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虫を調べる サビカミキリ

先日来、カミキリムシの発音体を調べたり、検索をしていたりしていたのですが、もっと詳しい資料が欲しくなってしまいました。それで、ほとんど衝動的に、大林延夫、新里達也、「日本産カミキリムシ」、東海大学出版会 (2007)を古本で購入しました。昨日届いたので、昨晩、早速検索をしてみました。今回の対象はサビカミキリだと思われる個体で、2013年10月24日にマンションの廊下で採集したものです。



これはそのとき撮影したもので、長い産卵管(?)を出しているので、たぶん、♀だと思います。「日本産カミキリムシ」によると、サビカミキリはクロカミキリ亜科 Spondylidinae マルクビサビカミキリ属 Arhopalus に属しています。たぶん、これだろうと見当をつけながら、この本に載っている図解検索を用いて検索をしてみました。



最初は属の検索だけをしていたのですが、この際だからと亜科の検索もしてみました。後翅とか、発音板が見えないので確かめられなかったところもあり、また、前胸側縁は写真がなかったので、それらは赤字で書いてあります。それ以外を見ていきます。



まずは全体像です。スケールは一目盛りが1mmです。まず、この写真では翅が腹部全体を覆っていることを確かめます。



次は触角で、第1節の幅がほかの節の幅の2倍以上になっていないかを見ます。さらに、第2節が幅より長いことも確かめます。ほとんど問題ないと思います。



次は頭部です。Ⓐの大腮の先が尖り、大腮の基部と触角挿入口が離れているということも大丈夫そうです。次のⒻで、「頭部が短く、複眼後方で狭まらない」という項目は、もし図解でなければ大変迷う表現です。前者は比較の問題だし、後者はどう見ても狭くなっているからです。これはハナカミキリ亜科と区別しようという項目で、この個体の頭部はそれに比べるとかなり短いと思われます。後半の「複眼後方で狭まらない」については、図解の図を見てもはっきりしません。たぶん、前半部分の大きさの比較だけでよいのではと思いました。



次は頭部を横斜め前方から撮ったものです。Ⓑはこの写真でよく分かります。



最後は前肢の基節ですが、矢印で示すように丸くなっています。これで、赤字を除いてすべて確かめられたので、たぶん、クロカミキリ亜科でよいのではと思われます。後翅と発音体を見ないといけないのですが、共に標本にする前に見ておく必要がありますね。



次は属と種の検索です。これも調べなかった項目を赤字で書いています。今回も検索順ではなくて、部位別に見ていきます。全部で7項目です。



先ほどと同じ写真を用いますが、触角の長さが上翅の基部1/3に届くというのを示したものです。黄色の破線が1/3ラインですが、触角はそれを越えています。



この写真ではまず前胸が横長であることを確かめます。測定したら、長さ:幅=0.74:1でした。⑤は前胸背板がほぼ平板であることを言っています。これはオオクロカミキリ属やムナクボカミキリ属を除外する項目で、これらの属では前胸背板中央に広い窪みがあり、多数の顆粒が含まれているそうです。⑦の後半の光沢がないというのはすぐに分かりますが、前半の触角第3節と第4節が長いというのはやはり比較の問題で、ムネツヤサビカミキリとの比較です。図解の図を見ても、それほど顕著に長さが違うようには見えないので、むしろ、前胸背板の光沢の有無の方が分かりやすいのではと思いました。



これは触角孔の後方と下が曲がった複眼で囲まれているという内容で、前方も囲まれるケブカマルクビカミキリ属を除外する項目です。



②の「大腮が小さい」はクロカミキリ属と比較したときで、クロカミキリの大腮は大きいのでそれに比べると小さいということです。④の頭部の点刻は不明瞭というのはケブカヒラタカミキリ属との比較で書いてある項目で、独立して大きな点刻のあるケブカヒラタカミキリ属に比べると、点刻が小さく連続していて浅いので不明瞭と称しているのだと思います。⑥の浅い正中溝も比較の問題で、シナノサビカミキリほどは深くないという意味です。これは図解の図で判断しました。



大腮の内縁はほぼ直線状というのはこの写真でよく分かります。基部の二歯というのは図解の図を見てもはっきりしません。たぶん、矢印で示した部分を指すのではと思いました。これはシナノサビカミキリとの比較で出てきた項目です。



そして、これは前肢基節孔後方が開いているかどうかですが、確かに開いています。これは明瞭です。



最後は前肢脛節の端刺で矢印で示した刺を指しているのだと思います。最初、ハエ目みたいにもっと長い刺を想像していたので、なかなか見つかりませんでした。でも、1本であることは確かそうです。これですべての項目をチェックしたので、たぶん、サビカミキリで大丈夫ではと思っています。

検索に用いなかった写真もついでに載せておきます。



これは頭部を背側から見たものです。



そして、これは複眼付近の拡大です。複眼がゆるく凹んでいることを示すために撮ったのですが、使いませんでした。

さて、今回、「日本産カミキリムシ」の図解検索を初めて使ってみました。これは大変分かりやすいもので、私のようにカミキリムシについてほとんど知識がなくても楽に使えます。逆に、検索で使われている項目には相対的な表現が多くて、図解でないとほとんど使えないだろうなと思いました。本をぱらぱらとめくってみると、図解検索が優れているというほかに、綺麗な生態写真が載っているのもいいなと思いました。また、植物の種別に書かれた寄生植物一覧も大変充実しています。逆にもう少しかなと思ったのは次の点です。標本写真が図版として載せられているのですが、♂♀揃っているのがそれほど多くなく、1種1枚というのが多かったのがちょっと残念でした。たぶん、カラーページ数の制限でそうなったのだと思いますが・・・。種リストが載っていないのも不便に感じました。この属にどんな種が入っているのかは種の解説にある各論で見るしかありません。また、「発音体」を調べようと思ったら、事項索引がありませんでした。これも不便です。さらに、概論は標本作成法や生態写真撮影法などは充実しているのですが、基本となる形態の説明が少なすぎる印象でした。例えば、発音体に対する説明はわずか2行でした。いろいろと気のついた点もあったのですが、全体としてはずいぶん充実した本であると思いました。
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