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虫を調べる カグヤマメヒメハナバチ?

先日捕まえたハナバチを調べてみました。まだ、確信が持てないのですが、とりあえず、ヒメハナバチ科のカグヤマメヒメハナバチではないかというところまで達したので、一度、まとめてみました。



調べたのはこんなハチです。よく見るような、そうでもないような。ハナバチの仲間は皆よく似ているのでなかなかぱっと見だけでは分かりません。それで、ハナバチの勉強のつもりで調べてみました。

検索に用いたのは、次の本の検索表です。

多田内修、村尾竜起著、「日本産ハナバチ図鑑」(文一総合出版、2014)

この本は写真も鮮明で、検索表も分かりやすくよくまとまっていて、たいへん使いやすい本です。一度、この本を使ってきちんと検索をしてみようと思って、先日、キオビコハナバチ(?)を調べてみました。今度は別の科のハチなので、検索がちょっと楽しみでした。検索の結果、ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属まで達しました。この後は検索表がないので、図鑑の説明からカグヤマメヒメハナバチ Andrena (Micrandrena) kaguyaではないかと思っています。まだ、はっきりしていないのですが、とりあえずその検索の過程を示したいと思います。



これは、上記の本に載っている検索表のうち、必要な部分だけを抜き出したものです。全部で13項目を調べてすべて合致すればヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属になります。ただ、まだこの結果に不安があったので、次の論文に載っているMicrandrena亜属の一般的特徴についてもついでに調べてみました。

XU Huan-li and O. Tadauchi, "A Revision of the Subgenus Micrandrena of the Genus Andrena of Eastern Asia (Hymenoptera: Apoidea: Andrenidae)", J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 56, 279 (2011). (ここからダウンロードできます)

載っていた特徴をまとめると次の表のようになります。



これらをまた部位別に見ていきたいと思います。



これが全体写真です。体長は6.7mm。これから小型のハチであること、腹部第2、3節後縁に縁毛帯があることが分かります。



次は顔面です。顔の幅の方が長さより長いことが何となく分かります。また、顔面全体が白い毛で覆われていて分かりにくいのですが、頭盾は黒く、突出してないことも分かります。触角の下に各々2本ずつ縦筋(触角下溝)があるのですが、この写真ではよく分かりません。複眼の脇で薄茶色に見えるところは顔孔といって少し凹んでいる部分です。♀にはこの顔孔があります。他の種類に比べると幅が狭いのかもしれません。この部分の毛の色は照明の当て方でだいぶ変化します。



右は前からの照明、左は後ろからの照明です。白矢印で示した部分を見ると、後ろから光を当てると毛が白くなっていますが、前から当てるとほとんど真っ黒になっています。一番上の写真でも白っぽい顔孔の毛が写っています。



頭盾の下に上唇があるのですが、その突起を写しました。この形が種類によって違います。この個体では三角形で先端が丸くなっています。ここが四角い種もあるようです。



次は頭部を横から写したものです。複眼と大顎の間をマーラースペースというのですが、この写真の個体では細くてほとんど線状になっています。これが長くないとか、直線的という表現に該当しているのだと思います。また、頬領域は複眼より広く感じます。



次のsubgenal coronetというのがよく分かりませんでした。genalは頬の、sub-は下、coronetは宝冠です。頬の下の宝冠という意味になりますが、ネットで見ても画像検索ではまったく引っ掛かりません。やっと論文を見つけました。

A. Dubitzky, J. Plant, and K. Schönityer, "Phylogeny of the bee genus Andrena FABRICIUS based on morphology (Hymenoptera: Andrenidae)", Mitt. Münch. Ent. Ges. 100, 137 (2010). (ここからpdfがダウンロードできます)

この中に電顕写真が載っていました。それによると、大顎の下側にある剛毛列のことのようです。上の写真は頭部の下側から撮影したものですが、大顎の根元の辺りに黄色い剛毛のようなものが見えます。もう少し拡大してみます。



これのことかなぁと思うのですが、よく分かりません。



次は胸部の写真です。中胸盾板や小盾板には細かな模様と点刻があることが分かります。また、前伸腹節には皺のような模様が見えます。



これは前伸腹節を拡大したものです。前伸腹節に逆三角形に見える部分が三角域です。前半部分は皺がありますが、横隆起線のようなものは見えません。また、前伸腹節が下に折れた後の逆三角形の先端部分には細かな模様があります。前伸腹節の側面の毛のことを花粉籠と呼ぶようです。この部分が発達しているかどうかは比較の問題なので、何ともいえません。



次は前翅翅脈です。いつものように翅脈に名前を付けてみました。ハチでは翅脈は独特の名前で呼ばれます。その名前で必要な部分のみを書いたものが次の写真です。



翅脈に関しては重要な性質がいくつもあります。まず、③の中脈が直線的というので、コハナバチ科と分かれます。次は⑤の矢印で示した部分が裁断状だとチビヒメハナバチ属になるのですが、写真のような場合はヒメハナバチ属になります。また、⑦の矢印で示した部分と第2逆走脈が近いとHabromelissa亜属になります。この個体では離れています。さらに、Ⓚでは径分脈が縁紋に極めて近いことを示しています。これはMicrandrena亜属の重要な性質です。



次は後脚脛節ですが、毛がふさふさです。これは刷毛(はけ)というようです。



それから腹部です。腹部第1背板には点刻がありません。それでも、あまり光沢があるようには見えません。その秘密は後でお見せします。これで一部の項目を除いて、ヒメハナバチ科ヒメハナバチ属Micrandrena亜属の検索表の項目と論文に載っていたMicrandrena亜属の特徴を調べたことになります。写真で示さなかったのは、①、②、⑧、⑪、Ⓝ、Ⓗの各項目と触角下溝です。①と②は大顎を開けないと写せないので、今回は省略しました。⑧、⑪、Ⓝはすぐに確認できるので、これも省略です。最後のⒽは意味が分かりませんでした。触角下溝は今度写真を撮ってみます。

これから種を調べていくのですが、上でお見せした上唇突起の形がヒントになります。これについては次の論文に載っていました。

O. Tadauchi, "Synopsis of Andrena (Micrandrena) of Japan (Hymenoptera, Andrenidae) Part II", J. Fac. Agr., Kyushu Univ. 30, 77 (1985). (ここからダウンロードできます)

この論文にはMicrandrena亜属に属するいろいろな種の上唇突起の図が載っていました。上唇突起が四角ではなく三角形状で、しかも、近畿地方に分布していそうな種をまとめてみると次の表のようになります。



種名は○○マメヒメハナバチの○○だけを書いたものです。ここで、アブラナは上記論文に上唇突起の図が載っていなかったのでこの表に書き加えておきました。右の欄は図鑑に載っていた他種との区別点です。これらと今回の個体とを見比べて、何となく違和感を感じた部分を赤字で書きました。この表から判断すると、カグヤマメヒメハナバチがもっとも妥当な感じがします。

カグヤの説明を読むと、中胸盾板に強い市松模様があると書かれています。また、図鑑の説明を読むと、腹部背板も市松模様で無点刻と書かれています。「市松模様」は本来、二色の四角形を交互に並べた格子模様なので、この表現が何を意味しているのかは分かりませんが、とりあえずそれぞれの部分を拡大してみます。



これは中胸背板です。網目のような構造のところどころに穴が空いています。これを「市松模様とやや密な点刻」と表現しているのかもしれません。



次は腹部第1背板と第2背板の境目辺りを写してみました。中胸背板よりやや大きめの網目模様がはっきり見えています。もしこの個体がカグヤだとすると、この網目模様のことを市松模様と言っているのでしょうね。第1と第2を見比べると、第2背板の方がやや網目が荒いようです。この写真の左端は網目模様を斜めから見た感じになっていますが、メロンの網目模様ののように網目部分が少し盛り上がっていることが分かります。メロンとは違って厚みのほとんどない網目ですが・・・。ともかく、表面にこんな構造があるために光沢がなくなっているのでしょう。

最後は前伸腹節三角域の拡大写真です。



逆三角形の先端部分にはやはり網目模様があります。これがカグヤの特徴とされる、「前伸腹節三角域は前面に皺があり、後部は市松模様が特徴」に該当しているのではと思いました。

ということで、あまり自信はないのですが、最終的にはカグヤマメヒメハナバチではないかという結論になりました。ヒメハナバチは図鑑といい論文といい、とにかく情報が多くてそれもそれぞれがしっかりした情報なので、検索をしてみたくなる、そんなハチの仲間です。これからも見つけたらまた試してみたいと思っています。
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