家の近くのむし探検 赤いハエ、ミミズクほか
家の近くのむし探検 第158弾
昨日午前中に家の近くの公園で虫探しをしてみました。最近は、以前と同じように植え込みのツツジの葉をずっと調べていき、次に木の幹を調べています。これだけで全部で1時間ちょっとかかります。虫は少ないのですが、それでも、よく調べると面白い虫がちょこちょこといます。
この日はこんな赤いハエがいました。腿節が結構太く、脛節より先が黒い色をしています。翅脈が変わっています。M1脈が曲がっているので、クロバエ、ニクバエ、ヤドリバエ辺りが考えられますが、その曲がり方が何とも変わっています。たぶん、ヤドリバエかその近くの科だと思うのですが、図鑑を見ても載っていません。こんな赤色なので、名前はすぐに分かるだろうと高をくくっていたのが失敗でした。そんなことなら採集して来ればよかったと思っても後の祭りです。MNDで翅脈を見ていったのですが、同じような翅脈は見つからず・・・。さてどうしようか。
(追記2016/09/23:この写真だけではどうしようもないので、ちょっと他力本願的なのですが、ネット情報を集めてみました。まず、「赤いハエ」というキーワードで画像検索すると、熊本の方が同種と思われるハエの写真を撮っておられました。次に「みんなで作る双翅目図鑑」では、ヤドリバエ科Hemyda sp.で似たハエが載っていました。さらに、Hemydaで「一寸のハエにも五分の大和魂・改」のワード検索をすると、3536、3648、4099に関連した記事が載っていました。それによると、3536では長崎県、4099では千葉県で同様の種を観察されているようで、ヤドリバエ科ヒラタハナバエ亜科のHemyda属の1種ということになっていました。なお、「日本昆虫目録第8巻」にはHemyda属は2種記録されているので、学名で画像検索すると外国産の画像が出てきました。いずれも今回の種とはかなり外見が違いました。記事の中に、神奈川虫報にも極めてよく似た種が載っていたと書かれていました。そのときはAlophorophasia sp.とされていたそうです。
あまり他力本願ばかりではと思って、横からの写真も見てみました。ちょっとピントが甘かったので、ボツになっていたのですが、それでも、よくよく見ると、小盾板の下に後小盾板が微かに見えます。ヤドリバエ科は間違いなさそうです。私はまだこの辺のレベル・・・)(追記2016/09/23:WikipediaのPhasiaを調べると、AlophorophasiaはPhasiaのシノニムになっていました。さらに、Phasiaで画像検索すると、外見的には似た種はいないのですが、M1脈(M1+2脈)が奇妙に曲がった種が見られました。Phasia属の可能性が高くなってきました。「日本昆虫目録第8巻」によると、Phasia属は12種が記録されています。もしこの属なら、だいぶ絞られてきました)
ユスリカはこの間、フチグロユスリカだと思った種がまたいました。名前は合っているかどうか分かりませんが、ちょっと顔見知りができて嬉しく思っています。
これはたぶん、ハナレメイエバエの仲間ですね。
この間もいたヒサマツムシヒキ♀です。最近、よく見ます。
一時期、あちこちの桜の木の幹にいたムラクモハマダラミバエはほとんどいなくなりました。探し回ってやっと一匹見つけました。
これは休憩に立ち寄ったコミュニティープラザでいたオオチョウバエです。ハエはこんなところです。
次はカメムシ目です。これはミミズクだと思うのですが、この間見た個体と色や頭部の形が少し違います。ひょっとして別種かもと思って調べてみました。でも、意外に情報が少なかったです。やっと古い論文を見つけました。
加藤正世、「日本産蝉科(Ledridae)に就いて」、動物学会雑誌 43, 431 (1931). (ここからダウンロードできます)
この中には8属23種が載っているのですが、この頃は台湾も含まれていたので、日本産については2属3種だけでした。「原色昆虫大図鑑III」には日本産は5属6種、そしてその中の4種が載っていました。
J. R. Jones and L. L. Deitz, "Phylogeny and systematics of the leafhopper subfamily Ledrinae (Hemiptera: Cicadellidae)", Zootaxa 2186, 1 (2009). (ここからpdfがダウンロードできます)
さらに、この論文には世界のミミズク亜科の属のリストが載っていました。調べてみると、日本産としては
Ledra auditura ミミズク
Ledropsis discolor コミミズク
Ledropsis wakabae ホシコミミズク
Tituria angulata ヒラタミミズク
Neotituria kongosana
Petalocephara sp.
この6種が生息しているみたいです。ここでストップなのですが、加藤氏の論文には属の検索表も載っていて、この上の5属がすべて載っていました。必要なところだけ抜き出すと次のようになります。
体に顆粒を欠き滑澤なり Tituria, Pelalocephala, Parapetalocephala
体に顆粒を散在す
後脛節は扁平に拡大せず
頭頂は複眼間の幅と等しきか或は長し Funkikonina, ledropsis, Petalocephaloides
頭頂は複眼間の幅のの1/2に等しい Midoria
後脛節は扁平に拡大す Ledra
体に顆粒が散在するという方を選び、後脛節は見えないので両方を選び、頭頂の大きさは適当な方を選ぶと、Ledra属かMidoria属になります。日本にはMidoria属はいないので、必然的にミミズクになるのですが、加藤氏の論文の絵を見るとMidoria属の外形とよく似ています。やはりミミズクなのかなとは思うのですが、もう少し調べてみたくなりました。(追記2016/09/28:菅井 桃李さんから、「ミミズクは色が違う様ですけど、まだ新鮮な成虫だからとか?カメムシ目も意外と難しいものが多いですよね。」というコメントをいただきました)
最近よく見るキマダラカメムシの幼虫です。普段は葉表にいるのですが、近づくとすぐに葉裏に隠れてしまいます。
そうして、潜望鏡よろしく触角を出しています。
これは桜の木の幹にいたウシカメムシ5齢幼虫です。かなり速い速度で登っていました。
これはクサギカメムシです。
(追記2016/09/23:写真を1枚貼るのを忘れていました。
ヒゲナガカメムシだと思いますが、どうも最近、クロスジヒゲナガカメムシとの違いがよく分からなくなっています。「日本原色カメムシ図鑑第3巻」の検索表によると、革質部に黒色の縦紋があるのがクロスジヒゲナガ、ないのがヒゲナガになっています。従って、これは黒い紋はあるのですが、縦紋ではないのでクロスジということになります。ただ、どの程度の長さから縦紋というべきかというのがいつも悩むところです)
最後は植物です。最近は花が少なくてこんなヨモギを撮ってしまいました。
かなり変わった花でした。「野に咲く花」を見ると、中央に両性花、周辺ににょろにょろしているのが雌花の柱頭のようです。先が2つに分かれたものが5つあるので雌花は5個ということですね。ヨモギはこんな花だったのですね。ほかの虫は次回に回します。
スポンサーサイト