FC2ブログ

虫を調べる カクツツトビケラ

先日、マンションの廊下でトビケラを見つけました。



こんな毛むくじゃらの小さなトビケラです。触角の根元が毛で覆われているので、たぶん、カクツツトビケラだろうなと思ったのですが、「日本産水生昆虫」には♂交尾器の絵がたくさん載っていたので、一度、調べてみようと思って採集しました。ところが、毒瓶に入れてそのまま忘れてしまっていました。さらに、毒瓶の中の除光液がほとんどなくなっていて、からからになっていたので、取り出した時には乾燥してしまっていました。また運悪く、この個体は♀だったので、はじめの目論見は駄目になってしまいました。でも、カクツツトビケラの科の検索はまだやったことがなかったなと思い直して、とりあえず、やってみることにしました。しかし、いろいろといじっている間に、触角は折れるは、翅はちぎれるやらで、ブログに出すのはやめようと思ったのですが、写真は撮ったので、一応、出しておきます。でも、次回、もう少しちゃんとした検索をしてみるつもりです。

科の検索表は「日本産水生昆虫」に載っています。ただ、いくつか訂正があるみたいで、訂正事項については「トビケラ専科」の修正情報に載っていました。今回はその修正を加えています。



カクツツトビケラ科に至るためには上の7つの項目をクリアしないといけません。①はヒメトビケラ科を除外する項目で、ヒメトビケラ科は前翅・後翅の先端が尖り、触角が短くて太いなど外見的にだいぶ違うので、これは簡単に除外することができます。次の②~⑦については写真で見ていきます。ただ、乾燥してしまって見にくいのでその点ご了承ください。



いつものように、検索の順番ではなしに、部位別に見ていきます。関連する項目を写真に書き込んだので、それを見ながら写真を見ると分かるようになっています。まずこの写真では触角と前翅の長さ比較ですが、見たとおり、若干、触角が長いのですが、この程度は「同長程度」といってよいのではと思いました。⑦は「触角の基節は太く長くなり・・・」というところで、写真でははっきりは見えませんが、毛の生えている部分を指しているのだと思います。



次は小顎鬚についてです。まず、これは♀なので小顎鬚は5節あることになっているのですが、確かめると、この写真のように5節あります。その5節が鞭のように長くなっていないというのが③です。シマトビケラなどはこの部分が長く伸びています。シマトビケラ科については、確か、以前に標本写真も撮ったので、こちらの一番下の写真を見てください。



頭部と胸部ですが、毛が多くて見にくいですね。単眼はないのですが、この写真ではよく分かりません。残りの⑥と⑦は中胸小盾板についてで、矢印で示した部分より下の三角形状の部分が小盾板に当たります。そこにはこぶ状隆起が左右に一つづつついています。



翅が破れてしまったので、ついでに外して写真を撮りました。翅脈の名称は次の論文に載っているものを使いました。

K. Tani, "A Revision of the Family Lepidostomatidae from Japan (Trichoptera)", Bull. Osaka Museum Nat. His. 24, 45 (1971). (ここからダウンロードできます)

ただ、論文の図とCu、A脈付近の脈相が異なるので、この辺りは付け方が違っているかもしれません。dc、mc、tcについては以前に意味を調べたのですが、その文を引用すると、「DCはdiscoidal cellの略で中国語では「盤室」、MCはmedian cellの略で「中室」、TCはthyridial cellで中国語では「明斑室」または「明斑後室」となっていました」ということです。詳細はこちらを見てください。ここではDCとTCがあって、MCが閉じていない翅室であることを見ます。また、全体に毛が生えています。



この写真は出さなくてもよかったのですが、一応、中脛節に前距があることを確かめます。また、距式というのは各脚の脛節距の数ですが、この写真からは前脚に2、中脚に4あることが分かります。後脚も4なので、距式は2-4-4ということになります。

ということで②から⑦まで、一応、すべて確かめました。したがって、カクツツトビケラ科だということになります。この後は交尾器を見ていくのですが、「日本産水生昆虫」には♂の交尾器の図しか載っていないので、ここでストップになります。

一応、腹部末端の写真も撮ったので載せておきます。





これは実体顕微鏡で写したものですが、上は横から、下は腹側からの撮影です。各部の名称をつけたかったのですが、♀について書いた論文がなかなか見つからなくって、やっと次の論文に少しだけ載っていたので、真似をしてつけてみました。

T. Ito, "Six new species of the genus Lepidostoma Rambur (Trichoptera, Lepidostomatidae) from Japan", Zoosymposia 5, 158 (2011). (ここからダウンロードできます)

t8は第8背板のことです。lateral projectionsとsubgenital plateについては、一応、書き入れてみたのですが、間違っているのかもしれません。腹側から写した写真を見ると、光沢のある板状のものが見えるのですが、これがsubgenital plateなのかなと思っています。





これは同じ部位を生物顕微鏡の対物レンズ10xで撮ったものです。先ほどよりはかなり鮮明に写りました。いずれも深度合成の方法で撮っているのですが、どうも、被写界深度が浅いほうが後で合成したときに綺麗に見えるようです。

今度は♂でもう一度きちんとした検索をしてみたいと思います。なお、先に載せた「トビケラ専科」によると、学名がだいぶ変遷しているようです。例えば、コカクツツトビケラについては、

Atomyiella japonica→Dinarthrodes japonicus→Goerodes japonicus→Lepidostoma japonicum

という風にです。このサイトによると、日本産のカクツツトビケラ科は現在、Lepidostoma属とZephyropsyche属の2属に分かれて、前者は44種、後者は2種だそうです。
スポンサーサイト



コメントの投稿

非公開コメント

プロフィール

廊下のむし

Author:廊下のむし

カテゴリ
リンク
最新記事
最新コメント
カウンター
月別アーカイブ