FC2ブログ

被写界深度を測る

接写で虫の撮影をしていると、虫の背にピントを合わせると脚がピンボケになるし、脚に合わせると頭や背がぼけてしまって困ることがあります。ピントが合う範囲を表すのに「被写界深度」という量を用います。これまで何度か測定をしたり()、幾何光学を使ってその原理ここからpdfがダウンロードできます)を考えたりしてきました。今更、やり直しをする必要もないのですが、また、やってみたくなったので、今度はカメラを使って実験してみました。



実験はこんな簡単なものです。カメラの前に斜め45度に置いた紙を置いています。これにピントを合わせて、後は絞りを変えて撮影するだけです。カメラはNIKON D7100、レンズはAF-S Micro NIKKOR 85mmを用いました。



紙は写真用光沢紙を用いて、これにPower Pointを用いて縦に細い線を密に書いて印刷するだけです。実際には、線の細さに0.25ptを選び、A4に描かれた図ををL判に縮小印刷しました。



顕微鏡で撮るとこんな感じです。下にはステンレススケールを置いています。測ってみると、線の間隔は0.432mm、線の太さは0.0938mmでした。こんな模様が斜めに置かれているので、ピントの合う場所ははっきり写るのですが、合っていないところはぼけてしまいます。画像上でピントの合っている範囲を測ると、45度に置かれているので、それがそのまま被写界深度になります。



これが実際に絞りを変えて撮影したものです。ただし、撮影倍率は1倍で固定しています。F5.0では中心付近しかピントが合っていませんが、F22にすると全体の半分以上がピントが合っています。このように絞りを絞るとピントが合う範囲が広がるのですが、実際には光量が減ってくるのと、回折広がりが起きてくるためにどこかで妥協をしないといけません。

こんな画像をImageJというフリーソフトで明るさ分布をグラフにしてみたのが次の図です。



F5.0とF22.0の例を載せていますが、黒い線のあるところは明るさでいうと暗くなるので、こんな下向きのグラフになります。凹みがちょうど半分になるところの幅を測って、それを「見かけの被写界深度」としました。「見かけ」と書いた理由は後で説明します。この例だと、F5.0だと408px、F22.0だと1965pxとなっています。pxはピクセルのことで、撮像素子の1素子の大きさを表します。つまり、F5からF22に絞りを絞ると、5倍ほど焦点の合う範囲が広がることを意味します。



いろいろな絞り(Fナンバー)で撮影して、「見かけの被写界深度」を求めたのがこのグラフです。このグラフでは縦軸は1px=0.00392mmの関係を使って長さに直しています(この関係は、カメラの仕様に載っている撮像素子の大きさ23.5mmが6000pxに相当するところから求めました)。さて、このグラフからはF10でも、被写界深度は3mmほどあり、小さな虫を撮影するときには十分な被写界深度を持っている気がしますが、この「見かけの被写界深度」とはいったい何を意味しているのか考えてみました。



以前考察した結果によると、幾何光学では接写の条件で被写界深度は上の式で表されます。倍率やF-numberはカメラ側で合わせればよいのですが、許容錯乱円とは何でしょう。これについても以前書いたのですが、簡単に説明すると、どのくらいまでをぼけていないとするかという限界の大きさを示しています。



許容錯乱円の求め方にはいろいろあるのですが、ここでは、この絵のように、撮像素子の対角距離の1/1500をもって許容錯乱円とするという定義を採用しました。NIKON D7100では撮像素子の大きさは23.5x15.6mm^2なので、対角線の長さは28.2mm。したがって、許容錯乱円の大きさは0.0188mmとなります。これが上の式のcの値になります。



ところで実際に測ったものは何でしょう。写真用紙には0.0938mmの線が引かれています。これが斜め45度に置かれているので、カメラから見ると幅は0.0938/√2=0.0663(mm)ということになります。ピントが合っているときは左の図のようにこの線がそのまま写りますが、ピントが合っていないと線がぼやけてきます。「見かけの被写界深度」を求めたときはちょうど高さが半分になるところを採用したので、右の図のようにぼけて幅が広がって高さが半分になったところを基準にしたことになります。その時の幅はおよそ元の線幅の2倍程度になったときでしょう。つまり、0.0663x2mmくらいということになります。したがって、この実験でぼやけたと判断するのは、大きさが0.0663mm程度になったときということになります。つまり、この方法では線の幅によってぼやけていると判断する値が変わってしまうのです。実際の実験では、実験データに合うように引いた斜めの線の傾きからこのぼやけたと判断する値を求めることができます。この実験の場合は、ぼやけの大きさは0.0807mmということになり、これがcの値になります。予想の0.0663mmという値とは少し違いますが、だいたい一致しています。

ところで、被写界深度はcの値に比例しているので、撮像素子の対角の1/1500で定義される許容錯乱円にするには、0.0807mm→0.0188mmに直すだけで変換できます。つまり、縦軸を0.0807/0.0188=4.29で割ればよいのです。そうして得られた図が次のグラフです。



これが本当の意味での被写界深度になります。このグラフだとF10では被写界深度は0.6mm程度となるので、小さな虫でも結構撮影に苦労するはずです。ただ、この許容錯乱円というのはどこまでのぼやけは我慢できるかという多分に主観的な面があるので、単なる目安と思った方がよいと思います。

今回はかなり幅のある線の列を使って被写界深度を測る方法について考えてみました。結局、線の列間隔は話には登場しなかったので、特に関係ないことになります。ただ、線があまりに疎らだと画像上でピントの合っている範囲を測りにくくなるので、適当な間隔が必要です。この方法を使って、今度は実体顕微鏡や生物顕微鏡の被写界深度も測ってみたいと思います。実は、実体顕微鏡の測定はもう終わっているのですが、今度まとめて出すことにします。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

廊下のむし

Author:廊下のむし

カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
カウンター
月別アーカイブ