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虫を調べる ツヤヤドリタマバチ科 その2

先ほどの続きで、ツヤヤドリタマバチ科の属を調べてみたという話です。結果から言うと、残念ながら属の特定はできませんでした。でも、いろいろと変わった構造を見ることができて、結構、面白かったです。



調べたのはこんなハチで、体長は1.4mmくらい。普通に見るとちっちゃな虫だなぁと思うくらいなのですが、顕微鏡で見ると、どうしてどうしてなかなか面白い虫でした。科の検索をしてみると、ツヤヤドリタマバチ科らしいというところまでいったのですが、「大図鑑III」に、日本には9属21種を産すると書いてあったので、これは何とかなるかなと思って属を調べてみました。

まず、九大の日本産昆虫目録データベースを調べてみました。ここには「大図鑑III」に載っていたと思われる9属21種のリストが載っていました。属だけ書き上げると次のようになります。

Endecameris
Eucoila
Eucoilidea→Gronotoma
Hexacola
Kleidotoma
Leptolamina
Odonteucoila
Pseudoeucoila→Trybliographa
Rhoptromeris

矢印はHymenoptera Name Serverで調べたもので、左に書かれた属は右に書かれた属のシノニムとされているようです。ツヤヤドリタマバチ科については次の論文に属への検索表が載っていました。

1) J. Quinlan, "Hymenoptera Cynipoidea Eucoilidae", "Handbooks for the Idenfication of British Insects" Vol. VIII, Part 1(b), Royal Entomological Society of London (1978). (ここからダウンロードできます)
2) J. Quinlan, "A key to the Afrotropical genera of Eucoilidae (Hymenoptera), with a revision of certain genera", Bull. Br. Mus. nat. Hist. (Ent.) 52, 243 (1986). (ここからダウンロードできます)
3) C. M. Yoshimoto, "Revision of the Hawaiian Eucoilinae (Hym.: Cynipoidea)", Pacific Insects 4, 799 (1963).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
4) J. W. Beardsley, Jr., "Hawaiian Eucoilidae (Hymenoptera: Cynipoidea), Key to Genera and Taxonomic Notes on Apparently Non-Endemic Species", Proc. Hawaiian Entomol. Soc. 29, 165 (1989). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)
5) M. Forshage and G. Nordlander, "Identification key to European genera of Eucoilinae (Hymenoptera, Cynipoidea, Figitidae)", Insect Syst. Evol. 39, 341 (2008). (ここからダウンロードできます)

また、次のサイトにも写真を見ながら検索できる検索表が載っていました。

6) "Key to genera of Afrotropical Eucoilinae (Figitidae)"

ただ、どの文献も日本産9属がすべて載っているわけではないので、検索はうまくいきそうにありません。そこで、論文に載っている記述をもとに特徴を調べてみることにしました。



一番左の欄が属名、その右は分布で、記述のないものは南西諸島です。右から2番目は文献1)に載っていた属の特徴。一番右は検索表から抜き出した特徴です。Leptolamina属はどの論文にも載っていなかったので空欄にしています。追記2017/01/15:この表には次の文献に載っていたG. micromorphaの分布も加えました。

Y. Abe and K. Konishi, "Taxonomic Notes on Gronottoma (Hymenoptera : Eucoilidae) Parasitic on the Serpentine Leafminer,Liriomyza trifolii (Diptera : Agromyzidae)", Esakia 44, 103 (2004). (ここからダウンロードできます

)(追記2017/01/15:Leptolamina属については次の論文に載っていました。

C. M. Yoshimoto, "Insects of Miconesia, Hymenoptera: Eucoilinae (Cynipoidea)", Insects of Micronesia 19, 89 (1962). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文はLeptolamina属の記載論文になっています。この記載にしたがって、上の表に書き加えてみました。小盾板cupがかなり細長いのと、小盾板discが滑らかなど特徴がだいぶ違うのでたぶん今回の個体の属とは違うと思われます。この論文にはOdonteucoila属についても載っていたので書き加えました


上の表にはいろいろな特徴が載っていますが、その要点をまとめると次のようになります。



この1)から12)を調べると、属の特徴がつかめるのではないかと思って写真で調べてみました。



まずは頭部です。これに関する項目はありませんでした。



次は触角です。全部で13節あります。第6節から13節は形が変わっています。これをこん棒状(club)と言っているのではないかと思いました。



これは頭部の後ろの部分の拡大です。ここに板のような構造が見えます。英語ではpronotal plateと呼んでいるのですが、前胸背板の板状構造とでも訳すといいかなと思いました。これは横からでも見え、また、基部に左右から切れ込みがあるようです。



胸部側面からの写真です。文献1)と4)を参考に各部の名称を入れてみました。



そして、奇妙な形をした小盾板を示しています。ここでは中胸背板にnotaulusという溝があるかどうか見るのですが、背板はツヤツヤで特に溝はありません。



小盾板の拡大です。cupと呼ばれる構造は卵型で小盾板全体の8割ほどあってかなり大きいものです。cupの先端近くにpitと呼ばれる孔があります。cupの下にあるdiscは点刻ないしは網目状の構造をしています。さらに、小盾板基部にはfoveaと呼ばれる横長の孔が左右にあります。



これは腹部(後体節)の写真です。第1節がはっきり見えて短い毛で覆われた毛の輪を作っています。これに対して、第2節の前縁近くにはまばらな毛が腹面から側面にかけて生えていて背面には生えていません。



翅脈です。翅脈の名称は文献2)を参考にしました。翅全体に毛が生えていて、径室は閉じています。



これは後翅ですが、後翅の翅脈名はよく分かりませんでした。



径室の部分の拡大です。閉じていることがよく分かります。



翅縁は直線的か、多少凹んだような感じがします。



最後は腹部末端です。腹部の節を見ようと思ったのですが、なんだかよく分かりませんね。



以上の結果をまとめてみました。これらと日本産9属の特徴を比べてみると、よく分からなかったLeptolamina属を除き、径室が閉じるという条件からEucoila、Gronotoma、Rhoptromeris,Trybliographaの4属に絞られます。このうちEucoilaは翅が無毛なので除外でき、Gronotomaはnotaulusがあるので除外。RhoptomerisとTryboliographaは腹部第2節に完全な毛の輪があるというので除外されます。この毛の輪というのが初めよく分からなかったのですが、この2属については第1節が明瞭でなく、第1節と第2節の前縁付近全体が毛で覆われるようです。(追記2017/01/15;径室が閉じるのは、LeptolaminaとOdonteucoilaもそうでした。でも、小盾板discやcupの形状が異なるので、今回の個体はやはり該当しないようです)

結局、調べてみると、Leptolamina属を除いた日本産すべての属の性質と合いませんでした。そこで、文献やwebの検索表を使って仮に検索をしてみると、文献1)ではCothonaspis属、文献4)とWeb 6)ではともにLeptopilina属になりました。特にこの2属では腹部第1節がはっきり見え、第2節にまばらな毛が生えているところなどは似ています。ということで、現在のところはLeptolamina属か、もしくは日本産とされている属以外の属ではないかと思っています。このあたりが素人の限界でしょうね。でもまぁ、いろいろ調べるといい勉強にはなりますね。(追記2017/01/15:上の追記で書きましたが、Leptolamina属はかなり様相が違い、今回の個体の属とは違うと思われます。したがって、ここに載っていない属なのかなぁ)(追記2017/01/15:今回は顕微鏡に取り付けたカメラのテストを兼ねて行いました。全部で1000枚以上の写真を撮ったのですが、どうも新しく導入したNIKON 1 V2の方が今まで使っていたV1よりノイジーな感じがします。今度、それぞれの特性を調べてみたいと思います)
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