが、休憩時間にちょっとだけ虫も探してみました。数は多くないのですが、一応、記録のために。



これはたぶん、ヨモギハムシだと思いました。ヨモギハムシあたりのハムシも区別がよく分からないので、この間、マンションの廊下で採集した個体で一度検索してみます。



これはユスリカ。



そして、これはキモグリバエ科。



バッタもいました。マダラバッタとヒナバッタで迷ったのですが、顔の傾斜からマダラバッタの方かなと思ったのですが、いまいちはっきりしません。「バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑」に載っている検索表を見ると、マダラバッタの属するトノサマバッタ亜科とヒナバッタの属するヒナバッタ亜科とは、ヤスリ状の発音器が、前者は前翅にあり、後者は後腿節にあるという違いがあるそうです。一度、見てみないといけませんね。





最後は初めて見るテントウです。小さいのですが、探したら2匹見つかりました。「原色日本甲虫図鑑III」の図版と比べてみると、ベダリアテントウ Rodolia concolorによく似ている感じです。図鑑の検索表に載っている記述、「上翅の会合部は黒く、ふつう中央で広がり、ほかに2対の黒紋があり、・・・」というところなどはよく似ています。(追記2017/12/06:野虫の会さんから、「このテントウは恐らく外来種のモンクチビルテントウではないかと思われます。かなり拡大している印象です。」というコメントをいただきました。やっぱりベダリアテントウではなかったのですね。モンクチビルテントウというのは初めて知りました。ネットで調べると確かに斑紋の形がよく似ています。外来種なのですね。コメント、どうも有難うございました

さらに、「イセリアカイガラの天敵として有名で、世界各国に移入されて定着している」とのことです。この個体がベダリアテントウなのかどうかははっきりしないのですが、ちょっと面白そうなので調べてみました。参考にしたのは次の論文とホームページです。

(1) L. E. Caltagirone and R. L. Doutt, "The History of the Vedalia Beetle Importation to California and its Impact on the Development of Biological Control", Ann. Rev. Entomol. 34, 1 (1989).
(2) A. Shelton, "A Guide to Natural Enemies in North America - Biological Control 'Rodolia cardinalis'", Cornell Univ., College of Agriculture and Life Sciences.(ここで見ることができます)
(3) J. P. Michaud, "Coccinellids in Biological Control", in "Ecology and Behaviour of the Ladybird Beetles (Coccinellidae)", ed. I. Hodek et al., Blackwell Publishing (2012). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

特に論文(1)が詳しいのですが、残念ながらネットでは公開されていないようです。論文は論文なのですが、ドラマチックに書かれているので、かえって単語が分からず、四苦八苦しました。要は、19世紀の中頃に天敵として移入された最初の生物農薬、あるいは、Biological Contolの例だということです。

内容を紹介すると、19世紀中ごろ、アメリカのカリフォルニアは空前のゴールドラッシュで次々と移入する人が増え、大変な人口増加に見舞われていました。その土地に定着して農業を始める人たちも現れ、特に、柑橘類の栽培が盛んになりました。ところが、1868年にアカシアを輸入した際、その樹についていたIcerya purchasisというカイガラムシが猛烈に広がり、柑橘類はほとんど壊滅状態になりました。当時、アメリカ合衆国の昆虫学者として認定されていたC. V. Rileyはこれを何とか解決しようと、カイガラムシの原産地オーストラリアに人を送って天敵を導入することを提案するのですが、その費用に1500-2000ドルかかるという主張に取り合ってもらえませんでした。その後、柑橘類を扱う会社が構成する組合からの圧力で、ようやく、当時メルボルンで開かれていた万国博に派遣するという名目で昆虫学者A, Koebeleを派遣することができました。1888年のことです。

Koebeleはオーストラリアに着いて2か月後に、Cryptochetum iceryaeというカイガラヤドリバエ科のハエ、クサカゲロウの幼虫、それにベダリアテントウの幼虫の3種の天敵がいると報告しました。そして、翌月にはハエ12000匹、それから3回に分けてベダリアテントウ129匹がカリフォルニアに送られました。カリフォルニアでは待機していた昆虫学者D. W. Coquilletがベダリアテントウの飼育を始め、翌年の6月には10550匹にまで増やし、あちこちの果樹園に配りました。この利き目は驚くほどであっという間にカイガラムシは減少し、この年だけでもかなりの成果を上げました。この成果から、現在では、ベダリアテントウは全世界に配布されているようです。

天敵として有用なのは、1)多化性、2)獲物の対象が限られている、3)成虫が長命、4)獲物をすばやく見つけられるなどで、そのほかにも、速く分散する、個体数増加が速いなどの特徴が求められています。ベダリアテントウは温暖地では年12化、涼しい海岸地域でも年8化で、一度に150-190個の卵を産み、幼虫は貪食性であるなど、天敵としては優れた能力を発揮しています。唯一、弱点としては寒冷地に生息しないことなのですが、同時に移入されたハエが主に寒冷地で効果的で、そういう意味では相補的であったということができます。もっとも、共存地域では競合があるみたいですが・・・。その後は、アザミウマを退治するための農薬が撒かれ、ベダリアテントウが減少すると、再び、カイガラムシが増加したりという変化を繰り返しているようです。

アメリカではこのベダリアプロジェクトをわずか1500ドルで達成した歴史的成果だと誇りに思っているようです。もっともその後もいろいろなテントウが移入されましたが、そのうち10%程度は定着し、生態系に影響を及ぼしていることも事実のようです。日本でのベダリアテントウの移入については調べていませんが、今では本州から南西諸島まで定着しているようです。今回はベダリアテントウで面白い話に出会えました。
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No title

初めまして。いつも楽しく拝見しております。
過去記事へのコメントで恐縮ですが、このテントウは恐らく外来種のモンクチビルテントウではないかと思われます。かなり拡大している印象です。
また前記事の不明オニグモはコゲチャオニグモではないかと思いました。これからも更新を楽しみにしております。

No title

野虫の会さん、初めまして。
やっぱりベダリアテントウではなかったのですね。モンクチビルテントウというのは初めて知りました。ネットで調べると確かに斑紋の形がよく似ています。外来種なのですね。それに、オニグモの名前も。いろいろと勉強になりました。どうも有難うございました。
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