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ウスバカゲロウの翅脈(続き)

こんなタイトルで出そうとしたら、画面に「Yahoo!ブログのサービス終了のお知らせ」が出てきました。驚きました。これで6年以上続いた「廊下のむし探検」も終わりかなぁ。折角、いろいろと虫についても分かってきたのに残念です。これから先、いったいどうしたらよいだろう。

かなりショックだったのですが、予定通り、今日のブログを出すことにします。

先日、ウスバカゲロウの翅脈について書きました。このとき、翅の中央付近を走るCuA脈をCuAとすべきかCuA2とすべきか迷ってしまいました。その辺りを少し調べてみました。

[1] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

まずはこの本です。翅脈のバイブルともいうべき本で、発生期に翅脈に先だって成長する気管をもとに翅脈の名前をつけていく方法をとっています。一方、気管は横脈には伸びないことが多いし、また、二つの気管が近接して走っているときには翅脈になると融合してしまうこともしばしばです。それで、気管から類推するのは正しくないという批判もあります。翅脈の帰属にはこのほか、化石を調べて進化の過程から類推する方法と、近縁種の間の相同性から類推する方法があります。それで、翅脈の名称は人によっても時代によっても変わってしまうのです。



この間のホシウスバカゲロウの翅脈を使ってComstock風に翅脈に名称をつけ色分けしてみました。黄色は径脈(R)、赤は中脈(M)、青は肘脈(Cu)を表しています。ポイントのなるのは丸印で囲ったところにある”*”で書いた脈の解釈です。この脈は少し斜めに傾いています。ComstockはここでM脈は分岐してMA脈とMP脈に分かれると解釈しました。これには次のような発生期の気管の観察がもとになっています。



これはComstockの本の中の図ですが、"o"と書いた翅脈が上の写真の"*"と書いた脈に相当します。確かに"o"でM脈に相当する気管は分岐しています。また、そこで、Cu1脈の気管とごく接近しています。この二つの気管もとになり翅脈がくっついて上のような翅脈が出来上がったという解釈です。上の写真の例では、M1+2→MA、M3+4→MPなどとしていますが、MPとCuAは結局は横脈で結びついているという解釈になると思われます。





ついでに前翅と後翅の基部を見てみます。同じように色分けしたのですが、特に変わったところはないようです。

ウスバカゲロウについて、その後、翅脈について書かれている論文を探してみました。

[2] P. A. Adams, "New Ant-Lions from the Southwestern United States (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Psyche 63, 82 (1956).(ここからダウンロードできます)
[3] T. R. New, "A Revision of the Australian Myrmeleontidae (Insect:  Neuroptera) I. Introduction, Myrmeleontini, Protoplectrini", Aust. J. Zool., Suupl. Ser. 104, 1 (1985).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)
[4] L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

これら論文には翅脈の図が出ていて、Comstockとは異なる解釈になっています。ただ、そうする理由は[2]以外の論文には出ていないのですが、とにかくこれが現在では主流になっていると思われます。ポイントは前翅基部のM脈からR脈に向かう斜めの脈をM脈の分岐だと考えるやり方です。Adamsの論文にはその理由が少し書かれているのですが、Comstockの気管の発達の話には言及せず、近縁のヒロバカゲロウ科などの翅脈との関連からそうする方が相同性がよいという結論になっています。これらの文献に書かれた翅脈も微妙に違うところがあるのですが、大体は次のような図で描けると思います。



先ほどのComstockの場合と比較すると、丸印で囲った辺りでM脈が前方に分岐し、R脈と融合あるいは並進した後、Rs脈と融合し、その後、分岐してMA脈になって翅縁に向かって走ります。前翅も後翅もまったく同じようにM脈は一度R脈と一緒になって進みます。従って、Comstockが前翅でMP脈とした脈はこちらではCuA1脈となり、CuA脈とした脈はCuA2脈になります。





前翅と後翅の基部を見てみると、MA脈が斜めに分岐してR脈と融合あるいは並進している様子が分かります。私自身はこのMA脈が硬化していなくて、翅脈としてあまり有効に働いていないのではないかと思ってComstockの流儀で翅脈を描いたのですが、現在、このような名称となっているのならばこちらを採用するしか仕方がないですね。

もともと翅脈は曲がったり、翅脈同士が横脈で複雑に結合したりしているので、どれをどう呼ぼうと構わないのですが、進化の過程や近縁種との関係を論じるときにきちんとしたルールをもとにして名付けられないと議論ができません。しかし、当然、名付け方も解釈の問題になるので、人によっても時代によっても変化する可能性があります。従って、使うときには可能な限り図を描いて自分はこう定義しているんだということを示す必要があると思っています。
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虫を調べる ホシウスバカゲロウ

先日から手作り図鑑用にウスバカゲロウ科をまとめていたのですが、今日、だいたい出来上がって先ほどホームページにアップしました。その過程で、ホシウスバカゲロウはNemoleontini族Paraglenurus属に属していて、いろいろと面白い特徴を持っているので、顕微鏡写真を撮って検索をしてみました。一応、その結果をブログに出しておきます。



ホシウスバカゲロウというのはこんな虫です。これは2015年8月12日にマンションの廊下で撮影したものですが、翅に独特の模様があるので、見るとすぐに分かります。今日は標本箱に入っている標本で検索を試みました。この個体は1998年8月14日に採集したものです。この頃は蛾の標本を作っていたときで、毎朝、出勤前にマンションの廊下を回り、10数匹の蛾を捕まえてきては出勤前に展翅をしていたころです。蛾以外にもいた虫は片端から展翅をしていたので、ウスバカゲロウの標本もいくつか残っています。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索にはこの論文に載っている検索表から、翅脈や外部形態だけを抜き出した検索表を作って検索をしてみました。



この5項目を調べると、ホシウスバカゲロウであることを確かめられます。これを写真で確かめていきたいと思います。



これは前後翅の写真です。①、③、⑤はいずれも赤矢印で示したところを見ると分かると思います。特に③はNemoleontini族の特徴です。



次は前翅基部の写真です。特徴的なのは1Aと2Aが最初接近して平行に走り、やがて2Aと3Aが融合し、また、分かれます。今まで見た種とは融合している部分がやけに長いことに気が付きました。



私にとってはこの写真がやや衝撃的でした。後脚の脛節末端にある距刺の長さがこの間調べたコカスリウスバカゲロウではTa4程度まで伸びていたのですが、これはせいぜいTa1と同じくらいの長さです。刺が長いというより、跗小節の長さが短いというのが正しいですが・・・。また、Ta5の腹側には黒い短毛が密生しています。これも検索表に書かれている通りでした。ということで、すべての項目が確認されたので、これはホシウスバカゲロウで間違いないと思われます。



ついでに撮った写真も載せておきます。これは前胸背板を撮ったものです。頭頂は暗褐色で艶があります。



次は腹部末端を横から撮ったものです。かなり複雑なので♂かなと思ったのですが、先ほどの論文の絵を見るとまさに♀と同じ構造をしていました。ついでに各部の名称を調べようと思ったのですが、どうもはっきりしません。



論文には腹面から見た絵も載っていて、各部の名前が書かれているのですが、毛が邪魔をして細部はほとんど分かりません。腹部末端は難しいですね。

虫を調べる コカスリウスバカゲロウ?

この間から手作り図鑑を作るためにウスバカゲロウ科をまとめ始めました。いくつか標本にした個体があるので、もう一度見直していたら、つけていた名前がどうも違うのではと思う個体があって、もう一度検索をやり直してみました。だいぶ前だったので、きっと翅の模様だけで名前をつけていたと思うので、ちょうどいい機会だからちゃんと検索をしてみようと思ったのです。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

検索にはこの論文の検索表を用いました。この論文自体はウスバカゲロウ科の分類には翅脈と外部形態が主に使われ、もっとも重要と思われる♂♀の腹部末端構造の情報が十分でないので調べ直したという内容なのですが、今回は検索表のうちもっぱら翅脈と外部形態のみを使って検索をしてみました。



検索表のうち、本州産の種に限って翅脈と外部形態のみを抜き出し、さらに、候補になったコカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisに至る経路だけを書いたものがこの表です。なお、族の検索にはこの間も用いた翅脈だけの検索表を用いました。青字は私が翅の模様だけで名前をつけて間違ってしまったモイワウスバカゲロウ Epacanthaclisis moiwanaへ至る道を表しています。実は、この両者は族レベルで違っていて、検索の早い時点で分けることができます。



追記2019/02/26:昔のアルバムを見ていたら、まさにこの標本の個体を透明ケースに入れて写しておいた写真とそのネガが見つかりました。NIKON Slide Copying Adapter ES-1というスライドを写真に撮るためのアダプターがあったので、ためしにネガフィルムを入れて写してみました。そして、それを反転してみました。さらに、当時、写真屋でプリントしてもらった写真と比較して、明るさとコントラスト、色を補正した画像がこれです。ほぼ似たような画像が得られました。結構、こんな方法でもネガフィルムを復活できるかもしれません。これに伴い以後の文章を少し変えました



生態写真がないので、こんな標本写真だけなのですが標本に添えられたラベルには1996年9月1日と書かれていました。この当時はたぶん、蛾の採集をしていて、そのついでに採集したものだと思われます。標本にいっぱい鱗翅目の鱗粉が付いていました。この写真では⑤の大きさを確かめます。前翅長は測ってみると34.5mmありました。検索表の表現では大形ということになります。従って、大きさについてはOKです。



次は翅脈です。モイワウスバカゲロウは前翅の前縁領域が前後二つに分かれる脈をもつという2室的なので、この写真からでもすぐに違うと分かるのですが、気が付いたのは検索が終わってからでした。この写真では①、③、⑥を見るのですが、それぞれ青矢印、赤矢印、黒矢印で示した通りです。検索表に書かれている"rhegma"という単語が分かりませんでした。辞書やネットでだいぶ探したのですが・・・。普通に辞書を引くと「破裂」という訳が出てくるのですが、いくつかの論文で出てきた表現を見ると、青丸で囲った辺りを指している感じです。ちょうど縁紋に相当する後縁の構造というような感じです。違っているかもしれませんが・・・。いずれにしてもここには薄い斑紋があります。ということで翅脈はOKです。ただ、前翅の翅脈の名称でCuA2と書いた脈で迷っています。というのはComstock(1918)ではCuA1となっていたのですが、この論文ではどうやらCuA2としているみたいです。だとするとMPと書いた脈と融合するのか、それともMPなんてそもそもないのか。そんなあたりです。この辺の解釈はComstockにも書いてあったと思うので、もう少し調べてみます。



次は前翅基部の翅脈です。これについては先日3種のウスバカゲロウでその翅脈を比べてみました。この個体では1Aと2Aがしばらく接近して平行に走り、その後、一時的に3Aと融合して、そこを離れてからはCuP+1Aから大きく離れるというウスバカゲロウやカスリウスバカゲロウと同様の翅脈をしています。



ついでに後翅基部も載せておきます。カスリウスバカゲロウと非常によく似た構造をしています。実は、カスリウスバカゲロウと今回推定しているコカスリウスバカゲロウは同属です。



この写真は初めてです。中脚脛節末端の距刺を示しています。びっくりするぐらい大きな距刺があります。検索表にはこの長さが出てきます。比較するのは跗節の節の長さです。Taと書いたのは"tarsus"の略で跗節を意味します。実は、跗節に番号をつけるときにちょっと迷ってしまいました。というのは跗節第1節(Ta1)が中央で2つに割れているように思われたからです。ただ、刺毛の生え方や色などを見ると、基部もTa1に入れてよさそうなのですが、判断が付きませんでした。それで、上の論文の各論を読んでみました。跗節については、Ta1=Ta2+Ta3、Ta5 >=Ta1+Ta2+Ta3+Ta4と書かれていたので、基部の部分もTa1に入れるのだろうと判断しました。それで番号を振ってみると、⑤に書かれている通りであることが分かりました。



これは後脚の脛節距刺です。同じように鋭くて長い距刺がありますが、Ta4の末端に届くかどうかくらいなので、⑤の表現でよいのではと思いました。



最後は口器に関するものです。下唇肢の第3節がどれかよく分かりませんでした。コカスリウスバカゲロウの各論を読むと、「上唇には茶色の毛。下唇肢第3節は茶色、先端は黄色、スピンドル形で先端は尖る・・・」とあります。色についてははっきりしないのですが、対抗する項目が暗褐色になっているので、それほどではないと思い、いいことにしました。

ということで、一応、すべての項目を見たので、たぶん、コカスリウスバカゲロウ Distoleon contubernalisで合ってるのではと思っています。残りの標本も見直したのですが、それらは大丈夫でした。「日本昆虫目録第5巻」によると、日本産は17種、そのうち本州産は13種。一応、7種が私の住んでいるあたり(大阪北部)で採集されたことになります。

ついでに検索に用いなかったの写真も載せておきます。



これは前胸背板。



最後は腹部末端です。こんな形をしているのはどうやら♀の様です。如何にも特徴がないのですが、これが検索でどのように扱われるのかこれから調べてみたいと思っています。

廊下のむし探検 ハエ、カメムシ

廊下のむし探検 第1078弾

昨日の午後、また、マンションの廊下を歩いてみました。やはり虫はいませんね。それでも、記録だから出しておきます。



まずはナミネアブラキモグリバエです。実はマンション中探してこれ1匹しかいませんでした。いつもなら10数匹は見つかるのですけど・・・。家族に聞いたら、窓際にたくさんいたこのハエが昨日、一斉にいなくなったということでした。どこかに帰ったのかなぁ。







ムラサキナガカメムシはこの日も数匹見つかりました。でも、まだ活動はしていなくてじっとしています。





ちょっと大きめのこのノミバエを最近よく見かけます。脛節に刺があるので、ノミバエ亜科は確かそうですが・・・。



次はニセケバエです。こんな格好でじっとしていました。中胸背板後縁の横に白い模様が見えていて、R4+5脈がかなり長いので、たぶん、先日、手作り図鑑を作るときに調べたクロツヤニセケバエ Scatopse notataではないかと思います。ニセケバエもちょっと知り合いができました。



最後はコカニグモです。この日はこんなものでした。

雑談)ウスバカゲロウ科の検索表が手に入ったので、手元の標本の同定をやり直してみました。やはり違っていました。モイワウスバカゲロウだと思っていたのが、たぶん、コカスリウスバカゲロウみたいです。そのほか、ウスバカゲロウ、コウスバカゲロウ、カスリウスバカゲロウ、ホシウスバカゲロウ、マダラウスバカゲロウ、コマダラウスバカゲロウはそのままで合っていそうです。翅の模様だけでモイワだと思ったのが失敗のもとでした。まだ、♂♀がはっきりしないので、もう少し調べてみます。

ウスバカゲロウの翅脈

この間から手作り図鑑を作っているのですが、今度はウスバカゲロウにしてみようと思って調べ始めました。文献を探していたら、日本産ウスバカゲロウ科を扱った次の論文を見つけました。

S. Sekimoto, "Review of Japanese Myrmeleontidae (Neuroptera)", Insecta Matsumurana, Ser. Entomol. New Series 70, 1 (2014).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文は日本産17種すべての種の再記載をして、特に交尾器について詳細に書いたものです。また、種までの検索表も載っていました。これは助かったと思って、検索表で調べてみようと思ったら、翅脈の特徴が出てきました。翅脈は時代によっても、人によっても定義が異なるので、是非とも定義をはっきりさせてから使ってほしいと思っていたのですが、この論文にはそれがありませんでした。そこで、ほかにも翅脈を扱った論文はないかと探してみました。そして、次の論文を見つけました。

L. A. Stange, "Reclassification of the New World antlion genera formerly included in the tribe Brachynemurini (Neuroptera: Myrmeleontidae)", Insecta Mundi 8, 67 (1994).(ここからダウンロードできます)

この中でいくつかの属について翅脈が出ていて、その名称も出ていたのですが、かなり変わった名前の付け方をしています。それで、やはり翅脈は原点に戻らなければいけないな思って、いつものComstockの本を見てみました。

J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

この本は古いのですが、発生過程で翅脈に先だって伸びていく気管をもとにしているので、ある程度、信頼性があります。それで、この本をもとにして、翅脈に名称を付けていき、検索表の内容を理解してみることにしました。


これは検索表のうち、翅脈に関するものだけを3族に関して抜き書きしたものです。翅脈を見るだけでも、このようにこの3族が見分けられることになっています。それぞれの族の代表種として、マダラウスバカゲロウ、カスリウスバカゲロウ、ウスバカゲロウの3種を選び、その翅脈を手元にある標本で調べてみました。



まず最初はウスバカゲロウです。これは2014年7月20日にマンションで撮影したものです。これの翅脈を見てみました。


検索表では①→②b→③bと進むのですが、それに関係したところに赤字で番号を入れておきました。基本的にComstockの名称を使っているのですが、M1+2→MA、M3+4→MP、Cu1→CuA、Cu2→CuPと名称を現代風に変えています。前翅で"*"で書いた脈はちょっと問題になる翅脈です。基部に近いところにある"*"はStange(1994)ではこれをMAとしています。この脈はその後、R脈と融合、あるいは並走し、次いで、Rsと融合しRs+MAとしています。ただ、実際に観察してみると、"*"で示した脈は硬化していなくて、MAとするには如何にも問題がありそうな気がしたので、この案は採用しませんでした。前翅の中央付近にある"*"はComstockによるもので、ここでM脈は分岐して、MAとMPになるということになっています。これは気管の発達が実際にそうなっているので、ある程度説得力があるかなと思い、ここでも採用しました。



前翅基部の拡大です。1Aと2Aの基部が接近して平行に走っているところ(赤矢印)と、その後、2Aと3Aが一時的に融合するところ(赤破線)がこの翅脈の特徴です。CuPはCuの基部で分岐し、その後、1Aと平行になりやがて両者は合流します。



こちらは後翅の基部です。やはりCuPと1Aが一時的に融合しています。



次はカスリウスバカゲロウです。これは2014年6月21日に撮影したものです。この場合は、①→②b→③aと検索は進んでいきます。



先ほどと異なるところは③で示したRsが分岐する前の横脈の数がウスバカゲロウでは5本だったのが、これでは1本しかないところです。これで族の違いが分かります。



次は前翅基部です。先ほどと同様に2Aは一時的に1Aに接近して平行に走り、その後、3Aと一時的に融合してから分離しています。



そして、これは後翅基部です。ウスバカゲロウに似ていますが、少し異なるところもあります。



最後はマダラウスバカゲロウです。これは2014年7月25日に撮影しました。この場合の検索は①→②aとなります。


今回も①で示す部分は同様です。ここはMP2とCuAが横脈で結びつくというところです。



このマダラウスバカゲロウは先ほどの2種と比べると2Aと3Aがだいぶ変わっています。2Aは1Aと接近することなく、また、3Aと融合することなく独立して走っています。その辺りがこの族の特徴です。



最後は後翅基部です。

ということで、ウスバカゲロウの翅脈の特徴を少しだけ理解することができました。これからウスバカゲロウ科をまとめてみようかなと思っています。

オドリバエ Empis属再調査

この間からオドリバエ科をまとめていたのですが、その中で亜属の分からないとしていたものがありました。今回、新たに調べてみましたので、記録として載せておきます。



対象としたのは2014年5月12日にマンションの廊下で見つけたこんなオドリバエです。このときのブログを見てみると、Empis属というところまではたどり着いていたのですが、その後、♀だからというので検索を諦めていました。でも、これは腹部末端の構造を見ると♂のようです。ひょっとして標本を残していないかと思って調べてみたら、この個体かその前後に採集した個体かは分からないのですが、一応、標本が残っていました。それで、その先の亜属も検索してみることにしました。

検索表には、「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という三枝豊平氏の科研費の報告書(この題目で検索するとpdfがダウンロードできます)に載っているオドリバエ科の図解検索システムを用いました。検索をしてみると、Empis属Planempis亜属になったので、その検索過程を見ていきたいと思います。



属までの検索は以前のブログにも載っているのですが、もう一度、やり直してみます。なお、写真は交尾器を除いて以前撮った写真をそのまま用います。



体長は11mm。かなり大きなオドリバエです。この写真では前脚が捕獲脚になっていないこと、口吻が長く下を向いていること、唇弁が太いこと、後頭部に変わったところがないことなどを見ます。



次は翅脈です。翅脈の名称は「大図鑑」風にしています。この写真から②~④、⑥はいずれも見ると分かります。



Sc脈は見にくいので拡大してみました。先端で翅脈が消えてしまっていることが分かります。



この写真では平均棍前方に毛塊のあることが分かります。前回はこの辺で検索が止まっていました。



今回、標本を使って交尾器を撮り直しました。交尾器前の腹板には特に大きな変形は見られません。それで、交尾器は腹端後方を向いています。それで、⑨はOKとしました。たぶん、⑩がこの亜属の大きな特徴だと思うのですが、尾角突起がかなり長く突き出しています。背板葉というのはこれでよいのかどうか分かりませんが、とにかく尾角突起の方が長いことだけは確かです。それで、⑩の前半部分はOKです。



これは交尾器を背側から撮ったものです。尾角突起の上面は平板状で中心に穴が開いています。まさに検索表の⑩の後半に書かれている通りです。それで、最終的にPlanempis亜属になりました。



ついでに後方から撮った写真も載せておきます。この形から種も分かりそうなのですが、手元に資料がないのでこれ以上は分かりません。「日本昆虫目録第8巻」によると、この亜属には22種+5未記録種が載っていました。「大図鑑」の図版を見ると、外観は何となくキバネオオヒラオオドリバエ latroというのに似ている感じですが、よくは分かりません。

ついでのついでに、オドリバエ科の日本産の属と亜属を表にまとめてみました。



左から4列までは「日本昆虫目録第8巻」に載っていた、科、亜科、属、亜属です。第5列目は三枝氏の検索表に載っていた属なのですが、現在ではsynonymになっている属を示しています。また、第6列と第7列が三枝氏とMNDの検索表に載っている属を〇印で表しています。三枝氏の検索表ではRhamphomyiaの亜属の検索表がないので空欄になっていますが、それ以外はほとんどすべて、亜属に至るまで載っていました。そのほか、Anthepiscopus、Phyllodromia,、C(Phyllodromia近縁)の3属が載っていたのですが、最初のAnthepiscopusは"Catalogue of Life"によると、亜科不明となっていました。ということで、日本産オドリバエ科の属、亜属を調べるときは三枝氏の検索表が非常に有用だということが分かりました。

一方、MNDでも日本産の属のかなりの部分が網羅されていることが分かります。三枝氏の検索表では亜科を飛ばして属の検索表が作られていたので、MNDの検索表のうち、亜科の部分だけを抜き出して亜科の検索表を作ってみました



青字の亜科は現在ではセダカバエ科に属している亜科を示しています。また、( )がついているのは訳がよいのかどうか分からなかったもので、( )内は原文そのままを載せています。特に、翅脈の名称を「大図鑑」方式にしたので、その分、変更が多くなっています。こんなものが役に立つかどうか分かりませんが・・・。

雑談)甚だ不十分な状態なのですが、とりあえず、オドリバエ科をまとめてホームページにアップしました。こちらから入って探してみてください。オドリバエ科は「廊下のむし探検」を始めてすぐの頃に調べていたので、名前調べもあまり突っ込んでいなくて、いざまとめようとしたら情報が少なくて苦労しました。オドリバエ科は三枝氏の精力的な研究があるので、もっと頑張らないといけないなと思って、今年は集中的に調べてみようかなと思い始めました。

虫を調べる コマユバチ科(続き)

一昨日にコマユバチ科らしいハチの亜科の検索を試みたのですが、その続きです。だいぶ怪しいところがあるので、そのつもりでご覧ください。



調べたのは体長2.3mmのこんなハチです。12月21日にマンションの廊下で見つけました。

C. van Achterberg, "Illustrated key to the subfamilies of the Braconidae (Hymenoptera: Ichneumonoidea)", Zoologische Verhandlingen 283, 3 (1993). (ここからダウンロードできます)

この論文に載っている絵解き検索表で調べてみたところ、一応、コマユバチ亜科 Braconinaeになったのですが、それを確かめるには全部で13項目調べないといけません。先日、このうちの8項目について調べたので、その続きです。



最後だけ可能性のあるTelengaiinae亜科も含めて書いています。赤字はどうもはっきりしない部分です。特に⑪が間違っていると検索は飛んでもない方向に行ってしまいますが、とりあえずこの通りに進んでみようと思っています。だいたい検索の順番に見ていきます。



最初は前脚跗節に関するものですが、この写真で示すように第5跗小節は普通で、また、第1跗小節もそれほど長くはありません。これで⑨はOKです。



次は翅脈です。van Achterbergの論文によると3-M脈の基部に小室があるハチもいて、その1辺を2-Mと定義していました。ここではそんな小室がないので、2+3-Mとなっています。いずれにしても翅脈2+3-Mは基部を除いて透明なので、たぶん、硬化していないと思われます。それで、⑨はOKです。



触角の挿入口は普通です。それで、⑩の前半はOKです。また、大顎が大きくて複眼の小さい亜科もあって、それを除くのが後半の部分の項目です。これは複眼が大きいのでやはり⑩はOKです。



ここからが自信のないところです。まず、⑩は触角に関するもので、これは問題ないと思われます。また、⑫の小腮肢の節数もOKです。問題は⑪の"hypoclypeal depression"で、これがよく分かりません。"hypo"は下という接頭語、"clypeal"は"clypeus"(頭盾)の形容詞形、"depression"は窪みとか凹みという意味です。従って、「頭盾下の窪み」という意味になります。顔を正面から写した写真を何度見ても窪みがあるかどうか分からなかったのですが、こうやって横から見ると明瞭に凹んでいることが分かります。それで、矢印で書いた部分がhypoclypeal depressionではないかと思うようになりました。



これは顔面を斜め前から写したものですが、凹んでいる部分は白矢印で描いた部分に相当します。その前後をそれぞれ上唇、頭盾と書くと、⑪と⑬bで書いた内容が何となく分かります。ただ、この単語で検索すると、hypoclypeal depressionはもう少し小さくてはっきりした窪みになっている絵が多く見られます。よく分かりませんね。とりあえず、これを認めて次に進むことにします。



次は胸部側面を写した写真です。⑫の"flange"は帽子の「つば」みたいなでっぱりを意味します。前胸側板の後縁側にそんなでっぱりはないので、これはOKです。次の中胸側板の「広い凹み」がまた問題です。この写真でも分かるように下半分に明瞭な凹みがあります。これを凹みであると判断すると、Telengaiinae亜科になりますが、van Achterbergの論文の絵を見ると、いろいろな点でこの個体との違いが見られます。また、"Information station of Parasitoid wasps"のコマユバチの形態の説明には"Sternaulus"(胸側溝)という凹みがあることになっています。ということはこのような凹みは普通にあるものかもしれません。ということで、「広い凹み」はないという方を選びました。



⑫は白矢印あたりにあるはずの前腹板隆起線があるかないかについてです。これについては以前、ヒメバチ科で調べたことがありました。以前のハチでは明瞭に隆起線が見えていたのですが、これには見えません。それで、⑫もOKとしました。



後体節第1節はほとんど平坦で側面はほとんど見られません。それで、⑫はOKとしました。



最後は後翅の翅脈です。⑬bはM+CU脈と1-M脈の長さの比較です。ただ、ここにも問題がありました。というのは、M+CU脈は基部側に向かうと途中までは明瞭なのですが、途中から細くなり、最後は極めて細い線になります。van Achterbergの論文の絵ではこの先端部分は破線で描かれいて、M+CU脈には含めていないように思われます。それで、先端部分を除いたものと除かないもので長さを測ってみました。すると、前者では1.66倍、後者では1.12倍になり、前者なら⑬bの条件に合っているようです。また、1-M脈の基部はやや太くなっていることも何となく分かります。

ということで、かなり先入観を持って解釈すると、検索表の通りになり、Braconinae亜科になりますが、疑わしいところが山ほどあるので、何とも言えません。もう少し経験を積まないと駄目なのでしょう。

ついでに検索に用いなかった写真も出しておきます。



後体節を横から撮ったものです。末端部の形からこれは♀なのかなと思いました。

今回はコマユバチ科らしいハチの亜科の検索を試みてみました。よく分からない用語が出てきて、そのたびごとに悩みましたが、何とか亜科までたどり着いたようです。まぁ、これも修行の一つかなと思っています。「これって、コマユじゃないよ」というコメントが来たらどうしようかと思って甚だ心配なのですけど・・・。

追記2019/03/04:そらさんから、「サムライコマユバチ亜科 Microgastrinae」が怪しいと思いますが如何でしょうか。」というコメントをいただきました。おそろしいコメントがやって来ましたね。でも、そらさんのご指摘はいつも合っているからなぁ。やはり、ポイントはhypoclypeal depressionがあるかないかというところでした。この凹みがないという方を選ぶとよさそうなのですが、その先もかなり長い道のりで、ざっと見ただけではたどり着けませんでした。幸い、試料はそのまま置いてあるので、もう少し頑張ってみようと思います。どうも有難うございました

廊下のむし探検 早春第1号

廊下のむし探検 第1077弾

今日は春のような陽気でした。それで、午後からマンションの廊下を歩いてみました。カメムシやハエなどがいたのですが、それよりも廊下を歩いた後、外に出たときに見つけたこの蛾が今日のメインになりました。



トビモンオオエダシャクです。いつも2月終わりになると早々と出てくる早春の使いです。これまでの記録を見てみても、2014年2/21、2017年2/26、2018年2/26が初見日になっています。今年はこれまでで一番早い記録ですね。でも、早春の使いにしてはちょっとグロテスクかな。



それでは廊下に戻ります。最初に見たのがのこハネカクシでした。水にはまってアップアップしていました。過去の写真と比べてみると、ヨツメハネカクシ亜科のようです。ハネカクシの検索表はないのでしょうか。属くらいは調べてみたいなと思っています。



これはいつもいるナミネアブラキモグリバエ





今日はこのムラサキナガカメムシが多かったですね。数匹はいたと思います。



こんな交尾している姿まで。もう春なのですね。



これは翅脈と前脚の脛節と跗節第1節の長さから、エリユスリカ亜科かな。



これはたぶん、ブリッグスウスイロチャタテ



このハムシが分かりません。サルハムシ類だと思うのですが、一応、採集したので、今度調べてみたいと思います。







この三匹は別個体ですが、みな同じ種ではないかと思います。やや大きめのノミバエです。脛節に刺があるので、ノミバエ亜科だろうとは思うのですが・・・。



これはいつも見ている毛虫です。たぶん、ヤネホソバなどのEilema属だとは思うのですが・・・。いつもじっとしているのですが、今日はのそのそ歩いていました。この仲間はこういう壁についている苔などを食べるのでしたね。これから成長を追いかけてみようと思っています。



最後はヘリグロヒメハナバエです。

雑談)今日はこの間から調べていたコマユバチ科らしきハチの検索のための顕微鏡写真の追加を撮りました。何度か検索表を見て、それを顕微鏡写真と合わせているうちに、コマユバチ亜科までは確かそうな気がしてきました。もう一つは図鑑のためにまとめているオドリバエ科です。以前撮った写真をじっくりと見直していると、亜属が分かりそうなものがあったので、標本を探してみると、うまい具合に残っていました。それで、今日は交尾器の写真を撮りました。こうやって科一つずつをじっくり見直すというのは本当に勉強になりますね。

虫を調べる コマユバチ科

今日はこの間から調べているコマユバチ科らしきハチをもう少し詳しく調べてみました。



体長2.3mmしかない小さなハチです。昨年の12月21日に採集し、その後、ずっと冷凍庫で眠っていました。冷凍庫の整理も兼ねてこの間から調べ始めたのですが、これがなかなか難しい。今は亜科の検索をしているのですが、未だに確信が持てません。とりあえず、Broconinae亜科(コマユバチ亜科)ではないかとは思っているのですけど。というまだ怪しい状態なのですが、いつまでも抱えていてもしようがないので、とりあえず出すことにします。

C. van Achterberg, "Illustrated key to the subfamilies of the Braconidae (Hymenoptera: Ichneumonoidea)", Zoologische Verhandlingen 283, 3 (1993). (ここからダウンロードできます)

亜科の検索表はこの論文のものを用いました。絵解きなので、分かりやすいといえば分かりやすいのですが、用語の分からないものも多く、素人には難解でした。でも、めげずに頑張っていこうと思っています。



候補のBraconinae亜科に至るには全部で13項目調べなければなりません。しかも、上の訳文を見ても分かりますが、一つ一つの項目に小項目が沢山あり、訳するのも大変、写真を撮るのも大変という状態です。文章が長いのは、「もしそうでなければ」という例外的なことが書かれているからです。大変親切と言えば親切なのですが、そのぶん、ごちゃごちゃしてしまいます。今日はまず8項目まで調べていきたいと思います。赤字で書いたところは後でコメントしますが、よく分からなかったところです。



まずは全体像です。小さいので、撮影したときにはあまり気が付かなかったのですが、こうやって拡大すると意外に綺麗です。



写真は検索順に出そうかと思ったのですが、あまりにややこしくなるので、部位別にしました。写真に関連する項目は上に書いてあります。ただし、「もし、・・・」という例外的な項目は除いています。頭盾のあたりがややこしくどうなっているのか分かりませんが、全体の形としては普通で、顔面も特に変わっているというわけではありません。



これは口肢が発達していることを見せるために撮ったのではなくて、口器のあたりを撮ったのですが、ついでに口肢がうまく入りました。長いのは下顎肢です。これで⑧もOKです。



さて、問題の大顎です。たぶん、?で示した部分だと思うのですが・・・。そうだとすると何となく歯が見えています。2本くらいはありそうです。左右の大顎が内側に曲がり、中央でほとんど接しているので、たぶん、大丈夫でしょう。これが違うとハエヤドリコマユバチ亜科になってしまいます。



触角はあまり意識して撮らなかったのですが、節が扁平という印象はなかったので、たぶん、これも大丈夫でしょう。





検索表の⑦にpronopeというのが出てきて、論文には絵も描かれているのですが、これがよく分かりません。pronopeは前胸背板にあり、中央に1個、左右に1個ずつの突起(?)みたいなのですが、上の2枚の写真では頭部に隠れてしまいほとんど見えません。それで今回はパスしました。



次は翅脈です。翅脈の名称は論文の絵を見ながらつけてみました。ポイントになるところには番号を入れておきました。②のmarginal cellは広くても狭くてもよいのでOKです。次の1-Mとm-cuはほとんど平行に見えます。③の閉じた室は数えてみると全部で6室ありました。⑤は黒矢印で示したように2m-cu脈はありません。



次は後翅です。2-CU脈というのは黒矢印辺りにあるはずの脈です。このハチではどう見てもありません。それで、②、⑤、⑦はいずれもOKです。また、m-cu脈も見当たりません。さらに、cu-a脈はほぼ直線的です。ということでほぼOKなのですが、⑦に出てくるbullaが何だか分かりませんでした。



次は後体節第1節のlateropeについてです。lateropeについては以前コマユバチ科オオアメイロコンボウコマユバチ亜科を検索したときに出てきました。その時は「側方の窪み」と訳していました。今回のハチでは第1節背板(t1)は平面的でlateropeはありそうにありません。それで、「lateropeを欠く」という選択肢を取り、⑥はOKとしました。



コマユバチ科は後体節第2節背板と第3節背板が融合しているのが特徴だと思っていたのですが、これは少なくとも外見上は分離しています。それで科レベルでだいぶ悩んだのですが、検索表に⑤のような表現があるので、分離しているのもいるのかなと思ってOKとしました。



今日の最後は後脚跗節の写真です。第1節は長いのですが、ほかの節の和ほどは長くありません。それで、これもOKです。と、ここまでは比較的順調に進んできました。続きは次回に回します。

雑談1)昨日朝から突然鼻水が出て止まりません。鼻をかんでもかんでも出てきます。仕方ないので、ティッシュペーパを鼻に突っ込んでいるのですが・・・。風邪の続きなのだろうか、それともアレルギーなのだろうか。どうにも鬱陶しくて集中できません。

雑談2)昨日、「なにこれ生き物探検」に、2年前に六甲高山植物園に行ったときの写真を出しました。これから植物の整理もしていこうと思うので、しばらくの間は植物の写真を出していきます。こちらもよろしく。手作り図鑑の方は今はオドリバエ科に取り組んでいます。この科は奥深くてなかなか進みませんが、いろいろと調べていくと知らないことも出てきて結構面白いです。たぶん、後2-3日でまとまるかなと思っています。「気まぐれ写真図鑑」の方はもうじき、「シダを観る」、「動物園の鳥」あたりが完成しそうです。

廊下のむし探検 虫はちょっと

廊下のむし探検 第1076弾

昨日、久しぶりにマンションの廊下を歩いてみました。やはり虫はいませんねぇ。マンション中を歩いて、いつも見るキモグリバエを除いて、たった3匹。今頃はこんなものなのですね。



最初に見つけたのはこのムラサキナガカメムシ



これだけかなと思って歩いていたら、今度はユアサハナゾウムシを見つけました。これで2匹目。



最後はこのハエ。翅が曲がっているのが変わっているなと思ったのですが、これはノミバエですね。しかも脛節に刺があるのでノミバエ亜科。これで全部でした。

雑談)昨日からコマユバチ科らしい個体の検索をしているのですが、難しくてなかなか進みません。検索表は絵解きではあるのですが、単語の意味が分からないところがあちこちに出てきます。今日分からなかったのは"hypoclypeal depression"という単語。頭盾の下にある凹みという意味で、昨日写した写真で少し凹んでいるのがそれかなと思ったのですが、文献を探して見てみると、もっとはっきりした凹みがあるようです。だとすると、別の道を進まなければと思って進んでいくとまたまた分からない単語が出てきました。コマユバチ、なかなか手強いです。

廊下のむし探検 雑談

今日も冷凍庫の整理でハチを調べてみました。まだ、あまり確定的なところまで行かないので、雑談としておきます。



今日は昨年の12月21日に見つけたこんな小形のハチです。



まずは寸法を測ってみました。体長はわずか2.3mm。かなり小さなハチですが、意外に綺麗です。一応、検索もしてみました。コマユバチ科のTelengaiinae亜科になったのですが、この亜科は1属しかいなくて、たぶん、日本にはいないと思うので、どこかで間違ったみたいです。その近くにBraconinae亜科があるので、おそらくこちらの方かなと思っています。なお、検索には次の論文の絵解き検索表を用いました。

C. van Achterberg, "Illustrated key to the subfamilies of the Braconidae (Hymenoptera: Ichneumonoidea)", Zoologische Verhandlingen 283, 3 (1993). (ここからダウンロードできます)

でも、コマユバチ科の亜科の検索はかなり難しいです。最初に、両側の大顎が接するか接しないかという項目があるのですが、ここでまず引っかかってしまいました。



これは頭部を写したものですが、頭盾のあたりがごちゃごちゃしていて何が何だか分かりません。



これはさらに拡大したものですが、頭盾のあたりはやはりさっぱり分かりません。さらに、下顎肢が口の部分にくっついているのか大顎のあたりもよく見えません。



それで、針で下顎肢を少し外してもう一度写してみました。やはりどれが大顎だかよく分かりません。



これは口のあたりを拡大したものです。たぶん、大顎?と書いたところがそうかなと思うのですが、それにしても複雑な構造です。もし、これが大顎ならば、左右の大顎がくっついているようなので、次に進むことができます。もし、亜科まで無事にたどり着いたら、今度まとめて載せることにします。

ついでに各部の名称を上の文献の図を利用して調べてみました。



これは背側からの撮影です。



それに胸部側面の写真です。





上は前翅、下は後翅です。翅脈の名称はコマユバチ独特の付け方があるようで、上の文献を参考にして付けてみました。前翅後縁近くにある矢印は2Aの分岐があると思われる場所ですが、何度見てもそれらしいものが見られません。2つのどちらかだと思うのですけど・・・。



最後は前伸腹節と腹部を写したものです。実は、コマユバチ科は腹部第2背板と第3背板が融合しているはずなのですが、これを見ると分離しているような感じです。ひょっとしたら、コマユバチではないのかなぁ。

虫を調べる ヒメバチ科チビアメバチ亜科?(続き)

昨日の続きで、昨年の12月21日に採集したヒメバチの亜科の検索です。



対象とするのはこんなハチで、体長は4.5mmでした。翅脈からヒメバチ科であることはすぐに分かったので、その後の亜科の検索を試みてみました。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

検索表はこの本のものを用いました。この検索表には一項目が3~4小項目も載っているので写真を用意するのが大変なのですが、絵解きなので分かりやすいと言えば分かりやすい検索表です。一応、検索をしてチビアメバチ亜科になったのですが、その過程を写真で見ていきたいと思います。昨日は7項目までを見たので、その続きで8項目~13項目までです。



チビアメバチ亜科であることを確かめるにはこれだけ見ていかないといけません。赤字は撮影した写真ではよく分からなかったところですが、たぶん、書いてある通りだと思います。ほぼ検索順に見ていきます。



これは後体節第1節を写したもので、右が前方です。気門は黄矢印で示した部分ですが、中央より後方についています。これで⑧はOKです。



これは後体節第1節を背側から写したものです。基部方が細長いというのはよく分かります。





これは後体節を横からと背側から撮ったものです。何となく横から圧縮されているだろうというのは分かりますが、ぺしゃんこになるほどではないのではっきりとは断言しにくいところです。実は、検索表では圧縮されているか、いないかという二者択一の選択肢です。たぶん、どちらを選んでも目的地は同じになるようにしてあると思いますが、上の検索ではさらに親切に、はっきりしない場合は次の2点を調べよという指示まで載っています。



一つは爪が櫛歯状かどうかで、この写真でも分かりますが、櫛歯状みたいです。



次は鏡胞に柄があるかどうかで、これには明瞭に柄があります。この二つの点のどちらかが満足されれば、後体節が圧縮されているという方を選べということなのですが、これは両方とも満足しているので、堂々と圧縮されている方を選びます。



次は産卵管の背側に切れ込みがあるかという項目ですが、黒矢印で示すように明瞭にあります。



これは前伸腹節の拡大ですが、ご覧のように縦向き(写真では横)と横向きの隆起線があって小室を作っています。また、背側後半の彫刻はかなり細かいものです。そんなところで、⑪はOKとしました。



これは側単眼の直径と後頭隆起線までの距離との比較です。これは後者の方がはるかに長く、また、相対的に下側に位置しているのでこれもOKです。



これは前胸側板の写真です。この側方に黄矢印のように突起が出ていて、前胸背板の下縁に重なっています。これはたぶん、チビアメバチ亜科の顕著な特徴の一つではないかと思います。



脚が邪魔してうまく写せなかったのですが、中胸腹板の後縁に後方横隆起線があって、それが中央でも途切れず続いているかというのがこの項目です。はっきりとは分からないのですが、たぶん、途切れていないのではと思っています。



中脛節末端の刺の写真です。この2本の刺の中心を跗節第1節から伸びた「橋」があるかどうかという項目です。たぶん、文章だけでは理解できないと思いますが、先ほどの本の絵と比較するとそのような構造は見られません。



最後は顔面と頭盾との間にある溝についてです。この写真では溝が見られません。以前、「昆虫の頭の構造」について勉強したことがあったのですが、黄矢印でatと書いたところが後頭と前頭を結ぶつっかえ棒の取り付け口になります。このatを通って前額縫合線があり、その縫合線の下が頭盾であるという定義がなされています。外からはよく分からないのですが、前額縫合線は表面が内部に陥入しているところなので、内部を見ると明瞭に見えるはずです。この写真ではatを含んで半円形にわずかに境目らしいところが見えますが、それより下が頭盾だろうと思われます。

とにかく、これでほとんどすべての項目を確かめたので、たぶん、チビアメバチ亜科で合っているのではと思っています。"Information station of Parasitoid wasps"のチビアメバチ亜科の項を見ると山のように種が載っています。属の検索表も手元にないので、ここでストップになりました。

虫を調べる ヒメバチ科チビアメバチ亜科?

久しぶりに虫を調べてみました。今年は持病が再発したり、風邪をこじらしたりとろくなことがなかったのですが、ようやく少し集中できるようになりました。今日の対象は昨日写真を載せたこのハチです。



マンションの廊下で2018年12月21日に見つけたこのハチです。翅脈からヒメバチ科であることが分かったので、亜科の検索をしてみました。今回は次の本に載っている検索表を用いました。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

ヒメバチ科の亜科の検索は大変で、これだけで一仕事です。検索の結果、チビアメバチ亜科になったのですが、その過程を写真で示してみたいと思います。



この本のハチの検索は一項目だけで3-4項目を調べないといけません。それでこんなに長くなりました。なお、翻訳についてはいつもお世話になっている"Information station of Parasitoid wasps"の「形態用語辞典」を利用させていただきました。この間購入した電子辞書とこの「形態用語辞典」、それに、アルクの"英辞郎 on the WEB"があるとほとんどの用語が調べられてなかなか快適です。チビアメバチ亜科に至るには実は、全部で13項目あったのですが、長いのでとりあえず半分だけ出すことにしました。赤字は調べることができなかった項目、青字は写真を撮り忘れた項目で、後の黒字はすべて写真で示すことができました。



最初は全体像です。体長は4.5mm。折れ線で近似して測りました。そこそこの大きさのハチです。腹部末端に産卵管が見えるので、これは♀です。①は見るからにOKです。③については少なくとも腹部腹板第2,3節は膜質であることがこの写真でも分かります。対抗する項目は第2-4腹板が硬化するというものなので、たぶん、これでOKだと思われます。⑤もOKでしょう。



次は翅脈です。翅脈の名称は"The American Entomological Institute"に載っているものを採用しました。この写真では、2m-cuがあることで②はOKです。⑤の鏡胞は確かにあります。鏡胞の形は菱形なのですが、⑦は「通常」だからいいことにしました。



ついでに後翅の翅脈も載せておきます。



これは背側から撮ったものですが、③はOKでしょう。



これは腹部末端の写真です。がっちりした産卵管が見えています。④はごちゃごちゃ書いてありますが、この産卵管とは違うことが書いてあるのでOKだと思います。⑦もたぶん大丈夫だと思われます。



次は頭部です。頭盾と顔面とは何となく違いが見えますが、明瞭な溝はありません。また、頭盾前縁には特に歯などはありません。従って、④はOK。⑦は顔面が強い凸面かどうか分かりませんが、たぶん、大丈夫でしょう。



これは前伸腹節を写したものです。黄矢印で示したところに横向きの隆起線が見られます。それで、④はOKです。



触角は途中で折れてしまったので、ついでに撮影しました。特に変わったところがなく、鞭節は28-2=26節でした。



これは後体節第1節を背側から写したものですが、⑦はどうでもよいような項目です。



前胸背板は撮りにくいので、斜め前から撮ったらやっと写りました。向かって右側は胸部、左側が頭部です。前胸背板の中央部には光沢があり平坦でした。で、⑤はOKです。続きは次回に回します。

廊下のむし探検 雑談

咳がかなり収まったので、今日は冷凍庫の整理を兼ねて、昨年末に採集したハチを調べてみました。



調べたのは2018年12月21日に採集したこんなハチです。実は、その日に見た虫を書いたブログには載せていませんでした。忘れていたようです。検索はだいたい終わったのですが、顕微鏡写真の深度合成の計算がまだ終わっていないので、結果は改めて出すことにして、今日は雑談としました。検索の結果はヒメバチ科のチビアメバチ亜科だろうということになりました。体長は4.5mm、前翅長3.7mmでした。

計算の終わった写真から少し紹介します。



これはハチの頭部を生物顕微鏡の対物レンズ10xで写したものです。今回はちょっと照明の当て方をいろいろと変えてみました。対物レンズの周りをトレーシングペーパで覆い、片側から比較的強いLEDライトを当てるとこんな写真になりました。一方向からの照明なので、立体感は出るのですが、影になったところがちょっと暗くなっています。



これは小さなLEDライトを3方向から当てて写しました。暗いところがなくなりだいぶ見やすくなりました。色が緑っぽくなったのはLEDライトの特性かなと思っています。



検索表には頭盾と顔面の間にはっきりした境界があるかないかという項目があります。そんな時、顔面に生えている毛が光って邪魔になることがあります。それで、照明で毛が光らないように、強いLED1本と弱いLED2本の計3本を片側に集めて写したのがこの写真です。顔面の毛があまり目立たなくなり、頭盾と顔面の間の境界はないことがよく分かります。



次は前伸腹節の写真です。ここには隆起線があって、その形状が検索表には出てきます。これは実体顕微鏡の5.6倍ズームで真上から撮影したものです。隆起線は見えるのですが、いまいち、はっきりしません。



これは生物顕微鏡(対物レンズ10x)にして少し斜めから撮ってみたものです。隆起線がはっきり見えるようになりました。こんなことを試しながら、いつも撮影しています。検索の過程はまた次回に回すことにします。

廊下のむし探検 何もいない

廊下のむし探検 第1075弾

今日は午後からマンションの廊下を歩いてみました。寒さはそこそこだったのですが、やはり何もいませんね。でも、いないというのもデータだから一応、出しておきます。



何もいないときにはこのハエです。ナミネアブラキモグリバエです。これはほとんど常にいます。



次はノミバエですが、中脛節基部1/3に刺毛が生えているので、ノミバエ亜科までは確かです。ここから先はよく分かりませんが、以前調べた種と似ている感じです。このときは検索の結果、Triphleba属にたどり着いたのですが、文献を調べて違うかもしれないということで迷子になっていました。たぶん、今回やっても同じでしょうね。いい検索表が見つかればよいのですが・・・。



これはイエバエ科のヘリグロヒメハナバエです。これについては以前調べたことがありました。ハナレメイエバエ亜科だけは何となく慣れてきた感じがします。



最後はムラサキナガカメムシでした。今日いたのはこの4匹だけでした。

雑談)今日はこのブログの付属ホームページにヒメカゲロウ科をアップしました。今回は検索表まで作り直したので大変な作業でした。お陰で今まで撮影した写真の中から2種ほど別種かなと思われる種を見つけ出して、載せてみたのですが、かなり怪しいです。ヒメカゲロウに関してはやはり採集して展翅しておくことが必要だなと思いました。でも、毎回こんな作業をしていたらとても体がもちません。次回はまたハエ目をまとめてみようと思っていますが・・・。

ヒメカゲロウ科のまとめ(続き)

手作りの「成長し続ける図鑑」に加えようと思って、ヒメカゲロウ科の検索表を調べ始めてました。というのは、これまでヒメカゲロウについては部分的に調べたことはあったのですが、種までの検索はしたことがなかったからです。この際だから、一度、きちんと調べておこうと思ったのが始まります。

[1] S. Kuwayama, "A revisional synopsis of the Neuroptera in Japan", Pacific Insects 4, 325 (1962). (ここからpdfがダウンロードできます)

まず、属の検索表ですが、この論文に載っている検索表をもとにしました。でも、やや古くて、シノニムとされた属や科の変更のあったものなどがあったので、それらを変更して今でも使えるような検索表に直し、一昨日にブログに出しました。検索はほとんど翅脈に関するものだけだったので、日本産9属の翅脈をいろいろな論文から集めて、この検索表でうまくいくかどうか確かめてみました。

ところがどうしてもうまくいきません。どうしてだろうと考えてみたのですが、どうやら翅脈の名称が検索の途中で変わっていたからだということに気が付きました。翅脈の名称を調べるときはまずComstockの本[2]を見てみます。

[2] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

この本は相当に古いのですが、いわば翅脈のバイブルのような本なので、とりあえずこれを見ないと始まりません。この中にHemerobius humuliというヒメカゲロウ属 Hemerobiusの翅脈の絵が描かれていました。Comstockは翅脈の発生に先だって伸びていく気管の様子を見て翅脈に名称をつけています。気管と翅脈は必ずしも1対1対応ではないので、反対する研究者もいるのですが、とりあえず根拠があるので、参考にされることが多いのです。そこで、手元にあるHemerobius属の翅脈にComstockの名称を当てはめてみると次の写真のようになります。



これを使って上のKuwayama[1]の検索表で試してみるとうまくいきません。問題になるのはR脈とM脈の系列のあたりです。つまり、検索表の①については書いてある通りに進むことができるのですが、⑦、⑧のところでどうもよく分からなくなります。

そこで、もう少し文献を探していたら、次の論文を見つけました。

[3] E. G. MacLeod and L. A. Stange, "The Brown Lacewings of Florida (Neuroptera: Hemerobiidae)", Entomology Circular No. 227, June (1981).(ここからpdfを直接ダウンロードできます)

この論文のやり方に従って名前を付けてみると以下のようになります。



注目すべきはComstockではR5と書いてあった脈が今回はMAとなっているところです。つまり、径脈の分枝だとしていたものが中脈の分枝になっているのです。どうしてこのような名前になったのかよく分かりませんが、少なくともこうすることでKuwayama[1]の検索表の⑦と⑧はうまく解釈することができます。これに対して①はComstock流の名前にしないとうまくいきません。つまり、この論文の検索表の中でも混乱があるようです。どうしてR5→MAにしたのか、その根拠は分からなかったのですが、少なくとも検索がうまくいかなかった原因だけは分かりました。

ところが、最近の論文を見ると、再び、Comstock流の名称に戻っています。そこで、ここではヒメカゲロウ科を精力的に研究しているOswaldの方式に統一して考えることにしました。

[4] J. D. Oswald, "Revision and Cladistic Analysis of the World Genera of the Family Hemerobiidae (Insecta: Neuroptera)", J. New York Entomol. Soc. 101, 143 (1993). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

それが次の図です。



R5の名称が再び戻ってきました。ついでに検索表に出てくる各部の名称も書き入れておきました。

ついでのついで、Kuwayama[1]の論文には載っていなかったZachobiella属もOswald[4]の検索表を見ながら今回の検索表に加えてみることにしました。これらを変更して出来上がった属の検索表がこれです。



赤字の部分が変更したところです。②と③の辺りは新たにZachobiella属を加えたために変更したところです。⑥は以前の検索表では表現があいまいだったので書き直しました。⑧と⑨は翅脈の名称を現在使われている方式にしたので変更したところと、Wesmaelius属に亜属を加えました。論文に載っている各属の翅脈の図を使って検証してみたところ、一応、問題なく検索できるのですが、種による変化や個体変異などをすべて調べたわけではないので、一応、「試案」ということにしました。特に、③の項目は論文の翅脈を見て書き加えた項目なので、あまり自信のないところです。

ヒメカゲロウ科でだいぶ時間を使ってしまいましたが、いままであいまいだったところがほぼ完全にすっきりさせることができました。この際だから、Oswald[4]の検索表も翻訳すればよかったのですが、後翅に関する項目や翅基部に関する項目があるので、生態写真の検索にどれだけ役立つのか分かりません。それで、とりあえず、今回の検索表でしばらくはやってみたいと思っています。なお、種の検索表にもKuwayama[1]を使ったのですが、この中に出てくる翅脈の名称も若干変更しました。ただし、種の検索表の方はほとんど色や模様に関するものなので、それほど問題にはなりませんでした。種の検索表については図鑑の方に入れておきます。

ヒメカゲロウ科のまとめ

手作りの「成長し続ける図鑑」でヒメカゲロウ科をまとめてみようと思って、過去のブログを見てみたら、これまで調べようとはしていたのですが、一度も種レベルまで検索をしたことはなかったみたいです。それで、これまでのブログをまとめただけだと何となくまとまりのない話になるので、一度、検索表をきちんと見直して検索をやり直してみようと思いました。



まず、ヒメカゲロウというのはこんな感じの虫です。この写真はアミメカゲロウ目ヒメカゲロウ科のチャバネヒメカゲロウ Micromus numerosusだと思われる個体で、2014年7月11日に撮影したものです。「日本昆虫目録第5巻」によると、こんな感じの虫が日本には9属45種もいるそうです。私のマンションでも数種は確実にいるのですが、きちんと検索をしたことがなかったので、この際、検索表を整備してみようと思いました。



この間も出したのですが、「日本昆虫目録第5巻」に記録された属がどの文献の検索表で扱っているかを調べてみたものです。左から3列目までは目録に載っていた亜科、属、種数です。右の3列は次の3つの文献に載っていた検索表で扱かわれているかどうかを〇印で表しています。

[1] W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915). (ここからダウンロードできます)
[2] S. Kuwayama, "A revisional synopsis of the Neuroptera in Japan", Pacific Insects 4, 325 (1962). (ここからpdfがダウンロードできます)
[3] J. D. Oswald, "Revision and Cladistic Analysis of the World Genera of the Family Hemerobiidae (Insecta: Neuroptera)", J. New York Entomol. Soc. 101, 143 (1993). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

これらの文献のうち、[1]と[2]は古いので、分類体系が変化し、また、扱っている属や種の名称も変化している可能性があります。それらを調べたのが"synonym"と書いた欄です。いずれにしても文献[2]と[3]の検索表を用いればほとんどの属の検索ができそうです。特に、文献[2]は種の検索表も載っているので便利です。

そこで、まず、文献[2]の検索表を現在でも使えるように改変してみました。どこをどう変えたかというと・・・。

Paramicromus→ Micromus
Eumicromus→ Micromus
Oedobius→ Drepanopteryx
Kimminsia→ Wesmaelius

属に対してはこの上のように直しました。これでMicromus属は3つの属が合体したことになります。これにより不必要な検索項目を削除しました。

Sympherobiidae→Hemerobiidae, Sympherobiinae+Notiobiellinae

さらに、現在はヒメカゲロウ科 Hemerobiidaeの亜科になっているSympherobiinae、Notiobiellinaeの2亜科が当時はSympherobiidae科になっていたのでこれを変更して、Hemerobiidae科とSympherobiidae科の二つの検索表を合体しました。そうしてできたのが次の検索表です。


だいたいは意味が通るのですが、"funestella"が最初よく分かりませんでした。辞書を引くと、「小窓」という意味なのですが、論文の図を見ると前翅後縁に三角形や細長い溝状の色が白あるいは透明な窓のような切れ込み模様があるのを指しているようです。同じようなことを種の検索表についても行いました。出来上がった種の検索表については手作り図鑑の方に載せることにします。こうやって作り直した検索表を以前ブログに出したチャバネヒメカゲロウ Micromus numerosusとアシマダラヒメカゲロウMicromus calidusの標本写真で試してみることにしました。



上に書いた属の検索表と種の検索表から必要な部分だけを抜き出すとこのようになります。この中にはcalidusとnumerosusが共に含まれるようにしてあります。これを以前の標本写真で調べてみます。



検索はほとんど翅脈に関するものなので、こんな写真だけでも脚の脛節を見る必要のある⑥を除いてほとんど調べることができました。検索表の番号を写真に書き入れたので、この写真からだいたいは追いかけることができると思います。実際に調べてみると、確かにチャバネヒメカゲロウ Micromus numerosusでよさそうなことが分かりました。



この標本も検索の途中まではまったく同じなので、⑥aの項目だけを書き入れてみました。前翅後縁の不規則な雲状模様というのがはっきりしませんが、そのほかはほぼ書いてある通りです。また、脚がわずかに写っていて黒い環状斑があることが分かります。従って、アシマダラヒメカゲロウMicromus calidusでよさそうです。ということで、検索表に従って種を調べることができました。




この表は「日本昆虫目録第5巻」に載っている種と文献[2]に扱われている種の対応を表したものです。Kuwayama氏の論文でnumerosusのところに2種が載っていますが、後に、sauteriがnumerosusのシノニムであることが分かったからです。「日本昆虫目録第5巻」に載っているほとんどの種が文献[2]にも載っていますが、2種だけが載っていません。分布を調べてみると、そのどちらも本州には分布していないことが分かりました。他の属でもほぼ同様のことが言えるので、たぶん、Kuwayama氏の論文で種レベルまでかなり検索できるのではと思っています。

生態写真でも検索を試みたのですが、翅脈や翅の斑紋がはっきり分からないものがほとんどで、なかなか生態写真だけからでは判断が難しいことも分かりました。今のところ、生態写真でだいたいの種の見当をつけておいて、今度は採集してこんな展翅標本を作っておくとかなり確実に種の決定ができそうです。



ついでに文献[3]についても属の検索の構図を調べてみました。番号は検索表の番号です。例えば、Psectra属に至るには1→27'→28→29→30'→32→33と進む必要がありますが、こうやって日本産だけに限ると分岐するところ以外の検索項目は特に必要としないので、結局、黒字で書いた数字の部分だけを訳していけば日本産の検索表にすることができます。なお、赤字は目的地を表していますが、その項目も書く必要がある場合にはアンダーラインを引いてあります。赤字で書いた部分には属の性質が含まれていることも多いので、ある程度書き込んだ方がよい場合もあるだろうと思っています。それにしてもこれら全部を訳していくとなるとかなりしんどい作業になります。もう少し後でやるかなぁ。

廊下のむし探検 ハエ目

廊下のむし探検 第1074弾

昨日の「廊下のむし探検」の続きです。といっても、いつもいるようなハエ目ばかりですが・・・。本当はこういう目立たない虫たちの名前を知りたかったのですが、なかなか難しいですね。最近になってそれが分かってきました。



ユスリカにダニみたいなものがついています。でも、そのダニも寒さで弱っているか、形がよく分かりません。



これもユスリカの♀です。薬を飲んだせいか咳も収まってきたので、そろそろ虫調べをしようかなと思っています。



ノミバエにもいろいろいます。





どれも脛節に刺がないので、たぶん、Megaselia属だろうと思います。Megaselia属には世界中で1400種もいて、日本産に限ってもこれ以上、調べられないのがネックです。



いつものナミネアブラキモグリバエです。やっと名前が言える種が出てきました。



M2脈が翅縁まで達していないキノコバエです。この間から気になっているのですが、捕まえて翅のミクロトリキアの整列具合を見ないと亜科すらもよく分かりません。



そしてクロバネキノコバエです。これも腹部末端が尖っているようなので♀でしょうね。本当に♂は見当たりません。♂がいたら捕まえようと思っているのですけど・・・。この日はこれで全部です。

雑談1)今日も「なにこれ生き物探検」という姉妹ブログに4年前の掛川花鳥園で見た鳥の写真を出しました。こちらの方もご覧ください。

雑談2)昨日からヒメカゲロウ科をまとめ始めたのですが、これがなかなか大変な作業です。というのはまだまともに検索したことがなかったからです。まず、日本産の属と種を調べ、それから検索表を探し、それのシノニムを調べ、それを翻訳して、過去の写真と比べるという作業をしないといけません。検索はほとんど翅脈に関するものばかりなので、とりあえず展翅標本を作っておけばよかったなと思いました。

[1] S. Kuwayama, "A revisional synopsis of the Neuroptera in Japan", Pacific Insects 4, 325 (1962). (ここからpdfがダウンロードできます)
[2] J. D. Oswald, "Revision and Cladistic Analysis of the World Genera of the Family Hemerobiidae (Insecta: Neuroptera)", J. New York Entomol. Soc. 101, 143 (1993). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

今のところこの2つの論文が検索表の候補になっています。



この表は日本産の属がどの検索表に載っているかを示した表です。左から3列は「日本昆虫目録第8巻」に載っていた種の亜科、属、種数です。その次の欄は右のNakahara, Kuwayamaに出てきた属が左欄の属のシノニムになっていることを示しています。なお、第5列目のNakaharaは次の論文を指しています。

W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915). (ここからダウンロードできます)

欄外に書いてある属はNakaharaの論文には出ているのですが、「日本昆虫目録第8巻」には載っていなかった属です。いずれにしても、〇印が検索表に載っている属を示しているので、KuwayamaかOswaldの論文に載っている検索表でよさそうです。ただ、検索内容が結構難しくて、もう少し調べてみないと理解できないところがあります。今のところ、こんな状況です。

廊下のむし探検 甲虫、チャタテ

廊下のむし探検 第1073弾

医者に行ってもらった薬を飲んだら咳は少し収まってきました。それで、今日は午後からマンションの廊下を歩いてみました。だいたいいつもの通りの虫ばかりですが、ちょっと変わったところもいました。まずはそれらから。



いつものヨツモンキスイとは違う感じだったので、図鑑で調べてみると、これはクロモンキスイのような気がしました。一度、捕まえて違いを調べてみたいですね。



これはケシキスイ。これもよく分かりません。この辺が今年の課題でしょうね。



最後はクリイロチャタテかなと思われる個体です。後はハエばかりなので、次回に回します。

雑談1)今日は「成長し続ける図鑑」のハエ目フンコバエ科をアップしました。それから、「気まぐれ写真図鑑 鳥」もアップしました。どちらも図鑑というにはちょっとだけしか載っていないので物足りないのですが、まとめることに意義があると思ってまとめてみました。フンコバエは「秘められた存在」と言われているというのが面白かったです。つまり、幼虫は腐敗物に発生するので有機物の循環には寄与しているのですが、人間生活には医学的にも農業的にも直接的に影響を及ぼさないので、人知れずに活躍する虫という意味かと思います。図鑑はいつものホームページから探してみてください。

雑談2)休眠状態になっていた「なにこれ生物探検隊」のブログを使って過去の写真を整理することにしました。今日は4年前に掛川花鳥園に行ったときに見た鳥の写真を載せました。この時は60種以上の鳥を見たので、何回かに分けて載せるつもりです。また、2,3年前に行った植物観察会の記録も出していなかったので、出すことにしました。データは古いのですが、こちらの方もどうぞよろしく。「なにこれ生物探検隊」はこちらから。

廊下のむし探検 雑談

1)最近は雑談ばかりですね。廊下を歩いてもあまり虫はいないだろうと思うと、ちょっと歩く気が起きません。それに、風邪も治らないし・・・。2月終わりになると春の虫がそろそろ出始めるので、今のところ、それを楽しみにしています。

今日は午前中に医者に行き、お昼は自然観察グループとの話合い、夕方は整骨院に行きました。その合間合間に「成長し続ける図鑑」作りをしました。今日はハエ目のフンコバエ科をまとめ始め、もう一方でアミメカゲロウ目のヒメカゲロウ科をまとめています。明日明後日ぐらいにはどちらかが完成するだろうと思います。ハエ目ではユスリカとか、ハナアブとか、イエバエとか、大所帯がまだ残っているので、まだまだこれからが大変です。甲虫やハチもできたら科別に詳しく見ていきたいなと思って、まだ図鑑を公開していません。これらもぼちぼちやっていこうと思っています。

それに加えて、今日は、「気まぐれ写真図鑑」の「トンボ」、「動物園の鳥」の索引づくりをしました。後者については一度完成した後に掛川花鳥園に行ったので、新たに20数種が増えました。ただ、これはブログに出していないので、これから写真整理をしないといけません。できたら、これらも入れたいと思うので、もう少し時間がかかりそうです。同じことが植物にも言えて、「廊下のむし探検」というので、初めのころは植物観察会の結果を出していなかったので、これらも改めて整理しないといけません。まとめるという作業はなかなか大変ですね。(追記2019/02/06:ふと思いついたのですが、今、休眠中の「なにこれ生き物探検」に過去の観察結果を出したら、後で写真の引用もできていいかもしれません。問題はだいぶ前のことなので、文章を書けるほど何か覚えているかどうかですが・・・

2)撮った写真はとりあえず、パソコン中に入れて、それをポータブルHDDにバックアップしています。その他にパソコンのデータをHDDにバックアップしていたら、この間、そちらが壊れたらしく、パソコンで認識しなくなりました。何度か繋ぎ直していたら、一度だけ認識したのでその機会に別のポータブルHDDに移したので、何とか無事にデータを残すことができました。それで、心配になりました。もし、写真をバックアップしているHDDが壊れたらどうなるだろうか。最近の写真はパソコンにも入っているので大丈夫なのですが、2、3年前以前の写真はバックアップしか残っていません。それで、慌てて2TBのポータブルHDDを買って、そちらにバックアップのバックアップを取り始めました。写真は全部で1.5TBほどになるので、移すのも結構時間がかかりますが、これで安心かなと思っています。

廊下のむし探検 甲虫、ハエほか

廊下のむし探検 第1072弾

風邪がちっともよくなりません。身体の方はかなり楽になったのですが、咳が止まりません。明日にでも医者に行った方がよいかなと思っています。それでも、今日の午後、ちょっとだけマンションの廊下を歩いてみました。



今日は比較的に暖かかったので、何か虫がいるかなと思ったのですが、やはりほとんど見つかりません。やっといつもいるヨツモンキスイを見つけました。



次に見つけたのはユスリカ♂でした。何となくMCu脈がありそうなので、ヤマユスリカ亜科かなと思っています。



それから、小さなハネカクシ。これは名前は分かりません。でも、探せば結構虫がいそうです。



ほらっ、ユアサハナゾウムシも見つけました。



いつものナミネアブラキモグリバエもいます。



これはいつも見るキノコバエです。M2脈が途中で途切れて翅縁まで達していないのが気になります。MNDの検索表で調べてみると、Sciophlinae亜科か、Mycetophilinae亜科かというところで止まってしまいました。翅のミクロトリキアが整列しているか、していないかというのはこんな写真では分かりません。いつものなら採集するのですが、風邪なので今日はパスです。



これはササグモです。よく見ると第1脚腿節の腹側に黒い線が入っています。毛列なのでしょうか。



またユスリカ♂です。これはよく分かりません。





これは何でしょうね。M1+2脈の曲がり方から判断すると、クロバエ科かなと思うのですけど・・・。



次はクロバネキノコバエです。この間、2種については属まで調べたのですが、前脚脛節末端にある櫛状構造を見るのがえらく大変でした。



これはユスリカ♀です。これにはMCu脈はなさそうで、前脛節の方が跗節第1節より長そうなので、エリユスリカ亜科かなと思いました。



これはこの間から気になっている小さな毛虫です。ネットで探すと日本にはいないEilema depressaの幼虫に似ています。それで、たぶん、ヤネホソバあたりのEilema属だろうと思うのですが、よくは分かりません。



下向きでじっとしていました。クサギカメムシです。





翅脈からはヒメバチっぽいですね。元気だったら採集して調べるのだけれど・・・。何もいないと思ってもよく見ると結構いますね。

雑談)今日は午前中は手作り図鑑づくりをしていたのですが、咳がひどくてどうにも集中できません。とりあえず、「気まぐれ写真図鑑 チョウ」だけ仕上げてからは、ひたすら写真のファイルのバックアップを取っていました。図鑑の方はホームページにアップしたので、こちらから入って探してみてください。珍しい蝶が写っているわけではなく、たまたま旅行に行ったときに撮影したり、家の周りで撮影したものばかりなので、チョウをやっておられる方には物足りないと思いますが、単なる私の記録なのでそのつもりで見ていただければ幸いです。

廊下のむし探検 雑談

雑談1)昨日から風邪気味で虫探しも虫調べもお休みです。熱はないのですが、鼻と咳が出て、何となくぼんやりしているので、あまり集中することができません。今日は少しましになったので、朝から暇さえあれば手作りの「成長し続ける図鑑」を作っていました。今日はキモグリバエをまとめてみました。調べ始めると結構面白いのですが、ただ、図鑑というには4種しか載っていないので如何にも物足りません。日本産は164種もいるというのに・・・。これまで基本的には「詳しくはブログを見てください」という立場で書いていました。虫の写真を撮ってさて何だろうと思って調べるとき、折角、図鑑ができたので、それを見て調べてみようと思うたびに、いちいちブログまで飛ばなければいけないのが意外に不便です。それで、検索表くらいは載せておいた方がよかろうと思って入れてみました。そのため、見かけはかなりごちゃごちゃしてしまいましたが、自分が使うときには結構便利かもと思っています。明日ぐらいにはアップできるだろうと思います。

雑談2)植物の会が来週室内例会を開くというので参加することにしました。ついでに、そこで発表できるようにと思ってPowerPoint作りをしました。前に植物の写真展示をしたときの話を使って、「植物の戦略」というタイトルでツユクサの仮雄蕊の話、ヤブガラシの花盤の話、それに、ススキの葉やひっつきむしの仕組みなどを話そうかと思っています。ついでに、これまでの観察会の様子をブログにだしたものをまとめて冊子にしたもの、二年前に作った「気まぐれ図鑑」の「シダを観る」、「単子葉植物」、「双子葉植物合弁花」も持って行こうと思っています。ただ、会場に液晶プロジェクターがないというので、プロジェクターとパソコンとこれら資料を担いでいかないといけません。ぶり返した持病のため、せっかく用意してくださったお昼もご飯と野菜の煮物くらいしか食べられないだろうし・・・。とほほ。

廊下のむし探検 ハエ、フユシャクなど

廊下のむし探検 第1071弾

今日の午前中にマンションの廊下を歩いてみました。晴れてはいたのですが、かなり寒い感じでした。やはり虫はいませんね。それでも小さな虫も探していたら、そこそこはいましたけれど・・・。





何もいないときにはこのハエです。冬になると集団でやってくるナミネアブラキモグリバエ



これはウスバフユシャク。これまで1月中旬~2月初旬にかけて見ていました。



これはマダラヒメグモ





次はこれ。たぶん、ハナレメイエバエ亜科だと思います。こんなハエは上からと横から撮っておくとある程度検索することができます。「一寸のハエにも五分の大和魂・改」という掲示板には易しく書かれた属への検索表が載っています。これを使うと次のような点に注目すると属が分かります。



後ろ向けの額眼縁剛毛が2本、単眼三角板が小さいこと。



破線でつないだ下前側板剛毛が少し前にひしゃいだ三角形であること、中脚脛節に2本の後背剛毛があること、後脚脛節に2本の前背剛毛があること。これで、とりあえずPygophora属までは達しました。種の検索は♂用しか載っていないのでよく分かりません。これはたぶん♀だと思うので・・・。



次は小さなチャタテです。前翅長を測ってみると、わずか1.5mm。黒矢印のところに四角形の縁紋があるので、ウスイロチャタテ科までは確かそうですが・・・。



これはこの間も見たキハダカニグモ



次はノミバエ。脛節に刺がないのでトゲナシノミバエ亜科です。



さらに、脛節に微毛列があることからMegaselia属までは分かりますが、実はこれからはほとんど進めません。



最後はシモフリトゲエダシャクでした。これはこれまで1月下旬から3月初旬にかけて見ていました。

雑談)手作り図鑑の方は、今日はアブ科に取り組んでみました。。実はアブはほとんど調べたことがないので、手元にはわずか3種のデータがあるだけです。100種あまりもいるアブ科のわずか3種で図鑑というのはいかにも恥ずかしいのですが、とにかくまとめるだけまとめてみました。明日くらいには出せると思います。
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