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廊下のむし探検 蛾

廊下のむし探検 第1028弾

27日にマンションの廊下を歩いて見つけた虫です。最近は公園や道路わきの茂みで探すより、廊下で探した方がよっぽど虫が多いので、ときどき歩くことにしています。まずは蛾です。マンションは夜、明りが灯されるせいで、蛾はとにかくいっぱいいます。それに、昼間は壁に止まってじっとしてくれるので、写真を写しやすいのもいい点です。外だと、いてもすぐに葉裏に隠れてしまうし、近づくと逃げるし、なかなか写すことができません。



見た順に書いていきます。これはボクトウガです。幼虫が樹に孔を開け、それにより樹液が出るという話を以前調べたことがありました。それの成虫です。これまで7月から8月にかけ、何度か見ています。



これはゴマフリドクガ



これはオオウスベニトガリメイガ。いつも、天井に止まっているので、近くで写すことができないのですが、今年はなぜか壁に止まっていることが多いですね。



これはギンバネヒメシャク



こんな変わった蛾もいました。頭の上に角みたいに生えているのは下唇鬚です。「標準図鑑」で調べてみると、どうやらキバガ科のセンダンキバガのようです。初めて見ました。



小型のヒメシャクです。たぶん、ミジンキヒメシャクではないかと思います。



マダラエダシャク Abraxas属です。これは今のところお手上げです。この個体は前翅の横脈上の黒環がよく見えています。近畿産で黒環がないのはユウとキタ、黒環があるのはヒメ、ヘリグロ、クロ、ヒトスジ。これ以上は分かりません。



ヒメマラダミズメイガです。名前の通り、幼虫は水生です。「日本産水生昆虫」によると、マダラミズメイガ属はスイレン、ヒシ、ジュンサイなどの浮葉植物を寄主とし、葉を切り取ったり、ウキクサを集めて巣を作るそうです。幼虫は皮膚呼吸ですが、中齢以降は体に水をはじく特殊な突起が出て、水面上で生活するそうです。



これはスカシエダシャク。翅の一部が透けています。



ヨツボシホソバの幼虫。



天井に止まっていたトビイロシマメイガです。



最後は壁に止まっていたヤママユです。このブログを始めた頃は、まだ、蛾が怖くてなかなか近寄れなかったのですが、最近では中くらいの蛾なら、近くで飛んでいても平気になりました。でも、このヤママユは駄目です。恐る恐る遠くから写しました。
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虫を調べる イエバエの各部の名称

先日、イエバエ科イエバエらしきハエの検索を行いました(こちらこちら)。ついでに各部の名称を調べてみようと思って勉強してみました。



まずは刺毛です。刺毛は1枚の写真ではうまく写らないことが多いので、角度を変えて何枚も写しました。





また、略称の意味は次の通りです。



刺毛については勉強のために事あるごとに名称をつけるようにしているのですが、いつも迷ってしまう刺毛があります。それはAと書いた刺毛とBと書いた刺毛です。人によって名称の付け方がまちまちなので、困っていたのと、刺毛についての知識がほとんどなくて、ただ、その位置から何となくつけていたのが原因でした。

大石久志、村山茂樹、「日本のイエバエの同定」、はなあぶ 37、100 (2014)

今回、この論文を読んでみると、刺毛配列(論文には剛毛配列とあるのですが、名称を「新訂原色昆虫大図鑑III」に合わせたので、刺毛と書いておきます)について詳しく載っていました。まだ、完全には理解できないのですが、一応、理解したところだけ書いておきます。まず、イエバエ科では肩後刺毛(ph)を翅内刺毛(ia)の系列として考えます。それで、横線(sut)の前にあるAという刺毛についてもそのまま横線前にある翅内刺毛(ia)と考えます。



これは以前写したクロバエ科オオクロバエだと思われるハエの刺毛です。この場合、肩後刺毛(ph)は翅背刺毛(sa)の系列と考えるのです。なぜそうなのかは分かりませんが、たぶん、肩後刺毛が肩瘤に沿って側面方向に伸びているせいだと思われます。同じ肩後刺毛が科によって翅背刺毛系列になったり、翅内刺毛系列になったりします。それで、「新訂原色昆虫大図鑑III」の刺毛配列の図では二つの系列が重ねて書かれているのだと思われます。さらに、科によって横線前後の刺毛に特別な名前をつけて呼ぶことがあるようです。それが、AとBになります。Aは「絵解きで調べる昆虫」に載っている笹川氏の検索表ではクロバエ科、ニクバエ科、タンカクヤドリバエ科について横線前刺毛(prs)(大石氏の論文では前横線翅背刺毛)と書かれています。一方、イエバエ科について、篠永氏の「日本のイエバエ科」の図には単に翅内刺毛(ia)とだけ書かれています。これに対して、翅背刺毛の横線後最初の刺毛は翅前刺毛(pra)とされています。これがBです。こんな風に科によって名称が違うのは歴史的な要因があるのでしょうが、気をつける必要があります。

また、翅脈の系列を破線で結んでいて少し気になった刺毛がありました。それがCです。翅内刺毛(ia)の系列とするには余りにも端にあって、翅後刺毛の生えている瘤のすぐ脇にあります。上の写真ではiaの系列として破線で結んだのですが、論文を見ていたら、intrapostalar setaと書かれているものもありました。

S. S. Nihei and C. J. B. de Carvalho, "The Muscini flies of the world (Diptera, Muscidae): identification key and
generic diagnoses", Zootaxa 1976, 1 (2009). (ここからダウンロードできます)

少し検討すべきかもと思いました。

それで、これらのデータを篠永氏の「日本のイエバエ科」のイエバエの解説に載っているデータと比較してみました。



presentと書いたのが今回のデータです。また、「+」の前後の数字は横線前と後の刺毛数を表します。大体は合っているのですが、気になる点を右欄に書きました。iaのところでは、再び、prsという名称が登場しました。一般的なイエバエ科の解説図ではiaとなっているのですが・・・。著者も混乱しているのかもしれません。また、私の気になったCという刺毛については触れられていないようです。私はそれを含めてしまったので、数字が違うのでしょう。また、asと書いた刺毛は小盾板先端刺毛なのですが、本には小盾板亜先端刺毛になっていました。この違いについてはよく分かりません。





刺毛のついでに胸部側面の各部の名称を入れてみました。



略称の意味はこの表の通りです。この略称は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っている英名を略したので、一般的なものではないと思います。気になるのは、中副基節(mm)と中胸下後側板(mkem)が分かれているように見えることです。これが分かれているとすると、大石氏の検索表では剛毛列が下後側板にあることになっている点が気になります。



最後は腹部の節です。篠永氏の本の絵には第2背板から書かれていたので、第1背板はどうしたのだろうと気になりました。



腹板の方は第1節から書かれているので、それに対応する第1背板が見えないかと思ったのです。なお、黒矢印は気門です。



これはその部分を拡大したものです。平均棍の下に暗色に見えている部分が、腹部第1腹板ですが、それに対応する第1背板がどれだかよく分かりません。(追記2018/09/01:フトツリアブさんから、「イエバエやハナアブのような短角亜目では腹部第1背板と第2背板が融合しており,第1+2背板等と表記されます。第1腹板もグループによっては退化して膜質となります。」というコメントをいただきました。そうなのですか。第1背板と第2背板が融合しているのですね。初めて知りました。やはり、その辺にいるハエでも詳しく調べてみるものですね。いい勉強になりました。コメントをどうも有難うございました

家の中を飛んでいたハエですが、調べてみると、分からないことだらけですね。とりあえず、ここまで。

廊下のむし探検 雑談(微小甲虫とコバチ)

この間、名前の分からなかった虫を少し調べてみました。でも、検索するところまではいかなかったので、とりあえず雑談ということにしておきます。



これは8月20日のブログに出した甲虫です。そのときはキスイムシ科のオオナガキスイあたりかなと思ったのですが、立西さんから、チビヒラタムシの仲間のように見えると教えていただきました。その後、通りすがりさんからは、オオキバチビヒラタムシのメスとかその辺だと教えていただきました。ただ、「原色日本甲虫図鑑III」の図版を見ても写真が小さくて判断できません。何とかならないかなと思っていたら、六本脚で、平野幸彦氏の「日本産ヒラタムシ上科図説第1巻」を売っているのが分かりました。この中に、チビヒラタムシ科も載っています。ただ、64ページで3000円もするので、どうしようかと迷ってしまいました。でも、結局、思い切って買ってみました。

この図説はヒメキノコムシ科、ネスイムシ科、チビヒラタムシ科のいわゆる微小甲虫を扱ったもので、なかなか文献が見当たらない領域なので、その意味では利用価値の高いものだと思いました。写真も大きくて見やすいので図鑑としても役立つし、さらに、検索表も載っているので、同定にも役に立ちそうです。ただ、科や属の特徴を図をプラスした、もう少し突っ込んだ内容の説明があるといいなと思ったことと、検索表に是非とも図が欲しいなと思いました。

チビヒラタムシ科は従来ヒラタムシ科チビヒラタムシ亜科になっていたのですが、1980~1990年代あたりから、チビヒラタムシ科として独立して扱われるようになったそうです。



この図鑑を用いて触角の先端3節の節の形(A)と前胸背板(B)の形状、特に側縁の形状に注目しながら探してみると、通りすがりさんに教えていただいたオオキバチビヒラタムシ Nipponophloeus dorcoidesか、ヒレルチビヒラタムシ Placonotus hilleri辺りかなと思いました。そこで、属の検索表でこの2属に関係する部分を見てみました。



この2つの属は①の項目で分けられます。つまり、頭盾と前頭が横溝で分かれるかどうかです。頭盾は写真の矢印で示した部分で、横溝があるような感じがしますが、これが完全な横溝ではなく、単なる頭盾会合線だとすると①bでもよいことになります(この二つ、どう違うのかよく分かりませんが・・・)。さらにその後の項目はこの写真ではまったく分かりません。ということで、検索表を使ったアプローチはここで挫折です。ただ、オオキバチビヒラタムシの解説には、Placonotus属とは、触角第9節から第11節は球桿を作らないことと、末端節の長さが幅の2.5倍と長いので区別できるとのことでした(ヒレルは球桿ではなく、また、末端節は2倍)。この写真の個体では球桿になっていないことは確かだし、末端節の比を測ると2.34になり、2.5に近いので、今のところ、オオキバチビヒラタムシ♀の可能性が高いかなと思っています。いずれにしても、今度いたら是非とも採集したいです。



次は8月11日見つけたこの奇妙なハチです。



体長は1.9mmでとにかく変な恰好のハチです。これは、「絵解きで調べる昆虫」に載っている検索表で調べてみました。その結果、トビコバチ科になりました。翅に特徴があるので、「新訂原色昆虫大図鑑III」の図版で探してみると、同じような翅の斑紋を持つヒゲトビコバチ Encyrtus aurantiiが候補に上がりました。

トビコバチ科については次の論文に日本産の種リストが載っています。

G. Japoshvili, Y. Higashiura, and S. Kamitani, "A review of Japanese Encyrtidae (Hymenoptera), with descriptions of new species, new records and comments on the types described by Japanese authors", Acta Entomologica Musei Nationalis Pragae 56, 345 (2016). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

ここには日本産トビコバチ科として150種が載っています。このうち、ヒゲトビコバチと同じEncyrtus属には4種。ただ、分布からは他の3種は近畿地方にはいないと思われ、ヒゲトビコバチだけが候補になりました。属の検索表が見つからないので、何とも言えないのですが、「新訂原色昆虫大図鑑III」のヒゲトビコバチの解説を読むと、頬には隆起線、小盾板の先端部には多数の黒色長剛毛の房を生じるとのことです。



これは顔の側面ですが、頬には複眼に沿って確かに隆起線が見られます。



さらに、小盾板には黒い剛毛の房が1対見られます。ということで、たぶん、ヒゲトビコバチで大丈夫なのではと思っています。さらに、触角の棍棒状部の形状から♂みたいです。顕微鏡写真もいろいろと撮ったので、トビコバチ科への検索を含めてまた今度載せることにします。なお、このハチはヒラタカタカイガラムシ、ツバキワタカイガラムシに寄生するそうです。(追記2018/09/04:こちらに♂と♀の写真がでていました。比べてみると、この個体は♀のようです



最後は腹部背板を写したものです。背板が曲がり、通常腹端あたりに生える尾毛が腹部側面の前半部に生えています。こんな形はトビコバチ科の特徴みたいです。

家の近くのむし探検 花と虫と

の近くのむし探検 第425弾

以前小学校の校外学習があった辺りを歩いていて、先日、メグサハッカかもと思われる花があったので、その確認のため、22日にもう一度行ってみました。その時についでに撮った花と虫です。





田んぼに咲いていた花です。初め、アメリカアゼナかなと思ったのですが、葉には短柄がなく、ほぼ全縁なので、アゼナの方みたいです。葉にはわずかに鋸歯は見られますが・・・。





こちらはアキノタムラソウの花です。



ついでに蕚の写真も撮っておきました。





これも田んぼで咲いていたウキアゼナの花です。





ハッカの仲間です。先日、「日本帰化植物図鑑」に載っている外来ハッカ類の検索表で調べたことがあったので、もう一度試してみました。この写真では花輪がくっついているのですが、離れているのもあったので、そちらを選び、花輪の下の包葉が目立たないので、コショウハッカか、ナガバハッカになります。ただ、蕚筒の毛が見えないので、ここから先はよく分かりません。





これは植えてあったものですが、モクセイ科のシマトネリコかなと思いました。



次からは虫です。これはコゲチャオニグモかなと思ったのですが、よくは分かりません。



ササキリの幼虫。



ヤマノイモ科にいるのはキイロスズメの幼虫です。



最後はキマダラセセリでした。

廊下のむし探検 蛾ほか

廊下のむし探検 第1027弾

イエバエを調べていたら、「廊下のむし探検」の写真整理が遅れてしまいました。とりあえず、8月21日の分です。全般的に虫は少ないですね。



まずは蛾からです。これはキオビゴマダラエダシャクみたいですが、「廊下のむし探検」初登場です。比較的大きな蛾です。



鱗粉がだいぶ取れてしまっているようですが、特徴的な部分が残っているので、たぶん、アカテンクチバ



これはおそらく、キベリトガリメイガ



それにナカキエダシャク



それとアオアツバ。蛾はマンション中を探してこんなもんでした。





♀有翅アリは最近、調べるために採集しています。それで、これらも採集しました。上はこの間調べたハリブトシリアゲアリみたいです。下は腹部に白い斑紋が4つ見られたので、たぶん、ヨツボシオオアリではないかと思っています。♀有翅アリも少しずつ分かるようになってきました。





小さいのでコカゲロウ科の♀かなと思ったのですが、尾が3本あります。それで、たぶん、アカマダラカゲロウ♀だと思われます。



これはセスジヒメナガカメムシ



それに、フタテンカメムシ



トゲナシケバエの仲間の♂ですが、今頃出てくるのは何だろう。採集するのを忘れてしまいました。



トビケラも採集しないと科すら分かりません。



最後はたぶん、シノノメトンビグモ。廊下で30分ほど探してこんな感じでした。それでも、外で探すよりは多いかもしれません。

虫を調べる イエバエ科イエバエ?(続き)

昨日の続きで、イエバエ科イエバエかもと思っているハエの検索です。



もともと家の中を飛び回っていたので、生態写真はないのですが、こんなハエです。昨日は検索をしてみて、Muscinae亜科まで到達したので、今日はその先の検索です。検索には次の本に載っている検索表を用いました。

篠永哲、「日本のイエバエ科」、東海大学出版会 (2003).

この本には日本語の検索表と英語の検索表が載っているのですが、若干違うので、あえて英語の方を用いました。



検索の番号は昨日の続きになっています。最終的な検索結果はイエバエ Musca domesticaになったのですが、そこに至る過程を抜き書きしました。これを写真で調べていきます。今回はほぼ検索の順です。



基覆弁はこの写真で示したものですが、大きくて内縁は小盾板に接していそうです。それでこれはOKです。



これは昨日も確かめたのですが、上後側板には確かに短い剛毛が生えています。



次は翅脈です。⑬も⑯も共にOKですね。



小盾板の剛毛に黄色の点をつけました。全部で5対ほどありそうですが、これもまあ大丈夫でしょう。



⑮は色に関するものなのでOKだと思います。



⑰はMusca属の種への検索表に載っていました。前胸前側板は矢印で示した部分ですが、ここに毛があるかどうかです。英語版には"hairy"とあったので、「有毛」と訳したものですが、日本語版では「小剛毛がある」なのでそういう意味でしょう。この写真ではよく分からないので、もう少し拡大してみます。



これでも分かりにくいので、黄三角で小剛毛の位置を示しました。10本程度はありそうです。それで、これはイエバエ Musca domesticaだろうと思ったのですが、若干、不安なところもあります。

まず、この個体は複眼がかなり大きく離れているので♀みたいです。先ほどの本によると、♀では複眼間が頭頂で頭幅の0.33とのことです。♂ではこの比が0.2なので、やはり♀でよいのでは思っています。気になっているのは腹部の色と中胸背板の黒帯についてです。本には♀では、黄色で中央に黒い縦帯があるのは腹部第2背板だけで、第3,4背板は暗褐色と書かれています。上の写真で見えているのは第2背板から第5背板までで、黄色で中央に黒帯は第2,3背板で、暗褐色は第4,5背板になっています。また、中胸背板には4本の黒い縦帯があることになっていますが、上の写真をよく見ると、前側は確かに4本ですが、途中から真ん中の2本が合体し、盾板後縁近くでは3本になっています。こんなところが外見上で異なります。ただ、本に載っている標本写真を見る限り、似た種はいないようなので、たぶん、イエバエでよいのではと思うのですが・・・。それで、各論に載っている説明と合っているかどうか確かめるために各部の名称や剛毛配列を調べてみました。それについては次回に回します。

虫を調べる イエバエ科イエバエ?

この間も雑記として書いたのですが、22日に家の中を飛び回る比較的小さなハエを見つけました。うるさいので捕虫網で採集した後、ついでに調べてみようと思って毒瓶に入れておきました。昨日、検索をしてみたのですが、イエバエ科のイエバエ Musca domesticaではないかと結論になりました。顕微鏡写真も撮ったので、とりあえずまとめてみました。間違っているかもしれませんけど・・・。



採集したのはこんなハエです。体長は6.8mm。やや小型のハエです。



これは背側から撮った写真です。腹部にこんな模様がありました。また、胸背には黒い帯が4本見られます。小さいけれど、意外に特徴の多いハエです。イエバエ科の検索は久しぶりなので、まず、科の検索からしてみました。検索には「新訂原色昆虫大図鑑III」のハエ目の科への検索表を用いました。



有弁翅類は確かそうなのですが、その有弁翅類のところから始めます。①~⑤の5項目を調べると、イエバエ科であることが分かります。これを写真で調べていきます。



翅下瘤と基覆弁は矢印で示した部分です。



翅下瘤はちょっと拡大しておきました。



鬚剛毛は写真に示した通りです。口器は発達しているのが分かります。②の項目は口器の退化したウマバエ科、ヒツジバエ科、ヒフバエ科を除外する項目です。



触角梗節の縫線はいつも探すのに苦労するのですが、これははっきり見えました。黄三角で示した線のことです。



翅脈の名称は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っているイエバエ科の図を参考にしてつけました。①、④、⑤はいずれもこの写真を見たら分かると思います。特に、④と⑤はイエバエ科であることを確かめるのに重要な項目です。



中脚の副基節は矢印で示した部分ですが、よく見ると2本ほど短い毛がありますが、ほとんど目立ちません。それで、③はOKとしました。これですべての項目を確かめたので、まず、イエバエ科は確かそうです。

次は亜科の検索です。亜科の検索表は次の本に載っています。

篠永哲、「日本のイエバエ科」、東海大学出版会 (2003).

この本は日本産イエバエ科が1冊の本で扱われていて、非常に貴重な本ですが、いざ検索に使おうとするといろいろと困ったことが出てきました。特に、亜科の検索はどうもうまくいきません。そんな折、次のような論文が出ていることに気が付きました。

大石久志、村山茂樹、「日本のイエバエの同定」、はなあぶ 37、100 (2014)

この論文は「日本のイエバエ科」の検索表を使うにあたって注意すべき点が出ていて大変役に立つ論文です。特に、うまくいかなかった亜科の検索表の絵解き修正版が出ていて、大変、使いやすくなりました。これを使って亜科の検索をしてみました。



実際に検索をしてみると、このような手順でMuscinae亜科になることが分かります。赤字はこれを補っておいた方がよいと思ったところです。これも写真で見ていきます。



上の③に出てきた中脚の副基節と⑥に出てくる下後側板は同じ部分を指していると思っていました。でも、「新訂原色昆虫大図鑑III」には「下後側板+中副基節」と書かれているので、厳密には違うようです。ただ、短角類の一部では中副基節は基節本体から完全に分かれて、下後側板と副基節は融合しているということなので、ここでは同じ場所を指していると考えてよいのではと思っています。

この部分には黄矢印で示したように2本の短い毛が見られます。2本くらいだと、あると言えばあるし、ないと言えばないので、⑥aと⑥bの両方の道を進むことにしました。⑥aの方に進むとすると、⑦、⑧へ進むことになるのですが、まずはそれを写真で見ていきます。



M1+2脈が曲がっていることは間違いありません。



この写真のように上後側板には少数の毛が生えています。それで、Muscinae亜科になります。一方、⑥bの方に進むとすれば、⑨→⑩→⑪と進みます。これも写真を見ていきます。



⑨は上で確かめたので、⑩を調べます。小顎肢は矢印で示した部分だと思うのですが、細長くなっています。それで、これはOKとしました。



次は平均棍近くにある後気門に関する項目です。この写真のように気門の下縁には毛が生えていますが、剛毛は生えていません。この項目は分かりにくいのですが、論文の検索表は絵解きだったので、よく分かりました。結局、こちらも先ほどと同様にMuscinae亜科になりました。今回、到達するはずの属はMusca属なのですが、⑥aを進むと「Musca属の一部」とあるので無事に到達します。ところが、⑥bを進むと、「Musca属の一部」とは書かれていないのであれっと思いました。検索表の他の場所には「Musca属の一部」というのはないので、たぶん、ここに書かれるべきものが抜けていると思い、補充しました。

属と種の検索は「日本のイエバエ科」の検索表を用いました。ただ、ついでだからと思って、各部の名称を調べ、さらに、剛毛配列も調べて、イエバエの記述と比較しようと思って始めたのですが、よく分からないところもあってなかなか進みません。それで、属と種の検索は次回に回します。

家の近くのむし探検 公園の虫

の近くのむし探検 第424弾

20日に、以前よく通っていた公園に行ってみました。でも、虫は少なかったですね。一応、記録なので出しておきますが・・・。



まず初めに見つけたのはこのイトカメムシです。こんな風に脚にまだら模様があり、翅が短いのは幼虫で、これは翅の長さから5齢幼虫でしょう。





カゲロウがいました。尾が2本なので、ヒラタカゲロウの仲間かなと思ったのですが、そこから先は分かりません。



一応、把握器は写したのですが、これじゃ分からないでしょうね。



ツヤユスリカ属の♀だと思うのですが、「図説日本のユスリカ」の図を見ても、どうもぴったりくるのがありません。



これはアミメアリ。アミメアリは女王アリがいないのでしたね。従って、働きアリが産卵することになります。この間、全く働かなくて、卵をたくさん産む働きアリの系統と、働きどうしで産卵数が少ない働きアリの系統がいて、一つの巣の中で同居しているという論文を読んだのですが、まだ、そうなる必然性がよく分からないので、もう少し理解したら紹介することにします。



うーむ、また、ヒメシャクです。Idaea属ですね。よく分からないのですが、ウスキヒメシャクかなと思っています。



これは桜の木をものすごい速度で登っていたウシカメムシの幼虫です。



最後はルリチュウレンジでした。

雑談)3日前、部屋の中で小型のハエが飛び回っていました。飛んで火にいる夏の虫。早速、捕まえて、先ほど検索してみました。どうやら、イエバエ科のイエバエ Musca domesticaのようです。顕微鏡写真も撮ったので、今度、まとめて出します。イエバエ科は篠永哲氏の「日本のイエバエ科」に載っている検索表のうち、亜科の検索がうまくいかなかったのですが、大石氏らの「日本のイエバエの同定」、はなあぶ 37、100 (2014)で修正版が出されて、大変楽になりました。

家の近くのむし探検 虫と植物

の近くのむし探検 第423弾

最近、気温がちょっと下がってきたので、ちょこちょこと虫観察に行き始めました。でも、虫はあまり見当たりません。暑さにやられてしまったのかなぁ。今回は19日にいつも行っている道路わきの茂みで探した虫と植物です。



最初はワキグロサツマノミダマシかな。最近、よく分からなくなってしまいました。



薄暗い茂みに止まっていたチョウです。裏側の模様から、コムラサキかなと思っています。



これはフタツメオオシロヒメシャク



これはトウキョウキンバエ。これについては以前採集して、調べたことがあります。



そして、ヨツボシオオアリ



それから、これはアミメアリ。ササの葉なのですが、何をなめているのでしょうね。



ハムシがいたので、撮影してから採集しようと思っていたら、最初の撮影で下にポタっと落ちてしまいました。でも、見ていたら、途中で翅を広げて飛んでいきました。ハムシはいつも下に落ちるのですが、下を探しても見つからないのは、途中で飛んでいくからかもしれませんね。名前まではよく分かりませんでした。



これはナミガタチビタマムシ



これはヤドリバエの仲間かな。



道路脇の茂みを離れて、川の土手にある作業小屋の方に行ってみました。虫を探したのですが、全然いません。唯一いたのはこのアワダチソウグンバイでした。



近くにショウジョウトンボもいました。





植物の方はこのキツネノカミソリをいつも見ている道路わきの茂みで見つけました。



最後はアオツヅラフジの実みたいです。そろそろ夏も終わりになってきた感じです。何となく寂しいですね。

虫を調べる ハリブトシリアゲアリ(♀有翅アリ2)?

昨晩、台風20号が家の近くを通過しました。雨も風も強く、大丈夫かなと思って12時頃までは起きていたのですが、気が付いたら寝てしまっていました。1時半ごろ、スマホのけたたましい音で目が覚め、起きて見てみると、土砂災害警戒情報の緊急速報でした。何度も起こされてはたまらないと思って、スマホの上に座布団を載せてまた寝たら、5時半にやはり音がして起こされました。今度は土砂災害警戒情報の解除のお知らせでした。解除の場合はあんな大きな音を出さなくてもよいのに・・・。仕方なく起きて、3日前に撮った羽アリの顕微鏡写真の整理をしました。



これは昨日検索した翅を落とした♀有翅アリと同じ日の16日に採集したものです。体長は奇しくも同じ7.1mmでした。調べてみると、昨日出したハリブトシリアゲアリと同じになりました。それで、今回は細かいところの写真は省いて、特徴的な写真だけ出しておきます。昨日の結果と比較してみてください。



まずは頭部のの写真です。額葉辺りの構造、頭盾の前縁中央が凹んでいるところなどよく似ています。



これは前伸腹節と腹柄の写真です。これも前日の個体と似ていますが、前伸腹節刺がはっきりしない感じです。



これは腹柄を背側から撮ったものです。腹柄節の形状は前日の個体とほぼ同じです。これが決め手になりました。



最後は翅脈です。翅脈の名称はいつものように次の論文を参考にしました。

K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)

この論文は翅脈パターンの分類をしているのですが、それに当てはめてみると、今回はIVb型になりました。決め手は赤矢印で示した「1」と書いた部分です。これまで出てきたIIId型、IVe型はRs+MがRsとMに分岐する点がr-rsがRsと交差する点とほぼ等しかったのですが、これはかなり離れています。それで、IVb型だとしました。上の論文によると、この型はカタアリ亜科に多いのですが、ハリアリ型亜科群やフタフシアリ亜科にも見られるそうです。

虫を調べる ハリブトシリアゲアリ(♀有翅アリ)?

台風20号が近づいています。ベランダに置いてあるものを家の中に入れたり、そろそろ台風準備をしなければならないのですが、その前に3日前に撮った顕微鏡写真のまとめをしてしまいます。



今日はこんな翅の脱落した♀有翅アリで、8月16日にマンションの廊下で採集しました。この写真を見ても、腹柄節が2節のフタフシアリらしいことが分かります。これまで、♂♀有翅アリの検索を試みてきたのですが、たぶん、フタフシアリ亜科は初挑戦です。それで、ちょっとは期待しながら検索をしてみました。その結果、フタフシアリ亜科シリアゲアリ属になりました。検索には「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いたのですが、これはもともと働きアリ用です。有翅アリは翅を動かすための筋肉がある中胸が発達し、その影響で、前胸と前伸腹節が圧迫されるので、それらの形状に関する検索項目は使えません。また、頭部の形もカーストにより異なるために使えないことがあります。そんな点に注目して、検索表の項目を吟味しながら検索してみました。



これは近畿産に限ったシリアゲアリ属シリアゲアリ亜属に至る検索表を抜き出したものです。この個体は最終的にはハリブトシリアゲアリだと判断されたので、検索は①→・・・→⑦→⑧a→⑨aと進んでいきます。青字は先ほど書いた意味合いで検討しないといけないところ、赤字は調べた結果、このままではうまく行かなかったところです。これらを写真で調べていきたいと思います。本当は検索の順番に見ていけばよいのですが、あっち見たり、こっち見たりとややこしいので、部位別に見ていきます。



体長は大腮を入れずに測って7.1mmになりました。この写真では、腹柄が腹柄節と後腹柄節の2節に分かれること、複眼を持つこと、体色が褐色から黒色であることを見ます。



これは背側から撮った写真です。ついでに③の複眼の長径を測ってみました。その結果、大腮を含まない頭長の1/3.75となり、書かれている値よりは少しだけ複眼が大きくなりました。♀有翅アリでは頭部に単眼があるなど、頭部の形状がかなり変わるので、働きアリの項目そのままでは使えないのではと思いました。



頭盾も額葉も写真に示した通りです。頭盾には異常は見られないし、額葉が触角基部を覆っていることも分かります。それで、①~③はOKとしました。



触角は11節でした。また、9節より先端側はやや太いので、ここが棍棒部だと思われます。



⑧aは♀有翅アリには使えないものだとばかり思っていたのですが、意外に使えるかもしれません。前胸側面は写真に示した部分です。



その部分を拡大した写真です。前胸側面には毛の下にしわがはっきり見えます。前胸は中胸の発達により前の方に追いやられているのですが、表面構造はそのままみたいです。というわけで、⑧aはOKです。



これは脚の爪を拡大したものです。爪には歯などはなくて、単純です。



胸部と前伸腹節の付近を写したものです。ついでに次の論文を見ながら各部の名称を入れておきました。

B. E. Boudinot, "Contributions to the knowledge of Formicidae (Hymenoptera, Aculeata): a new diagnosis of the family, the first global male-based key to subfamilies, and a treatment of early branching lineages", Eur. J. Taxonomy 120, 1 (2015).(ここからダウンロードできます)

この論文は♂アリに関するものなのですが、♀有翅アリと同様に翅があるので、たぶん、そのまま使えるかなと思って参考にしました。この写真を見ると、前伸腹節気門は前伸腹節刺の外側にあります。働きアリでは下側あたりにあって、後面にかかっていたのですが、♀有翅アリでは少し違うようです(ハリブトシリアゲアリの働きアリに関する以前の記事を見てください)。



これは前伸腹節と腹柄を撮ったものです。前伸腹節刺は♀有翅アリでははっきりしないだろうと思っていたのですが、この写真を見ると、一応、あることが分かります。②、⑨はこれでOKとしました。⑤は先ほどの前伸腹節気門の位置の項目と対になっている項目ですが、腹柄は腹部の背側と接続しています。



これは背側から撮ったものですが、背板の端に腹柄がついている様子が分かります。



これは腹柄節を背側から写したものです。腹柄節は横から見ると結構長いので、「背方から見て」という言葉を入れると、腹柄節は確かに横長になっていることが分かります。



最後は腹部末端の写真です。背板にも特に異常な構造は見られないので、これはOKだと思われます。

ということで、もし、前伸腹節刺の形状が働きアリと♀有翅アリで変化していないとすると、この個体はハリブトシリアゲアリだということになります。合っているかどうか全く分からないのですが・・・。



ついでに、頭盾前縁中央が凹んでいたので写しておきました。

この間から、♀有翅アリの検索を試みているのですが、働きアリとの違いを考えながら検索をしていくと、何とか働きアリの検索表でも追いかけることができそうです。合っているかどうかは全く分からないのですけど・・・。

家の近くのむし探検 ハッカなど

の近くのむし探検 第422弾

昨日の続きで、17日に、以前、小学校の校外学習があった田んぼの近くで見た植物と虫です。



以前、体験田植えがあった田んぼの畔に咲いていた花です。ハッカの仲間だろうと思って、帰ってから、長田武正著、「日本帰化植物図鑑」(北隆館、1979)を見ると、メグサハッカに似ている感じです。この図鑑には帰化ハッカ属の検索表も出ていました。



メグサハッカであることを確かめるには、A→B→Cと進むことになります。Aの花輪とBの包葉は次の写真から確かめられます。



Cの葉の鋸歯と蕚口については写真でははっきりとは分からなかったので、今日、調べに行ってきました。



右は茎の基部近くにあった葉です。葉には低くて不明瞭な鋸歯が3つ、側脈が3本見られます。横に花が置いてありますが、これはさらに実体顕微鏡で観察してみました。



花の基部に蕚筒があります。花が取れたものについて蕚筒を実体顕微鏡で観察してみました。



蕚には長い毛が生えています。蕚口がどれかはっきりしません。先端の尖っている部分(蕚裂片)だとすると、密生とまではいかないのですが、毛が生えています。メグサハッカの説明には「(蕚裂片の)へりにはやや長い毛が並ぶ」とあるのでそのことかなと思っています。



ついでに生物顕微鏡を使って蕚裂片の部分だけを拡大してみました。拡大すると、いつも生物の造形美に感動してしまいます。ということで、この花はメグサハッカ Mentha pulegiumでよいのではと思っています。





田んぼの脇に生えていたクサネムです。



田んぼへ行く途中の山道に生えていたキツネノカミソリです。久しぶりに見ました。



田んぼには稲がもう実っていました。



こちらはセリです。



それから田んぼに生えていたウキアゼナです。





後は虫です。これはキバナコスモスに来ていたキアゲハ



これもハッカの仲間だと思うのですが、その花に来ていたキマダラセセリ



それにフクラスズメ幼虫。



ヒカゲチョウ



これはナガコガネグモ。餌食になっているのはシオカラトンボかな。



それから道を横切ったシマヘビです。





帰りに畑に植えられているケイトウを見つけました。調べてみると、トサカケイトウという品種のようです。学名がCelosia cristataとなっていたり、C. argentea var. cristata、C. argentea f. cristataといろいろでしたが、Wikipediaによると、最後のf. cristataが現在では通用しているようです。次の論文によると、ケイトウの野生種 C. argenteaとこの種C. cristataは前者が8倍体、後者が4倍体と異なっていたので、別種と見られていたのですが、野生種の中にも4倍体があることが分かったそうです。それで、きっと、変種扱いとなり、現在では品種になっているのではと思っています。

T. N. Khoshoo and M. Pal, "The probable origin and relationships of the garden cockscomb", Bot. J. Linn. Soc. 66, 127 (1973). 

家の近くのむし探検 アオバハゴロモほか

の近くのむし探検 第421弾

17日はいつもの道路わきの茂みを探した後、久しぶりに以前小学校の校外学習があった辺りを歩いてみました。まずはいつもの道路わきの茂みで見つけた虫たちです。



暑かったせいか、虫の数が少ないので、いた虫は何でも写すことにしました。まずは、アオバハゴロモです。





それからササキリの幼虫です。





小さなテントウの幼虫が動き回っていました。意外に速く動くのですね。何枚か写したのですが、なかなかピントが合いませんでした。



これはサツマノミダマシかなぁ。



そして、これはワキグロサツマノミダマシ



これはサツマノミダマシ?だんだん分からなくなってきました。



これはクロウリハムシ



ハバチかなと思って撮ったのですが、こうやって見ると違うようですね。



これはニレハムシかな。



ヒメシロモンドクガの幼虫。



これはオオシオカラトンボ。トンボは普段遠くから望遠で写すのですが、歩いていたらすぐ目の前に止まっていたので、接写で写してしまいました。



ハエです。ヤドリバエかな。



アズチグモの♀です。



これはヒラタカゲロウの仲間の亜成虫みたいです。行きと帰りに通った道路わきの茂みの虫で見つけた虫でした。後は、もう少し山の中の田んぼの近くで見た虫やら花なのですが、それらは次回に回します。

廊下のむし探検 蛾と甲虫

廊下のむし探検 第1026弾

16日にマンションの廊下で見た虫の続きです。



廊下で羽アリの写真を撮っていたら、ちょうどいいところにいたと言われて、近くの奥さんが玄関にいる変わった虫を見てくださいと言ってこられました。見てみると、このナシイラガでした。



低いところに止まっていたので、前からも写してみました。確かに蛾には見えないかもしれませんね。



小さな甲虫です。パッと見でいつも見ているクロモンンキスイかなと思ったのですが、よく見ると違っていました。



これは前胸背板側縁を拡大したのです。クロモンキスイは中央に突起があるのですが、これにはありません。また、側縁には緩い鋸歯が見られます。こんなところから、オオナガキスイかなと思ったのですが、「原色日本甲虫図鑑III」によると、オオナガキスイは前胸背板側縁前角が斜めだと書かれているのですが、これはむしろ尖っています。やはり、違うのかもしれません。

追記2018/09/01:立西さんから、「確証はないのですが3,4枚目の甲虫はチビヒラタムシの仲間のように見えます。一度画像検索なさってみてください。」というコメントをいただきました。続いて、通りすがりさんから、「オオキバチビヒラタムシのメスとかその辺ですね。チビヒラタムシとかホソヒラタムシって、小さいし普通種でもよく分からないものしか見てない気がする…」というコメントをいただきました。コメントをどうも有難うございました。やはりキスイムシ科ではなかったのですか。チビヒラタムシというのは初めてかな。図鑑ではヒラタムシ科になっていたのですが、今はチビヒラタムシ科になっているみたいですね。図鑑によると、ヒラタムシ科とキスイムシ科は検索表では中胸後側板が中脚基節に達するかどうかで見分けられるみたいですが、写真では所詮無理ですね。採集しなかったので・・・

追記2018/09/01:「原色日本甲虫図鑑III」の図版を見ても写真が小さくて判断できません。何とかならないかなと思っていたら、六本脚で、平野幸彦氏の「日本産ヒラタムシ上科図説第1巻」を売っているのが分かりました。この中に、チビヒラタムシ科も載っています。ただ、64ページで3000円もするので、どうしようかと迷ってしまいました。でも、結局、思い切って買ってみました。それを使って調べてみたところ、やはり、通りすがりさんが言われるようにオオキバチビヒラタムシのメスの可能性が高そうです。詳細はこちら



前胸背板後縁前方に横溝があるので、カミナリハムシの仲間です。上翅の点刻が列状で、触角第3節が第2節の2倍ほどありそうなので、カミナリハムシ Altica cyaneaではないかと思います。





これは頭盾の形状からオオセンチコガネだと思われます。



これはキオビベニヒメシャク





これはたぶん、ホソバチビヒメハマキだと思います。



それに、カナブン



ホソスジキヒメシャク



アオアツバ



アシベニカギバ



これは以前見たことがあります。たぶん、マエモンハイキバガ



これはクシコメツキかなぁ。



そして、キベリトガリメイガ



最後はオオミズアオでした。

雑談1)今日はハリブトシリアゲアリだろうと思っている♀有翅アリで翅が脱落した個体の顕微鏡写真を撮りました。翅がついている個体も採集したのですが、翅が邪魔で細部の写真がなかなか撮れないので、ない方を先に撮りました。たぶん、ハリブトシリアゲアリで間違いないと思うのですが、どうでしょうね。

雑談2)ベランダに置いてあった月桂樹の葉に白いカイガラムシが付いていると言って、家族がその葉を持ってきました。調べてみると、カメノコロウムシCeroplastes japonicusのようです。顕微鏡写真を撮ってみました。



こんな奇妙な姿です。白く見えているのは突起も含めてすべてロウ状物質です。こんな風にロウで覆われているので、なかなか薬剤が効かないということのようです。ついでに文献も調べてみました。カイガラムシというとさすがに多くの文献が見つかります。それによると、♀成虫は亀の甲のような形をしていますが、これは♂の2齢程度の幼虫の様です。ほとんど動かないのですが、顕微鏡を見ていたら、動き回っている個体もありました。それにしても気持ち悪いですね。

廊下のむし探検 羽アリ、カゲロウなど

廊下のむし探検 第1025弾

3日前の16日にマンションの廊下を歩いてみました。最近、公園に行ったり、道路わきの茂みに行ったりしているのですが、虫はどこでも少ないですね。マンションでは蛾が多いのですが、まだ、整理がついていないので次回に回します。



この日も羽アリがちょこちょこといました。これは昨日、検索をしてみてイトウオオアリの♀有翅アリではないかと思っているアリです。



こちらの♀有翅アリは今日、調べてみました。たぶん、ハリブトシリアゲアリではないかという結論になりました。



これは翅を落とした♀アリですが、やはりハリブトシリアゲアリではないかと思っています。まだ、顕微鏡写真を撮っていないのですが、今度、まとめて出すことにします。







♂アリもいろいろいたのですが、今回はパスです。2番目のアリは変わっているので、採集しても良かったかなと後から思いました。





小さいので目立たないのですが、アカマダラカゲロウはあちこちにいました。



これはマダラヒメグモではないかと思っています。





最後はヨコバイ科ではないかと思っているのですが、何だか分かりません。まだ、甲虫と蛾が残っているのですが、次回に回します。

虫を調べる ♀有翅イトウオオアリ?

この間から、有翅アリの検索で四苦八苦しています。なかなかうまくいかないのですが、近畿産ヤマアリ亜科の属の検索表を一部を修正してみたので、一度、試してみようと思って、8月16日にマンションの廊下で採集した♀有翅アリで検索を試みることにしました。まだ、試行錯誤の最中で、検索表も非常に怪しいのでそのつもりで見ていただけると幸いです。



調べたのはこのアリです。私は見ただけでは亜科もよく分からなくて、♀有翅アリとしか言いようがないのですが、マンションの廊下にはあまりにたくさんやってくるので、少しぐらいは名前を知りたいと思ってもがいています。



これは属の検索表です。検索表は「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表をベースにして、翅が生えることで大きく変形する前胸、中胸、前伸腹節の形状に関する部分、カーストにより異なる頭部の形状などを除いて、さらに近畿産に限って作ってみました。赤字は修正したところです。⑧bのところがどうしてもうまくいかないので、「ケアリ属のようではない」というようないい加減な表現になっています。


こちらは近畿産のオオアリ属の種の検索表です。先ほどの有翅アリは結局のところオオアリ属になったので、検索表を先に載せておきます。こちらは意外に使えるのではと思っています。ただ、立毛の数がどこまで使えるのかは疑問ですが・・・。この検索表の修正のポイントは以前書きましたので、そちらを見てください。

これらの検索表を用いて検索をしてみた結果、この個体はイトウオオアリになりました。本当かどうか分かりませんが、一応、記録のために残しておきます。



まずは亜科の検索です。亜科の検索表は有翅アリでも働きアリのものがほとんどそのまま使えます。これをいつものように写真で確認していきたいと思います。



体長は折れ線で近似して全体で8.7mmになりました。雰囲気的には♀有翅アリとしては中型という感じです。この写真では腹柄節(黒矢印)が1節で、腹部第1,2節の間がくびれていないことを見ます。



次は頭部です。頭盾に異常がないことを見ます。



次は腹柄節です。側方から見ると丘部は狭いことが分かります。



腹部末端の写真です。丸く開口というわけではないのですが、たぶん、ヤマアリ亜科は大丈夫だと思いました。ということで、とりあえず、ヤマアリ亜科に到達しました。



次は属の検索です。青字は写真を撮り忘れたものです。これも写真で見ていきます。



外観上特に変わったところが見られないので、①と⑤はOKだと思われます。大きさは働きアリとはかなり違うので何とも言えないのですが、いままで見てきた♀有翅アリの中では中型かなと思いました。



大腮が三角形状というのはOKでしょう。



この辺から若干問題になるところが始まります。まずは前伸腹節気門の形状です。これを楕円形とするか、円形とするか迷いますが、どちらを選んでも到達する属は一緒になります。ここでは円形という方を選びました。右端にあるのは中胸気門です。



前伸腹節気門が円形の方を選ぶと、小型のアメイロアリ類か、ケアリ属か、オオアリ属かという選択になるのですが、アメイロアリ類は小型だからと予め除外しました(実はあまりよく分からないのですけど・・・)。ケアリ属とオオアリ属のケブカ〇〇という種との区別をどうつけたらよいのかよく分からないのですが、この写真のように立毛が白矢印で示したものだけだと、おそらくケアリ属とは異なります。それで、オオアリ属にしました。



次は近畿産オオアリ属の種の検索表(上掲)でイトウオオアリに至る部分を抜き出したものです。これも順番に見ていきます。



⑧はヒラズオオアリを除去する項目で、また、⑨は色に関するものなので共にOKでしょう。⑪の小型種というのはミカドオオアリ、クロオオアリを除外する項目でこれもOKだと思われます。⑬も腹部に斑紋がないので大丈夫でしょう。



⑩の胸部背面の立毛の数は先ほども見ました。これもOKです。



次は頭盾前縁で白矢印で示した部分です。ほぼ直線状に見えます。それでこれもOKだと思われます。頭盾前縁の下に湾曲したものが見えるのですが、これは上唇ではないかと思いました。



最後は腹柄節の形ですが、逆U字型のウメマツオオアリなどと比べると薄いことは確かです。実際のところ、種を確定するにはこの腹柄節の形状がものを言いそうなのですが、腹柄節の形状をはっきりと描いた資料が見つからなくて困っています。ここでは「日本産アリ類図鑑」の検索表に載っている挿絵と似ているのでそうかなと思っています。ということで、まだかなり怪しい段階なのですが、こんなことを何度か繰り返しているうちに、少しずつは分かっていくかなと思っています。



最後は前翅翅脈です。例によって翅脈の名称は次の論文に載っているものを用いました。

K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)

この論文では、翅脈のパターンからいくつかのタイプに分けているのですが、この場合はIIIdタイプになります。ポイントは1番に翅室があること、2番で脈がほぼ1点で交わっていることです。IIIdタイプはヤマアリ亜科などでよく見られる翅脈です。

家の近くのむし探検 アブラムシ、甲虫など

家の近くのむし探検 第420弾

14日にいつもの道路脇の茂みで探した虫の続きです。





この日は「シンテッポウユリ」の蕾についているワタアブラムシらしきアブラムシを撮りに行ったのですが、いざ撮ろうとすると、余りにたくさんいるので何を写してよいのやら。とりあえず、有翅型を撮りました。



で、これは無翅型の成虫。2本の黒い角が出ているのが角状管、その間にある突起が尾片です。ワタアブラムシだと、尾片の長さが触角第4節の長さに等しく、5本程度の毛があることになっています。この写真でもよく見ると2-3本の毛が生えていることが分かりますが、やはり顕微鏡下で見ないとはっきりしません。



最後は有翅型の幼虫で、翅包がはっきり見えているので4齢みたいです。以前はアブラムシは私にとって気持ち悪い虫の一つでしたが、こうして分かってくると、ちょっとだけ親しみが湧くようになりました。



こちらはアキノノゲシについていたタイワンヒゲナガアブラムシです。ついているアブラムシが茎に対して70-80度の角度で並んでついているので遠くから見ると、植物の突起列のように見えます。



これらは無翅型の成虫でしょうね。



それで、これは有翅型。



無翅型成虫のお尻にくっついている幼虫です。アブラムシは胎生なので、たぶん、生まれたばかりなのでしょう。



後はアブラムシ以外の虫です。これはナミガタチビタマムシ



タケカレハ幼虫。



ミカドトックリバチ



これは、アミダテントウ



それにウリハムシでした。



帰りに何の気なしに撮ったこの花。名前が分かりません。以前も別の場所で撮ったことがあったのですが、それも不明種となっていました。さて、何でしょうね。

家の近くのむし探検 クモとカメムシ

家の近くのむし探検 第419弾

14日昼、いつもの道路わきの茂みで虫探しをしました。本当は「シンテッポウユリ」についているアブラムシの撮影に行ったのですが、そちらはまだ整理がついていないので、残りのクモとカメムシの写真を出します。



この日の目玉はこのカトウツケオグモでした。触肢の先端が広がっていないので♀の様です。何となく大きな気がしたので体長を測ってみました。体長は7.4mm。「日本のクモ」に載っている体長は♀8.5-12mmだったのでこれでもちょっと小さめだったのですね。昨年9月初めに同じ場所で見たことがありました。





これはワキブロサツマノミダマシみたいです。共に♂かな。



この手のアリグモ類♀はいつも迷ってしまいます。アリグモか、ヤサアリグモかのどちらかです。「ハエトリグモハンドブック」の検索表では、胸部が強く盛り上がるか、盛り上がらないかで見分けるのですが、真上から撮るとよく分かりません。これは、体型からアリグモかなぁ。



これも、ホシハラビロヘリカメムシか、ハラビロヘリカメムシか、迷うカメムシです。「日本原色カメムシ図鑑第3巻」に載っている検索表では、触角第1節が長く、複眼を含む頭幅より長ければホシハラビロ、短ければハラビロになります。さらに、ホシハラビロは第2,3節が円筒形、ハラビロは扁平な三角形状です。そういう点から写真を眺めてみると、ホシハラビロヘリカメムシの可能性大です。



最後は、川の土手にある風よけに止まっていたヒゲナガカメムシでした。でも、全体に虫は少なかったです。

家の近くのむし探検 アブラムシほか

家の近くのむし探検 第418弾

4日前の11日に、いつも行っている道路脇の茂みに虫探しに出かけました。



行く途中でシンテッポウユリだろうと思っているユリが密生している場所があります。密生しているところにはあまりいないのですが、街路樹の脇に生えているユリにはアブラムシがいっぱいついていました。ここは昨年、ハチに寄生されたマミーを観察していたところです(詳細はこちらこちら)。今年はどうかなと思って覗いてみました。

ユリのつぼみはこんな感じです。図鑑を見て、ワタアブラムシではないかと思っているのですが、まだ、確認していないので、今年こそ調べてみたいなと思っています。それで、とりあえず、ワタアブラムシの文献を集めてみました。ワタアブラムシは害虫なので、文献はたくさんありました。その中でも、宇都宮大の稲泉三丸氏の論文はアブラムシの形態や生態を詳しく調べていて、大変、参考になりそうです。

「日本原色アブラムシ図鑑」や「アブラムシ入門図鑑」によると、一次寄生はムクゲ類、ミカン類、ワタなどで、移住寄生をして、ウリ、ナス、ユリなどさまざまな草本に寄生するそうです。体色もさまざまで、夏の高温期には小型の黄色の個体も見られるとのことです。この写真には黒い大きな個体や有翅型、灰色の個体、小型の黄色の個体などが含まれています。



この写真にもいろいろな色の個体がいますが、黒い大きな個体はとりあえず無翅成虫で、灰色の粉を吹いたような個体が有翅型の幼虫です。



これは無翅成虫です。



そして、これは有翅型の幼虫です。ワタアブラムシの幼虫の齢については次の論文に載っていました。

稲泉三丸、高橋滋、「ワタアブラムシの幼虫齢期の判別」、Jpn. J. Ent. 57, 231 (1989). (ここからダウンロードできます)

この論文によると、左の個体のように将来翅になる翅包が大きくて目立つのは有翅型の4齢幼虫です。それに対して、右の個体は翅包がまったく見えないので、たぶん、2齢幼虫ではないかと思われます。無翅型については、触角の節数や刺毛の数を数えなければならないので採集必須です。今度捕まえてきて調べてみます。



♀のアリグモ類です。ハチの仲間を捕まえています。「ハエトリグモハンドブック」の検索表で調べてみると、ヤサアリグモではないかと思われます。



これは小さなハチですが、何でしょうね。(追記2018/08/27:検索の結果、トビコバチ科になりました。それにしても奇妙なハチです



チャバネヒメクロバエです。このハエはたくさんいます。また、以前調べたことがあります。



これは採集して調べてみました。たぶん、トウキョウキンバエ



それにタケトゲハムシ



ナミガタチビタマムシ



「日本産幼虫図鑑」を見ると、イタドリの葉を食べているのはハグロハバチの幼虫みたいです。



これはワキグロサツマノミダマシ





最後はネコハエトリでした。何かを捕まえているようですが・・・。

朝の散歩3

4日前の10日の朝、散歩に行ったときにちょっとだけ写真を撮りました。普段は歩くことを中心にしているのですが、最初に写真を撮るとついついその勢いで撮ってしまいます。





歩き始めてすぐ、道路わきの法面にあまりにユリがいっぱい咲いていたので、ついつい写してしまいました。これについては、先日、帰化植物として広がったタカサゴユリとテッポウユリの自然交配種か、両者を人為的に交配して作った栽培種シンテッポウユリをワイルドフラワー緑化工法で植えられたものが広がったという説があることを紹介しました。この写真の近くではタカサゴユリは見られず、この白いユリだけが異常に多いので、私は後者の可能性が高いかなと思っていました。でも、緑化の一環でシンテッポウユリを植えたという記録はネットでは見つかりませんでした。ということで、今のところはっきりしていません。

ところで、タカサゴユリについて次のような論文を読んでみました。

稲垣栄洋、「タカサゴユリ (Lilium formosanum Wallace) の自殖性について」、雑草研究47, 147 (2002). (ここからダウンロードできます)

この論文は一つの花の中の花粉の数と種(胚珠)の数との比を使って、自家受粉が行われているかどうかを推定し、また、花を袋で覆って、他家受粉を防いで自家受粉だけさせてその出芽率を調べたりというようないろいろな実験をした結果を報告したものです。まず、花粉と胚珠の数の比はP/O比といって、自家受粉をどの程度行っているかという目安になります。自家受粉ではそれほど花粉を多く作る必要がないのでP/O比は小さく、他家受粉では逆に花粉を多く作らないといけないので比は多くなります。それを調べた研究がありました。

R. W. Cruden, "Pollen-Ovule Ratios: A Conservative Indicator of Breeding Systems in Flowering Plants", Evol. 31, 32 (1977).(ここからダウンロードできます)

多くの植物でこの比を求めて平均をとると、次のように分類できたそうです。



稲垣氏はLilium属に属するササユリ、テッポウユリ、シンテッポウユリ、タカサゴユリについて調べたところ、それぞれ、886、725、305、186になったと報告しています。ササユリは自家受粉では種になる率が低下し、テッポウユリでは自家不和合性(自家受粉できない性質)を持っているので、共に、他家受粉が主流になっています。上の表に当てはめると、共に部分他殖性となりました。これに対して、タカサゴユリは部分自殖性になり、自家受粉がかなり盛んに行われていることを示唆しています。一方、シンテッポウユリはテッポウユリとタカサゴユリの中間の性質を示したことになります。

タカサゴユリでは自家受粉でも矮小化することなく、他家受粉よりはむしろ茎数が多かったそうです。これに対して、発芽率は自家受粉の方がやや小さく、その代り、冬の低温を経験しないと発芽しない休眠性を示す種が多かったそうです。このように自家受粉の割合の多いことがタカサゴユリが帰化植物として広まった大きな原因になっていると推測されます。この研究の結果からだと、シンテッポウユリよりタカサゴユリの方がはるかに繁殖は盛んに行われるような気がしますが、上の写真のように白いユリばかり見られるのは、やはり、シンテッポウユリを人為的に広めたからということなのかもしれません。



散歩で歩いていると、道路にこんな足跡がいっぱいついていました。これはシカの足跡なのかな。それにしても数が多い~。



最後は道で死んでいたタマムシです。

虫を調べる クリイロヒゲハナノミ♂

先日からハナノミを一匹捕まえて調べています。これまで、ハナノミにはまったく手が出せなかったのですが、勉強のつもりで調べてみました。



今回調べたのはこんなハナノミで、7月16日にマンションの廊下で採集したものです。これまでこんなハナノミがいると、いつもクリイロヒゲハナノミとしていたですが、本当にそうなのか調べてみたくなりました。検索には次の論文に載っている検索表を用いました。

高桑正敏、「日本産ハナノミ科ハナノミ族概説 l 」、甲虫ニュース No. 123, 1 (1998).(ここからダウンロードできます)

この概説シリーズは全部で10まで出ていて、これらを使うとハナノミを調べることができるかもと思って期待しています。今回は概説1に載っている族と属の検索を試してみました。



検索の結果、予想通りクリイロヒゲハナノミになったのですが、この種はハナノミ族ヒゲハナノミ属に入っています。かなり特殊なハナノミなのか、属の検索では最初の項目で決まってしまいました。これをいつものように、写真で確かめていきたいと思います。



これは横から撮ったものです。こんな形のままで頭頂から尾節板の先端まで測った体長は10.3mmになりました。頭を伸ばして測ると、もう少し大きくなるかもしれません。この写真では①について確かめることができます。後脛節に1段刻があり、跗節にはないことを確かめることになります。段刻はこれまでハナムグリで何度も出てきました。でも、この写真で見る限り、脛節にも、跗節にも段刻はありません。



後脛節を拡大してみました。強いて言えば、黒矢印の部分に段がありますが、これを段刻と呼ぶべきかどうかは分かりません。「新訂原色昆虫大図鑑Ⅱ」のクリイロヒゲハナノミの説明を読むと、「後脛節には段刻も刻線もない」と書かれているので、たぶん、ないというので良いのでしょう。これに対抗するヒメハナノミ族では、脛節にも跗節には1~数本の段刻があるというので、おそらくこれはハナノミ族でよいのでしょう。



次は頭部を横から写したものです。②に書かれている、「眼が大きく、下側に張り出し」というのは黄矢印で示した部分が下に張り出しているので、まさにその通りだと思いました。



これは実は後で示すように♂の個体なので、②は♂の項目だけを書きました。額の幅と複眼の大きさ比較ですが、最初は上から見た幅で測ってみました。その結果、複眼の幅と額の幅はほとんど等しくなり、「明らかに幅広い」にはなりません。それで、今度は外縁に沿って測りました。すると、複眼の方がはるかに広くなります。果たしてこんな測り方でよいのかちょっと疑問です。また、検索表には♀では複眼と額はほぼ同幅と書かれているので、ひょっとして♀かもと思ったのですが、次の小顎髭の項目からは♂であることが分かりました。



数字のつけてある部分が小顎鬚です。見えている部分が3節なので、1から3までの番号をつけたのですが、ひょっとしたら基部にもう1節あるかもしれません。いずれにしても黄矢印でしめした部分に鬚の様な構造が見られます。これが♂に特有な付属物だと思われます。また、末端節は確かにこん棒状です。



これは別の角度からもう一方の小顎髭を撮ったものです。やはり黒矢印で示したような突起が出ています。もう少しはっきり撮れないかなと思って小顎髭の先端をピンセットで引っ張ったらこの部分が取れてしまいました。でも、それがよかったです。付属物がはっきり見えるようになりました。



取れたものはこんな形でした。矢印で示した3つの付属物がありました。この附属物については次の論文に絵が載っていました。

H. Kono, "Die Mordelliden Japans (Col.)", Trans. Sapporo Natural History Soc. 10, 29 (1928).(ここからダウンロードできます)

確かによく似ています。



これは裏側から写したものです。附属物は第2節から出ているようです。



何だか奇妙なものなので、生物顕微鏡でも拡大してみました。うーむ、奇妙なものですね。でも、この附属物があるので、ヒゲハナノミ属の♂であることが分かりました。この属には日本産はクリイロヒゲハナノミ Higehananomia palpalis一種だけなので、これで決まりです。

属の説明にはさらに特徴が載っていました。

③前胸側縁は短く、その前縁付近は顕著に厚みをもち、尾節板は三角形状、交尾器中葉も本科にあってはかなり太短い

これも見ていきます。



前胸側縁の前縁付近は黄矢印で示したようにかなり厚くなっています。



さらに、尾節板は三角形状でした。ということでクリイロヒゲハナノミで間違いないのではと思っています。

ついでに写した写真も載せておきます。



これは頭部を正面から写したものです。何だか火星人みたいですね。



触角は11節でした。第1節のあたりがはっきりとは分からないのですけど・・・。



前胸背板を背側から写した写真です。



腹部を横から写したものです。



それから、腹側から写した全体像です。



最後は腹部末端を腹側から写したものです。

これで終わりかなと思ったのですが、ちょっと困ったことがありました。というのは、この種の学名についてです。先の高桑氏の論文(1998)にはHigehananomia palpalisとなっていましたが、2007年に出された「新訂原色昆虫大図鑑」ではクリイロヒゲハナノミ Macrotomoxia castaneaとなっていました。「原色日本甲虫図鑑Ⅲ」では前者、という具合にまちまちです。これについては次の論文に触れてありました。

J. Horak, "Review of the "Calycina group of genera" (Coleoptera: Mordellidae: Mordellini)", Klapalekiana 35, 107 (1999).(ここで読むことができます)

要点は以下のようです。この種は次の論文でHigehananomia palpalisとして新属新種記載されました。

H. Kono, "Die Mordelliden Japans fuenfter Nachtrag", Trans. Sapporo Natural History Soc. 14, 123 (1935).(ここからダウンロードできます)

もっとも、上で紹介したKono(1928)の論文ではMacrotomoxia castaneaとなっていましたが・・・。Horakはこの2種は同種で、Higehananomia palpalisはMacrotomoxia castaneaのシノニムであると主張しました。また、1922年にMacrotomoxiaを記載したPicの記述が曖昧だったことと、35年に記載したKonoの論文ではMacrotomoxia castaneaのタイプ標本を検しなかったことが原因だろうと書いています。ただ、いつも思うのですが、同じ種だと主張するときにその根拠が書かれていません。ここが同じだから同じだという主張が是非とも必要だと思うのですが・・・。いずれにしても現在ではMacrotomoxia castaneaという学名が認められているようです。いつも参考にさせていただいている「日本列島の甲虫全種目録」でもこの名が採用されていました。

追記2018/08/13:Picの論文を見つけました。

M. Pic, "Diagnoses d’Hétéromères (Col.) de l’Indo Chine", Bull. Soc. Entomol. Fr. 15, 208 (1922). (ここで読むことができます)

これはMacrotomoxia castaneaの新属新種記載をした論文です。フランス語なので、内容は理解できませんが、属の記載は5行、種の記載はたった4行しかありません。もちろん、図もなしです)(追記2018/08/14:Kono(1928)の論文では、Macrotomoxia castaneaは和名がオナシハナノミ、分布はインドシナ、台湾、パプアニューギニア、インドネシアとなっていました。Higehananomia palpalisについては1935年に台湾の個体で新属新種記載され、和名はクリイロヒゲハナノミとし、Macrotomoxia castaneaはHigehananomia palpalisのシノニムとされていました。また、Picの命名についてはnec Picと書かれ、誤った命名とされています。本文がドイツ語なのでよく分かりませんが、またしても、根拠ははっきりかかれていなくて、何となく、Picの記載が不十分だったので改めて記載したというニュアンスが感じられます。でも、もう何が何だか分からなくなったので、この辺で止めておきます)(追記2018/08/14:ラテン語の"nec"は英語のnotまたはnorの意味だそうです。"nec Pic"のもともとの意味はPicの命名したものとは異なるということだと思うのですが、後でシノニムにしているので、ここではPicの命名が正当ではないとか、不適切だとかいう意味ではないかと思います。InvertebrateIreland Onlineを参考にしました

家の近くのむし探検 久しぶりの公園

家の近くのむし探検 第417弾

7月初めからずっと暑い日が続き、「命を守る行動」をしてくださいとテレビでしきりに繰り返すので、しばらくの間、屋外での虫探しを控えていました。やっと普段の夏くらいの暑さになったので、8日、久しぶりに家の近くの公園に行ってきました。虫はあまりいなかったのですが、とりあえず出しておきます。





まず、公園に行く前にマンションの倉庫の壁にとまっていたヤママユです。私にとってはもっとも苦手の蛾の一つです。以前は夏になるとしょっちゅういて、そのたびごとにびくびくしていたのですが、今年はこれが初めてでした。最近はずいぶん、少なくなった感じがします。



その隣に止まっていたモンクロシャチホコです。



これは公園に行く途中で見たオオゴキブリです。ごついですね。



公園に着いたらイトカメムシが2匹いました。一匹は虫の体液を吸っています。



拡大してみたのですが、キジラミあたりかなぁ。



これは以前も見たことがあります。コブハムシの仲間の幼虫ですね。この公園ではツツジコブハムシをよく見たので、その幼虫かもしれません。(追記2018/08/12:この幼虫については以前、文献を調べたことがありました。そのことをすっかり忘れていました。詳細はこちら



これはギンバネヒメシャク



そして、オンブバッタ



また、ヒメシャクです。この間、まとめたのですが、やはりよく分かりませんね。外横線がはっきりしているので、ウスキヒメシャクあたりかなとも思ったのですが、よくは分かりません。



それからイボバッタです。



じっとしていたので、顔をちょっとアップ。



ショウリョウバッタ♂。



シバツトガ



コケガ亜科ですが、よく分かりません。







たぶん、ネコハエトリでしょうね。可愛いのでいろいろな方向から撮ってしまいました。



最後は帰りにマンションで見つけたキイロアツバでした。

雑談1)先日のシカ騒動の続きです。昨日、畑の持ち主に出会ったので、この間の角のひっかかったシカの写真をお渡ししたら、いろいろ話をしてくださいました。夜の11時頃にボキっと支柱の折れる音を聞いたという近所の人の話から、その頃から畑を取り巻く網に角をひっかかってもがいていたようです。朝、見たときには畑でうずくまっていたのですが、その後、網がついたまま脱出を試みて外に飛び出し用水路にはまったようです。用水路の水はそれほど深くなかったのですが、もがいているうちに滑って転び、それでおぼれてしまったみたいです。役所に連絡すると、役所の方と火葬場の方がやってこられたそうです。水にはまったシカを引き上げ、持って来られた黒白の幕で包んで、そのまま火葬場に向かったとのことでした。多い時にはこの近所で、1か月に4頭のシカがひっかかったことがあるそうです。

雑談2)一昨日と昨日、クリイロヒゲハナノミの顕微鏡写真を撮りました。ヒゲハナノミ属 Higehananomiaの特徴である小顎髭の附属物を写真にうまく撮ろうと思って、小顎鬚の先端をピンセットで引っ張っていたら、鬚が取れてしまいました。それで、うまいぐあいに鬚だけの写真を撮ることができました。

昨日は道沿いの茂みで虫探しをしました。虫はほとんどいなかったのですが、キンバエがいたので、採集してきて調べてみました。そうしたら、以前調べたことのあるトウキョウキンバエでした。猛暑がやってくる前には普通にいたので、見たらすぐに分かったのですが、しばらく撮影に行かなかったらすっかり外観を忘れてしまっていました。

オオアリ属、ヤマアリ属あたりの♀有翅アリはだいぶ整理ができてきたので、近畿産については種がだいたい分かるのではと期待しています。今度、いくつか試してみます。問題はケアリ属ですね・・・。

朝の散歩2

この頃、毎朝、運動不足解消のために家の近くを歩いています。カメラは持っていくのですが、運動が目的なので、極力写真は撮らないようにしています。



でも、すぐ目の前の木でミンミンゼミが鳴いていたので、思わず写真を撮りました。こうなると、ついでだからとついつい写真を撮ってしまいます。



白いユリが斜面にいっぱい咲いています。この間も書いたのですが、この花はタカサゴユリか、シンテッポウユリかといろいろ話題になっている花です。



葉が線形で、開花時期が8月頃であるところはタカサゴユリに似ています。



でも、花の外側が紫褐色を帯びず、真っ白なところはタカサゴユリとは異なっています。これもこの間も書いたのですが、タカサゴユリとテッポウユリの自然交配種という説と、両者を掛け合わせ、テッポウユリとの間で何度も戻し交配させて作った栽培種(シンテッポウユリ)がワイルドフラワー工法で高速道路法面や河川敷に植えられて広がったという説がありました。たくさん咲いているユリをざっと見てみたのですが、いわゆるタカサゴユリはなくて、すべてこの白いユリでした。そのことから、たぶん、シンテッポウユリ説の方が可能性あるかなと思っています。



畑に水が張られているのですが、ここにサギやカモが来ていました。





これはダイサギカルガモかな。のどかな風景です。(追記2018/08/11:嘴の根元が青かったので、ダイサギかなと思ったのですが、よく見ると冠羽みたいなものがあります。今朝、散歩に出たときにもう一度写真を撮ってみたら、黄色い脚が写っていました。全部で4羽いたのですが、どれも小型のサギばかりだったので、たぶん、この写真の個体もコサギでしょう



こちらはキジバト。意外に近くで撮れました。



歩いていたら、ウラギンシジミが飛んできて、すぐ前の葉裏に止まりました。この日は約40分間の散歩でした。

雑談)今日は7月16日に採集したハナノミの検索をしてみました。検索表は高桑氏の甲虫ニュースの記事に載っていました(ここからpdfがダウンロードできます)。クリイロヒゲハナノミ Higehananomia palpalisかなと思っていたのですが、決め手は♂小顎髭に附属物があることです。これが何のことか分かりません。それで、文献を探して、昔の論文に絵が載っているのを見つけました。

H. Kono, "Die Mordelliden Japans (Col.)", Trans. Sapporo Natural History Soc. 10, 29 (1928). (ここからpdfが直接ダウンロードできます)

これでやっと分かりました。そう思って調べてみると、まさにその付属物が見えました。これで、たぶん、クリイロヒゲハナノミ♂で確かそうです。ハナノミも調べれば、案外、調べられるかもしれません。顕微鏡写真を撮ったので、今度、まとめて出すことにします。

廊下のむし探検 蛾

廊下のむし探検 第1024弾

8月5日にマンションの廊下で見た虫の続きで、蛾ばかりです。



まずはゴマケンモン。これまで5-6月と8月に何度か見ていました。



これはウスベニトガリメイガ。いつもは天井に止まっているのですが、この日は床の上だったので拡大して撮れました。



これはこの間から何度か見ているプライヤハマキ



それから苦手なヒメシャク。これはマエキヒメシャクだろうと思います。



で、これは何だろう。Idaea属みたいなのですが、斑紋がはっきりしません。それで、いつも迷うウスモンキ、オオウスモンキ、ウスキ、オイワケ、サクライキの5種の翅の特徴を部位別にまとめてみました。



①は日本産蛾類標準図鑑に載っていた記述から、②は日本産蛾類大図鑑に載っていた記述を載せています。こうやってまとめてみるとちょっと分かった気がします。



ついでに各部の名称を書き入れてみました。外横線が各脈上で濃色になるオイワケとサクライキはとりあえず違いそうです。また、外横線が直線状のオオウスモンキも違いそうです。後翅外横線が内入し、外縁に黒点列のないウスモンキも違いそうです。だとすると、ウスキなのですが、ウスキは外横線が明瞭なので、それとも違うようです。でも、その他の特徴は合っているようなので、ひょっとして外横線の薄い個体があるのかなと思ったのですが、どうだか分かりません。



これはミドリリンガです。独特の深い緑色をしていますね。以前、アオシャクの緑色について調べたことがあったのですが、それとは違うような気がします。誰か調べているかなぁ。



こちらはボクトウガ



これはコヨツメアオシャク



それにシロオビノメイガ



今日の目玉はこれかな。初めゴマフリドクガかなと思って撮ったのですが、黒い点の範囲が限定されているし、触角の軸が黒いのも気になります。それで、図鑑を調べてみて、クロモンドクガ♀ではないかと思いました。だとすれば、初めて見ることになります。





最後はオオミズアオです。こういう大型蛾は以前はよく見たのですが、最近は本当に少なくなりました。一昨年1匹、昨年は0、今年はこれが初めてです。それ以前は年に3-4度見ていたのですが・・・。

虫を調べる ヒラズオオアリ♀有翅アリ(続き)

昨日の続きで、ヒラズオオアリの♀有翅アリの検索です。実は、昨日のところまではうまくいったのですが、その先はさっぱりうまくいきませんでした。



ヒラズオオアリの♀有翅アリというのはこんなアリです。体長は6.4mm。中型の大きさです。


昨日は「日本産アリ類図鑑」に載っているヤアマリ亜科の属への検索表を、近畿地方に生息する属だけに限り、また、有翅アリでは中胸が発達するので、前・中胸、前伸腹節の形態に関する項目を除いて作った検索表を試してみました。赤字はその変更部分です。ヒラズオオアリの場合、この検索表を用いて、①b→②b→③a→④b→⑥bと進みました。実は、④で前伸腹節気門の形はこれまで見てきた有翅アリが斜めになったスリット状だったので、円形だったのは今回が初めてでした。それで、それから先がどうもうまくいきません。



やはり赤字で書いた部分は変更部分です。とりあえず、最初に注目したのは、⑦にある後胸側腺の開口部です。日本産アリ類画像データベース」に載っている♂アリ用の検索表では、オオアリ属とケアリ属を分ける形質に使われていたので、これは使えるかもと思って書いてみました。確かに、オオアリ属に後胸側腺の開口部がないことは、「日本産アリ類図鑑」のオオアリ属の項にも載っています。



これは前伸腹節の部分を拡大した写真ですが、黄矢印で示した部分に通常、穴が開いていていますが、この個体にはありません。後胸側腺はアリに特有の分泌器官で殺菌性のある液体を分泌するとされています。それを少し調べてみようと思って、以前、ダウンロードした論文を読んでみました。

S. H. Yek and U. G. Mueller, "The metapleural gland of ants", Biol. Rev. 86, 774 (2011). (ここからpdfが直接ダウンロードできます。また、supporting materalはここから直接ダウンロードできます)

これは後胸側腺について書かれた最近の総説で、この中のsupporting material(付録のようなもの)に後胸側腺の有無が種別に出ていました。種数としてはわずかなのですが、オオアリ属は働きアリ、女王アリ共にほとんど後胸側腺がないことが分かります。一方、ケアリ属の働きアリと女王アリも意外にないものが多いことが分かりました。アメイロアリ属、サクラアリ属については分かりません。それで、とりあえず⑦aの項目はどうも使えないようです。

そうなると、もうどうしてよいのかよく分かりません。アメイロアリ属とサクラアリ属は小型なので、大きさから見分けられるかもしれませんが、ケアリ属は中型なので、大きさからでは区別が付きません。「日本産アリ類図鑑」の検索表には、ケアリ属は一般に前・中胸背板に軟毛や剛毛が乱立するという項目が書かれています。♀有翅アリは中胸背板が発達するので、とりあえず、ここを中胸背板にして、その違いで区別ができないかと思いました。ただ、オオアリ属にもケブカ〇〇という毛の多い種がいるので、一概には区別できません。



とりあえず、この個体の中胸背板には黄矢印で示したところに毛が生えているだけで、他は殆ど生えていません。それで、ケアリ属ではないだろうと思われ、また、大きさが中型なので、アメイロアリ属やサクラアリ属でもないだろうと思って先へ進むことにしました。



次のオオアリ属の種への検索表はやけに簡単です。この一行でヒラズオオアリになることが分かります。



これは頭部を横から撮ったものですが、黒矢印で示すように前方が切断されたような形になっています。ということで、こんな行先が分かった種でも、なかなかうまく行きませんでした。

B. E. Boudinot, "The male genitalia of ants: musculature, homology, and functional morphology (Hymenoptera, Aculeata, Formicidae)", J. Hymenoptera Res. 30, 29 (2013). (ここからダウンロードできます)

以前、紹介したBoudinotの♂アリの論文には、全世界で12800種いるアリ科のうち、♂アリが記述されたのは約27%の種しかなく、1/4の属では♂アリが分かっていないそうです。♀有翅アリについては属の検索表も見つからないので、たぶん、それ以下の状況ではないかと思います。なかなか難しいですね。まぁ、焦らないでぼちぼちやっていくことにしましょう。

ついでに検索に使わなかった写真を載せておきます。



これは頭部をやや上から撮ったものです。頭部前方が切れ落ちているというところが絶壁のように見えます。



これは顔の拡大です。頭盾の形をはっきりさせようと思って撮ったのですが、検索には使いませんでした。



それから、翅です。翅脈の名称は次の論文を参考にしました。

K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)

ついでにこの論文に載っているやり方で翅脈の型を決めてみました。IVeという型になります。決め手は矢印で示すところで翅脈がほぼ1点で交わっていることと、R1とRs+Mで囲まれた翅室がほぼ長方形になっていることです。この型はヤマアリ亜科には多いのですが、ほかの亜科で同じ型のものもいるので、亜科も決められません。



最後は腹柄節を撮ったものです。

今回は近畿地方に生息する種に限った♀有翅アリの検索表を何とか作ろうと思って、名前の分かった種で検索を試みてみました。でも、属の検索のところでつまづいてしまいました。なかなか難しいですね。アメイロアリ属、サクラアリ属、ケアリ属の♀有翅アリがいるといいのですが、どれがそれだかさえ分からないし・・・。

虫を調べる ヒラズオオアリ♀有翅アリ

この間から、有翅アリを調べているのですが、♀有翅アリについては検索表がなくて、四苦八苦しています。手元にある検索表は働きアリ用で、同じ♀アリではあるのですが、♀有翅アリでは翅が生えている分、中胸の発達が著しくて、それに伴って前胸や前伸腹節も大きく変形しているため、これらの形態について触れている検索項目は使えないことになります。

それで、先日、近畿地方に生息するアリに限って、それらの記述を除いたオオアリ属の種の検索表を作ってみました。一度、使ってみたいなと思ったのですが、種があらかじめ分かっていないといけないので、困っていました。そんな時、ヒラズオオアリの♀有翅アリを捕まえました。このアリもオオアリ属なので試してみることができます。でも、種の検索では頭部の形だけで一発で分かるので、あまり検索表を使わなかったのですけど・・・。ただ、その前の属の検索でだいぶ苦労しました。まだ、その辺りがはっきりしていないのですが、一応、今までやってきたことをまとめてみたいと思います。



調べたのはこのアリです。上から見ると、頭部が四角形に見えるので、ヤマアリ亜科オオアリ属のヒラズオオアリであることは確かです。ただ、検索表が働きアリ用なので、最初から調べていく必要があります。それで、まず、亜科の検索から見ていきます。



これは「日本産アリ類図鑑」に載っていた亜科の検索表のうち、必要なところだけを抜粋したものです。亜科の検索にはこの3項目を調べればよいのですが、胸部と前伸腹節の形状に関する項目がないので、そのまま進めていきます。これをいつものように写真で確かめていきたいと思います。



まずは全体像です。体長は6.4mmでした。この写真ではⒷの項目を調べますが、腹部には特にくびれは見られません。それでこれはOKです。



これは頭部の拡大ですが、頭盾前縁側方にも突起などはありません。



次は腹柄節です。Ⓐは確かですね。Ⓑは腹柄節の高さが低く、横から見てその幅がそれほど太くないことを見ます。



これは腹部を腹側から見た写真です。第1節では背板と腹板ははっきり分かれています。



これは腹部末端を背側斜め後ろから撮ったものです。Ⓑは大丈夫でしょう。Ⓐについてはいつも検索をするときに簡単に通り過ぎるのですが、いざ、腹部末端の背板はどれだろうかと考えたら迷ってしまいました。たぶん、矢印で示した部分かなと思うのですが、その先にも小さな背板が見えるので、よくは分かりません。でも、とにかく、刺列だけはなさそうです。

これですべての項目を調べたので、ヤマアリ亜科は確かそうです。次は近畿に生息する種に限った属の検索です。


これは「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を上に述べた方針で少し書き換えたもので、この表はまだ途中までです。赤字は書き直したり、書き加えたりした部分です。④aは実際の場合に即してスリット状という言葉を加えました。⑤aと⑤bはヤマアリ属の種の検索表からもってきました。⑥aと⑥bはもともと前胸についての記述だったので、括弧書きされている触角と脚の記述の方に書き換えました。以前、ウメマツオオアリかなと思ったときは、④a→⑤cを選んでオオアリ属だろうと思ったのですが、今回はそうはいきませんでした。今回の検索は、①b→②b→③a→④b→⑥→へと進んでいきます。それを写真で見ていきます。



まず、①bはOKでしょう。これはトゲアリ属を除外する項目です。



②bも大丈夫でしょう。これはサムライアリ属を除外する項目です。



触角柄節が画面に垂直方向に伸びているので、写真ではよく見えませんが、その部分も加えて数えると12節になります。



これが問題でした。今まで調べたオオアリ属の♀有翅アリでは前伸腹節気門はすべて斜めになったスリット状だったので、④a→⑤cと進み、オオアリ属になったのですが、今回は明確に丸い気門です。それで、④b→⑥に進むことになります。



⑥はヒゲナガアメイロアリ属を除外する項目で、これは問題ないと思います。次からはまだ模索中のところなのですが、これから用事があるので、一旦、ここで止めておきます。

廊下のむし探検 クモ、羽アリ、甲虫など

廊下のむし探検 第1023弾

8月5日にマンションの廊下を歩いてみました。蛾が多かったのですが、まだ、整理がついていません。それで残りの虫を出すことにします。



これはズグロオニグモではないかと思います。脚を前にしたオニグモ独特の恰好をしています。



ヒラズオオアリの♀有翅アリです。これはオオアリ属ですが、名前がはっきりしているので、検索の練習用にと思って採集しました。



また、コガネがひっくり返っていました。いつものように腹側を写して、表側にひっくり返してあげたら、突然、飛び始めてしまいました。お礼もなしに・・・。仕方がないので、背側の写真がないのですが、腹側の写真だけから調べてみました。



まず、①と②の条件からシロテンハナムグリ属であることは確かそうです。この属で本州産は、シロテン、キョウトアオ、シラホシ、ムラサキツヤ、ミヤマオオの5種がいます。このうち、ムラサキツヤとミヤマオオは後胸腹板に長毛が密生しているのでこれとは違います。また、シロテンは③で示した後脚脛節に2段刻があるので、やはり違います。残りはキョウトアオとシラホシになるのですが、キョウトアオは④に書かれているように中胸腹板突起が逆三角形、一方、シラホシは幅の広い楕円形だというので、この個体はたぶん、キョウトアオハナムグリではないかと思います。たぶんですが・・・。



次は背を見せていました。マメコガネです。



これは♂有翅アリです。一応、採集しました。昨日、腹部末端を調べてみたのですが、冷凍庫に入れておいたら、腹部末端が乱れてしまい、よく分からなくなりました。



これはコアオハナムグリ



今度は♀有翅アリです。たぶん、ウメマツオオアリあたりかなと思っているのですが、一応、採集しました。この間も書いたように、近畿産に限れば、オオアリ属だと分かれば、何とか種までたどり着けるのではないかと思っています。♀有翅アリの属の検索はヒラズオオアリで今試しているところです。これが終わったら、また一度、調べてみたいと思います。



これはこれまで何度か見ました。たぶん、コガネグモ科のコガネグモダマシではないかと思います。



最後はひっくり返って死んでいたのですが、表を向けて写しました。たぶん、オオヨツスジハナカミキリだと思います。腹部末端の形から、♂かなと思っています。

雑談)昨日朝に見たシカの後日談があります。私は6時40分頃に、シカが動物除けのネットに角が引っかかり、用水路に落ちているところを見かけたのですが、その畑の持ち主の方に聞いたら、4時頃には角がネットにかかった状態で畑にうずくまっていたそうです。6時ごろに来た時もそのままで、だいぶ弱っていたそうです。その後、畑から脱出しようと外に飛び出して用水路にはまったようです。私が帰るとき(7時半ごろ)にはまだはまったままで暴れていたのですが、家に戻ってベランダから見たときには、呼ばれてやってこられたお巡りさんも見張っておられた方もいなくなり、その辺には何の姿も見えませんでした。それで、お巡りさんが角にかかったネットを外して無事、脱出したものだと思っていました。

でも、違っていました。実はシカは、この短い時間の間に、用水路に沈んで息絶えてしまったようです。お巡りさんと見張りの方は畑の持ち主にこのことを役所に届けた方がよいと伝えに来られたとのことでした。その後、9時過ぎに役所の方4人が軽トラでやってこられ、やっとの思いで用水路にはまったシカを引っ張りあげ、軽トラに載せて運んでいかれたそうです。私の想像とは異なり、ずいぶん可哀そうな結末になっていました。

朝の散歩

最近、あまりに暑いので昼間に虫探しに出かけられなくなりました。それで、運動不足になり、この間から朝早く散歩に出かけることにしました。写真を撮っていると歩かなくなるので、ひたすら歩くだけにしていたのですが、こんな光景を見たので、今日は思わず写真を撮ってしまいました。



畑の周囲に動物よけに張ってある網にシカが角をからませていました。可愛そうだったのですが、どうすることもできないので、おっかなびっくり横を通り過ぎました。



通り過ぎてから撮った写真です。帰りに同じ道を通ったら、まだ、引っかかったままでだいぶ暴れていました。近くに人がいて、警察には届けたけど、危ないから近寄らないでというので、もと来た道を引き返して、遠回りして帰りました。途中でオートバイに乗ったお巡りさんに出会いました。でも、応援を呼ばないと一人じゃどうしようもないだろうなと思って家に戻ったのですが、ベランダから覗いてみると、シカもお巡りさんも姿がまったく見えなくなっていました。おまけに倒れていた柵もちゃんと直されて・・・。よほど慣れておられるのでしょうね。びっくりしました。

でも、この写真を撮ったおかげで、ついでにいろいろな写真を撮り始めました。



まずは、少し上った陽が水を張った畑に映っているところです。





カルガモがポーズをとってくれたので、ついでに写しました。





花の色が白いのですが、「日本帰化植物写真図鑑」に載っているアメリカコナギではないかと思いました。図鑑には白色から淡青色の6弁花をつけると書かれています。上の写真は5弁?、下は6弁。でも、たぶん、これかな。



シオカラトンボも撮ってしまいました。





ついでにムクドリまで。



これはメリケンガヤツリだと思います。





このカヤツリは何だろう。よく分かりません。







これはネットで調べて、アメリカノウゼンカズラ Campsis radicansというのに似ています。本当かどうか分かりませんが・・・。





今頃、道端にはこんなユリがたくさん生えています。「日本帰化植物写真図鑑」を見て、タカサゴユリだろうと思っていたのですが、調べてみると話はだいぶややこしそうです。タカサゴユリは線形の葉を密につけ、夏から秋にかけて白色の花をつけるのですが、花の外側は紫褐色を帯びます。一方、よく似たテッポウユリの葉は披針形で、4-6月に白い花を咲かせます。道端に生えているユリは葉や開花時期はタカサゴユリに似ていますが、花全体が白いので、むしろテッポウユリに似ています。

これについては、「日本帰化植物友の会通信」に次のような記事が載っていました。

「タカサゴユリか、シンテッポウユリか?」日本帰化植物友の会通信 No. 5 (2005).(ここからpdfが直接ダウンロードできます)

この記事にはメールでのやり取りが転載されています。要は、シンテッポウユリというタカサゴユリとテッポウユリを掛け合わせた栽培種があり、タカサゴユリとシンテッポウユリではどちらが近いかという議論です。シンテッポウユリは1938年に登録された栽培種で、その後、テッポウユリとの戻し交配が何度も行われ、極めてテッポウユリに近い品種ができているようです。先ほどのメールでの議論でも、今見られているユリはタカサゴユリの一品種だとか、テッポウユリとの自然交配種だとか、シンテッポウユリだとすべきだとか、いろいろな意見が出ていました。

樋口 幸男、「恵泉花の文化史(11):帰化植物としてのシンテッポウユリ」、恵泉女学園大学園芸文化研究所報告:園芸文化 12, 67 (2016). (ここからダウンロードできます)

この論文では栽培種としてのシンテッポウユリがワイルドフラワー工法(除草する代わりに長期間にわたり花を咲かせる植物を植える緑化手法)で、これまで高速道路法面、河川敷などで植えられたものが、広がったものだというご意見です。結局のところ、雑種であることは確かそうですが、栽培種か、自然交配種かというところみたいです。



最後はマンションの廊下で止まっていたモモスズメでした。

写真を撮っているといろいろと面白いものに出会えますが、、朝の散歩はあくまでも運動不足解消のために行っているので、これからもできるだけ写真は撮らないようにしようかなと思ってますけど・・・。

廊下のむし探検 甲虫ほか

廊下のむし探検 第1022弾

8月2日にマンションの廊下で見つけた虫の続きです。



家の前の壁に止まっていました。クリイロヒゲハナノミかなと思っているのですが、まだ調べていません。どうやって調べたらよいのやら。





コガネが、また、ひっくり返っていました。どうしてでしょうね。例によって腹側の写真を撮り、それからひっくり返してやり、背側からも写真を撮りました。後脚脛節に2段刻があるので、この間、調べたシロテンハナムグリと同じでしょうね。



これはズグロオニグモ



これはヒラズオオアリの♀有翅アリです。この個体ではないのですが、5日に採集した個体で今日は検索の練習をしてみました。♀有翅アリは検索表がないので、いつも手探り状態なのです。でも、こうして名前の分かった種で調べてみるとだんだん検索の「こつ」が分かってくるような気がします。



これはまだ何だか分かりません。オオアリ属かどうかはどうやって見分ければよいのだろう。





マンションの外壁にコオロギがいました。オカメコオロギの仲間です。オカメコオロギを見ると、最近、がっかりしてしまいます。というのは名前が分からないからです。

[1] 松浦一郎、「日本産オカメコオロギ属(Loxoblemmus: Orthoptera) 近似種の分類」、New Entomol. 37, 17 (1988).

松浦氏のこの論文を見ると、日本産オカメコオロギ属Loxoblemmusには4種いるそうです。ハラ、タンボ、モリ、ネッタイの4種です。このうち、ネッタイは南西諸島産なのですが、前三者は本州にも生息します。ただし、これら3種は、♂の前翅末端の網状部、若齢幼虫の触角、鳴き声の特徴で見分けられることになっていますが、♀ではこれといった識別点はないそうです。この個体は♀なので、結局、何だか分かりません。

ところで、"Orthoptera species File (Version 5.0/5.0)"というサイトを見ると、松浦氏がハラと新種記載したL. campestrisという種は以前からL. arietulusとして当てられていた種のシノニムとされていました。これについては次の論文と本に書かれていました。

[2] T. W. Kim and G. Puskas, "Check-list of North Korean Orthoptera Based on the Specimens Deposited in
the Hungarian Natural History Museum", Zootaxa 3203, 1 (2012). (ここからダウンロードできます)
[3] S. Y. Storozhenko, T. W. Kim, and M. J. Jeon, "Monograph of Korean Orthoptera", National Institute of Biological Resources (2015). (ここからダウンロードできます)

[2]によると、L. arietulusは♀のみで記載された種で、ネッタイequestrisとも混同されていました。その後、松浦氏が日本産はL. arietulusとは異なると主張して、L. campestrisを新種記載したのですが、この種は実は♀では区別がつきません。それで、著者らは新種としてではなく、L. arietulusの代用名(substitute name)とすべきだという主張をしています。確かに、松浦氏の論文を見ても、♀では区別がつかないので、本当に新種かどうなのかはっきりしません。その後、[3]ではこのような命名法は代用名の条件には合致しないので、L. campestrisはL. arietulusのシノニムにするという内容が書かれていました。こういう論文がよくあるのですが、いつもシノニムにする根拠が書かれていなくてよく分かりません。とりあえず、現在ではシノニムということになっているようです。



最後はカマキリの幼虫です。これも何だか分かりません。

廊下のむし探検 雑談(♀有翅アリの検索)

この間から♂♀の有翅アリについて調べていますが、なかなか進みません。一昨日も書いたのですが、♂有翅アリは日本産アリ類画像データベース」に載っている♂アリ用の検索表で属を調べて、腹部末端にある交尾器を調べれば何とかなるということになったのですが、♀有翅アリは働きアリと形態がかなり違うので、働きアリ用の検索表で前・中胸、前伸腹節の形態に関する項目は使えそうにありません。この辺りでギブアップかなと思ったのですが、最後のあがきでもう少し頑張ってみました。

私は大阪北部に住んでいるので、この間調べたオオアリ属についてとりあえずこの辺にいる種だけを調べてみようと思いました。日本産アリ類画像データベース」には地域別の種リストが載っているのですが、それによると、近畿地方のオオアリ属は5亜属12種だそうです。そこで、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を基にして、近畿産オオアリ属についての種の検索表を作ってみました。この検索表は、♀有翅アリもしくは翅を脱落した個体用の検索表で、働きアリ用の検索表から前・中胸、前伸腹節の形態に関する項目を除いて作っています。



前・中胸・前伸腹節の形態に関する項目を除くと、後は色、斑紋、腹柄節、頭盾、大きさ、立毛などが残るのですが、結局、それらを使って書いたものです。若干の加筆をした分が赤字で書いてあります。まず、赤字で書いた③は日本産アリ類画像データベース」の検索表を参考にして書き直したものです。⑩は「日本産アリ類図鑑」の種の説明からとりました。また、⑪は次のヤマヨツボシオオアリの記載論文に載っていた♀有翅アリのナワヨツボシオオアリとの区別点を書いたものです。

M. Terayama, "A New Species of the Genus Camponotus from Japan, with Notes on Two Known Forms of the Subgenus Myrmamblys (Hymenoptera Formicidae)", Jpn. J. Ent. 58, 405 (1990). (ここからダウンロードできます)

大型か小型かという項目がやや抽象的ですが、クロオオアリ類と区別をつけるだけなので、何とかなるかもしれません。また、外観上の区別として、次のような表を作ってみました。



近畿産というように種を絞るとかなり分かりやすくなりますね。こんな風にまとまってくると、検索をもう一度試してみたくなりました。

種の検索がこんな風にまとまってくると、むしろ、属の検索の方が気になります。♀有翅アリの場合、中胸気門の位置があてにならないので、前伸腹節気門の形状からまずオオアリ属とヤマアリ属を抜き出し、さらに、腹部背板上に密な軟毛がないことからオオアリ属にしていたのですが、前伸腹節気門の形状は働きアリと有翅アリでは違わないかと気になってきました。属の検索の方はこれからもう少し考えてみます。それにしても、♀有翅アリの検索に関する論文がまったく見つからないのはどうしてだろう。
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