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虫を調べる ナミネアブラキモグリバエ(続き)

冬になったらマンションの壁に小さなハエが大量に集まります。このハエを調べてみたいと前から思っていました。先日、このハエの属しているキモグリバエ科の検索表をいただいたので、早速、検索をしてみました。前回は各部の名称と亜科の検索を出したので、今回はその続きで、属と種の検索です。



調べたのはこんなハエです。属の検索には次の論文に載っている検索表を用いました。

上宮健吉、「キモグリバエ科の属の検索表絵図解説(その2)」、Korasana 84, 155 (2016). 



調べてみると、ネアブラキモグリバエ属になったのですが、その過程を書くとこのようになります。これを写真で確かめていきたいと思います。今回はだいたい検索順に見ていきます。



この写真では脚に特に異常がないことを見ます。本当は腹面を撮った写真だったのですが、ついでに脚のようすも見ることができました。



この写真では④と⑨を見るのですが、どちらも長さを測らなければいけないので、ちょっと厄介です。実は、額、側顔(本文では亜側顔になっているのですが、英語のparafrontaliaは側顔と訳してよいのでは・・・)、それに、頬の寸法をどこで、どのように測るのかよく分からないからです。

上宮健吉、「キモグリバエ科の属の検索表絵図解説(その1)」、Korasana 83, 165 (2014). 

この論文に測定する場所の図が出ていて、それに合わせるように測ったのが上の写真です。④については額が突出しているわけではないのでまず大丈夫だと思われます。⑨も側顔や頬の測る位置さえ合っていれば、検索としては問題なさそうです。ただ、数字が出てくるので、そもそもどこを測るか、このように2次元に投影した写真で測ってよいのか、それとも曲面に沿って測らなければいけないのかなど、いろいろと疑問が残りました。測り方についてはもう少し検討してみますので、それによって値は変化するかもしれません。



⑤、⑥、⑧は触角についてです。触角刺毛が細くて、縁毛を伴うというのは問題なしです。触角第3節の幅を1とすると長さは0.93になりました。この写真は触角第3節の広い面が平面に写るように角度を調整したので、まず大丈夫かなと思っています。



⑦と⑨は単眼三角区についてです。この上に額内刺毛が黒矢印で示したように2から3列並んでいます。これで⑦もOKとしました。三角区の先端は赤矢印で示したところですが、先端は尖っています。これで⑨もOKです。



これは小盾板を写したものです、小盾板は平面状で、黒矢印で示したように側縁には稜があります。これですべての項目をチェックしました。数字に若干不安が残りますが、ネアブラキモグリバエ属であることは確かそうです。



次は種の検索です。これには次の本の検索表を用いました。

K. Kanmiya, "A Systematic Study of the Japanese Chloropidae (Diptera)", Memoirs of the Entomological Society of Washington No. 11 (1983).

この2項目を調べることで、ナミネアブラキモグリバエ notataであることが分かります。これも写真で見ていきます。



またまた寸法です。今度は頬の幅と触角第3節の幅の比較です。触角第3節が少し面からずれているのですが、気にしないでこのまま測ってみると、頬の幅は触角第3節の幅の0.22倍になりました。この値が⑪の範囲から少しはずれているのが気になりますが、きっと測り方がまずいのでしょう。もう少し、検討してみます。でも、⑪にはほかの項目もあるので、たぶん、大丈夫だと思われます。



⑩の前半はこの写真からすぐに分かります。後半は黒矢印で示した翅後領域の黒斑とそのすぐ上の斑紋が離れていることを言っています。⑪は問題ないでしょう。



触角の幅と長さは先ほども見たのですが、⑪はOKだと思われます。




これも先ほど見ましたが、単眼三角区内の額内刺毛が2~3列あるのは黒矢印で示した通りです。三角区の横縁がやや凸というのは赤矢印で示した付近のことをいうのかなと思うのですが、よくは分かりません。ということで、種の検索についてもほとんどすべての項目を確認したので、たぶん、ナミネアブラキモグリバエ Thaumatomyia notataで合っているのではないかと思っています。このハエはヨーロッパからアジアまで広く分布する種で、冬になると多数の個体が集中して越冬することで古くから知られています。また、砂糖大根の害虫として知られるネアブラムシの天敵としても知られています。これらの話についてはいくつか論文を読んだので、今度、紹介します。それから、このハエは腹部末端の形から♀です。





ついでに顔面の写真も載せておきました。実は、初め、頬や側顔の寸法を面に沿って測るのかなと思って、撮っておいた写真ですが、結局、使いませんでした。
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虫を調べる ナミネアブラキモグリバエ

冬になると、決まってマンションに多量の小ハエがやってきます。何だろうと何だろうと思っていたのですが、調べても、キモグリバエ科以上のことが分からず、いつも挫折していました(こちらこちら)。先日、キモグリバエ科の検索の資料をいただいたので、今度こそ名前を突き止めようと思って、ハエのやってくるのを待ち構えていました。



やってくるのはこんなハエです。一見、綺麗なハエなのですが、これが網戸や窓にいっぱいついて、冬の間は窓がまったく開けられません。



これは2日前にベランダの天井を写したものですが、数日前はこの数倍の数がいました。最近、暖かいので、あちこちに散らばっていったようです。

検索に移る前に、いつものように各部の名称を調べてみました。それには次の論文の図を参考にしました。

上宮健吉、「キモグリバエ科の属の検索表絵図解説(その1)」、Korasana 83, 165 (2014). 



まず、体長は2.7mmでした。



これは胸部背面と側面の名称です。特に、普通のハエと違いはなさそうです。



頭部では三角形の額三角板(単眼三角区)が顕著です。ついでに、剛毛の名称もつけてみました。vtiとvteは内頭頂刺毛と外頭頂刺毛、ifは額内刺毛、ocは単眼刺毛、orsとoriは上眼縁刺毛と下眼縁刺毛です。目立った刺毛はvtiとvteくらいです。



次は中胸背板の刺毛です。ntは背側刺毛、paは翅後刺毛、dcは背中刺毛、asとsasは小盾板端刺毛と小盾板亜端刺毛の略称です。ntとpaの辺りはよく分からなかったので、次の論文の中でこの種の候補になっているThaumatomyia notataの記述を参考にしました。

K. Kanmiya, "A Systematic Study of the Japanese Chloropidae (Diptera)", Memoirs of the Entomological Society of Washington No. 11 (1983).



これも同じ場所を斜め前から撮ったものです。



最後は翅脈です。説明を読むと、どうやらSc脈が退化しているようです。よくよく見るとその痕跡のようなものが見られます。また、通常Sc脈がC脈と交わる付近にあるsc切目も残っています。また、第2基室(dm)と中室(dm)が分かれていた時の名残りの屈曲点があります。その他、翅後半にあるはずのCu脈やA脈がすべて退化しているのもこの科の特徴です。



先ほどの二つの論文に載っている検索表を用いて、まずは亜科の検索をしてみました。その結果、キモグリバエ亜科になったのですが、まず、その過程を見ていきたいと思います。



ほぼ検索順に見ていきますが、まず、①の初めの部分は、眼縁刺毛が短く、すべて後傾しているのが写真から見て取れます。これでOKです。



つぎは背中剛毛(dc)が黒矢印で示した1本だけあることを確認します。



この肩瘤についてはちょっと注釈が要りそうです。日本語の原文では「肩瘤に1本の刺毛」となっていますが、肩瘤には目だった刺毛がありません。強いて言えば弱い毛が2本くらいはありそうです。同じ個所の英語の記述を見ると、"humerus with at most 1 seta"となっています。"at most"と書かれているので、ここは「肩瘤にはせいぜい1本の刺毛」としておいた方がよさそうです。英語の論文でThaumatomyia notataの種の記述の欄を見ても、"h hairlike and pale"となっているので、刺毛と言えるほどのものでないことが分かります。いずれにしてもここはOKとします。



最後は翅脈です。前縁脈はR4+5脈を少し過ぎたところまで伸びていることが、右下に入れた拡大図で分かると思います。これですべての項目を調べたので、このハエはキモグリバエ亜科でよさそうです。

ちょっと長くなったので、属と種の検索は次回に回します。

家の近くのむし探検 ワタムシがいっぱい

家の近くのむし探検 第452弾

昨日の午後、いつも通っている道路際の茂みに行ってみました。



歩道の脇の柵の向こうにハバチがいたので、なんとか柵の隙間から写しました。もう少し近づきたかったのですが、がさごそしていたら逃げられてしまいました。名前までは分かりません。



こちらはタケトゲハムシです。





幹に何だか分からないものがついていたので、一応、写しました。カイガラムシかなと思って、「学研生物図鑑 昆虫III」を見ると、ルビーロウムシ Ceroplastes rubens というカタカイガラムシ科に似ています。手元にカイガラムシの図鑑がないので、よくは分かりませんが・・・。



クモの獲物に集まるハエの種類を知りたくて、ジョロウグモに獲物がついていないかなと見て回ったのですが、やはりいませんでした。



蛾の繭みたいです。ネットで調べてみると、タケカレハの繭のようです。そういえば、この辺りでタケカレハの幼虫を何度か見ました。



これはキボシマルウンカ



ヤマギシモリノキモグリバエらしきハエがいました。キモグリバエの検索ができるようになったので、是非とも捕まえたいなと思うのですが、その前に写真を撮ってからと思うと、必ず逃げられてしまいます。この日も逃げられてしまいました。



これはツマグロキンバエです。

この日はワタムシがあちこちで飛んでいて、しかもあちこちに止まっています。









ついつい夢中になって何匹か撮ってしまいました。「日本原色アブラムシ図鑑」を見たのですが、ワタムシとか、ワタアブラムシという名のつくアブラムシは結構います。どれでしょうね。



飛んでいるときも意外にホバリングしているので、これは撮れるかもと思って撮ってみました。固定焦点で、フラッシュをたいて何枚か撮ったら、そのうちの1枚のピントがまあ合っていました。こんな姿で飛んでいるのですね。

廊下のむし探検 蛾、カゲロウほか

廊下のむし探検 第1047弾

11月21日にマンションの廊下で探した虫を出すのを忘れていました。



マンションの廊下ではやはり蛾が多いですね。これはナカオビキリガではないかと思います。



こんな小形のカゲロウもいました。ターバン眼があるので、コカゲロウの♂です。





検索でもするときに必要かなと思って、後翅と腹部末端の交尾器を撮っておいたのですが、どちらもはっきりしませんでした。「原色川虫図鑑成虫編」の図版を見るとヨシノコカゲロウ Alainites yoshinensisに似ている感じです。種の説明を読むと、「雄成虫は、腹部第2~6節背板の両側縁と後縁に沿って暗褐色の斑紋をもち、この斑紋の形で他種とは容易に見分けられる。」とのことです。斑紋がよく似ているので、当たりかもしれません。





これは顔面と口肢の模様からスズキクサカゲロウだと思われます。



また、このハエが出てくる季節になってきました。21日にはまだポツポツという状態だったのですが、今日はもう廊下にはいっぱいいるし、東側のベランダの天井には一面黒くなるほどぎっしり止まっています。今日は何匹か捕まえてきて検索をしてみました。キモグリバエ科の検索の資料をいただいた時に試してみたら、ナミネアブラキモグリバエ Thaumatomyia notataになったのですが、今日も同じ結論になりました。たぶん、間違いないでしょう。このハエは全世界的に分布しているハエのようです。顕微鏡写真を撮ったので、今度、まとめて出すことにします。





キノコバエです。翅脈を撮ればなんとかなるかなと思ったのですが、翅の基部の部分とRs脈の基部の部分がよく分からず、結局、駄目でした。今度採集して調べてみたいと思います。





アメリカミズアブはこの日、2匹見ました。このハエは以前調べたことがあります。





ニトベエダシャクもこの日は2匹。



それにマエグロシラオビアカガネヨトウ。



それにチャエダシャク



ゴミムシはどうもよく分かりません。琵琶湖博物館WEB図鑑「里山のゴミムシ」でずっと調べていったのですが、ナガゴミムシ亜科Pterostichus属のヒメホソナガゴミムシあたりが似ている感じです。よくは分かりませんが・・・。



写真はうまく撮れたのですが、カバナミシャクはやはり難しいです。トシマカバナミシャクあたりかなと思うのですが・・・。



これはホソバヤマメイガかな。



それにエゾギクキンウワバ



ハエは採集しないと科もよく分かりません。



最後はフクラスズメでした。これで終わりなのですが、この日、公園に行ったときに撮った写真を一枚出し忘れていました。ついでに出しておきます。



キタキチョウでした。

虫を調べる アシアカツヤアシブトコバチ?

10月29日に採集したコバチを調べてみました。



調べたのはこんなコバチです。後脚腿節が太いのでアシブトコバチ科であることは確かでしょう。昨日、各部の名称を調べたので、今回は実際に検索をしてみます。用いた検索表は昨日も利用させていただいたこの論文です。

A. Habu, "A Revision of the Chalcididae (Hymenoptera) of Japan, with Descriptions of Sixteen New Species", 農業技術研究所報告 C. 病理・昆虫 11, 131 (1960). (ここからダウンロードできます)

まずは亜科、族、属の検索です。



検索をしてみると、Antrocephalus属になったのですが、その検索の過程を示すとこのようになります。逆にこの6項目を調べることで、Antrocephalus属であることが確かめられます。それを写真で見ていきたいと思います。今回はほぼ検索順に見ていきます。



まず、腹部に明瞭な腹柄がないことはこの写真でも分かります。頭部は昨日も示した通り奇妙な形なのですが、これに対抗する項目を選ぶと、角のある種になるので、それに比べると普通ということになります。



触角挿入口は複眼下縁レベルよりは明らかに下にあります。これはアカアシブトコバチなどが含まれるBrachymeriinae亜科を除外する項目になっています。また、この個体は♀なので、触角挿入口は頭盾のすぐ上にあります。



後脚脛節末端が垂直に切られたようになっているというのがこの項目です。これに対抗するのは先ほども出てきたBrachymeriinae亜科で、この部分が斜めに切られています。



次は翅脈です。これは書かれている通りだと思われます。



次は顔面にある複眼内縁隆起線に関するものです。④も⑤もこの写真でよく分かります。




これは先ほどの複眼内縁隆起線がどこまで伸びているのかということなのですが、調べてみると赤矢印辺りまで伸びているようです。先ほどのHabu(1960)のAntrocephalus apicalisの図を見ると、黄矢印で示したあたりから下に黄点線で示したfronto-genal suture(顔面―頬溝)があるようなので、その辺りまで届いていることになります。ついでに、後で出てくるgenotemporal furrowについても同じ図を参考にして黄点線で描いておきました。

これですべての項目を確かめたことになるので、Antrocephalus属であることは確かそうです。次は種の検索です。ここからどう進めるか、かなり迷ってしまいました。というのは、"Information station of Parasitoid wasps"にはAntrocephalus属の日本産の種リストが載っているのですが、全部で7種記録されています。このうち、Habu(1960)には5種しか載っていません。一方、載っていない分を含めて次の論文には4種が載っていました。

T. C. Narendran, "Oriental Chalcididae (Hymenoptera: Chalcidoidea)", Zool. Monograph, Dep. Zool., U. Calicut (1989).(ここからダウンロードできます)



表にまとめてみると、こんな風になります。従って、この二つの論文を用いることにより日本産7種について調べることができると思われます。それで、まず、Habu(1960)に載っている種の検索表で調べてみます。



この検索表では全部で5種載っているのですが、実際に検索してみると、⑦b→⑧aとなり、apicalisになります。この種は現在ではdividensのシノニムということになっています。これらの項目を写真で見ていきます。



小盾板の先端は特に凹んでいないのですが、murakamiiやsatoiiはここが大きく凹んでいたり、二峰性になっているので、これとは明らかに異なります。また、点刻の大きさと間隔はほぼ同程度です。ということで、⑦bはOKとしました。



⑧bを選ぶと、黄矢印辺りに突起がありますが、これにはありません。また、色に関しては書いてある通りです。ということで、この検索表を用いると、apicalis(=dividens)になります。

次はNarendran(1989)の検索表です。この論文は東洋区の種をすべて扱っているので、かなり数が多いのですが、そのうち、日本産だけを拾うと次のようになります。


この場合も先ほどと同様に結果的にはdividensになるのですが、検索の経路としては、Ⓐb→Ⓑb→Ⓒbと進んでいきます。



Ⓐbは先ほど同様、黄矢印の部分に歯がないことを見ます。また、Ⓒbの色はその通りです。



genotemporal furrowは先ほど示した通りなのですが、後縁に沿ってかなり深いことが分かります。これで、ⒷbもⒸbもOKです。



Ⓒbの鋭尖形というのはたぶん、大丈夫でしょう。



最後のこのcarinaについては迷いに迷いました。たぶん、矢印で示した部分だろうなと思ったのですが、はっきりとはしません。一つ前の写真でも同様の弱い隆起線が見えます。いずれも第1背板の長さよりは圧倒的に短いので、たぶん、大丈夫でしょう。どうしてこんなに写真が難しいかというと、前伸腹節と後体節の間の狭い隙間にあって、なおかつ、後体節第1節がまるで鏡みたいにつるつるで、前伸腹節の隆起線が写ってしまい、どれが本物かよく分からなかったためです。

ということで、紆余曲折はありましたが、一応、こちらもdividensになりました。たぶん、アシアカツヤアシブトコバチ Antrocephalus dividensで大丈夫だろうと思われます。虫を一匹ずつをこんな風に検索表で調べていくのは相当に大変ですが、それでも、細かく調べることでいろいろと新しいことが分かるので、やっていて結構楽しいです。これからも続けていこうと思います。

アシブトコバチの各部の名称

10月29日にマンションの廊下でこんなハチを見つけました。



後脚腿節が太いので、たぶん、アシブトコバチの仲間ですね。今回はちゃんと調べてみたいと思って採集しました。この2,3日調べているのですが、Antrocephalus属であることは確かで、たぶん、アシアカツヤアシブトコバチA. dividensだろうと思っているのですが、種の検索で少し手こずっています。それで、まず、各部の名称を調べてみようと思って、何枚か顕微鏡写真を撮り、次の文献に載っている図を使って各部に名前をつけてみました。

A. Habu, "A Revision of the Chalcididae (Hymenoptera) of Japan, with Descriptions of Sixteen New Species", 農業技術研究所報告 C. 病理・昆虫 11, 131 (1960). (ここからダウンロードできます)
T. C. Narendran, "Oriental Chalcididae (Hymenoptera: Chalcidoidea)", Zool. Monograph, Dep. Zool., U. Calicut (1989).(ここからダウンロードできます)



まずは横から撮った写真です。体長を測ってみると、5.2mmになりました。



ともかく変わった顔をしています。顔の中央が凹んでいて、その周辺を取り巻くように隆起線が走っています。中央の凹んでいる部分(scrobe cavity)は触角の柄節が収まる場所になっています。複眼内縁隆起線というのは複眼の内縁に沿って存在する隆起線ですが、この個体では上側の単眼の一つの後ろで左右の隆起線がつながっています。なお、preorbital carinaeの和訳にはいつも利用させていただいている"Information station of Parasitoid wasps"の「形態用語辞典」の中のpreocular carinaの訳を当てました。



これは上から撮った写真です。3つある単眼を分けるように間を隆起線が走っています。





ちょっと倍率を上げてみました。それにしても不思議な形です。



これは口のあたりの拡大です。触角挿入口は頭盾のすぐ上にあります。こんなところがAntrocephalus属の特徴です。



これは頭部を斜め横から見た写真です。検索に出てくるgenotemporal furrowがよく分からなかったのですが、たぶん、矢印で示した溝ではないかと思っています。



これはその溝を拡大したものです。



触角も写してみました。触角は見かけ上11節なのですが、Habu氏の論文を読むと、先端は3節に分かれて、全部では13節になるとのことです。ただし、先端3節の区切りは多少不明瞭ということです。触角第3節は幅の狭い環状になるはずですが、この個体ではかなり長くなっています。鞭節は通常、柄節と梗節を除いた部分を指すのですが、文献を見ると、環状節を除いているものもあり、はっきりとはしません。

追記2018/11/25:触角の先端を拡大してみました。



やはりよく分かりませんね)(追記2018/11/26:flagellumがどこを指すのかよく分からなくなりました。Habu(1960)とNarendran,(1989)の図はいずれもring segmentを除いた後の部分を指しています。Insects and Arachnids part 12では本文中には第3節以降となっていますが、図ではring segmentを除いていました



これは胸部背面です。notaulusはHabu氏の論文ではparapsidal furrowとなっているのですが、たぶん、notaulusの方が正しいのではないかと思います。これについては以前、セイボウで調べたことがあります。



これは胸部側面です。acetabulumはHabu氏の論文に載っていたのですが、何と訳したらよいのかよく分かりませんでした。



これは前翅です。コバチ特有の脈の少ない翅です。



後脚を写してみました。腿節はこんなに膨れていますが、脛節との付け根近くに黒い歯が見られました。



その部分の拡大です。毛の間から黒い歯が見えています。たぶん、この歯で脛節が滑らないように固定し、脛節にひずみを与え、その弾性力を使って飛躍するのではと思いました。



これは前伸腹節を写したものです。B、C、Dの記号はHabu氏の論文に載っていた隆起線を示す記号です。



これは後体節第1節背板に見られる隆起線(carinae)を写そうとしたものですが、何度写してもこの程度の写真しか得られません。この隆起線の長さが検索に出てくるのですが、肉眼で見ても見えません。腹部をはずしてしまえばよいのですけどねぇ。



これは後体節を斜め上から撮ったものです。論文の図を見ながら、節に順番に番号を振ってみました。第7+8節をepipygiumというそうです。



次いで、これは腹面からの写真です。腹板にも番号を振ってみたのですが、第1節と第2節辺りはよく分かりません。ただ、長い部分が第5節(hypopygium)らしいことが分かるので、逆に番号を振ったので、違っているかもしれません。

これで、ほとんどの部分の名称が分かりました。ただ、genotemporal furrowや後体節第1節背板の隆起線などのように、よく分からない部分があって、それらが検索表に出てくるので、まだまだこれからが大変です。

家の近くのむし探検 毛虫やハエなど

家の近くのむし探検 第451弾

もう今頃になると、虫の姿はほとんど見かけなくなりますね。それでも、21日に運動がてら近くの公園へ行き、ついでに虫探しをしました。





公園に着いて、いつものようにツツジの葉の上を探していたら、この間も見つけたキバラケンモンの幼虫がいました。たぶん、前と同じ個体ですね。この日は大きさを測ってみました。体長は45mmでした。



ハエがいたので撮ってみたのですが、これは何でしょうね。



これはアミメアリです。





これは「日本産有剣ハチ類図鑑」で調べてみました。キアシナガバチ♀のようです。近づいて撮っていたら、こちらをにらんでいたのですが、飛び立つ元気はなさそうです。



これはこの公園で何度も見たキアシハリバエに似ている感じですが、よくは分かりません。





この日は街路樹のクスノキの剪定をしていました。たぶん、いるのではないかと思って近くの壁を探してみたら、やっぱりいました。クスベニヒラタカスミカメという外来種です。この日は2匹見つけました。

雑談)今日はアシブトコバチを調べてみました。10月26日にマンションの廊下で見つけたハチです。検索表があるので、属(Antrocephalus)までは比較的簡単にたどり着いたのですが、その先の種の検索で少しつまづいています。というのは、文献が古いので、すべての種が載っているわけではなく、別の論文で補わなければならないからです。そのたびに専門用語が分からなくて四苦八苦しています。とりあえず、地道に進まなければと思って、各部の名称をつけるところから始めようと思っています。

虫を調べる ヨシブエナガキクイムシ

この間、ナガキクイムシを見つけ、前胸背に共生菌類の胞子を入れておく胞子貯蔵器官があることを知りました。このときは採集をしなかったのですが、そういえば、以前にも捕まえたことがあったなぁと思い出して、冷凍庫から取り出して調べてみました。今年の3月15日に採集したものです。



これはその時の写真です。古いので、さすがに冷凍庫に入れておいても乾燥して固まっていました。これにも胞子貯蔵器官らしきものがあったのですが、この個体は実は♂で小さくて目立たないものでした。

とりあえず、名前を調べてみようと思って、検索をしてみました。検索には次の論文の検索表を用いました。

野淵輝、「日本のナガキクイムシ科」、家屋害虫 15, 33 (1993).(ここからダウンロードできます)

若干途中で問題があったのですが、とりあえず検索表で調べてみると、ヨシブエナガキクイムシ♂であることが分かりました。たぶん、検索をしなくても胞子貯蔵器官の形や上翅斜面部の形状でこの種で間違いないと思うのですが、検索をしてみると、なかなか難しいところもありました。いつものように写真で確かめていきたいと思います。



検索は①→②b→③→④b→⑤と進んでいくのですが、実は②aはこの条件では除外できません。こちらの道を進むと、②a→⑥→⑦→⑧と若干の違和感を伴いながら進んでいくのですが、最後の種に至るところで、上翅斜面部の形がまるで違うので、否定することができました。今回はこちらの過程はパスします。



とりあえず背側から撮った写真です。検索表では③くらいが関係しますが、これは大丈夫でしょうね。



体長は3.3mmだったので、⑤の条件には合致していると思われます。でも、ともかく変わった虫ですね。後脚がこんなに後方にあります。と同時に、腹部がほとんどありません。c、f、tはそれぞれ基節、腿節、脛節を意味します。



これは横からです。上翅末端が急激に折れ曲がっている感じですが、この部分が斜面部です。



まず、前脚基節が接しているというのは、まず間違いないでしょう。これでナガキクイムシ亜科になりました。



この②はオオナガキクイムシ属とナガキクイムシ属を分ける項目なのですが、ここがよく分かりません。先ほどの論文を読むと、下唇鬚は解剖しないと分からないというので、たぶん、大顎の下に見えている突起は下顎鬚だろうと思うのですけど・・・。



一応、倍率を上げて撮ってみましたが、下唇鬚らしいものは見えません。なお、上の写真に書き入れた各部の名称は次の論文に載っている図を参考にしました。

B. J. Kaston, "The Morphology of the Elm Bark Beetle Hylurgopinus rufipes (Eichhoff)", Connecticut Agricultural Experiment Station (1936). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この論文はキクイムシ科について書かれたものなので、形状がだいぶ違うのですが、ナガキクイムシ科については各部の名称の載っている文献が見つからなかったので、やむをえず参考にしました。



これは上翅基部の拡大です。点刻列がいくつも並んでいますが、第1列だけが凹んでいます。これが③の意味だと思われます。



これは前脚脛節の拡大です。こんな横皺列があります。この個体が♀だったら、この形状を見て、②でオオナガキクイムシ属とナガキクイムシ属を見分けることができるのですが、これは♂なので見分けられません。



これは上翅斜面部の写真です。中心にいるのはダニですが、半年余り冷凍庫に入れていたので、これも死んでしまっています。斜面部は全体に凹んで、側縁は竜骨状です。さらに、後縁はえぐられていますが、それほど深くえぐられているわけでもありません。こんなところが③、④、⑤の内容です。



これはその部分を拡大したものです。



この写真は前胸背の拡大ですが、後縁近くに中心線があり、その周りにかすかに点刻群が見られます。♀だともっとはっきりしているのですが、♂だとこんなものみたいです。



ちょっと拡大してみました。



さらに拡大して見ました。穴が開いているとばかり思ったのですが、ほとんどみな塞がっています。雄では退化して本来の役目を果たしていないのかもしれません。

これで、一応、検索項目をすべて確認したので、たぶん、ヨシブエナガキクイムシ♂で間違いないのではと思っています。ついでに撮った写真も載せておきます。



これは顔です。悪さをする割に意外に可愛い顔をしていますね。



これはちょっと横からです。



腹部は後脚基節で隠れていたので、少し斜めにして撮りました。先ほどの論文によれば、腹部腹板は第3節から見えるようなので、そのように番号を振りました。

本当は胞子貯蔵器官を拡大して撮るのが目的だったのですが、♀ではなく♂だったので、貯蔵器官そのものははっきりとは写りませんでした。胞子貯蔵器官の構造や貯蔵される菌類の種類については文献がいくつか見つかったので、また、今度出すことにします。

追記2018/12/30:立西さんから、「『ぼくらの昆虫採集』という本の中で,養老孟司さんが電子顕微鏡を通して撮影したカシノナガキクイムシのメスの胞子貯蔵器官の写真を載せていました。本文の言葉を引用すると,まるでパンチで開けたような綺麗な穴だったので驚きました。」というコメントをいただきました。いくつかの論文に走査電顕写真が載っていました。綺麗に写っていて、まるで機械の一部みたいでした。光顕写真はやはり分解能の上では電顕にははるかに負けてしまいます。でも、今度♀を見つけたら、頑張って撮ってみます。コメント、どうも有難うございました

家の近くのむし探検 ジョロウグモ、ハバチほか

家の近くのむし探検 第450弾

ジョロウグモの獲物に集まる小バエについて調べたので、実際に見てやろうと思って、17日にいつもの道路際の茂みにジョロウグモの巣を探しに行きました。



ジョロウグモは2匹見つけたのですが、いずれも獲物はいませんでした。後から考えると、カメムシでもくっつけてやればよかったのかな。





それで、いつものように虫探しをしました。まずはハバチを見つけました。今回はジョロウグモ目当てだったので、採集はしませんでした。



何とか翅脈から分からないかなと思って拡大して見てみました。黄三角で示した脈の交点が離れているので、ハバチ科のハバチ亜科かなと思うのですが、肛室の辺りがよく分からなくてそれ以上進みませんでした。





これはヒメクダマキモドキでしょうね。



道路際の茂みを離れて川の土手に行ってみました。こんなアレチウリが伸びてきていました。



アレチウリは特定外来生物に指定されていますが、一応、花ぐらいは撮っておこうと思って撮りました。



そこにハナアブが来ていました。小さかったので、たぶん、ホソヒメヒラタアブでしょうね。



これは別のところにいたものです。



次はナナホシテントウです。角でも生えているのかな。





セイタカアワダチソウが生えている場所にきました。そこに来ていたツマグロキンバエです。





イエバエか、ハナバエかと思ったのですが、M1+2脈が前方に曲がっている割にはCuA+CuPが翅端にまで達しているような感じです。ヤドリバエなのかなぁ。



最後はアリでした。これはクロヤマアリかな。

クモの餌に群がるクロコバエに関して

先日、ジョロウグモに捕まえられたバッタの写真を撮って、後で見たら小さなハエがいることに気が付きました。



この写真です。



その部分を拡大してみました。上の写真を見られた立西さんから、「クロコバエ科 Milichiidae の中でクモやサシガメの獲物に集まっておこぼれを貰う習性を持つグループがいることを知りました。」というコメントをいただきました。クロコバエ科は「新訂 原色昆虫大図鑑III」(2008)ではシロガネコバエ科(新称)として載っているのですが、「日本昆虫目録第8巻」(2014)によると、以前から使われていたクロコバエ科になっていました。この科のハエについては以前にも調べたことがありました()。この時、翅の前縁脈に明瞭にsc切目が見られたのですが、今回のハエには見られないので、初めのうちはたぶん別の科ではないかと思いました。ただ、クモの餌に集まるハエなんて面白いなと思って、少し調べてみることにしました。

MNDを初めとしていろいろ文献を調べたのですが、詳しく書いてあるものがほとんど見つかりません。今のところ、Michiliidae(クロコバエ科)のWikipediaが一番詳しくてまとまっているのでそれを紹介します。ただ、Wikipediaの内容はあまりあてにならないことが多いのですが、今回のMichiliidaeに関しては文献がきちんと引用されているので、まあ大丈夫かなと思いました。引用されている文献についてもちょっと読んでみました。実験の論文ですが、それについても触れたいと思います。

クロコバエ科は以前はチスイコバエ科に入れられていたこともあり、また、チスイコバエ上科、キモグリバエ上科、ハモグリバエ科群など、さまざまな上科を渡り歩いた、分類の難しい科の一つのようです。「新訂 原色昆虫大図鑑III」(2008)では短角亜目ハエ型下目額嚢節無弁翅亜節チスイコバエ上科に入っています。

このハエは腐った野菜、枯れ木や樹皮、堆肥、動物の糞などで幼虫が育つため、"filth flies(汚物バエ)"などと呼ばれていますが、一方、クモの巣にかかった獲物の体液を求めて集まるので、"freeloader flies"とか"jackal flies"とか呼ばれています。freeloderというのはただで飲食物をたかる者という意味で、jackalは猛獣の食べ残しをあさるイヌ科の動物です。このように他の動物が餌として確保した餌を搾取する寄生をkleptoparasitism(盗み寄生あるいは労働寄生)と呼んでいるようです。

基本的には捕獲された餌に集まり、傷口から流れる体液をなめたり、時には柔らかいクチクラを貫いて内部の体液を吸ったりするようです。そのためか、実際に長い口吻を持っています。クロコバエの場合はクモ(主に、ジョロウグモ、ササグモ、カニグモ)、ムシヒキアブ、サシガメ、カマキリなどが捕まえている獲物が盗み寄生の対象となります。このような盗み寄生をするものとしては、ほかにも、ノミバエ、キモグリバエ、タマバエ、ヌカカが知られています。クロコバエの場合、集まるのはほとんど雌で、雄はたんぱく性の栄養を必要としないから集まらないだろうと思われていますが、一方、獲物の周辺には雌が多く集まるので、それを求めて雄がやってくることもあるようです。

獲物としては、カメムシ(同翅類、異翅類)、ハチがしばしば対象になっています。これはこれらの獲物が匂いを出すからだと考えられています。これについては次の論文が引用されていました。

T. Eisner, M. Eisner, and M. Deyrup, "Chemical attraction of kleptoparasitic flies to heteropteran insects caught by orb-weaving spiders", Proc. Natl. Acad. Sci. 88, 8194 (1991). (ここからダウンロードできます)

この論文はカメムシを使って、実際にカメムシの出す匂いがクロコバエを引き寄せるかどうかを確かめたという内容です。実験はアメリカジョロウグモを用い、これの巣にいろいろなカメムシを引っ掛けて集まってくるハエを調べるという方法です。一方で匂いを出さないと思われるヒトリガについても同様に観察します。今度はこれにカメムシの出す匂いの基となる、trans-2-hexanalやhexanalをかけて観察します。最後は厚紙にこれらの液体の入ったマイクロチューブをつけて1.5mの高さで15-20m置きにぶら下げます。コントロールとして液体の入っていないチューブをつけた厚紙もぶら下げておきます。こうした実験をすると、観察を始めて20分から2時間後にハエの数はピークに達し、最大で20匹、平均5匹ほどのハエが集まったそうです。trans-2-hexanalををつけたヒトリガでも最大で10匹ほど、平均で3-4匹集まり、液体を取り付けた厚紙にも集まったので、おそらく、カメムシの匂いに引き寄せられたのだろうという結論になりました。また、獲物のミツバチにもよく集まるのですが、ハチも体表からいろいろな分泌物を出しているので、その匂いが原因かもしれないとのことでした。

最後に、クロコバエはベラやエビのような掃除魚の役割も果たしているのではと書かれていました。クモの大顎や尻を舐めて掃除をするそうです。クモの方もそれを望んでいるのか、大顎を広げて、掃除をしやすくしている様子が観察されているようです。

ということで、中途半端な話で終わってしまいましたが、それほど詳しく書かれている文献が見つからなかったので、まだ、よくは分かっていないというのが本当のところではないかと思います。カメムシの匂い物質に惹かれることは確かそうですが、今回観察したバッタの場合はどうしてかなと疑問が残りました。実は、本当にクロコバエ科どうかこの後、ジョロウグモの獲物を見に行きました。いつもの道路脇の茂みで探したらジョロウグモ2匹が見つかったのですが、いずれも獲物なしでした。クモは餌をすりつぶして1日か1日半くらいで消費してしまうと書かれた論文があったような・・・。立西さん、面白いヒント有難うございました。今度見つけたら是非とも調べてみたいと思っています。

虫を調べる カミナリハムシ?(続き)

昨日の続きで、15日に採集したハムシの検索です。



対象としたのはこんなハムシです。昨日は亜科と属の検索を行い、ノミハムシ亜科カミナリハムシ属だろうという結論になりました。なお、日本列島の甲虫全種目録 (2018年)」によると、ノミハムシ亜科はヒゲナガハムシ亜科に入れられていますが、とりあえず、「原色日本甲虫図鑑IV」に載っている検索表に従って、そのままノミハムシ亜科としておきます。今日はその先で種の検索です。種の検索表は

木元 新作, 滝沢 春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」(東海大学出版会、1994).

に載っているはずなのですが、手元に資料がないので、少し古いのですが、次の論文に載っている検索表を用いました。

S. Kimoto, "The Chrysomelidae of Japan and the Ryukyu Islands. X Subfamily Alticinae III". J. Fac. Agri., Kyushu Univ. 13, 601 (1966). (ここからダウンロードできます)

今回のハムシはカミナミハムシ Altica cyaneaだろうと思っているのですが、その周辺の検索表を訳してみました。



検索は⑱→⑲→⑳b→㉑→㉒aと進むはずなのですが、これを写真で確かめていきたいと思います。



これは上翅の側縁の前方部分を拡大したものです。中央にある幅の広い帯は上翅側片だろうと思っています。⑱の項目に対抗する項目は「鋭い縦筋が肩と同レベルで上翅の側縁に沿って走る」となり、こちらを選ぶとスジカミナリハムシになります。以前、この上翅側片の上側の鋭い筋をそれだと思って、スジカミナリハムシにしたことがあります。でも、この論文に書かれた表現をよく読むと、「上翅側縁に沿って」なので、側縁そのものとは異なるようです。さらに、「ハムシハンドブック」に載せられた写真を見ると、「肩部から後方に伸びる隆起条」があって、北海道産はそれが翅端近く延びるようですが、北海道産以外は基部のみ明瞭で、別亜種になるという説明が載っていました。これによると、どうやら以前の解釈は間違いで、上翅側片の上側の縁ではなく、その上側に隆起条がしかも、基部のみ存在するのがスジカミナリハムシのようです。ということで、ここではそんな隆起条はないので⑱を選びました。



次は上翅についてで、この写真のようにあまり規則的とは言えないのですが、明瞭な点刻があります。ということで、⑲はOKにしました。体長は範囲から少しはみ出るのですが、㉑も㉒もOKとしました。



⑳の原文は"Ante-basal transverse impression with a pair of short, lateral longitudinal impressions or foveae laterally"で、これがどこの部分を指しているのか分からず、最初はパスしていました。でも、「原色日本甲虫図鑑IV」には、ニホンカミナリハムシ nipponicaの説明が載っていて、"Ante-basal transverse impression"が前胸背にある溝のことであることが分かりました。impressionは窪みという意味で、foveaeは窩という意味のようです。いずれにしても、この横溝の途中に1対の凹みがあるのがニホンカミナリハムシということになるので、この個体ではそれらしいものが見当たらないので⑳bの方を選びました。



次は触角の節の長さです。実際に測ってみると、第3節は第2節の1.6倍になりました。対抗する項目がほぼ等しいか、少し長い程度なので、1.6倍でもほぼ2倍の中に入っていると解釈しました。ということで、紆余曲折があったのですが、結局、カミナリハムシということになりました。合っているとよいのですけど・・・。スジカミナリハムシとの違いは先日、スジカミナリハムシだと思って採集した個体が標本として残っているので、もう一度、確認することにします。



ついでに検索に用いなかった写真を載せておきます。腹側から撮った全体像です。今回はこれだけです。

雑談)最近、寒くて虫がいなくなったので、冷凍庫に眠っている虫たちを調べてみようと取り出して調べ始めました。検索をして、顕微鏡で撮影した試料は後でまた調べることがあるかもと思ってできるだけ残すことにしています。



最近、小さな虫は六本脚で売っていたチャック付きポリ袋とカード用紙を使ってこんな風にして残しています。綿に載せてポリ袋の弾力で押さえているだけなので、後で見るときにはすぐに取り出せるし、意外に見栄えがよいので、この間の文化祭では「小さな虫の標本」と題してそのまま標本箱の中に並べて展示しました。カード用紙の裏側には採集地などを入れたラベルをついでに印刷して入れています。これまでは小さな甲虫とカメムシを入れていたのですが、最近ではアリもこんな感じで残し始めました。これならかさ張らないし、タトウより中身が見えてよいかなと思っています。密封してしまっているので、乾燥してくれるかどうかが心配ですが・・・。

虫を調べる カミナリハムシ?

「手作り図鑑」を作っていたら、写真で載せた種がどれも怪しく思えてきました。それで、地道に一つずつ調べていこうと思って、ハムシあたりから調べ始めました。



今回は15日にマンションの廊下で見つけたこのハムシです。亜科の検索表はいつものように、「原色日本甲虫図鑑IV」に載っている検索表を用いました。



検索してみると、いつものようにノミハムシ亜科になったのですが、実は、最後の③のところで迷ってしまいました。というのは後肢腿節がそれほど肥大してはいなかったからです。でも、最終的にノミハムシ亜科にしてしまいました(「日本列島の甲虫全種目録 (2018年)」によると、ノミハムシ亜科はヒゲナガハムシ亜科に入れられています)。その辺りも写真を見ながら説明していきたいと思います。



まず、側面からの写真です。体長は直線的に測って5.7mmでした。この写真では①と③の前半を確かめてみます。まず、①はたぶん書いてある通りで大丈夫でしょう。③の後肢腿節は確かにそれほど肥大していませんが、中肢腿節に比べると太いことが分かります。ここではとりあえず保留にしておきます。



次は顔の写真から②を確かめてみます。触角が頭部の前半部というのはよさそうですが、触角基部が近くに位置するというのは相対的な表現でこのままではよく分かりません。これについては、以前も書いたように、Mike's insect keysというサイトのハムシ科の亜科の検索に書かれているように触角第1節の長さと比較すると、同じ程度だと言えなくもありません。それで、「近くに位置し」と選択します。



次はさっき問題になった③の後半の項目です。前胸腹板突起はこの写真で示すところですが、「幅広い」という表現もやはり相対的です。この項目はヒゲナガハムシ亜科を除外する項目ですが、以前調べたヒゲナガハムシ亜科のジュンサイハムシと比較すると、かなり幅広いことが分かります。また、同じノミハムシ亜科のダイコンナガスネトビハムシと比較すると同程度であることが分かります。それで、後腿節がそれほど肥大していなかったのですが、ノミハムシ亜科の方を選択しました。

次は属の検索です。属の検索には、次の本の検索表を用いました。

木元 新作, 滝沢 春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」(東海大学出版会、1994).

これを用いるとカミナリハムシ属 Alticaになったのですが、検索の過程を書いていくと次のようになります。



全部で14項目あるのですが、これを一つ一つ調べていこうと思います。検索の順番に調べればよいのですが、同じ図がたびたび出てくるので、できるだけ検索順に、でも、部位別に調べていこうと思います。



最初は触角に節数です。全部で11節なので、④と⑤はOKです。これはヒゲブトノミハムシ属(ルリノミハムシなど)とナガスネトビハムシ属(ダイコンナガスネトビハムシなど)を除外する項目です。



⑥の前肢基節窩は前肢基節の入っている穴ですが、矢印で示すように後方は開いています。⑮の中胸腹板にはわずかな窪みはあるかもしれませんが、目立った窪みは見られません。それで、⑮もOKです。



これは後肢を撮ったものですが、⑦、⑧、⑭はいずれもOKだと思われます。



跗節爪を拡大したものです。基部にでっぱりはありますが、爪自体は正常です。



上翅の点刻を撮ったものです。⑩はシロヒゲトビハムシ属を除外する項目ですが、まず、大丈夫でしょう。⑫の点刻はそれほど規則的というわけではありません。それで、⑫はOKです。



次は、カミナリハムシ属の一番の特徴である、前胸背板後縁前方の横溝(白矢印)です。



これはその端を写したものですが、たぶん、⑬も⑰もOKではないかと思いました。



⑯は前頭突起に関するものですが、その前角は触角の間にまで伸びていません。それで、⑯もOKです。ということで、カミハリハムシ属まではすべての項目を確かめました。たぶん、大丈夫だと思います。長くなったので、種の検索は次回に回します。

廊下のむし探検 ニトベエダシャクほか

廊下のむし探検 第1046弾

11月17日にマンションの廊下で見つけた虫です。この日は散歩に出たついでに探したので、ちょっと雑に探したかもしれません。



この日の最初はこのニトベエダシャクです。「ニトベ」の由来については以前調べたことがありました。新渡戸稲雄という新渡戸稲造のいとこにあたる昆虫学者が青森県黒石市で見つけて命名したことに因んでいました。これまで11月10日から12月2日にかけてこの6年間で20数度見かけたことがありました。でも、最近は少なくなった印象です。あまり廊下を歩かなくなったからかもしれませんが・・・。





後脚腿節が太いのでたぶん、アシブトコバチの仲間でしょう。採集しなかったので、そこから先はよく分かりませんが・・・。



これは脚が黒いので、ホタルトビケラでしょうね。



また、ツチハンミョウに会えました。毎年見ているので、会えると何となく安心します。♀だとよく分からないのですが、この辺で見られるのはほとんどヒメツチハンミョウなので、これもそうでしょう。



こんなに触角を前に真っすぐ伸ばしたところはあまり見たことがありません。オオクモヘリカメムシです。



ついでに、15日に外出の帰りに廊下で見つけた虫も出しておきます。これは採集して、さっき、検索してみました。詳しいことはまた後程載せますが、ハムシ科ノミハムシ亜科(ヒゲナガハムシ亜科)のカミナリハムシだということになりました。合っているといいのですけど・・・。

雑談)今日は長居公園にある大阪市立自然史博物館で行われた自然史フェスティバルに行ってみました。参加団体が115団体ほど、会社などの協賛ブースが8。相当に大きなフェスティバルでした。昨年は2日間で来場者2万人ということでしたが、今年もその程度はいるのではないかと思うくらいの賑わいでした。私はブースにおられた若い方と1時間近く話し込んで、大変満足して帰ってきました。

散歩のついで

最近、少し運動不足気味なので、14日のお昼前、ちょっと散歩に出ました。一応、コンデジだけ持って・・・。



用水路に沿って歩いていたら、ツマグロヒョウモンが一匹飛んできて近くに止まりました。あまりに虫がいないので、ちょっと慰めに来たのかな。



川に出ると、一羽のダイサギがいました。



写真を撮っていると急に動き始めました。





魚を捕まえたのですが、余りに急だったので、どれもピントが合わず。最近、鳥を撮っていないからなぁ。



民家の脇に花が咲いていました。植えてあるのでしょうね。名前は分かりません。(追記2018/11/20:幻日さんから、「白い花はシュウメイギク」というコメントをいただきました



アメリカアサガオだろうと思ったのですが、「日本帰化植物写真図鑑」によると、葉の分裂しない形を変種マルバアメリカアサガオと呼んでいるようです。



赤い実がいっぱいの木が生えていました。これも植えてあるのだと思います。名前は分かりません。(追記2018/11/20:幻日さんから、「赤い実はピラカンサではないでしょうか。」というコメントをいただきました。シュウメイギクもピラカンサも聞いたことのある名前です。でも、なかなか植物は覚えられないです。どうも有難うございました



トンボが飛んできて近くに止まりました。全体に赤黒い感じで、たぶん、コノシメトンボではないかと思います。



最後はクコの実でした。

虫を調べる ダイコンナガスネトビハムシ(再)

13日にマンションの廊下で見つけたハムシを調べてみました。



こんなハムシです。かなり小さいので、最初はツブノミハムシだろうと思ったのですが、検索をしてみると、どうやら以前も調べたダイコンナガスネトビハムシらしいことが分かりました。ツブノミハムシはツブノミハムシ属 Aphthonaで、ダイコンナガスネトビハムシはナガスネトビハムシ属 Psylliodesです。この二つの属は触角の節数を調べるとすぐに分かります。つまり、ツブノミハムシ属は11節、ナガスネトビハムシ属は10節です。だから、こんな写真でもよく見ると違いが分かったのです。でも、折角、顕微鏡写真を撮ったので、検索順に見ていきたいと思います。

まず、ナガスネトビハムシ属であることは次の本で調べることができます。

木元新作、滝沢春雄、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」、東海大学出版会 (1994).

これに載っている検索表を用いると、次のような項目を確かめればよいことが分かります。



これらの項目を写真で確かめていこうと思うのですが、後肢腿節が肥大していることからノミハムシ亜科は確かなので、③~⑤だけを見てみます。



まず、体長は2.7mm。この写真のように後肢腿節が太いので、ノミハムシ亜科は確かです。モーリック器官は以前にも書いたことがあるのですが、腿節の内部にある器官です。



触角はこの写真のように10節だと思われます。ただ、第10節目の先端が細くなっていて、別の節があるような気もします。それで、その部分を拡大してみました。



20×の対物レンズで撮った写真です。先端は細くなっていますが、節として分かれているわけでもなさそうです。ということで、触角は10節なので、ナガスネトビハムシ属ということになりました。

種の検索には以前にも用いた次の論文の検索表を用いました。

H. Takizawa, "A Revision of the Genus Psylliodes Latreille in Japan (Chrysomelidae: Alticinae)", Insecta Matsumurana 62, 175 (2005). (こちらからダウンロードできます)

この論文の検索表は以前訳したことがあるので、今回もそのまま使うことにしました。



検索はⒶ→Ⓑb→Ⓒb→Ⓓb→Ⓔb→Ⓕaと進み、最終的にはダイコンナガスネトビハムシ subrugosaに到達する予定です。この順に見ていきたいと思います。



脛節の取り付け部分は黒矢印付近にあると思われます。Ⓐに対抗する項目は腿節の中央部分から脛節が出るreitteri parallelaという北海道に産する種を除外する項目なのでたぶん大丈夫でしょう。



これは上唇を示したものです。先ほどのreitteri parallelaはここが逆三角形状で、先端の方が広いので、これも大丈夫そうです。



上前頭溝というのは矢印辺りにある溝を示すのではないかと思うのですが、これにはありません。この項目はアサトビハムシという前頭隆起が顕著な種を除外する項目なのでこれも大丈夫だと思われます。



このⒸbは以前迷った項目です。以前は別の検索表を用い、上翅側片に毛が生えていることでナトビハムシにしてしまいました。今回の検索表では上翅側片が平滑かどうかを調べればよく、この写真のように平滑なので、これも大丈夫でしょう。



この項目は矢印で示したところが直線的であることを言っているのだと思いました。それで、この項目もOKにしました。



以前調べた個体では矢印の部分が凹んでいました。それで、♂だろうと思ったのですが、この個体には凹みが見られません。それで♀かもと思いました。



最後は頭頂と前胸背板の点刻についてです。頭頂には点刻がいくつも見られます。それでⒺbはOKだと思われます。Ⓕaの前胸背板については、以前調べた個体よりかなり皺が多い感じがします。でも、対抗する項目で書かれている特徴とはかなり違うので、たぶん、大丈夫なのではと思っています。ということで、ダイコンナガスネトビハムシかなと思っていますが、本当にそうなのかちょっと不安です。

雑談)Office2007からpdfを作った時に、画像の代替テキストに画像のソースアドレスが入ってしまうことでまだ悩んでいます。pdfを作るときに、名前を付けて保存→PDFまたはXPS→オプション→「アクセシビリティ用のドキュメント構造タグ」のチェックをはずすと、「印刷対象外の情報を含める」の項はすべてチェックが外れます。これで、PowerPointはうまくいきましたが、Wordは相変わらず画像のソースアドレスが入ったままです。仕方がないので、印刷で、"Microsoft Print to PDF"を選ぶと何もでなくなりました。たぶん、プリントイメージなので、すべての情報が消えたのでしょうね。こうするかな。逆に代替テキストに入った画像のソースアドレスから、その時のブログにリンクが張れないか検討しています。

植物観察会で見た花(続き)

11日に兵庫県猪名川町の多田銀銅山付近で行われた植物観察会で見た花の続きです。





初めはこのシダです。観察会ではギフベニシダだということでした。





ギフベニシダはよく知らなかったので、最下羽片の下向き第一小羽片とソーラスの写真を撮ってきました。「写真でわかるシダ図鑑」と「野草検索図鑑シダ」で特徴を見たのですが、あまりはっきり分かりません。ソーラスが中間などの特徴は合っていそうですが・・・。



これはサルトリイバラの実です。



それにコバノガマズミの実。



さらに、カキの実です。





銀銅山に近づくとやたらこのヘビノネゴザが増えてきました。



これはソーラスです。先ほどのシダとはかなり違っています。このシダはカナヤマシダと言われ、鉱山の周辺でよく見られるシダです。





鉱山帯からさらに奥へと歩いていきました。途中、ヤマラッキョウが咲いていました。



これはスナゴケだそうです。





キノコは相変わらずよく分かりません。









もう少し進むと、畑の畔にこんなウメバチソウが沢山咲いていました。バラ科かなと思って図鑑を見てみると、実にユキノシタ科でした。一番下の写真で中央にあるのが雌蕊、その周りについている塊が雄蕊、それから周辺の黄色い球(腺体)がついているのが仮雄蕊だそうです。「日本の野生植物II」を見ると、この花にはハエ、アブ、ハチ、チョウ、蛾などの昆虫がよく訪れるそうです。この仮雄蕊が蜜標識になっているとのことです。







近くにはこんなリンドウも咲いていました。



帰りの林の中でこんな奇妙なものが生えていました。





先端の部分を拡大すると何だか種のようです。ネットで調べると、クロヤツシロランの果実のようです。花自体は小さくて目立たないのですが、果実はこんな風ににょきにょきと伸びるようです。花を一度見たいですね。

廊下のむし探検 チャタテ、甲虫ほか

廊下のむし探検 第1045弾

植物の整理がまだできていないので、11月13日にマンションの廊下で見つけた虫を先に出すことにしました。最近は虫はほとんど見られないのですが、それでもこの日は収穫がありました。





これはこの間からいるウスイロチャタテ科のクリイロチャタテではないかと思います。動き回るので、なかなかうまく撮れませんでした。



小さなハムシです。たぶん、ツブノミハムシではないかと思っている種ですが、以前の記事を見ると、顕微鏡写真だけ撮ってそのままになっているみたいです。今回は採集したので、今度もう一度調べてみます。(追記2018/11/15:今日、検索をしてみました。まず、触角は10節。これで、ナガスネトビハムシ属 Psylliodesであることが分かりました。さらに、検索を進めると、たぶん、ダイコンナガスネトビハムシ P. subrugosaではないかと結論になりました。この種は以前にも調べたことがあります。一応、顕微鏡写真を撮ったので、今度まとめて出すことにします



これはマツノシラホシゾウムシか、ニセマツノシラホシゾウムシかというところです。ずいぶん前に調べたことがあったのですが、よく分かりませんでした。



これはシロオビノメイガ



そして、これはサツマキノメイガ



これはセスジユスリカか、ヒシモンユスリカかというところです。以前、ヒシモンユスリカらしい個体を調べたことがありました。上底節突起と尾針の形で見分けるのでしたね。



一応、腹部末端を撮ったのですが、こんな写真ではどうしようもないですね。セスジユスリカは当然、調べていたと思ったのですが、記録を見ても載っていません。まだなのかもしれません。また、課題が増えてしまいました。






これはナカジロトガリバ。今頃見られる蛾です。過去の記録を見ると、10月31日から11月20日の間に何度か見ていました。



そして、心待ちにしていたツチハンミョウがやっと現れました。例年、10月終わりごろに♂が見られ始め、♀は少し遅れて登場しています。どういうわけか、毎年、マンションの1階の廊下で見られます。最近、少し減ったかなと思っていたので、ちょっと心配していました。でも、やっと登場してくれました。たぶん、ヒメツチハンミョウだと思うのですが、これは♀の方です。♂もどこかにいるかなと思って探したのですが、見つかりませんでした。



最後はトビケラです。トビケラは今のところお手上げ状態です。「原色川虫図鑑成虫編」によると、科の特徴は、単眼の有無、小顎肢の節数、距式に現れるそうです。距式とは前・中・後脚の前距+末端距の数を並べたものです。



一応、頭部あたりを拡大したのですが、単眼がなさそうだということぐらいしか分かりません。来年はトビケラでも調べようかなぁ。

植物観察会で見た花

11月11日に兵庫県猪名川町の多田銀銅山付近で植物観察会が開かれました。植物も勉強しようと思って、一昨年辺りからときどき参加しているのですが、なかなか名前が覚えられなくて困っています。とりあえず、記録に残しておいて、後でまとめてみようと思っています。

阪急バスの銀山口でバスを降り、多田銀銅山悠久の館に向かって歩き始めました。







初めに見た花は畑の隅に咲いていたこの花です。何だか分からなかったので聞いてみたら、ソバらしいそうです。「野に咲く花」にも載っていて、ソバ Fagopyrum esculentumは中央アジア原産で、そう果は黒褐色だそうです。そう果が栗褐色のシャクチリソバ F. cymosumは後から日本に入り、野生化しているとのことでした。確かに、「日本帰化植物写真図鑑」にもシャクチリソバは出ていました。これはどちらなのだろう。





こちらはアメリカスズメノヒエ。これは何度か見たことがあります。





それから、これはノコンギク。ノコンギクは確か、冠毛が長かったですね。



舌状花をちょっと外してみました。やはり長かったです。



花の後はこんな感じになるのですね。





こちらは家の庭からはみ出ていた菊の花です。いわゆるイエギクだそうです。舌状花が巻いています。この名前でWikipediaを調べると、学名はChrysanthmum × morifoliumとなっていました。この「×」という記号は雑種を意味する記号で、C. aという種とC. bという種の雑種をC.× cと書くそうです。cは雑種に対してつけられた名称です。





菊が出たついでにこのキクも。これはイナカギクだそうです。



「野に咲く花」によると、葉の基部はやや茎を抱くというので、基部を見てみました。心持ち、抱いているような気もしますが、それほど抱いているような感じもしません。







これはアキノキリンソウです。







観察会ではハナヤクシソウと教わったのですが、「野に咲く花」によると、ハナヤクシソウは葉が羽状に深裂というので、これは普通のヤクシソウかもしれません。



これはセンダングサ



それからコウヤボウキ。やはり今頃はキク科が多いですね。



この奇妙な姿のものはセンニンソウの種です。それにしても変わった形をしていますね。





観察会では名前を聞きそこなったのですが、後で調べてみると、アブラススキみたいです。



これはナキリスゲだそうです。



これはノガリヤスだとか。後で調べてみてもよく分かりませんでした。

これで行程のまだ1/6ほどなのですが、後半はひたすら歩け歩けだったので、植物としてはほぼ半分くらいです。

雑談1)「手作り図鑑」と別冊を公開しようと思っているのですが、個人情報が出ないようにするので苦労しています。図鑑にはブログ以外にも過去に撮った写真も使っているのですが、pdfにした後、マウスを写真に当てるとポップアップみたいなものが出て、写真の出どころが見えてしまうことに気が付きました。ネットで調べると、どうやら写真の「代替テキスト」に自動的に写真のアドレスが入ってしまうようです。眼の見えない方用に気を利かして入れているようですが、写真の代わりにアドレスを読まれても困りますよね。とりあえず、pdfで保存するとき、オプションをクリックして、「アクセシビリティ用のドキュメント構造タグ」のチェックを外しておくことで、代替テキストに入力されることが防げるようです。こんな風に知らない間に、いろいろな情報が付け加わっているとなると、安心して公開できないですね。

2)図鑑のpdf版で目次の項目をクリックすると、そのページに飛ぶと便利だろうと思って、元のWordの文書にハイパーリンクを入れてみました。いろいろと試行錯誤をしたのですが、結局、目的とする個所にブックマーク(挿入→リンク→ブックマーク)を入れ、そこにリンクを張るようにすると無事にその項目に飛んでくれることが分かりました。

植物観察会で虫探し

昨日(11日)、近くで植物観察会があり、久しぶりに参加してきました。



目的地は多田銀銅山です。この辺りは秀吉の時代から銀山として知られていて、今でも「間歩」と呼ばれる坑道の跡がいくつも残っています。観察会は川沿いに歩き、その後、山を越え、住宅地までの全体で6kmの行程でした。



途中、こんな精錬所跡もありました。植物の方はまだ整理がついていないので、まずはいつもの通り、観察会で見つけた虫を紹介します。といっても、今頃になると、虫はほとんどいないのですが・・・。





僕的に一番よかったのはこんなウスタビガ♀が見れたことです。電柱に止まっていました。さすが、植物観察会ですね。こんな大きな蛾が止まっていても誰も関心を示しませんでした。



これはオオハナアブです。ハナアブはほかにもいたのですが、観察会がどんどん進んでいくので、ゆっくりと写せませんでした。





最初、マユタテアカネ♂とばかり思っていたのですが、顔面に眉状斑がないので、ちょっと疑問に思っていました。よく見ると、尾部上附属器が反り上がっていないので、これはヒメアカネ♂かもしれません。



そして、これはその♀の方かな。





こちらは眉状斑があり、尾部上附属器がそりあがっているので、マユタテアカネ♂ですね。



こちらはテングチョウ。蝶ではキタキチョウやツマグロヒョウモンなども飛び回っていたのですが、なかなか止まってくれなくて撮れませんでした。



これは翅が短いのでコバネイナゴかもしれません。



川沿いに歩いていくと、やがてため池に出ます。





その横でキトンボがいました。こうやって止まっては、池の上でホバリングするので、飛んでいるところを撮ろうと頑張ったのですが、観察会が進んでいくので結局、ギブアップ。もう少し時間が欲しかった・・・。



これも傍にいたトンボで、先ほどと同じ、ヒメアカネ♀だろうと思います。



池に落ちたのでしょうね。ハラビロカマキリが懸命に泳いでいました。



ここから住宅地に出るには峠越えをしないといけないのですが、その途中で見つけました。オオアオイトトンボです。

この日は暖かくて絶好のハイキング日和だったのですが、私は9月終わりに家の中で足をぶつけて指にひびが入ってしまったので、これが初めてのハイキングになりました。家に戻って足を見てみたら、だいぶ赤く腫れていたのですが、たぶん、大丈夫でしょう。

雑談)今日は、「ブログ『廊下のむし探検』付録」に載せている「『虫を調べる』記事一覧」を更新しました。これをもとに「手作り図鑑別冊」を作っていこうと思っているのですが、なかなか進みませんね~。

廊下のむし探検 羽アリ、カメムシほか

廊下のむし探検 第1044弾

11月8日にマンションの廊下で見た虫の続きです。



これも小さな羽アリです。この日はすでに一匹捕まえていたので、これは採集しなかったのですが、採集していたアリはすぐにヒラフシアリらしいことが分かったので、これも捕まえておけばよかったなと思っています。



これはマルカメムシです。この日はいる虫はすべて写そうと思っていたので、これも写しました。



これはニセケバエのカップル。





これは「原色日本甲虫図鑑III」に載っているアカホシテントウ属の検索表によると、ヒメアカホシテントウの可能性があります。





このハチは以前調べたことがあります(こちらこちら)。たぶん、その時と同じ、ハラアカアブヒメバチというヒメバチ科のハチだろうと思います。



それにサツマキノメイガ



最後はヒメヤママユでした。最近、大型蛾が減ったような気がします。

追記)今日は植物観察会に参加してきました。場所は近くにある多田銀山周辺です。9月に足の指にひびが入ったので、2か月ほど休んでいたのですが、久しぶりに歩いて指が少し腫れてしまいました。それでも、虫ではウスタビガとキトンボ、植物ではウメバチソウとリンドウ、それに初めて見たクロヤツシロランの果実が見られて、それなりの収穫がありました。今度、まとめて出すことにします。

廊下のむし探検 カメムシ、ナガキクイムシほか

廊下のむし探検 第1043弾

11月8日にマンションの廊下を歩いてみました。



どうせ虫はあまりいないだろうと思って、たくさんいるクサギカメムシも写しておきました。



ついでズグロオニグモ。なぜか、このマンションにはこのクモがたくさんいます。



虫はこんなもんかなと思っていたら、ニセケバエのカップルに出会いました。こんな格好でうろうろするので、大変、歩きにくそうです。どちらが♂で、どちらが♀なのでしょう。



小さなアリです。羽の脱落した跡が見えます。何だろうと思って採集したのですが、よくよく考えれば、この間調べたヒラフシアリかもしれませんね。





これも小さな虫です。四角い縁紋が見えるので、ウスイロチャタテ科だと思います。手作り図鑑の写真と比べて、クリイロチャタテだろうと思ったのですが、以前、調べたときには途中で腹部が飛んでいってしまったので、検索は途中になってしまっていました。



それから、ナナホシテントウです。





こんなもんかなと思っていたら、変わった虫を見つけました。数ミリほどしかない小さな虫ですが、ナガキクイムシの仲間です。「原色日本甲虫図鑑IV」の図と比べると、Platypus属みたいな感じがします。ナガキクイムシ科については次の論文に載っています。

野淵輝、「日本のナガキクイムシ科」、家屋害虫 15, 33 (1993)。(ここからダウンロードできます)

Platypus属の種の検索の部分を見ると、体が細長い→前胸背の点刻群が心臓形か楕円形→点刻群は心臓形からヨシブエナガキクイムシ♀の可能性が出てきました。小さいのであまり気が付かないのですが、拡大してみるといろいろと特徴があります。(追記2018/11/20:通りすがりさんから、「キクイムシには養菌性のものも多いですが、ナガキクイムシもですか。養菌性のやつらに寄生された部分は、樹皮を剥がすと発酵臭がします。」というコメントをいただきました。そんな匂いがするのですか。一度、嗅いでみたいなぁ。ナガキクイムシにも胞子貯蔵器官があるみたいですよ。文献を見ると、走査電顕の写真が出ていました。一度、捕まえて光顕でも撮ってみたいと思っています。ついでに、今年の3/15に採集した個体については、昨日、検索をしてみました。今回もヨシブエナガキクイムシの♂になりました。♂では目立たないのですが、前胸背板後半にやはり胞子貯蔵器官みたいな点が並んでいました。顕微鏡写真を撮ったので、今度、紹介します



まずは①。前脛節にこんな突起が並んでいます。次は②。前胸背にハート形の点刻群があります。論文には絵も載っているのですが、比べてみるとよく似ているので、たぶん、ヨシブエの♀でよいのではと思いました。この点刻群は胞子貯蔵器官(mycetangia)と呼ばれていて、中に共生する菌を入れて養い、それを運ぶとのことでした。ネットで探してみると、菌は主に酵母菌で、木に孔をあけて中に卵を産むとき、この菌を坑道の壁につけて生やし、生まれてきた幼虫がその胞子を食べて育つということのようです。これは面白そうなので、もう少し調べてみたいなと思いました。虫はもう少しいたのですが、ちょっと出し惜しみで、次回に回します。

雑談)文化祭も終わり、外に行っても虫がいなくなり、最近はちょっと気が抜けてしまっています。こんなときは勉強だと思って、トンボの翅脈を調べてみたら、意外にすっきりしない話でちょっとがっかり。これから先は何を目標にして「廊下のむし探検」を続けていったらよいだろうとちょっと悩んでいます。とりあえず、作ってきた「手作り図鑑」をネットで公開したいなと思って、Yahooボックスの登録をしました。そのうち、公開できると思います。ただ、もともと印刷するつもりで作っていたので、印刷して見る分には結構便利なのですが、pdfのまま画面上で見るだけなら、写真をブログにリンクしておいた方がよかったかも。それなら、むしろ、ホームページの形式にした方がよいかも。と、またまた悩み始めました。写真の枚数が多いので、これからリンクを張るのは大変だし・・・。なかなかうまくはいかないですね。

トンボの翅脈の勉強

先日、文化祭の準備に近くの山を歩いた時に、小さなトンボを見つけました。調べてみると、ヒメアカネ♂らしいことがわかったのですが、ついでにいろいろと勉強してみようと思って、先日、各部を調べてみました。その続きで今回は翅脈です。



調べたのはこんなトンボです。翅脈がはっきりしていて、また、トンボは化石にも多く出るので、かなり体系的になっていて分かりやすいかなと思っていたのですが、意外に難しい問題を含んでいました。





「新訂原色昆虫大図鑑III」には翅脈の図が出ているので、それを参考にして名称をつけてみました。上が前翅、下が後翅です。トンボは前翅と後翅の翅脈は基本的に同じですが、このトンボでは後翅の方が幅広くなっています。こういう種は不均翅亜目という仲間になります。いろいろな記号が出てきますが、C:前縁脈、Sc:亜前縁脈、R:径脈、M:中脈、Cu:肘脈、A:肛脈の6つが主要な脈になります。CとScを対に考え、残りのR、M、Cuはそれぞれ途中で2分岐して対になると考えます。これはちょうど扇子のように折りたたんだときに、凸と凹が交互になり、うまく折りたためるようになっているからです。Aについては2-3本あって、通常はいずれも凸で翅の後端で翅の強度を持たせる役目を持っています。

そのほかの記号はIRは径挟脈で、翅端で脈がさらに分かれたときに、凹凸のつじつまを合わせるために入っています。また、語尾にsplが付くのは枝補脈でこれも強度を持たせるために入っているのではと思います。さらに、語尾につくAとPは1対の脈の前脈と後脈を表しています。そのほか、トンボ独特の記号として、B:橋脈、Arc:弧脈、N:結節、Sn:亜結節、Ac:肛横脈、O:斜脈、An:結節前横脈、Pn:結節後横脈、t:三角室、spt:上三角室、d:中室域、al:肛絡室などがあります。

実際に翅脈に名前を付けていくと、いくつかの疑問が出てきました。まず、Mには前脈だけ、Cuには後脈だけ。それぞれ対になった脈はどうしたのだろう。それから、A脈付近は複雑で翅脈をどう選んでよいのか分かりません。それで、いつものように文献を探してみました。文献リストは後に載せていますが、翅脈を調べるときにバイブルとなるのはComstockの本[8]です。それを見て驚きました。名前の付け方がまるで違うのです。


Comstockの本に載っている翅脈を系統別に色分けして描いてみました。つまり、Cは色なし、Scは緑、Rは赤、Mは黄、Cuは青、Aは黒です。もっとも驚いたのは、赤色で描いたRs脈が黄色で描いたM1とM2をまたいでいる点です。この翅脈相はもともとNeedham (1903) [1]の説に依っています。ただ、論文では説明が少なくてよく分からなかったので、Tillyard (1917) [3]を参考にして描いたところがあります(後翅のCu2や前後翅のAの辺り)。NeedhamとTillyardの説は若干違うのですが、大きくは違わないので、両者が混じったようなモデルになっていることをご了承下さい。

翅脈相を調べるときには、次の3つの方法がよく取られます。一つは個体発生の過程を調べることで、トンボでいえば、ヤゴの時のできかけの翅を調べることです。二つ目は近縁種を調べていくことで、トンボでいえば、カゲロウ目や原始的なトンボを調べていくことです。三つ目は化石で見られる始原的なトンボを調べていくことで、進化の過程で、翅脈がどう変化していったかを調べていく方法です。Needhamはこの一番目の方法を採用しました。


Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

これはNeedhamの論文に載っていたサナエトンボ科のヤゴの翅に見られる気管の分布を表しています。気管は翅脈の中を走るので、翅脈ができる前の気管を調べると、どの脈とどの脈が関係しているかを判断できるという理屈になっています。この図にNeedhamの方式で名称を入れてみました。ここで気になるのは、①のRs脈がM脈をまたぐというところ、②の翅基部でR脈とM脈が分離するあたり、それに③で示したA脈の付近です。


Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

まず、①のRs脈がM脈をまたぐというところですが、この図はその部分を拡大したもので、Needhamの論文からとりったものです。この図を見るとRs脈がM脈が交差しているのはかなり確かそうな気がします。



実際に今回のトンボでその部分を調べてみました。黒矢印の部分が交差する部分なのですが、Rs脈はM1-2脈の下側を通っている感じはしますが、特にほかの脈を比較して大きな違いは見られませんでした。やはり出来上がった翅脈で判断するのは難しそうです。

次は②の部分を見てみます。



まず、R脈とM脈の基部を見てみました。両者は融合しているわけではなく、2本の脈がくっついた状態になっていることがこの写真でも分かります。Arcが分岐する部分でRとMの二つの脈が融合して、R脈もArcを通るとすると最初にお見せした「新訂昆虫大図鑑III」の方式になり、RとMが融合していないとすると、M脈だけがここで分岐するので、Needhamの方式になるはずです。それで、その部分を見てみました。



あまりはっきりしたことは分からないのですが、R+M脈の右端では2本見えるのですが、分岐するところでは融合しているようにも見えます。ただ、先ほどの気管の図を見ると、R脈とM脈は空間的に明確に分離しているので、気管の分布からはあまり疑問をもつ余地はなさそうです。


Reproduced from [2] J. G. Needham, "Prodrome for a Manual of the Dragonflies of North America, with Extended Comments on Wing Venation Systems", Trans. Am. Entomol. Soc. 77, 21 (1951).

次は③に関する点です。これはアメリカギンヤンマの亜終齢幼虫の前後翅の気管の分布図で、やはりNeedhamの論文から転載しました。前翅の黒矢印の部分を見ると、Cu脈とA脈がくっつき、Ac脈のところでA脈が分岐している様子が分かります。これがNeedhamの方式で描かれた上の絵に反映されています。また、この写真では気管と同時に、できかけの翅脈も見えています。両者はほぼ一致しているように見えます。


Reproduced from [1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).

これはA脈の付近の気管を示したもので、やはりNeedhamの論文の図です。黒矢印で示したようにA1脈が途中で曲がってループ状になっています。これが最終的に肛絡室(al)につながります。Cu2脈の枝脈も黒矢印に示すようにやはりループを作っています。後者のループは別の名称(al')で呼ばれることもあるようですが、これらを一緒に合わせてal(肛絡室)と呼んでいるみたいです[1]。この形がトンボの種類によって異なるので、分類にも用いられています。

このように気管で考えると、翅脈の同定は明確みたいですが、ここに若干問題があります。それは気管が伸びた後に翅脈ができていくので、必ずしも気管の発達通りに翅脈ができるわけではないということです。例えば、横脈には気管は入らないこともありますし、2本の気管が若干離れていても、翅脈が融合する場合には一緒の翅脈に入ってしまうこともあるからです。ただし、先ほども述べたようたように、気管の写真を見ると、もうすでに翅脈が見えてきていて、ほぼ同じところを気管が走っているようにも見えます。もう少し詳しく調べると、この辺は分かるようになるかもしれません。

Needhamの説はしばらく信じられていたのですが、Rs脈がM脈を交差するところは近縁種にもまったく見られず、そのために批判も多く出されたようです。Tillyardは初め、Needhamの説の改良版を主張していたのですが、あるとき、化石に見られるトンボの翅脈を調べてから急に意見を変えてしまいました[4-6]。この辺の事情は文献[2]に載っていました。Needhamによれば、Tillyardの調べた化石はかなり特殊なトンボで、そのトンボで翅脈の交差が見られなかったからと言って、現存のトンボでも見られないはずだというのはかなり乱暴な主張だったようです。実際に、このため、本来あるはずのM脈やCu脈が共に対ではなくなってしまったところなどにひずみが残ります。また、NeedhamやTillyard自身が実際に観察した気管と翅脈との関係をどのように説明していくのか、その辺りの説明もありません。でも、ともかく、このTillyardの説が現在では一般的に信じられるようになってしまいました。



文献[6]に載っている図をもとにして、Tillyardの説に基づいて、今回のトンボで翅脈の色分けをしたものがこの図です。緑、赤、黄、青、黒と順に並ぶので素直な感じがするのですが、どうもすっきりとはしない気持ちです。この後にも、例えば、Riekら[7]のように化石をもとにした翅脈の解釈の論文も出ていますが、先ほどのTillyardの説が現在でも一般的なようです。

このほかにも翅基部の解釈もよく分かりませんでした。通常、各翅脈の基部は腋翅骨という硬化した骨状の関節が連なるのですが、気管の写真で見ると、1つの大きな翅骨から出ているような印象を受けます。それについてはまた今度書くことにします。

[1] J. G. Needham, "A genealogic study of dragonfly wing venation", Proc. U.S. Natl. Mus. 26, 703 (1903).(ここからダウンロードできます)
[2] J. G. Needham, "Prodrome for a Manual of the Dragonflies of North America, with Extended Comments on Wing Venation Systems", Trans. Am. Entomol. Soc. 77, 21 (1951).(JSTORに登録するとここで読むことができます)
[3] R. J. Tillyard, "The biology of dragonflies", Cambridge University Press, Cambridge (1917).(ここからダウンロードできます)
[4] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing", Aust. Zool. 9, 125 (1937).(ここからダウンロードできます)
[5] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing. Part II. The Suborders Zygoptera (continued), and Protanisoptera", Aust. Zool. 9, 195 (1939).(ここからダウンロードできます)
[6] R. J. Tillyard, "A reclassification of the order Odonata based on some new interpretations of the venation of the dragonfly wing. Part III. Suborder Anisozygoptera", Aust. Zool. 9, 359 (1940).(ここからダウンロードできます)
[7] E. F. Riek and J. Kukalova-Peck, "A new interpretation of dragonfly wing venation based upon Early Upper Carboniferous fossils from Argentina (Insecta: Odonatoidea) and basic character states in pterygote wings", Can. J. Zool. 62, 1150 (1984).(ここからダウンロードできます)
[8] J. H. Comstock, "The Wings of Insects", The Comstock Publishing Company (1918). (ここからダウンロードできます)

家の近くのむし探検 アリ、イダテンチャタテほか

家の近くのむし探検 第449弾

今日はネタがなくなってしまったので、公園に虫探しに行ってみました。



なんか焦っていたのか、今日は写真がどれもダメでした。公園に着いてシラカシの幹を探していたら、小さなアリが登ったり下りたりしていました。写真を撮ってみると、どうやらアミメアリみたいです。アミメアリは樹上性ではないと思っていたのですが、樹上でも巣作りをするのかなぁ。



ツツジの葉の上にはやはりユスリカがいました。先日の文化祭用にと手作りの図鑑を作ったので、早速、調べてみました。これはナカグロツヤユスリカ♀になっていました。図鑑の形にまとめると、なかなか便利ですね。もっとも図鑑自体が怪しいので、何とも言えないのですが・・・。



こちらはフタスジツヤユスリカ♂みたいです。



これはやや大きめです。たぶん、フチグロユスリカかその周辺の♂です。



これは桜の幹にいたのですが、たぶん、ルリアリ?アリも捕まえないとよく分かりません。



同じ桜の幹にはキボシマルウンカがいました。





そして、いつも見ているイダテンチャタテの幼虫。



今日は別の桜の木も探してみました。これは羽化したての個体みたいです。左にあるのは脱皮殻でしょうね。



これは立派な成虫です。これは眼が大きいので、♂の方でしょうか。





ツツジの葉の上を何かがもそもそと動きました。こんな変わった虫です。何だか分かりませんが、先日、作った手作り図鑑を見ると、クロヒラタヨコバイ?の幼虫と書いてありました。前に見たときの記事を見てみると、ネットで探したようです。真偽のほどは分かりませんが・・・。



これは公園から帰る途中で見つけました。こんな色の蛾はカラスヨトウかもしれません。



これはマンションの廊下で見つけました。何となく、ハイミダレモンハマキかなと思ったのですが、「標準図鑑」を見てもよく分かりませんでした。



これは後単眼刺毛が交差しているので、たぶん、シマバエ科ですね。先ほどの図鑑で見てみると、Homonuera sp.となっていました。今までの記録を見てみると、だいたいこの属にしていました。でも、まだきちんと調べたことはないみたいです。

雑談)昨日から、トンボの翅脈の論文を読んだり、顕微鏡を覗いたりして調べているのですが、なかなか本質が理解できません。問題点はいくつかあって、1)ComstockらのM脈とRs脈が交差するという説がどのように否定されたか、2)なぜ、MP脈とCuA脈が退化したと判断したのか、3)A脈付近の解釈、4)翅基部構造の解釈など、どれも難問ばかりです。とりあえず、もう少しあがいてみることにしました。

虫を調べる ヒメアカネ

文化祭準備のためにヒッツキムシを探そうと、文化祭の前日(3日)に河原や山の中を歩いてみました。その途中、植物で覆われた小さなため池に小形のアカトンボがいたので採集しました。マユタテアカネかなと思って採集したのですが、どうやらヒメアカネのようでした。ついでだからいろいろと調べてみました。



採集したのはこんなアカトンボです。体長は34mmほど。かなり小型です。トンボは胸部側面の模様や腹部末端と副性器を見れば種類が分かるというので、「日本のトンボ」に載っている図と比較して、ヒメアカネだろうということになりました。ついでに、いろいろな部分の写真を撮ったので、「新訂原色昆虫大図鑑III」のトンボ目体制模式図を参考にしながら名前を付けてみました。



まずは顔面です。マユタテアカネは額に一対の黒い斑点があるのですが、これにはありません。



胸部側面の模様からも種類が分かる場合もあるのですが、ヒメアカネとマユタテアカネなどは似ていてよく分かりません。ついでに各部の名前を付けてみました。



上の図に入れた略称をまとめてみました。各部の名称は「新訂原色昆虫大図鑑III」と次の本を参考にしました。

R. J. Tillyard, "The Biology of Dragonflies", Cambridge University Press (1917). (ここからダウンロードできます)

また、1は前胸、2は中胸、3は後胸の略です。



これは腹部末端の写真です。こんな恰好の腹部末端を持つのは♂です。マユタテアカネは上附属器が上側に反り上がっているのですが、これは僅かです。それで、ヒメアカネにしました。



これは拡大図です。



また、これは背側から撮ったものです。



副性器も拡大して撮ってみました。「日本のトンボ」にはこの部分の絵も載っているのですが、他種との違いはいまいちよく分かりません。



これは頭部の前背側を撮ったものです。単眼がよく見えます。



これはその部分を背側から撮ったものですが、単眼間瘤に二つの突起があることが分かります。



以前も調べたのですが、複眼の背側と腹側の違いも調べてみました。上1/3の部分と下側とはちょっと違って見えます。



その境目の部分を拡大してみました。そもそも色がちょっと違います。上は赤褐色で、下は緑がかっています。また、個眼を線で結んでいくと下の方が明らかに数が多くなっています。色の違いについては、以前、二橋氏の研究を紹介したことがありました。要は、背側は青色(正確にいうと、紫外~青~緑)を主に見ているのですが、腹側は赤色(紫外、緑~赤)を主に見ているということでした。また、個眼の数が多いということはそれだけ角度分解能が高いということになります。つまり、空を見ているときは、天敵の鳥の黒い影がやって来ないかが分かればよいので、青だけ見えれば十分なのですが、下を見るときは、縄張りを張っているときや餌を探すときなど、よりいろいろな色が分かり、また、高い角度分解能が必要だということなのでしょう。





最後は翅脈です。上は前翅、下は後翅です。一応、「新訂原色昆虫大図鑑III」の絵を見ながら、名前を付けたのですが、いろいろと疑問点も多いので、これについては、また、改めて出すことにします。

家の近くのむし探検 ユスリカなど

家の近くのむし探検 第448弾

10月30日に公園に行ったときに見つけた虫の続きです。





こういう腹部に黒い斑紋があり、前胸背板に艶のあるユスリカはツヤユスリカの仲間です。「図説日本のユスリカ」には絵が出ているのですが、それと比べると、これはたぶん、フタモンツヤユスリカ。上が♀で、下が♂です。小さなユスリカですが、2倍半くらいのクローズアップレンズをつけたら結構鮮明に写りました。







これは先ほどとは腹部の黒帯が違います。たぶん、ナカオビツヤユスリカかなと思っています。いずれも♀です。





これは以前調べたフチグロユスリカの♀の方ではないかと思います。これも似た種があるので、♂を捕まえて調べてみないと何とも言えませんが・・・。



公園に行ったら、いつも桜の木の幹を探して撮影するイダテンチャタテです。翅がまだ伸びていないので、幼虫です。これの成長を見ていくのも楽しみの一つです。



これは以前教えていただいたクスベニヒラタカスミカメという外来種です。最近、本当によく見かけるようになりました。



斑紋が薄いのですが、たぶん、チャハマキだと思います。



最後はオオセンチコガネ。これは採集して、文化祭に展示する中学生の標本に加えておきました。これで終わりです。

雑談)昨日の文化祭の疲れで今日は一日ぐったりしていました。展示が始める前は2時間半の展示時間は余りにも短すぎると思っていたのですが、見に来られた方に説明していたら、2時間程度でも十分なような気がしてきました。中学生が人数を数えていたようですが、この日は2時間で百数十人の方が見に来られたようです。

文化祭の準備で「ひっつきむし」を探しに河原や山を歩いた時に小さなアカトンボを採集したので、今日はその名前を調べてみました。マユタテアカネかなと思って採集したのですが、眉の部分の黒斑がありません。それで、「日本のトンボ」に載っている♂腹部先端の絵と比較して、ヒメアカネらしいことが分かりました。ついでだから、各部の写真を撮り、最後に翅脈の名前を入れようと思って、また、迷ってしまいました。「新訂原色昆虫大図鑑III」には詳しく載っているのですが、細部までは書かれていないので、もう少し詳しい文献はないかなと思って探してみると、意外に文献によって名称が違います。トンボは化石が出るので、かなり研究が盛んだろうと思ったのですけど・・・。

家の近くのむし探検 ガ、アブラムシなど

家の近くのむし探検 第447弾

10月30日にいつもの公園に行ってみました。今頃になるとユスリカがやたら目に付くのですが、その他にも虫はちょこちょこいました。



まずはマンションで見つけた蛾です。これはキトガリキリガ。秋に見られるキリガの仲間です。



それに、クロモンキノメイガ。







公園で最初に見つけたのは、この間も見たキバラケンモンの幼虫でした。



次はイトカメムシ。これはまだちょこちょこいました。





テントウもいました。これはダンダラテントウかな。斑紋は変化があるというので、「原色日本甲虫図鑑III」に載っている検索表を見ると、ダンダラテントウ属は「触角は前頭の幅と等長かより短い;触角末端節は前節より狭く先端はとがる;触角基節は長さより幅広く、内方に強くふくらむ」とのことです。



ちょっと拡大してみました。前頭は白い部分の下縁付近をいうのかなと思うのですが、確かにそれと比べると触角の長さは等長くらいです。先端節はやや尖っているようです。さらに、基節は内方に膨らんでいることは分かります。ということで、ダンダラテントウでよいのではと思いました。



これは有翅型のアブラムシです。縁紋が変わっているので、分かるかなと思ったのですが、図鑑には有翅型があまり載っていません。それで、まだよく分かりません。



これは「日本のユスリカ」に載っている図から、ナカオビツヤユスリカ♂かなと思いました。



次はまたアブラムシです。これに似た種は以前調べたことがあります。その時はミズキヒラタアブラムシ亜科Anoecia属だろうということになったのですが、それ以後、進展はありません。まだ他にもいろいろといたのですが、次回に回します。

雑談)今日は文化祭で展示を行いました。中学生の展示も同じ部屋で行い、展翅体験、顕微鏡での虫や植物の観察、クイズなど、いろいろと用意していたので、子供たちは結構喜んでいたようでした。我々のグループは鳥の写真と私が出した蛾の標本でした。予想通り、鳥は人気があったのですが、蛾の方の人気はいまいちでした。それでも興味を持ってくれた方や中学生がいたので、ちょっと嬉しかったです。

家の近くのむし探検 ハエ、ミノウスバ

家の近くのむし探検 第446弾

10月29日はマンションの廊下を歩いた後、いつもの道路脇の茂みに行ってみました。でも、虫はいませんね。今シーズンもそろそろ終わりかなぁ。



これは何だか分からないハエ。葉の上を動き回っていたので、撮ったのですが、よく分かりません。



これはいつものホソヒラタアブ。最近、よく見かけます。花ではなくてこんな茂みで・・・。





それから、ノミバエです。いつも冬になるとマンションでよく見かけるので、何となく冬のハエのような感じがするのですが、そんなことはないのでしょうね。これも採集しないとよく分かりません。





最後はイタドリの葉に止まっていたミノウスバです。何枚か撮ったのですが、この日は風があってなかなかピントが合いませんでした。この日はこれで終わりでした。

雑談)明日が文化祭なので、今日の夕方はその準備で会場となった理科室へ行きました。同じ部屋で中学生の展示もあるので、そちらの方もついでに様子見に。我々の方は2人が鳥の写真を部屋半分いっぱいに出し、私は地味なガの標本箱4箱を中央にある机の上に並べました。それから、別の机には、今回作った手作り図鑑8冊と以前作った6冊,、それに、極小の甲虫、極小のハエ・ハチの標本を入れた小形の標本箱を並べました。たぶん、誰も見る人はいないとは思いますが・・・。

中学生の方は、一つの机には菓子箱に入ったチョウ、トンボ、甲虫などの標本を並べ、もう一つの机には実体顕微鏡を5台ほど並べて、虫やひっつきむし虫などを見られるようになっていました。教卓の上にはバッタやら、コオロギやら、カマキリやら、昨日捕まえてきた虫の入った虫かごが山もり。コオロギがにぎやかに鳴いています。それに、廊下側の窓際には花の写真とその説明を模造紙2枚にまとめていました。それから、教卓の横の大きなテレビは虫のクイズに使うようにパソコンがつながっっていました。ざっと見ただけでも、手作り感にあふれていて、結構、楽しいです。これが2時間半だけの展示だと思うと、ちょっと寂しいですね。

廊下のむし探検 カメムシほか

廊下のむし探検 第1042弾

10月29日にマンションの廊下で見つけた虫の続きです。



まずはマツヘリカメムシです。このカメムシは2013年10月にこのマンションで見つけてから、もう今ではほとんど常連のように振舞っています。



初めキリガかなと思って「標準図鑑」を探したのですが、どうもピタリとくる種が見つかりません。それに何となく赤っぽい色が気になります。結局、この間も見たオオバコヤガかなと思っているのですが、どうでしょうね。



次はこの小さなカメムシです。写真を撮った時はいつものヒゲナガカメムシかなと思ったのですが、撮った写真を見てみると、触角は長くないですね。「日本原色カメムシ図鑑」を探してみると、ヒョウタンナガカメムシの仲間であることは確かみたいです。検索をしてみようと思ったのですが、うまく撮れた写真はこれ一枚です。これでどこまで調べられるだろうと思いながらもやってみました。



「日本原色カメムシ図鑑第3巻」に載っていたヒョウタンナガカメムシ亜科の族への検索です。この検索ではたぶん、サビヒョウタンナガカメムシ族だろうと思ったのですが、問題になったのは⑥の項目です。いろいろと調べてみたのですが、とりあえず、各項目を先ほどの写真で見ていこうと思います。



まず、この全体の写真から②の革質部の先端縁が直線的かどうかを見ることができます。確かに直線的です。これはヒナナガカメムシ族を除外する項目です。次に⑤の前腿節の刺状突起ですが、偶然写っていました。これで②も⑤もOKです。



頭部と胸部を拡大したこの写真では①、③、④、⑦を見ることができます。まず、①で示した部分には特に顕著な長い剛毛はありません。それで①はOKです。これはチャイロナガカメムシ族を除外する項目です。次の③は単眼が頭部の背方にあるというのでこれもOKでしょう。これはミナミナガカメムシ族を除外する項目です。④がちょっと分かりにくいのですが、側葉が背側方に盛り上がり、その側縁に沿って隆起するというウスイロナガカメムシ族を除外する項目です。たぶん、そんなに顕著な構造が見られないので、たぶん、大丈夫だろうと思いました。⑦は前胸背に縦隆起があるかというのですが、この写真からはそんなものは見られません。というので⑦もOKだと思いました。



⑥は腹部に関する項目です。上が写真そのまま、下が節が分かるようにガイドを入れたものです。腹部のどの部分が何節に当たるのかは先ほどの図鑑に載っている絵を参考に描いてみました。奇妙なのはV節あたりです。このように曲がった線を描いたのは、先ほどの図鑑に載っている「ヒョウタンナガカメムシ亜科の腹部および各族の腹部第4,5節の孔毛と気門の位置」という絵を参考にして描いたものです。孔毛というからには孔が空いてそこから毛が生えているものだと思うのですが、上の写真ではその毛が写っていません。代わりに何となく孔の位置は矢印で示したように分かります。気門の位置がどこか分からないのですが、第5節の孔の位置から⑥bの方が適当かなと思ってそちらを選びました。これはクロナガカメムシ族を除外する項目です。この族はかなり外見が違うので、除外しても大丈夫だと思いました。ということで、サビヒョウタンナガカメムシ族になりました。



次は属の検索です。この中で⑧、⑨はすぐに分かるのですが、⑩が斜めから撮ったために正確には分かりません。それで、両方の可能性を残して調べてみました。でも、⑩bを選ぶと、⑭aは体が細長いというのが特徴で、どうも違うようです。また、⑭bは前胸背前葉が膨らむのでこれも違います。ということで、⑩bは違うようです。それで、⑩aの方を選んでみました。⑧、⑨、⑩a、⑪を写真で調べると次のようになります。



先ほどの⑩だけがはっきりしないのですが、後は大丈夫そうです。最後の⑫は体長の問題なので、写真ではよく分かりません。それで、ヨツボシヒョウタンナガカメムシ属とホソヒョウタンナガカメムシ属の両方が候補に残りました。前者のうち、本州産はヨツボシヒョウタンナガカメムシ1種なのですが、名前の通り、前胸背後葉に4個の小さい黄色紋があるので、たぶん、これとは違います。ということで、残りのホソヒョウタンナガカメムシ属のホソヒョウタンナガカメムシの可能性があるかなと思っています。ただ、この種の分布は四国、九州となっています。説明を読むと、チビヒョウタンナガカメムシと呼ばれていた種が本州、九州に分布して、この種の異名である可能性があるとのことです。この辺りかなと思っています。とりあえず、採集しておけばよかったですね。



カメムシに時間を取られてしまいました。この写真の虫はこれまでも見てきたクロヒゲナガケバエだと思われます。



これはセモンジンガサハムシだと思われます。



向きを変えて写すと背にある金色の模様の片側が見えなくなってしまいました。たぶん、金属的な反射をしているのでしょうね。





翅脈のSc脈がR1脈に合流しているので、ガガンボ科でしょうね。



こちらはオオトビサシガメ



これも似た種がいましたね。ハリカメムシとホソハリカメムシです。「日本原色カメムシ図鑑第3巻」の検索表を見ると、触角第1節に黒条があればハリカメムシ、なければホソハリカメムシです。



拡大してみても黒条はないので、たぶん、ホソハリカメムシの方だと思われます。



最後は派手なアオアツバでした。
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