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ツチトビムシでギブアップ

先日からずっとトビムシを調べていたのですが、どうしてもうまくいかないので、この辺りでギブアップにしました。とりあえず、これまで調べた結果をここでまとめておこうと思って書いてみました。この間のイエバエといい、今度のトビムシといい、このところ検索がちっともうまくいきません。ちょっとスランプ気味です。



この間から調べているのはこんなトビムシです。頭部と触角第1節が黒くて、胸部と腹部背面に縦筋が入り、これだけでも種類が分かりそうなのですけど・・・。とりあえず、数匹捕まえてきて調べてみました。体長は2.4mmでした。

田中真悟、「日本産トビムシ類の科の分類」、Edaphologia 22, 27 (1980). (ここからダウンロードできます)
新島溪子、長谷川元洋、「日本産ツチトビムシ科(昆虫綱:トビムシ目)の分類 1.ナガツチトビムシ亜科およびヒメツチトビムシ亜科」、Edaphologia 89, 29 (2011). (ここからダウンロードできます)

上の論文に載っている絵解き検索表を使ってとりあえず検索してみると、ツチトビムシ科ツチトビムシ亜科になりました。その過程を抜き出すと以下のようになります。ここで、トビムシの科の検索は上側の論文、ツチトビムシ科の亜科の検索は下側の論文に載っています。



赤字の部分は確認できた部分、青字はないことが確認できた部分、黒字は確認できなかった部分を示しています。各部の写真を見ながら確かめていきます。



全貌はこんな感じです。後ろに長く伸びているのが跳躍器です。検索表には跳躍器前面、後面という表現があるのですが、跳躍器を後ろに伸ばした状態で前になるか後ろになるかで決めているようです。脚の付け根の部分を追いかけていくと、後脚、中脚はそれぞれ胸部の節が対応していますが、前脚にはそれがありません。これが②の「前胸節が退化し」という表現に対応しているようです。また、写真では分かりにくいのですが、全体に毛が生えていて鱗がありません。



次は背側から見た写真です。腹部第3節と第4節の幅にそれほど差はありません。また、第4節と第5節は分離しています。



これは跳躍器の部分です。基部を柄節、そこから先が二つに分かれていてこれを茎節、さらに、この写真では見えませんが、先端部分に端節があります。茎節は柄節よりはるかに長いことがすぐに分かります。また、腹部にはこの跳躍器を腹側に折り曲げたときにそれを固定するための保体が見えています。



これは跳躍器の先端部分を見たのですが、先端のわずかな部分が端節です。端節には歯があります。この歯の数や形が検索表に出てきますが、どうみても3歯だけ見えます。強いて言えば、一番上の歯の上側に小さな段差があるので、それを1歯と数えるのかもしれません。いずれにしても、この部分を地面に固定して、跳躍器を曲げながらジャンプするみたいです。



これは跳躍器後面を拡大したものですが、茎節の上に横縞模様が見えます。これがおそらく環皺状というのだと思います。



これは跳躍器前面を透過照明で撮影したものです。柄節には毛がたくさん生えています。



最後は頭部の拡大ですが、いくつかの眼がかたまって眼斑を作っていることが分かります。PAOはpostantennal organの略で、日本語では触角後器と呼んでいる感覚器です。これがどこにあるのか分からないので、上の検索表では黒字で書いておきました。とりあえず、これだけを確認すると、ツチトビムシ科ツチトビムシ亜科であることが分かります。

ここまでは順調だったのですが、ここから先がうまくいきません。ツチトビムシ亜科の属と種への絵解き検索表は次の論文に載っています。

長谷川元洋、新島溪子、「日本産ツチトビムシ科(昆虫綱:トビムシ目)の分類 2.ツチトビムシ亜科」、Edaphologia 90, 31 (2012). (ここからダウンロードできます)

この論文に載っている検索表から必要な部分を抜き出すと次のようになります。



あちこちでつまづいたので、黒字の部分が多くなっています。まず、問題のPAOを詳しく調べてみました。



これは2匹の眼斑の部分を比較したものです。眼に見える部分を数えると白矢印で示したように6個になります。強いていえば赤矢印の部分も増やして全部で8個になります。というのは、ツチトビムシ亜科では8個の種が多いからです。さて、いくら探してもPAOらしい穴が見えません。そこで、次の論文に載っているコサヤツメトビムシの眼を重ねてみました。

H. Uchida and H. Tamura, "Descriptions and records of Collembola from Hokkaido II",  昆蟲 38, 1 (1968). (ここからダウンロードできます)



眼の位置はほぼ合わせられるのですが、PAOとされている二重の輪の部分は、この写真の個体では触角基部の穴の部分になっていて、とても合いそうにありません。たぶん、この個体ではPAOがないのではないかと思っています。だとすると、ツチトビムシ亜科ではオナガシオトビムシ属だけになってしまいます。オナガシオトビムシ属には日本産は1種、オナガシオトビムシだけが記録されています。論文に載っている体長は1.4mm。そもそもそれが合いません。



次は茎節後面の皺模様です。これは問題ないのではないかと思います。



次はこれも問題になった触角第3節の感覚桿です。この写真は触角第3節を透過照明で撮影したものですが、毛の間に形の整わない突起がいくつか見えます。ざっと数えただけでも7個は見つかりました。これが感覚桿だとすると、検索表上では再びオナガシオトビムシ属になってしまいます。



次は前脚の爪です。検索表ではオナガシオトビムシ属では主爪に側歯があることになっています。爪を上から見てみると、



こんな風に一対の側歯があります。ところが、次の論文に載っている検索表を見て迷い始めました。

R. Yosii, "Critical Check List of the Japanese Species of Collembola", Contributions from the Biological Laboratory, Kyoto Univ. 25, 141 (1977). (ここからダウンロードできます)



ツチトビムシ亜科の属への検索表をすべて訳してみました。先ほどと同様、赤は確認できたもの、青はないことが確認できたもので、黒は未確認のものです。先ほどの部分は「爪には背側に糸状の付属物がある」という表現になっています。先の論文の検索表の絵でも毛のようなものを指して側歯としていました。さらに、各論の部分では「前肢の主爪に外棘がある」と書かれています。そう思って上の写真を見ると前肢の主爪に毛のようなものが見えています。そこで、もう一度左右の爪を調べてみました。



これがその写真ですが、糸状の付属物はありません。先ほどのは後ろに生えていた毛が重なっていたと思われます。ということで、オナガシオトビムシ属ではないということになります。よく見ると、爪の基部は覆いがついているような感じもします。これが偽外被なのかなと思ったりしたのですが・・・。この辺りでもうさっぱり分からなくなってきました。



最後は保体の写真です。先端が二つに分かれ、その外側にがたがたした部分があります。この部分ではめ込まれた跳躍器の茎節を固定するようです。この保体の基部に生えている毛の数を問題にするのですが、十数本は見えています。

ということで、現在はこの辺りで迷子になったままで止まっています。トビムシは論文が充実しているので簡単かと思ったのですが、なかなか大変です。「日本産土壌動物 第二版: 分類のための図解検索」が2015年に出されているので、今度調べにいこうと思っています。
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