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虫を調べる タマバエ科Lestremiinae亜科

3月29日にマンションの外にある倉庫の壁にこんなハエが止まっていました。



これは採集して、冷凍庫に入れっぱなしになっていました。それで、昨日、冷凍庫から取り出し、調べてみました。



体長は2.9mm。まあまあの大きさです。まず、翅脈と触角から、これはタマバエ科だと思われます。そこで、タマバエ科の検索表を用いて調べてみました。属までの検索表は次のYukawa氏の論文とMND(Manual of Nearctic Diptera)に載っています。

J. Yukawa, "A Revision of the Japanse Gall Midges : Diptera : Cecidomyiidae", Memoirs of the Faculty of Agriculture, Kagoshima University 8, 1 (1971).(ここからダウンロードできます)

そこで、まず、Yukawa氏の論文の検索表で調べてみました。触角鞭節の節数で迷ってしまったのですが、最終的にはLestremiinae亜科Lestremiini族Anaretella属になりました。



検索はこの6項目だけを調べればよいので、これまでやってきたユスリカなどと比べると雲泥の差なんですが、ちょっと迷ってしまったところもありました。その辺りを含めて、検索過程を写真で示していきたいと思います。



まず、①は脚の跗節に関するもので、第1節が第2節より長いというものです。この写真でも明らかですが、第1節の方がだいぶ長いことが分かります。これで、Lestremiinae亜科になりました。



次は翅脈です。翅脈の名称はMNDを参考にしたのですが、「一寸のハエにも五分の大和魂」のタマバエ科の同じ属について書かれた記事を見て、M3→M3+4、CuA2→CuAと修正しました。この図からはM1+2が2分岐していること、M3+4とCuAが結合していないこと、M3+4がM脈の基部とは分離していること、M1+2の基部部分と分枝部分を比べると分枝部分の方が長いことを確かめます。



これはr-m横脈のあたりを拡大したものですが、Rsの基部部分とr-mはともに短いことが分かります。(追記2017/04/10:翅脈の名前を一部訂正しました。M3→M3+4、前半にあるM1+2→Mです。前者についてはすでに上に書きました。後者については以前、ユスリカの翅脈について書いたことがありました。ユスリカの場合はM3+4とCuAが一つの脈から分岐しているように見えます。これは翅脈の退化のためで、本来はM3+4はM1+2と結合し、CuAとの間にはm-cu横脈があるのですが、翅脈が退化したためM3+4が取り残されたようになっていると解釈するのです。三枝氏は近縁の科と翅脈を比較したり、翅脈の性質を調べたりしてこのような考えを出されています。今回のタマバエ科の場合はM3+4は基部で途切れているような形態を取っていますが、これはもともとM1+2と結合していたM3+4脈がその途中の脈とm-cu横脈を退化のために失い、M3+4脈だけが取り残されたからだと考えることができます。どうしてこのような形態を取ったのかについては不明ですが、たぶん、M3+4脈と平行に走っている翅の折り目の役割(飛翔のときに空気抵抗を減らすために必要)が重要になってきたため、翅脈がその中を走る神経系・気管や体液の循環をするという本来の役割を放棄してでも、その役割を強調しようとしたのではないかと私は思っています。いい加減な考えですが・・・。



ついでに、透過光で撮った写真も追加しておきます




次は頭部の拡大ですが、単眼は2個しかありません。これで④は確かめられました。以上で、①から④までは確かめられたので、Lestremiini族にまで達しました。



最後は属への検索です。ここで迷ってしまいました。鞭節が6~9節というAnarete属か、14節かという二者択一の選択肢があったからです。この写真はどう見ても、鞭節は9節しかありません。従って、Anarete属になるのですが、説明を読んでもどうもぴったりとは来ません。それで、後で書くMNDの検索表を試してみることになったのです。そうすると、Anaretella属になり、Yukawa氏の論文の属の検索表では鞭節14節の方を選ばないといけないことになります。しかし、属や種の説明を読むと、この論文ではAnaretella属について♂しか検してなくて、♀は実は鞭節9節であることが書かれていました。この個体は腹部末端(後で写真を載せます)を見ると♀みたいです。そこで、上の検索表ではそのことを補っておきました。これで、何とか⑤の前半をパスしました。



これは触角の拡大です。ここには触角各節に柄の部分(stem)があることや、剛毛が円周上に並んだ輪生(whorl)があること、さらに、指型の感覚突起(flagellar sensoria)があることが分かります。これで、結局、Anaretella属になりました。

ついでに、MNDの検索表も見てみます。



こちらは全部で9項目です。ほとんど、Yukawa氏の論文の検索表と同じなのですが、上で触れなかった項目だけ示すことにします。


まずはR4+5が長く伸びて翅の2/3を越えていることです。



さらに、左右の複眼が頭頂で接近していることを見ます(結合はしていませんでした)。これで、こちらも無事にAnaretella属になりました。

「日本昆虫目録第8巻」(2014)によると、Anaretella属はdefectaだけが書かれています(属名がAneretella属となっていました。たぶん、ミスプリです)。上のYukawa氏の論文ではもう一種、spiraeinaが載っていました。ともに本州に産するようなのですが、この種がその後どうなったのかよく分かりません。また、この論文に記述されているのは♂についてだけなので、♀の場合は種までは決められませんでした。それで、今回はAnaretella属までで止めておこうと思います。

ついでに写した写真も載せておきます。



胸部側面の写真です。



腹部末端側面の写真です。

タマバエ科の属の検索は項目数が少なく、その意味で比較的に簡単でした。それで、今度いたらまた捕まえて調べてみようかなと思っています。特に、触角にある感覚突起の形は面白いですね。
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