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コンデジで接写

鳥の撮影をしている知人のカメラが壊れたときに、高倍率ズームのコンデジが便利だと勧めました。知人はその勧めに従って、ニコンのコンデジを買われたのですが、近くの虫などを撮るときにはもう一台いるというので、何かいい方法はないかと思って調べてみることにしました。確かに、高倍率ズームで接写をしようとすると、カタログにも載っているようにズームを広角側いっぱいに設定して撮ることができます。ただし、レンズから1cmくらいまで近寄らないと撮れないので、たいていの虫は逃げていってしまいます。また、レンズの陰になって光が当たりにくくなるのも欠点です。

そのような場合、以前調べたように、クローズアップレンズをつけるというのが手なのですが、コンデジの場合、どうも思ったようにならないので、もう一度調べてみることにしたのです。

実験は次のような配置で行いました。



家の中で実験をしたので、こんながたがたした配置になっていました。カメラにはPanasonic DMC-FZ150を用いました。クローズアップレンズにはKenko AC Close-up No. 5 (f=200mm)を使いました。床に巻き尺を張り付け、倍率測定用のスケールを載せたダンボール箱を二つ用意しました。一つはスケールを段ボール箱に貼り付けて遠方に置きました(B)。もう一つはクローズアップレンズをつけた場合に用い、段ボール箱の上に小さなスケールを張り付け、ブックエンドにスケールを張り付けたものを動かして焦点を合わせました(A)。

実験は次の手順で行いました。

1.クローズアップレンズを外し、近くに置いたブックエンドを外し、遠方のスケールに合うようにオートフォーカスで焦点を合わして撮影します。この時、スケールの位置を記録します。距離はカメラのイメージセンサーからの距離にしておきます。
2.そのままの状態でマニュアルフォーカスに切り替え、クローズアップレンズを取り付けます。スケールのついたブックエンドを置いて、手で動かして焦点の合う位置に置き撮影します。この時、スケールの位置を記録します。
3.遠くに置いたスケール付きの段ボールの位置を変えて、1を繰り返します。

まず、クローズアップレンズのないときのデータを整理しました。撮影した写真から撮影倍率を計算します。こうして求めた倍率Mと、スケールとイメージセンサ―間の距離Lを使って次の式を用いて焦点距離とレンズの位置を求めます。



これは何枚かのレンズでできた複合レンズを一つの単レンズとみなしたときの、焦点距離とレンズの位置を表す式で、求め方については以前書きました。この式を用いて、撮影距離を変えて測定したデータをグラフにしてみると次のようになります。



撮影距離(イメージセンサーとスケールの間の距離)が短くになるにつれて焦点距離もレンズの位置も共に短くなっています。これは以前に測定した内焦式レンズの特徴でした。でも、実は、これが意外に思った点です。というのは、通常、近くのものを撮るにはレンズを前に繰り出さないといけないので、イメージセンサーとレンズの距離がだんだん離れると思っていたからです。このカメラの場合は、逆に、レンズの位置がイメージセンサーに近づき、その分、焦点距離が短くなっていることが分かりました。



つまり、絵で描くとこんな感じになっているのです。このデータを用いて、クローズアップレンズを入れた場合も考えてみます。



クローズアップレンズの仕組みについても以前書いたことがあります。まとめると、この図のようになります。クローズアップレンズで被写体の虚像を作り、その虚像をカメラレンズでイメージセンサー上に実像を作るというものです。虚像を作るためには、被写体の位置はクローズアップレンズの焦点距離以内におかないといけません。この様子もカメラ上で書いてみると、以下のようになります。



実際に、先ほどの測定から得られた倍率をグラフにしてみると次のようになります。



これはズーム最大で測定した例なのですが、クローズアップレンズをつけないと、せいぜい0.07倍だった倍率は200mmのクローズアップレンズをつけることで最大0.51倍まで上げることができました。この時面白いのは、焦点位置はできるだけ遠方になるようにした方が倍率があがることです。

実際に何倍の倍率なるのかを推測するには、意外に難しい計算をしなければいけません。



まず、このような2レンズ系での結像の問題を考えます。この問題は光線行列を使うと簡単に解くことができます。まず、光源P(中心線からx離れた場所にあり、正接tの方向に光が出るとしています)から出た光は、aだけ離れたところに置いたレンズf2で方向を曲げられ、dだけ進み、今度はf1レンズで曲げられて、bだけ離れたQ点に到着するとします。この時、Q点は中心線からx'だけ離れ、正接t'の方向に光はさらに進むとします。これを行列で表すと次のような式になります。



光がQ点で像を結ぶためには、P点での光の出る方向によらずに、同じ点に到達するという条件を入れなければなりません。また、像の倍率はその時のxとx'の大きさの比から求まります。つまり、



これらの式から、倍率Mとクローズアップレンズと被写体間の距離aを求めることができます。右の式を計算するには、クローズアップレンズを入れずに測ったデータを使用します。つまり、先ほど求めたbとf1です。また、クローズアップレンズの位置は固定されているので、dはbが分かると求まります。さらに、f2には200mmを代入します。




そうして求めたのがこの図です。図の黄緑色の点線が計算値です。極めてよく合っています。たぶん、考え方はだいたい良いのではと思いました。



これは被写体とクローズアップレンズ間の距離の実測値と計算値です。いずれもクローズアップレンズの焦点距離200mm以内には入っているのですが、値は少しずれています。計算式は何度か見直したので、イメージセンサーの位置がはっきりしなかったのが原因かもと思っていますが、よく分かりません。いずれにしても、傾向はよく合っているので、それほど大きな問題ではないのではと思っています。

倍率を求める簡単な式ができるとよいなと思ったのですが、一般的な場合についてはまだできていません。ただ、焦点位置を無限遠方にしたときに最大倍率になるので、このことからそのときの倍率は求めることができます。焦点位置を無限にすると、f1=bとなるので、上の式を用いると、M=f1/f2になります。f1は仕様に載っているズームの最大の焦点距離の値を入れればよく、f2はクローズアップレンズの焦点距離です。このカメラの場合、焦点距離の最大値は108mmなので、M=108/200=0.54となり、7mの距離で測った倍率0.51とまあよく合っている感じです。また、ズームを小さくすれば、当然、レンズの焦点距離は短くなるので倍率も小さくなり、適当な画角での撮影ができることになります。
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