家の近くのむし探検 ハエ、ハチほか
家の近くのむし探検 第121弾
3日前の公園での虫探しの続きです。ハエはなかなか厄介で、1匹でもああでもないこうでもないと時間を取られてしまいます。結局ははっきりとは分からないのですけど・・・。この日もいくつかそんなハエがいました。
アシナガバエはぴかぴかして写真の対象としてはいいのですが、いざ、名前を調べようとするとなかなかの難物です。この個体は翅脈のM1+2脈が途中でクランク型に折れ曲がっています。写真で見ると、左から3番目の脈です。この特徴から、たぶん、アシナガバエ亜科のDolichopus(ナミアシナガバエ)属だと思われます。この属には「日本昆虫目録第8巻」には4種載っていますが、田悟氏の「関東地方にて採集したアシナババエ科の記録」、はなあぶNo. 30-2 (2010)、No. 34 (2012)には未記載種が9種も載っています。ここから先はどうやって攻めたらよいのだろうか。
さらに、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の記事を読むと、この曲がっている翅脈をどう呼ぶかにも議論がありそうです。MNDではこの曲がった脈をM1脈とし、曲がる前のもともとの脈が延長して少し突き出している部分をM2脈としています。一方、Bickelはこの脈が緩やかにもっと大きく曲がるホソアシナガバエ(Sciapodinae)亜科について、仮想的な脈を仮定して、大きく曲がる方の脈をM1脈、もともとの脈の延長をM2脈としています。
D. J. Bickel, "The Australian Sciapodinae (diptera: Dolichopodidae), with a review of the oriental and Australasian faunas, and a world conspectus of the subfamily", Australian Museum Journal, Suppl. 21 (1994). (
ここからダウンロードできます)
これに対して、先の掲示板ではDolichopus属については疑いようもなく、曲がっている脈をM1+2脈とし、突き出している脈は二次脈とすべきだとしています。また、Schiapodinaについても同様の意見をお持ちのようです。翅脈の解釈は化石や発生途中の翅脈から先祖型を調べる方法と、近縁種から仮想的な基本形を探す方法があったと思うのですが、アシナガバエの場合はどうすべきなのかはよく分かりません。
ハエついでに別のハエです。桜の木の幹を見ると、いつもこのムラクモハマダラミバエがいて、たえずうろうろしています。この日は2匹がニアミスを起こすところを見ました。写した写真を後で見ると、♂(右)と♀(左)だったのですね。でも、何事もなく通り過ぎていきました。
桜の木の幹で結構すばやくすすすっと動く虫がいるなと思って撮ったら、ウロコチャタテでした。木の幹を見ているとチャタテによく出会えますね。
木の幹ではこんなアリが固まっていることがよくあります。樹液のようなものが出ているのでしょうか。
拡大するとこんなアリでした。これは見覚えがあります。アミメアリですね。
木は木でもこれは木のベンチです。ムシヒキアブが止まっていました。腹部に白い帯があります。
腹部末端も拡大してみました。「ムシヒキアブ図鑑」の写真と見比べてみると、ヒサマツムシヒキではないかと思いました。はっきりとは分かりませんが・・・。
ツツジの葉の上にかなり大きなヨコバイの幼虫がいました。大きさは1cmくらいはありそうな。これがツマグロオオヨコバイの幼虫なのかなと思ってネットの画像検索をしてみると、がっくり。白いのと黄緑色のものが出ています。これまた調べないといけないみたいです。(追記2016/08/05:脱皮直後は白いと書かれているサイトがありました。真偽のほどは分かりませんが、十分に考えられます。もう少し調べてみます)
翅脈が見えているので写したのですが、いつもヒメバチらしいというところで止まってしまいます。
最後はマンションの廊下です。かなり大きくて、初め見たときはハルカみたいなものを連想してしまいました。でも、「原色昆虫大図鑑III」の図版を見てみても、こんな長い口吻を持っているものはありません。だとすると、カ科。しかも、ハマダラカです。そこで、「日本産水生昆虫」の図を見て、翅脈に名前を付けてみました。
やはりカの翅脈と一致しますね。ハマダラカは翅の前縁近くの白い模様に名前がついているようです。それに倣って模様に名前を付けてみました。ハマダラカ亜科はハマダラカ属1属で、亜属の検索表が「大図鑑」に載っていました。
1a 翅の前縁には肩紋のほかに少なくとも4白斑がある タテンハマダラカ(Cellia)亜属
1b 翅の前縁には肩紋のほかに多くとも3白斑があるに過ぎない ハマダラカ(Anopheles)亜属
肩紋はhumeral spotのことで、この個体についてはsubcostal, subapical, apicalの3白斑だけなので、ハマダラカ亜属になるようです。この亜属には、日本産は10種いるのですが、特徴と分布からヤマト、チョウセン、エセシナ、オオツルの4種に絞られます。でも、ぱっと目で見たときに感じたほどの大きさをもった種はいません。口吻が長いので大きく見えたのだろうか・・・。なんで大きさを測らなかったのかと悔やまれます。
スポンサーサイト