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アブラムシの勉強とアブラムシ探し

「廊下のむし探検」も分野がどんどん広がっていって、収拾がつかなくなっているのですが、新しい分野は新鮮なことばかりでとにかく面白いので、収拾することにはあまりこだわらずやっていこうかなと思っています。この間から、翅の生えたアブラムシの姿をよく見かけるのですが、名前がまったく分かりません。それで、本を二冊衝動買いしてしまいました。

森津孫四郎、「日本原色アブラムシ図鑑」、全国農村教育協会 (1983).
松本嘉幸、「アブラムシ入門図鑑」、全国農村教育協会 (2008).

前者は概論が少なく、各論が中心でした。図版と説明は分かれていて、それぞれに約1ページずつ割いているのでボリュームはあります。ただ説明の半分は学名の変遷についてで、個々の特徴については専門的でなかなかとっつきずらい感じがしました。でも、図版の写真は豊富でその点では役に立ちそうです。後者は概論にはページ数を割いているのですが、内容的にはやや浅い感じで、読んでいてちょっと物足りなく感じました。各論は1ページに2種なので、1種について小さな写真が1-2枚しかなく、また、説明も短いのですが、見分け方が要領よく書かれているのでとりあえずは役に立つかなと思いました。

先日、その概論の部分を読んでみたのですが、アブラムシの生活史はなかなか複雑で何度読んでも頭に入りません。それで、ちょっと図にしてみました。



この絵は高知大学農学部生理活性物質科学研究室の絵を参考にして描いてみました。内容的には購入した二冊の本のうち、「日本原色アブラムシ図鑑」に書かれていた内容を絵にしたものです。なお、アブラムシのイラストはフリーのクリップアートを使っています。

アブラムシは、♂と交尾することにより卵を産む両性世代と、♀が単為生殖により子供を直接産む単性世代の二つの世代を取ります。この二つを一年のうちに行うものを完全生活環(holocyclic life cycle)といい、単性世代だけのものを不完全生活環(anholocyclic life cycle)といいます。暖かい地方では卵で越冬する必要がないので、不完全になることが多いようです。上の絵は完全の場合です。

さらに、卵で越冬した後、羽化した個体が単為生殖により増殖するときの寄主と、夏になって増殖するときの寄主を変化させる寄主転換を行う場合とそうでない場合があります。上の絵は寄主転換を行う場合の絵です。絵の説明をしていくと、冬でも枯れない樹木などに産卵された卵は、春になると羽化して幹母になり、子供を産み続けます。この時は卵を産むのではなく、子供を直接産む〈胎生)ので、子供の生育が早く約2週間ほどで成虫になり、再び子供を産み続けます。こういうサイクルを上の絵では円で描いています。こういう具合にしてコロニーが出来上がります。

春も後半になると、木の若葉が固くなり始め、幼虫の口吻で刺すのが大変になります。また、このころになるとコロニーの個体密度も高くなります。そうなると今度は翅のある有翅型の胎生雌が生まれてきます。この有翅型の胎生雌はコロニーを飛び出し、適当な食草に行き、そこで、再び単為生殖をおこないます。これを二次寄生といいます。二次寄生の寄主はそれほど限定されずにいろいろな植物になるそうです。また、この時は有翅型の胎生雌が生まれることが多いそうです。そうやって個体数が増殖され、晩秋になると、有翅型の産生雌が生まれ、これはもとの寄主(一次寄生)に行き、そこで、無翅型の卵生雌とたいがいは翅の生えた雄を産出します。この二者が交尾することで卵を産むという経路をたどります。

従って、今頃のコロニーに行くと、胎生雌や有翅型の成虫のほか、それぞれの第1齢から第4齢までの幼虫がいることになります。胎生雌と有翅型の幼虫は2齢までは差がなく、3齢からは翅芽ができるので区別ができるようになるということです。アブラムシの生活史を要約してみました(追記2017/05/04:アブラムシに関してはこのほかにも虫癭(虫こぶ)を作るものがあります。また、植物の汁の消化に腸内細菌が関係しているという話やウィルスを媒介するという話、兵隊アブラムシの話、角状管から分泌される液の話などいろいろとありますが、また、それに関連したことが出てきたときに紹介します

こんな知識を持って、アブラムシ探しに行ってみました。



帰化植物観察のために、神戸にあるポートアイランドに行ったときに、カラスノエンドウについていたアブラムシのコロニーを見つけました。



翅の生えたのは恰好がよいのでつい写してしまうのですが、同定には無翅の胎生雌成虫を用いるとよいとのことでした。写していた時はあまり疑問に感じなかったのですが、上の写真をよく見ると、緑色の個体と灰色の個体が混じっています。後で調べてみると、上の写真の有翅型と緑色の幼虫はたぶん、ソラマメヒゲナガアブラムシ、灰色のも幼虫でマメアブラムシの幼虫みたいです。この写真からどうやって名前が分かったかというと、両方の本とも寄主ごとに寄生するアブラムシのリストがついていて、その候補の中から探したらよいので、比較的簡単でした。



探してみると、矢印を示した緑色の幼虫や翅の生えた黒い成虫も見られます。



これはその黒いマメアブラムシの成虫を拡大したものです。



カラスノエンドウにはどれもアブラムシがたかっているのですが、大体はマメアブラムシみたいでした。





胎生雌や有翅型も見られました。なお、図鑑によると、ソラマメヒゲナガアブラムシは寄主転換はせず、暖地では不完全生活環を取るが、寒地では完全生活環になるとのことです。また、マメアブラムシは不完全生活環だそうです。



次は家の近くの公園にあるコデマリの木についていたアブラムシです。これも同じように「日本原色アブラムシ図鑑」で調べてみたら、ミカンミドリアブラムシAphis citricolaになりました。実はこのアブラムシは昨年、通りすがりさんにユキヤナギアブラムシ Aphis spiraecolaだと教えていただきました。それで、あれっ、違うのかなと思って調べてみると、どうやらこの2種は紆余曲折の末、現在ではAphis (Aphis) spiraecolaが正しいということになっているようです(Aphid species file, Catalogue of Life)。「アブラムシ入門図鑑」にはすでにそのことが書かれていて、ユキヤナギアブラムシ Aphis spiraecolaになっていました。



どれが成虫だか幼虫だか分からないのですが、両側の二本の突起(角状管)と中心の一本の突起(尾片)が黒いのが成虫かなと思いました。



有翅型もいました。そのすぐ横には何やら不気味なものも・・・。



これはその有翅型を真上から写したものです。ユキヤナギアブラムシの1次寄生はユキヤナギやコデマリになり、二次寄生は果樹や草本などいろいろな植物にわたるとのことでした。

ともかく、これでソラマメヒゲナガアブラムシ、マメアブラムシ、ユキヤナギアブラムシの3種が分かるようになりました。この後も探しに行ったのですが、それは次回に回します。
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