家の近くのむし探検 ドロバチ2種
家の近くのむし探検 第309弾
8月12日に家の近くの公園に行ってみました。虫はあまりいないのですが、習慣になっていてついつい公園に行ってしまいます。それでも、この日はドロバチを2種見つけました。
1種目はこのカップルです。上が♂、下が♀でしょうね。スズメバチ科のドロバチ亜科に属するハチです。このように腹部に2本線の入っているドロバチは多いですよね。でも、どうやって区別したらよいか、いつも困ってしまいます。そこで、今日は「日本産有剣ハチ類図鑑」に載っている図版で、同じような2本線の種を探してみました。ハムシドロバチ属、エントツドロバチ属、スジドロバチ属、フタオビドロバチ属、チビドロバチ属あたりですね。それで、この図鑑に載っている検索表を見て、これらの属の特徴を表にしてみました。
この表には腹部に2本線ということで、トックリバチ属なども入れておきました。この表を上から順に調べていくと、属が分かるということになっています。検索表から分かりやすり特徴を抜き出しただけなので、本当に調べられるかどうか、手元の標本で確かめてみました。(追記2017/08/17:表の中の言葉が若干間違っていたので書き直しました(後半→後端、腹柄→柄状)。それに伴って下の写真も該当部分を直しました)
これはオオフタオビドロバチだろうと思われる標本です。まず、腹部第1節はトックリバチみたいに細くはありません。それで、表の右側の属を探します。
次は腹部第1節背板についてです。背板の背面と前方傾斜部の間は滑らかな曲面でつながっていて、この間に横隆起線はありません。それで、一番右端のフタオビドロバチ属か、チビドロバチ属になります。
次は縁紋と亜縁紋についてです。亜縁紋という言葉は聞いたことがなかったので、この検索表の基になっている次の論文を見てみました。
S. Yamane, "A REVISION OF THE JAPANESE EUMENIDAE (HYMENOPTERA, VESPOIDEA)", Insecta matsumurana. Series entomology. New series 43, 1 (1998). (ここからダウンロードできます)
この論文の中で縁紋はstigma、亜縁紋はparastigmaとなっています。論文の中の図から、上の写真で示した部分が亜縁紋になることが分かりました。縁紋と長さを比べると、亜縁紋の長さは1/2よりはるかに大きくなっています。
次は肩板と亜肩板についてです。亜肩板というのも知らなかったので、また、上の論文を見てみました。肩板はtegula、亜肩板はparategulaに対応すると思われます。論文の中の図がはっきりしなかったので、parategulaで検索をしてみました。いくつか引っかかったものを見ると、たぶん、この写真で示した部分でよいのだと思われます。これを見ると、亜肩板の後端の方が肩板の後端より後ろ側にあるので、結局、フタオビドロバチ属であることが分かります。
さらに種の検索表で調べると、期待通り、オオフタオビドロバチらしいことが分かりました。まず、触角の節数が12節なので、この個体は♀のようです。検索表をすべて確かめたわけではないのですが、その頭盾を調べてみました。
長さの方が幅よりは長いので、たぶん、オオフタオビドロバチで大丈夫だと思います。
これは以前写した個体で、エントツドロバチだろうと思っていた種です。同じように調べていくと、エントツドロバチ属になることが分かりました。
今回の個体も調べてみました。先ほどのオオフタオビドロバチと同じ過程を通り、フタオビドロバチ属か、チビドロバチ属かということになります。ただ、生態写真では亜縁紋と亜肩板がどうもはっきりしません。
やっと縁紋が写っている写真を見つけました。亜縁紋は縁紋よりは明らかに短いので、たぶん、チビドロバチ属だろうと思われます。図鑑には種の検索表も載っているのですが、生態写真では十分に追いかけられません。肩板が黒いので、たぶん、カタグロチビドロバチかなと思ったのですが、今回はここまででした。
もう一種はこのドロバチです。これは腹部第1節が細いので、表の左側にある属になります。盾板に二本の縦溝がなく、前伸腹節が丸みをおびているのでトックリバチ属で、たぶん、ミカドトックリバチだと思います。
こうやってまとめてみると、ドロバチも見る場所がちょっと分かってきました。問題は写真を撮るときに、そのことを忘れずにちゃんと撮ることができるかどうかですね。
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