家の近くのむし探検 ハラボソムシヒキ(失敗談)
家の近くのむし探検 第270弾
昨日の続きで6月20日に公園で探した虫たちです。
この日はこんなハエがいました。初めて見た虫なのですが、複眼が大変綺麗です。パット見でクサアブ辺りかなと思ったのですが、後で考えるとこれが間違いのもとでした。
まず翅脈を調べてみました。「絵解きで調べる昆虫」に載っている翅脈の図と比べると、クサアブ科やシギアブ科によく似ています。この手の翅脈の場合、r1、m3、cuaという翅室が閉じるか開くかが問題になることが多いのですが、この個体の場合は全てが開いています。こんなところもよく一致しています。
ただ、触角が非常に変わっています。節の番号は名前が分かってからつけたもので、最初見たときは何節なのかはさっぱり分かりませんでした。
それで、いつものように「新訂 原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表で調べてみることにしました。クサアブ科あたりとイエバエ科辺りは「絵解きで調べる昆虫」では分からないことが多いので、「大図鑑」で調べることにしています。
生態写真では下小楯板は分からないので、両方の可能性を載せています。また、前縁脈がどこまで伸びているかも写真でははっきりしなかったので可能性を残しておきました。後は検索項目で妥当と思われるものだけを拾っていくと上のように最終的に4科の可能性が残ります。それで、個別に調べていきました。まず、キアブモドキ科はm3とcua室が共に閉じるので違います。アブ科類は触角が違います。そして、クサアブ科もシギアブ科も触角が異なります。つまり、すべて☓になってしまいました。
後はネットでキアブ科を探してみると、似たような触角の種の写真が載っているので何処かで間違えたかなぁとか、クサアブ科やシギアブ科で似たような触角の種はないだろうかとか、ほとんど一日中うんうんうなりながら調べていました。おまけに天気は悪くて、気分もすぐれなくて・・・。ハエ目は「絵合わせ」をできるだけ避けて、「検索」一本で頑張ってみようと思っていたのですが、とうとう負けて「大図鑑」の図版をぱらぱら見て、こんな触角の持ち主を探してみました。すると、ムシヒキアブに似たような触角の種がいました。ムシヒキアブ科の翅脈は変化に富んでいて、MNDを見ると、クサアブ科などとそっくりのものもいます。
そこで、いつもの「ムシヒキアブ図鑑」を利用させていただきました。そして、見つけました。ハラボソムシヒキ Dioctria nakanensisというヒゲボソムシヒキ亜科でした。脚の色もよく似ているので、たぶん、これでしょう。これで、画像検索するといっぱい出てきました。やはり、絵合わせの方が速かったかなぁとがっかりしながら、敗因を調べてみることにしました。
ムシヒキアブ科とクサアブ科などとはそもそも出発点が異なりました。脚の爪の間に爪間体というのがあるのですが、ここが問題でした。初めからクサアブ科かもと思って進んでいったので爪間体を調べなかったのが失敗のもとでした。爪間体というのは次の写真のようなものです。
左がムシヒキアブ、右は普通のアブです。褥盤が爪の下側にありますが、その間に爪間盤(爪間板)というのがあるかないかです。左は細い刺毛が生えているだけですが、右は何やらその間は詰まっています。つまり、クサアブ科などはこの爪間板があったのですね。
普段、爪の写真は撮らないのでなかなか分からないのですが、先程の個体の写真を拡大してみると、たしかに、褥盤とその間にある刺毛がかすかに見えました。ムシヒキアブの場合は褥盤は見やすいので、見ておく必要がありますね。とりあえず、先入観をもたないことが重要だというのが今回の教訓です。
ついでに他の虫も出しておきます。林の入り口の道端ではマダラホソアシナガバエが多いのですが、この公園ではこんな感じのアシナガバエとかもっと小さなのがいっぱいいます。アシナガバエは翅脈が変わっているので、それで属が分からないかなと思って、田悟敏弘、はなあぶ 30-2, 1 (2010)に載っている翅脈で分類をしてみました。Sympycninaeとか、Dolichopodinaeなどは見事に1~2群にまとめられるのですが、他のものではなかなか一筋縄ではいきません。特に、この写真の個体のように翅脈に特徴のない種は全部で8属が絡んでいて結構大変です。もう少しやってみますが、やや期待薄です。
これはミズアブ科です。死んでいるのか、複眼の色が変色しています。翅脈を見ると、中室が小さいので、たぶん、今まで見てきたMicrochrysaか、Cephalochrysaだと思いますが、♂の割には複眼が小さいので、ちょっと疑問になりました。採集すればよかったのですが、うっかり忘れていました。
これは以前調べたフチグロユスリカの♀に似ているなと思ったのですが、ちょっと違うような感じもします。とりあえず、ユスリカ亜科ということにします。
ハエは採集しない限り科も分からないので、写さないぞと決めていたのですが、ハナレメイエバエかなと思ってつい写してしまいまして。でも、頭頂に後傾の刺毛がないので、他の仲間のようです。
後はハチですね。今のところ、手付かずなのですが、そのうち、挑戦したいと思います。でも、小さなハチって山ほどいますね。
これはいつものアオバネサルハムシかな。
それにセスジヒメナガカメムシ。最近見るのはセスジばかりです。
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