家の近くのむし探検 クロアゲハ、ハチ、ハエなど
家の近くのむし探検 第303弾
2日間にわたった「自然展」が済むと、この夏もそろそろ終わりに近づいてきたような気がします。2日間ずっと説明をしていたので、すっかりくたびれてしまって、翌日はほとんど何もできない状態。そろそろ何かしようかと思っていたら台風がやってくるし・・・。昨日、やっと8月4日分の公園で見つけた虫の整理をしました。今頃は虫が少ないので、楽と言えば楽なのですが、その分、丁寧に見ていったら時間は結構かかってしまいました。
今日の最初は公園のアベリアにやってきていたクロアゲハです。普通、小さな虫は一眼レフに接写レンズをつけて撮っているのですが、マンションの天井に止まっているときみたいにちょっと離れているときには、コンデジを使っています。マンションの廊下は暗いので、フラッシュをEV+1にして、マニュアルF5.2、1/640で撮ることが多いのですが、忘れていて、その設定のままフラッシュはたかずにクロアゲハを撮ってしまいました。でも、ばっちしでしたね。
次はハチです。むちゃくちゃ産卵管の長いハチがいました。小さなハチですが、よく見ると後脚腿節が太くて、いかにも捕獲脚らしくなっています。「原色昆虫大図鑑III」の図版をぱらぱら見ていたら、オナガアシブトコバチというオナガコバチ科のハチに似ています。この名前でネットを探すと、産卵の様子を撮ったものなどたくさん出てきました。でも、そのものずばりなのかどうか判定ができません。早く、ハチ目も「日本昆虫目録」が出るとよいのにと思って、日本昆虫学会のHPを覗いてみると、第4巻 準新翅類と第5巻 脈翅目群, 長翅目, 隠翅目, 毛翅目, 撚翅目が昨年3月に出ていたのですね。欲しいなと思ったのですが、2冊で2万円。ちょっと躊躇っています。
(追記2017/08/09:オナガアシブトコバチはPodagrion属に含まれますが、次の論文によると、日本産のこの属は4種、そのうち、本州に産するのはオナガアシブトコバチ P. nipponicumとヒメオナガアシブトコバチ P. philippinense cyanonigrumの2種だそうです。
山崎一夫、岩崎拓、「ヒメオナガアシブトコバチの寄生」、Jpn. J. Ent. (N.S.) 5, 25 (2007).(ここからダウンロードできます)
「原色昆虫大図鑑III」によると、nipponicumの産卵管は体長の1.3~1.5倍。一方、philippinenseの方は次の論文に載っている検索表によると、産卵管は体長より短いそうです。
A. B. Grahan, "A Second Lot of Parasitic Hymenoptera from the Philippines", Phil. J. Sci. 27, 83 (1925).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
日本産は亜種なので、正確には分かりませんが、たぶん、この個体はオナガアシブトコバチなのでしょう。もし、属が合っていたらの話ですが・・・。
なお、オナガアシブトコバチはオオカマキリとチョウセンカマキリの卵嚢に卵を産むそうです。これについてはその生活史が次の論文に載っていました。
岩崎拓、「オナガアシブトコバチのオオカマキリとチョウセンカマキリ越冬卵嚢への寄生」、Jpn. J. Ent. (N.S.) 3, 65 (2000). (ここからダウンロードできます)
T. Iwasaki, "Life History of the Torymid Wasp Podagrion nipponicum Parasitizing Eggs of the Praying Mantis", Entomol. Sci. 3, 597 (2000). (ここからダウンロードできます)
10月頃、卵嚢に産み付けられた卵は卵嚢中で育ち、5月末から6月中旬にかけて一化の成虫が出てきます。この成虫は8月末程度までは生きるそうです。二化の成虫は6月末から7月初めに羽化し、長いものでは11月中旬まで生きるそうです。一つの卵からは数個から数十個の成虫が羽化するのですが、カマキリの卵を食い尽くすことはないとのことです。なお、越冬卵嚢では主にオオカマキリに寄生し、二化はオオカマキリとチョウセンカマキリの両方に寄生するようです)
こんなハチもいました。たぶん、ヒメバチ科だろうなと思ったのですが、最近、ハチの名前調べはちょっと敬遠しています。ヒメバチ科が亜科の検索だけでも、かなり大変だったからです。でも、いつまでも逃げていたら駄目だと思って、ちょっと思い出すためにこの写真から翅脈を調べてみました。以前、トガリヒメバチ亜科を調べたときの記事を参考に翅脈に名前をつけてみました。
2m-cuがあり、RsとRs+Mとつなぐ斜めの翅脈がないところなどはヒメバチ科みたいですね。先ほどの記事に、亜科の検索の流れも載っているのですが、やはり採集しないとどうしようもありません。
上はナカオビツヤユスリカ♂。下も♂ですが、よく分かりません。ツヤユスリカの仲間は腹部パターンが種によって異なるので面白いのですが、この間、ツヤユスリカ属Cricotopusを調べてみたら、本州産だけでも38種。なかなか大変なことが分かりました。しかも、総説は見つからないし・・・。今のところ、お手上げです。
後単眼剛毛が交差しているので、たぶん、シマバエ科だと思います。以前、検索をしてSapromyza (Sapromyza)属になったものと似ている感じです。でも、肝心の検索過程が写真に撮っていませんでした。これだけ多岐にわたって虫を調べているときには、面倒でも記録を残しておくことが重要ですね。
これはこの間からいるベニモンアオリンガ。
ついでにマンションの廊下にいたハガタベニコケガ。これは前翅前縁が盛り上がっているので、♂の方かな。
桜の木に止まっていたキマダラカメムシ。
それにイトカメムシの5齢幼虫です。イトカメムシは臭腺開口域を調べてみようと思って、昨日、公園に行って2匹ほど成虫を捕まえてきました。今は冷凍庫の中です。
それにモリチャバネゴキブリ。
後はクモです。これはヤミイロカニグモの幼体かなと思ったのですが、クモはよく分かりません。
このハエトリ、いつもだったらマミジロハエトリ♀と書きそうなのですが、「ハエトリグモ ハンドブック」を見てみると、類似種にマミジロハエトリの仲間♀とネコハエトリ♀がいるとのことです。前者にはマミクロハエトリがいます。写真をしげしげと眺めたのですが、腹部背面の模様はネコハエトリに似ているし・・・。なんだかよく分からなくなりました。
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