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廊下のむし探検 チャバネヒメカゲロウ

廊下のむし探検 第914弾

6月13日にマンションの廊下を歩いてみました。この日はあまり虫はいませんでした。でも、いないといないで、何かと写真整理に時間がかかってしまいます。





この日、時間がかかったのはこのヒメカゲロウです。こんな感じのヒメカゲロウを見るといつもチャバネヒメカゲロウと言っているのですが、そういえばちゃんと検索したことがなかったかなぁと思って、過去のブログを見てみました。不思議としていません。それで、ちょっとやってみようと思ってし始めたのが、深入りの始まりでした。

W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915).(ここからダウンロードできます)

検索に用いているのはこの論文に載っている検索表です。だいぶ古いのですが、ほかに適当な検索表が見つからないので、いつも使っています。この検索表を使ってHemerobius属の検索をしたこともありました。この写真の種はいちばん普通に見られる種なのですが、どうしてか調べていませんでした。



原文は英語なのですが、私の拙い語学力で訳した検索表がこれです。



①のrecurrent veinというのは黒矢印の部分にあるはずの回帰する翅脈です。本来、翅脈は翅縁に向かって伸びているのですが、recurrent veinというのは翅の基部に戻る翅脈を指しています。実際の翅脈は先ほどのHemerobius属の検索で見ることができます。この個体にはないので、②に進みます。この②はM脈とCu脈が融合しているかどうかを聞く項目で、この写真でも分かるようにこの個体では融合していません。②bの書き方では前翅であたかも融合しているように書かれているので、一見、ここで選択枝がなくなってしまうのですが、この②の意味は上記論文の本文中に詳しく書かれています。「前翅では中脈は肘脈と融合せず、1本または2本の横脈で結ばれる。稀に2つの脈が短い距離で融合することがある;後翅では中脈は肘脈と融合しない。」つまり、通常、前翅ではM脈とCu脈は融合せずに横脈によって結ばれているということを意味しているのです。この写真では1m-cuから3m-cuの3本の横脈で結ばれています。したがって、②bのEumicromus属を選ぶことになります。なお、チャバネヒメカゲロウの翅脈はこちらに標本写真を載せていますので、参照して下さい。

次は種の検索です。



これも同じ論文に載せられています。⑦~⑨までを確認することによりEumicromus numerosus、つまり、チャバネヒメカゲロウになります。ところで、この論文に出てくる種名と、九大の昆虫学データペースに載っている種名を比較すると、驚くほど一致していません。たぶん、種名や属名に変更があったのだろうと思って、Catalogue of Lifeというサイトで一種ずつ調べていきました。その結果を図示すると次の図のようになります。



左の欄がNakahara (1915)に載っているMicromus属とEumicromus属の種、右端が九大のサイトに載っている種です。この両属はCatalogue of Lifeによるとシノニムになっていて、Micromus属に統一されているようです。その対応を見ると、Nakahara氏の論文の方が種類数が多くて7種、九大の方は結果的には4種となりました。今回の検索は種類の多いNakahara氏の検索表で行っているので、まぁ大丈夫だろうと思われます。

ただ、気になるのはM. timidusです。これはNakahara氏の論文に載っていませんが、九大のデータベースによると、分布に本州が入っています。千葉大のサイトにも?付きで載っているのですが、写真の質が悪くて詳細はほとんど分かりません。そこで、文献を調べてみると次の論文が見つかりました。

V. N. Makarkin, "The brown lacewings from Vietnam (Neuroptera Hemerobiidae)", Tropical Zool. 6, 217 (1993). (ここからダウンロードできます)

これはベトナム産のヒメカゲロウの論文ですが、この中にM. timidusについても書かれていました。これを見ると、翅の斑紋の位置が少し違う感じがしました。はっきりとは分かりませんが、たぶん、これではなくて、チャバネヒメカゲロウでよいのではないかと思いました。長くなったので、ほかの虫は次回に回します。
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