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虫を調べる ♀有翅オオアリ属2

最近、羽アリの勉強をしています。というのは、マンションの廊下にやたらいっぱいいるからです。せめて、名前ぐらいは分からないかと思って調べ始めました。最初、♂有翅アリを調べてオオアリ属らしいというところまでたどり着きました。次に、♀有翅アリを調べてクサオオアリかもしれないというところまで到達しました。前者は「日本産アリ類画像データベース」に載っている♂アリの検索表を用いましたが、残念なことに属までの検索表しか載っていません。後者は「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いましたが、これは働きアリ用です。いずれももやもや感が残る結果になり、「名前ぐらい」という言葉の重みを実感しています。

さて、今回は別の♀有翅アリです。勉強中なので、間違っているところも多いと思いますので、そのつもりで見ていただければ幸いです。



今回は25日採集したこの♀有翅アリです。有翅アリはみな似ていて、私は見ただけではほとんど何も分かりません。それで、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いて、属と種の検索をしてみました。今のところ、ヤマアリ亜科オオアリ属のウメマツオオアリの可能性が高いのですが、とりあえず、オオアリ属に至る過程を見ていきたいと思います。



これは前回と同じ検索表の抜粋です。この検索表は働きアリに関するものなので、赤字のところは判断できない部分です。それで、⑦aと⑦bの両方を進む過程を書いてみました。青字はこの個体の特徴とは異なる記述です。従って、⑦bに進むと、いずれ青字の項目に至るので、こちらの道は違うと判断しました。消去法にはなりますが、よって、オオアリ属ということになります。いつものようにそれらを写真で確かめていきたいと思います。



まずは全体像です。体長は7.6mmでした。頭部が斜め下を向いているので、折れ線を使って体長を測りました。この写真では①の腹柄節が1節であることと、④の胸部の突起などがないことを見ます。



次は腹部末端の写真です。①、②、③はいずれもOKだと思われます。



次は頭部です。①の頭盾前縁側方には特に突起などは見当たりません。また、大腮は三角形です。これで⑤もOKです。



次は腹部背板の写真です。第1節と第2節の間に特にくびれはありません。検索表の②にある、「腹部第1節背板と腹板が融合していない」という項目については写真を撮り忘れました。たぶん、大丈夫でしょう。



腹柄節は前伸腹節(向かって左)と腹部(向かって右)の間の節を指し、丘部は飛び出している部分を指しています。いずれも書いてある通りだと思います。



触角は12節です。

これで①から⑥までの項目を一部を除いてすべて確かめたことになります。次はいよいよ⑦についてです。すっかり忘れていたのですが、有翅アリの中胸気門については以前調べたことがありました。それによると、女王アリの中胸気門は中胸側板と後胸側板の溝の間にあり、クチクラの表面から陥入した状態にあるようです。先日調べた♀有翅オオアリ属の場合は、その位置がはっきり分かりました。この個体はその位置に膨らみはあるのですが、穴はよく分かりませんでした。いずれにしても、翅が生えて、中胸が大きく変形した有翅アリでは⑦の項目は使えないと思われます。

それで、両方の道を進むことになるのですが、まず、⑦bの道を進んでみます。⑧については次の写真を見てください。



前伸腹節気門は矢印で示した部分ですが、少なくとも丸くはありません。従って、⑧bは違います。⑧aに関しては縦に長い楕円形というよりは横に長いスリット状のように見えますが、とりあえずこちらを進んでみます。次の⑨は色に関するものなので、OKでしょう。次の⑩については、ヤマアリ属は腹部背板が細かい軟毛で覆われ、その毛の密度に関する内容です。この個体では3つ上の腹部の写真でも分かるように軟毛はほとんど生えていません。それで、⑩で行き詰ってしまいます。従って、この個体はヤマアリ属などではなく、オオアリ属だと推定されます。

というまどろっこしい方法を使ったのですが、とりあえずオオアリ属らしいことは分かりました。たぶん、前伸腹節気門の形と腹部の密な軟毛の有無でオオアリ属であることが分かるのではないかと思うのですが、もう少し、いろいろな個体で当たってみます。種の検索は次回に回します。
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廊下のむし探検 蛾

廊下のむし探検 第1019弾

最近は暑いので、あまり外出はせずに、本来のマンションの廊下で虫探しをしています。今回は7月28日分です。夜中に台風が来そうだったので、その前に虫探しをしました。



最初はちょっとぼろぼろのモンクロシャチホコです。



これはたぶん、ナカキシャシホコ。(追記2018/08/11:ささきさんから、「2番目のシャチホコはルリモンシャチホコですね。横線がはっきりしている点がナカキとは異なります。それにしても、以前から不思議に思っているんですが、この蛾のどこが「ルリモン」なんでしょうね?」というコメントをいただきました。確かにルリモンの方ですね。淡色の斑紋があったので、ぱっとナカキが思い浮かび、そのまま書いてしまいました。図鑑を見ると、「ナカキ」というのは前縁中横帯部に明灰色があるからなのですね。となると、「ルリモン」は何でしょうね。最近、いろいろな虫を見ているせいか、蛾がおろそかになってしまいました。ご指摘どうも有難うございました



それにフタテンオエダシャク



床でばたばたしていたのはヒメシロモンドクガ♂でした。



これはたぶん、プライヤハマキ



うーむ。アオシャクです。斑紋がはっきりしないのですが、以前作った比較の図で比較すると、オオナミガタアオシャクに似ている感じです。合っているかなぁ。



これはヒメクロイラガ



これはヘリジロヨツメアオシャク。記録を見ると、これまで4度見ていました。8月が3回、10月が1回です。



最後はクチバスズメです。これは6月から8月にかけて過去6回見ていました。蛾以外は次回に回します。

虫を調べる 有翅オオアリ属(続き)

昨日、羽アリを調べてみました。



調べたのはこんなアリです。頭が大きいので、♀有翅アリは確かそうです。昨日、属の検索をしてみてオオアリ属らしいことが分かりました。今日はその続きで種の検索です。

検索には「日本産アリ類図鑑」の検索表を使っています。ただ、ここに載せられているのは基本的には働きアリ用なのですが、ところどころで女王アリにも使えるような表現が使われているので紛らわしい感じです。当初、イトウオオアリかなと思ったのですが、外観を「日本産アリ類全種図鑑」で見ているとどうも違うのではないかと思うようになりました。むしろ、クサオオアリに似ている感じです。検索表は働きアリ用なので、ほとんど当てにならないのですが、とりあえず写真で調べていきたいと思います。



検索表のうち、関連する部分を抜き出したものがこの表です。赤字の部分が働きアリか、兵アリに関するもので、今回は使えない部分です。ただし、Ⓐは頭部が四角形のヒラズオオアリ類を除外する項目なので、特に調べなくても大丈夫だと思われます。また、Ⓓは大型のクロオオアリやミカドオオアリなどを除外する項目なので、やはり大丈夫ではないかと思います。それで、その他の項目を調べていきたいと思います。



まず、ⒷとⒸを確かめます。Ⓑは色に関するものなので、これはまず大丈夫でしょう。次のⒸは前伸腹節についてです。背面と後面は特に角をなしてはいないのですが、まあ、鈍角というのもうなずけます。



Ⓒは前・中胸部背面の立毛に関するものですが、有翅アリは中胸が大きく発達しているので、働きアリとはかなり形状が異なります。それで、あまり比較ができないのですが、立毛はどうみても数本以下は確かです。



次は問題のⒺです。この項目は働きアリに関するものなので、♀有翅アリに適用できるかどうかは不明なのですが、こういう構造的なものは♀有翅アリでも変化しないだろうと思われます。初め、頭盾の前縁中央部は直線的だと思って最終的にはイトウオオアリになったのですが、よく見ると、中央部が少し凹んでいます(黄矢印)。それで、今回はⒺbの方を選択することにしました。



Ⓗbの胸部背面の立毛についてはすでに見ました。実は3本ほどは見られました。これを「ある」とすべきか、「ない」とすべきか分からなかったのですが、ここでは「ない」という方にしました(実は「ある」を選ぶと、ヨツボシオオアリになってしまう)。腹柄節については次の写真を見てください。後半の腹部の斑紋についてはヨツボシオオアリを除外する項目です。



これは腹柄節のあたりを拡大したものですが、腹柄節に目立った立毛はありません。



最後は前脚腿節に関するものです。矢印で示したように、中脚腿節と比較すると確かに幅広いことが分かります。実は、これがクサオオアリかもと思った一つの根拠です。後胸溝は矢印で示した部分を指していると思われますが、翅が生えているので何とも言えません。ということで、かなり怪しいのですが、クサオオアリが今のところ第1候補になっています。「日本産アリ類全種図鑑」によると、分布に奈良、大阪、兵庫が含まれているので、可能性はあるかもしれません。有翅アリについてはまだ勉強を始めたばかりなので、間違っていたらすみません。

ついでに撮影した写真も出しておきます。





頭部と胸部を背側から撮った写真です。結構、綺麗なアリですね。



最後は前翅翅脈です。いつものように翅脈の名称は次の論文を参考にしました。

K. S. Perfilieva, "Trends in Evolution of Ant Wing Venation (Hymenoptera, Formicidae)", Zoologicheskii Zhurnal 89, 965 (2010). (ここからダウンロードできます)

この論文では有翅アリの翅脈をいくつかのタイプに分類しているのですが(詳細はこちら)、このアリの場合はIIIdタイプということになります。ポイントは黄矢印1に翅室があること、黄矢印2がほぼ1点で交わっているところです。ヤマアリ亜科はIIIdとIVeという2つのタイプになるのですが、ほかの亜科にも同じタイプのものがあるので、これだけからではどの亜科かは分かりません。

虫を調べる 有翅オオアリ属

この間から、有翅アリを調べようと思って頑張っているのですが、なかなか進みません。♂有翅アリは「日本産アリ類画像データベース」に絵解き検索表が載っていて、属まではいけるのですが、♀有翅アリについては働きアリの検索表がそのまま使えるのかどうかはっきりしなくて、いつも曖昧のまま検索をしています。(追記2018/07/29:種の検索をしていて、イトウオオアリに疑問が出てきました。それで、とりあえずタイトルをオオアリ属に変えておきます



今回は♀有翅アリです。25日に採集しました。検索でいくつか怪しいところもあるのですが、とりあえず、イトウオオアリがその候補に挙がっています。追記2018/07/29:種の検索をしていて、イトウオオアリに疑問が出てきました。それで、とりあえずこの文章を消しておきます

検索には「日本産アリ類図鑑」(朝倉書店、2014)に載っている検索表を用いました。まずは属の検索です。



検索は①から⑥までは順調に進むのですが、⑦でストップしてしまいます。というのは、この検索表は基本的に働きアリ用で、♀有翅アリでは翅が生えているため、この項目が使えなくなるからです。。それで、⑦aのオオアリ属と⑦bの両方に進まないといけなくなるのですが、⑦bの方に進んで、⑧a→⑨と進むと、⑩で選ぶものがなくなり、一方、⑧bも違うので、結局、⑦aを選んでオオアリ属かなということになりました。それを写真で見ていきたいと思います。なお、赤字は選択に困る項目、青字はこの個体の特徴と異なるところを示しています。



まずは横から撮った全体像です。体長は8.9mmでした。この写真では②の腹部の節がくびれていないことを見ます。



次は頭部です。①と⑤は共にこの写真で分かると思います。



次は触角です。全部で12節でした。



①、②、④は腹柄節に関するもので、いずれもOKだと思います。この写真では中胸気門も写っています。働きアリと異なり、翅があり、さらに中胸が大きく発達した♀有翅アリではその位置もかなり違うのではないかと想像できます。



これは腹部を腹側から写したものですが、背板と腹板が見えています。それで②はOKです。これで⑦の項目を除いた①から⑥までを確かめたことになるのですが、⑦については今のところ消去法に頼るしかありません。

それで、⑦bに進んだとして、⑧を調べてみます。



これは前伸腹節気門を撮ったものです。とりあえず円形ではないので、⑧bではなく、⑧aの方が可能性があります。



⑨はOKですが、次の⑩では、この写真で示すように、軟毛(たぶん、小さな毛のことを指すと思うのですが・・・)はそれほど密に生えていません。検索表ではもう一方の選択肢は、「軟毛間の距離は軟毛の長さと等しいかそれ以上」ですが、ただ、高山帯に生息する種なので、ここで行き詰ってしまいます。それで、オオアリ属の可能性だけが残りました。オオアリ属だとして種についての検索は次回に回します。

廊下のむし探検 甲虫、羽アリ

廊下のむし探検 第1018弾

7月25日にマンションの廊下で見つけた虫の続きです。



廊下を歩いているとこんな風にひっくり返っている甲虫をよく見かけます。なんで、自分で起き上がれないのだろう。そんな風に思いながら、でも腹部を撮影するチャンスだと思って撮りました。一通り写したので、元に戻してやりました。



表はこんな感じでした。ハナムグリの仲間ですね。シロテンかなと思ったのですが、一応調べてみようかと思って、「日本産コガネムシ上科標準図鑑」に載っている検索表で調べてみました。



検索してみると、♂交尾器に関するところが多くて、そもそも♂なのか♀なのかも分からないので、いろいろな可能性を残すと上のような感じになりました。つまり、Liocola亜属、Calopotosia亜属、Pseudocalopotosia亜属の3亜属が残ってしまうのですが、本州産にだけ限ると、Liocola亜属のシラホシ、ムラサキツヤ、ミヤマオオ、それに、Calopotosia属のシロテンが残ります。一応、分かるところだけ見ると次のようになります。



まず、ひっくり返った写真から、後基節が接していることが分かります。



また、中胸腹板突起がこんな形をしていることも分かります。



また、元に戻した写真から、前胸背板後縁に湾入があること、それに、中・後脛節に矢印で示したような2段刻があることが分かります。



さらに、前脛節は特に異常が見られません。ということで、上の4種に絞られるのですが、実はLiocola亜属の3種については後脛節がいずれも1段刻です。この個体は2段刻なので、やはりシロテンハナムグリだろうということになります。さらに、♂は前脛節の外歯の第3歯が不明瞭で、腹部中央が凹圧されるということなのですが、これはそんなことはないので♀なのかなと思いました。

ついでに頭盾の写真も撮ったので載せておきます。



こんな感じでした。



このクモの巣で巻かれたカメムシはイネカメムシの様です。「廊下のむし探検」初登場なのですが、こんな格好ではねぇ。





羽アリがいました。共に♀有翅アリです。今度こそ調べてみようと思って、採集しました。そして、先ほど検索してみました。まだ、怪しいところが多いのですが、上はイトウオオアリでまず間違いないのではと思いました。下の検索結果はクロヤマアリ隠蔽種群になったのですが、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表ではオオアリ属をヤマアリ属などから分ける項目が中胸気門の位置で行うのですが、有翅アリでは翅があってその部分がよく分かりません。それで、オオアリ属の可能性とヤマアリ属などの可能性の両方を残したまま検索をしていき、片方が完全に否定されるまで調べないといけないので、かなり煩雑になります。もう少し調べてみます。(追記2018/07/30:先日来、羽アリを調べているのですが、上はどうやらオオアリ属のクサオオアリではないかという結論になりました(詳細はこちらこちら)。下は同じくオオアリ属のウメマツオオアリかもというところまで来ています。黒い羽アリでオオアリ属とヤマアリ属は腹部背板の密な軟毛の有無で見分けられそうです。軟毛があればヤマアリ属、なければオオアリ属という風に



これはたぶん、ヒレルクチブトゾウムシ



マメコガネ



ハナノミの仲間。天井に止まっていたので、ちょっと遠くて詳しくはよく分かりません。



最後も天井に止まっていたのですが、ウスモンツツヒゲナガゾウムシ♀のようです。これで25日分の整理は終わりました。

廊下のむし探検 蛾

廊下のむし探検 第1017弾

最近は暑いので、あまり虫探しができないのですが、暑さもちょっとましになってきたので、昨日、廊下を歩いてみました。やはり蛾は結構たくさんいました。



まずはこのシャチホコです。こんな蛾にはツマキシャチホコ、タカサゴツマキシャチホコ、ムクツマキシャチホコ、クロツマキシャチホコという互いによく似た4種がいます。このうち、ツマキとクロツマキは説明を読むと除外することができそうです。でも、残りのタカサゴツマキとムクツマキは区別がなかなか分かりませんでした。「標準図鑑」の説明を読むと、タカサゴツマキは「小型、前翅に波状の細い横線が目立ち、翅先の黄紋が細く長く、内縁は滑らかに丸い」という特徴があります。「翅先の紋が細く長い、内縁は滑らかに丸い」というところはよくあっていそうです。それで、タカサゴツマキシャチホコの方かなと思ったのですが、自信はありません。

追記2018/08/11:ささきさんから、「冒頭のシャチホコはタカサゴでピンポンです。ムクは大型でやや暗色をおび、ヤガでいうところの腎状紋のあたりが明色になります。クロは僕は北摂では見たことがありません。これも大型・暗色のものですが、ムクよりさらに暗色になります。僕はタカサゴはむしろ普通のツマキとの鑑別に悩むことがあります(稀ですが)。ちなみにタカサゴはけっこう個体数が少なく貴重なものです。狙って採れるものではなく、たまに変なところ・・・というか、なんでもないところでポツンと採れる感じです。」というコメントをいただきました。タカサゴで合っていそうですか。何度か見直して、そうかなと思って出したのですが、自信はありませんでした。たぶん、初めて見たのではないかと思います。貴重な写真が撮れて嬉しいです。これで、タカサゴ、ツマキ、ムクツマキの3種の写真が撮れたことになります





これはこの間オオフトメイガかもとした個体とよく似ています。この日は2匹いました。



小さな蛾が天井に止まっていました。写真で撮ってみたらこんな蛾でした。この間見たこの蛾とそっくりです。ホソコヤガの仲間だと思うのですが、残念ながら種までは分かりませんでした。



これはセダカシャチホコ



それにアカヒゲドクガ



こちらはヒメシロモンドクガ



それにモンクロシャチホコ



これはなかなか分かりません。前翅の前縁に黄色い縁取りがあるので、ムジホソバ♀かなと思ったのですが、どうでしょう。



これはアカテンクチバ



リュウキュウキノカワガ





これは共にウスベニトガリメイガではないかと思います。



それとオオトビスジエダシャク



それにミツテンノメイガでした。

この日は近くの豊中で37.5度まで上がったのですが、マンションの廊下を歩いている限りはそれほど暑さは感じませんでした。蛾もきっとそう思っているのでしょう。結構、いっぱいマンションの廊下や天井に止まっていました。

雑談)今日は午前中に老人大学があり、90分ほど話してきました。この間の小学校の校外学習の時の話と廊下のむし探検の話を、あまりストーリを作らずに話したので、かなり散漫な話になってしまいました。

帰ってから、この間注文しておいたスマート家電コントローラ RS-WFIREX3のセッティングをしました。このコントローラは赤外線リモコンで操作している各種家電を1台のリモコンで済ませて、それをスマホで操作しようというものです。でも、まず、コントローラをWiFiにつなぐところでつまづいてしまいました。なかなか思ったようにならずイライラのしどうし。それでも、何とか、それをクリアして、テレビ、天井照明、扇風機などを操作できるようにセッティングしました(エアコンはまだです)。今度はそれをスマートスピーカのGoogle home miniにつなぐところでまた時間がかかってしまいました。それでも、夕方には何とかリンクすることができ、口で命令するだけで照明の明るさを変えたりできるようになりました。最後に、ショートカットを登録して、〇チャンネルと言うだけでテレビのチャンネルを変えることができ、やっと完成です。でも、大変くたびれました。

家の近くのむし探検 蛾、ハエなど

家の近くのむし探検 第416弾

7月20日の午前中に公園に行ってみました。最近は猛烈な暑さなので1時間ほどで引き上げることにしています。虫もほとんど見当たらないですね。



公園に着いて最初に見つけたのはこのヤマトカギバでした。



それからハキナガミズアブ。今頃はどこに行ってもいますね。でも、♀が多い感じ。



一時期たくさんいたアシナガバエもほんのわずかです。ぱっと見ただけでは属も分かりません。



桜の幹にはこのムラクモハマダラミバエがた何匹もいました。木の幹をうろうろしているのですが、何をしているのだろう。複眼が何となく綺麗ですね。



ちょっと拡大してみました。これは素晴らしい。市役所での展示に使えばよかった・・・。



庭園灯の柱に止まっていた羽アリです。♂有翅アリですね。これと似たような羽アリを先ほど検索してみたのですが、オオアリ属になりました。これもそうかな。



ツヤユスリカ属の♀だろうと思います。どうも♀は腹部の模様がはっきりしません。これはナカグロツヤユスリカかなぁ。



これはアミメアリ。



動き回っていたので、ピントが合わなかったのですが、小さなハエトリです。ヒトリコゲチャハエトリかな。



これはクマダハナグモ?近くをアリが通ったのですが、まったく動きませんでした。



アブの眼は独特の色をしていますね。♂なので名前は分からないのですが・・・。これも展示すればよかったかも。この日、虫はこれで全部でした。

虫を調べる クロモンナガレアブ?

先日(7/14)、家の近くの道路わきの茂みで変わったハエを見つけました。



翅に模様があるので、ひょっとして名前が分かるかもと思って採集しました。以前の記録を見てみると、こんな格好のハエをシギアブ科としていました。それで、そうブログに書いていたら、フトツリアブさんから、こんな模様のナガレアブ科もあると教えていただき、それで一度調べてみることにしました。

まずは検索です。いつものように、「原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表で調べてみました。その結果、教えていただいた通り、ナガレアブ科らしいことが分かりました。



採集したハエは100均で買ったノンアセトンタイプのエナメルリムーバーを入れたニューPPサンプル管に入れておきました。こうすると、エナメルリムーバーの中の水分がハエを乾燥から防ぎ、何日も入れておいてから取り出してもそのままの形で観察することができます。と、思っていたのですが、最近の暑さのためか、観察してしばらくしたら乾燥し始めてしまいました。ともかく、体長を測ってみると、6.2mmくらいでした。



無額嚢類から始めてナガレアブ科であることを確かめるにはこの7個の項目を調べればよいのです。これをいつものように写真で調べていきたいと思います。今回はだいだい検索順に見ていきます。



まずは頭部です。額嚢溝は左右の触角を取り囲むように掘られた溝ですが、これにはありません。この個体は最終的にAsuragina属だろうと思っているのですが、この属では♂は合眼的です。この写真の個体は左右の複眼が離れているので、♀ということになります。これで①と③はOKです。この間のミズアブのように複眼の中央に帯があります。



次は跗節先端の写真です。爪の間に側爪板があり、その間には同じような形の爪間板があります。これで②もOKです。



これは背側から写したものです。腹部はもうだいぶ乾燥が始まっています。③はまずOKですね。



基覆弁は胸部についている覆弁ですが、この写真ではどれがどれだかよくは分かりません。これはちょっと保留です。



次は翅脈です。翅脈の名称はこの間のミズアブの翅脈を参考にしながらつけてみました。④はまず大丈夫でしょう。⑦はR1とR2+3が前縁脈上でほぼ一点で交わっています。それで、r1室が閉じるというのでまさにその通りでした。この性質はナガレアブ科に特有かもしれません。



前縁脈はCと書いた脈ですが、矢印のところで急に細くなっていますが、特に途切れることがなく、後縁に続いています。⑤はこのことだと思います。



小盾板の下には下小盾板があります。



最後は触角です。この⑦の文章は誤解を生みやすいのですが、鞭節が細長いというわけではなく、「鞭節は」の後に「、」を入れ、「細長く関節構造を欠く触角刺毛を生じる」と読むと意味が通じます。これは環状構造を持つ触角筆突起のあるアブ科などを除外する項目です。ということで、ナガレアブ科になりました。たぶん、下小盾板があることと、R1脈とR2+3脈がほぼ一点で交わるという2点が重要だと思われます。

「日本昆虫目録第8巻」によると、日本産ナガレアブ科にはAsuragina、Atherix、Atrichops、Suraginaの4属9種が記載されています。次にその属を調べてみようと思いました。

A. Nagatomi and B. R. Stickenberg, "Insecta: Diptera, Athericidae", in "Freshwater Invertebrates of the Malaysian Region", eds. C. M. Yule and Y. H. Sen, Akademi Sains Malaysia (2004). (ここからダウンロードできます)

この本の章の中にAsuragina、Atrichops、Suraginaの3属についての検索表が載っていました。さらに、「日本産水生昆虫」のナガレアブ科の章には「翅は全体黒く染まるが、2つの白帯をもつ。後肢基節先端は尖る。これはナガレアブ属Atherixを除いた3属の共通特徴である。」と書かれているので、Atherixは除いても大丈夫なのではと思いました。それで、残り3属で検索をしてみると、Asuragina属になりました。これも写真で見ていきたいと思います。



この2項目を調べればよいのですが、⑨は意外に大変です。



まず、⑧はこの写真のように1本の刺があるだけでした。それで、まず、Suragina属を除外します。



次は、「左右の触角が離れ複眼の縁に非常に近寄る」というのはかなり微妙です。左右の触角が接近しているとも言えるし、離れているとも言えそうです。その次の♀の前額については頭頂に向かってほぼ平行になっていました。さらに、前額にある黒い紋はかなり特徴的です。ということで、⑨のうち、ここに書いた項目はだいたいはOKみたいです。



側顔というのは矢印で示した部分だと思うのですが、直線的みたいな感じです。先端は白矢印で示したように角になっています。というので、これもOKだと思われます。



前胸側板はどれなのか分かりませんが、特に突起はなさそうです。ついでに後基節の先端が尖っているのも見えます。



この写真を撮る頃にはかなり乾燥が進み、複眼もこんな姿になってしまいました。でも、後頭が膨れているのは白矢印の部分が前から見えることで確かめられます。ということで、この項目もOKです。

ということで、たぶん、Asuragina属でよいのではないかと思います。「日本昆虫目録第8巻」によると、この属にはA.suragina caerulescens クロモンナガレアブ1種だけが載っているので、この種ではないかと思われます。この属については次の論文が記載論文になっています。

D. Yang and A. Nagatomi, "Asuragina, a New Genus of Athericidae (Insecta: Diptera)", Proc. Japan. Soc. Syst. Zool. 48, 54 (1992). (ここからダウンロードできます)

この論文の中にも、「日本産水生昆虫」にもクロモンナガレアブの頭部の絵が載っているのですが、例の黒い紋が描かれています。たぶん、大丈夫でしょう。



ついでに腹部末端も撮っておきました。何が何だか分かりませんが・・・。

家の近くのむし探検 甲虫ほか

家の近くのむし探検 第415弾

7月18日に家の近くにある道路わきの茂みで虫探しをした結果の続きです。





この日はこのタテトゲハムシを3匹見ました。



たぶん、小さなテントウです。



別の個体なのですが、これが頭の写真です。これから「原色日本甲虫図鑑III」の検索表で調べてみると、たぶん、コクロヒメテントウ Scymnus posticalisかなと思ったのですが、よくは分かりません。



これはしょっちゅう見ているヤマギシモリノキモグリバエ



シマバエ科のヤブクロシマバエかなと思ったのですが、翅の色が違うようです。似た種が多いのかな。





ハキナガミズアブの上は♀、下は♂です。



アナアキゾウムシの仲間だと思ったのですが、体長は5.8mmとやけに小さいです。上翅の前縁が湾曲して変わっているのですが、名前にたどり着くことができませんでした。(追記2018/07/24:立西さんから、「ゾウムシですがカシアシナガゾウムシの可能性が高いと思います。」というコメントをいただきました。確かによく似ていますね。きっとこれですね。アナアキに捕らわれたのが失敗のもとでした。どうも有難うございました



何だか分からないハエ。



それから、キベリクビボソハムシ



♂有翅アリだと思うのですが、翅が何だか変です。





クズの葉に止まっているので、クズノチビタマムシだろうと思います。



アミメアリ



トウキョウキンバエ





ハチはいろいろといるのですが、何だか分かりません。



アキノノゲシについていたアブラムシです。ホストを手掛かりに、「日本原色アブラムシ図鑑」と「アブラムシ入門図鑑」を調べました。Dactynotus属かなとは思ったのですが、どうもぴったりする種が見つかりません。今度もう一度撮ってみよう。

追記2018/07/24:ついでに7月17日に家の前で見たカミキリも載せておきます。



和名がいろいろあったカミキリでしたね。ここでは、「日本列島の甲虫全種目録」に従ってミヤマカミキリ基亜種 Aeolesthes chrysothrix chrysothrixとしておきます。これについては、見る方向で模様が変化するというので5年ほど前に実験をしたことがありました(ここを見てください))(追記2018/07/24:ささきさんから、「最後のカミキリムシは「キマダラカミキリ」かと思います。昔はキマダラヤマカミキリとかキマダラミヤマカミキリとか言われ、ミヤマカミキリという特に近縁でもない種もいたりしてややこしかったですが、キマダラカミキリという名前になってスッキリしました。」というコメントをいただきました。あれっ、どうして間違えたのだろう。キマダラミヤマだというのでうっかりミヤマの方を書いてしまったのでしょうね。暑さボケです。目録に合わせてキマダラカミキリ基亜種としておきます。ご指摘どうも有難うございました

雑談)フトツリアブさんから、以前撮っていたハエがシギアブ科ではなく、ナガレアブ科にも似た斑紋の種は多いとのコメントをいただきました。幸い、採集していたので、「原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表で調べてみました。その結果、ご指摘の通り、ナガレアブ科になりました。

A. Nagatomi and B. R. Stickenberg, "Insecta: Diptera, Athericidae", in "Freshwater Invertebrates of the Malaysian Region", eds. C. M. Yule and Y. H. Sen, Akademi Sains Malaysia (2004). (ここからダウンロードできます)

さらに、この本に載っている属の検索表を用いて調べてみると、Asuragina属になりました。「日本昆虫目録第8巻」を見ると、この属にはクロモンナガレアブ caerulescens 1種だけが載っています。さらに、この種については「日本産水生昆虫第二版」にも頭部の絵が載っています。頭部に黒い模様があり、翅に縞模様があるので、たぶん、これではないかと思っています。(追記2018/07/24:Asuragina caerulescensについては次の論文にも出ていました。

D. Yang and A. Nagatomi, "Asuragina, a New Genus of Athericidae (Insecta: Diptera)", Proc. Japan. Soc. Syst. Zool. 48, 54 (1992). (ここからダウンロードできます)

廊下のむし探検 ヤマトスジグロシロチョウ(雑談)

最近はどうも雑談が多くなっています。「虫を調べる」というタイトルで、検索をしたり、虫の各部を調べてみたりするために顕微鏡写真も撮りためているのですが、まとめるのが面倒でつい後回しになっています。

今日から市役所での自然展が開かれます。先日、「虫の眼の不思議」というタイトルで展示パネルを作り、担当の方に持っていっていただいたのですが、ついでに、「手作り図鑑」も展示できればと思ってばたばたと準備しています。結局、全部はほとんど間に合わないことが分かったので、とりあえず、できた分だけでも展示できればと思って準備しています。現在のところ、III巻のカメムシ目が終わり、次は、チョウとシャクガ科などをまとめたVII-I巻の仕上げをしています。もう、学名は全部付して、付録も準備したので、今は各所にコラムを入れる段階になっています。キタキチョウについて少し書いて、次はヤマトスジグロシロチョウについて書き始めたのですが、ここでハタと止まってしまいました。昔、チョウの写真を撮っていた頃には、エゾスジグロシロチョウと呼んでいたのですが、いつの間にかヤマトスジグロシロチョウという名前に代わったので、そのいきさつをちょっと書いておこうと思ったのですけど・・・。

重要な文献が手に入らないので、手元にある図鑑類とフリーでダウンロードできる論文だけが頼りなのですが、学名も和名もこの2、30年の間にいろいろと変化し、まだ、混乱が続いているような印象です。あまりにごちゃごちゃしているので、ちょっと表の形にまとめてみました。



本州と道南との境もあまり明確ではなく、山形あたりとしている論文もありますが、とりあえず、このように書いておきます。私が以前図鑑として使っていたのは上から2番目の「日本のチョウ」(学研、1990、初版は1981)でした。この図鑑では本州から北海道までエゾスジグロシロチョウ Pieris napiの1種だけになっていました。でも、一方、同じ年に出された「原色蝶類検索図鑑」(北隆館、1990)ではnapiは本州亜種 nesis と北海道亜種 pseudonapiに分けられ、しかも属名まで違っていました。さらに、もうちょっと前の藤岡氏の「図鑑日本の蝶」第2版(ニュー・サイエンス社、1981)では同じように亜種なのですが、亜種名が違っています(japonicaとnesis)。上から4番目の図鑑が手元にないので、他の論文に書いてある内容から判断すると、この図鑑では北海道産がさらに道南と道東で別種として区別されているようです。上から4番目の「日本産蝶類標準図鑑」では、北海道道東産はPieris dulcineaの北海道亜種 pseudonapi、本州山形県以南ではPieris nesis japonica、北海道道南産はPieris nesisで、たぶん、基亜種nesis、山形以北の諸県はその中間的な性質をもつと書かれていました。(追記2018/07/23:図書館で「日本産蝶類標準図鑑」を見てきました。それに従って、本文、および、上の表を書き換えました

その後、松田氏、黒田氏、Tadokoro氏の論文では分類について考察ないしは実験をしているのですが、扱われ方は和名も含めてまちまちです。従って、Fujimori氏、Kitahara氏の論文でもさまざまな名前で書かれています。誠文堂新光社の「フィールドガイド日本のチョウ」(2012)は上から7番目になるのですが、本州産と道南産はPieris nesis ヤマト、道東産はPieris dulcinea エゾの全部で2種に分けられ、分布図も出ています。これらを決める根拠としては、翅の紋、発香鱗の形、交尾器、交配実験、DNAによる解析などですが、詳細は見てもよく分かりません。実際にはこれにスジグロシロウチョウ meleteも加わるので話はもっとややこしくなっています。さらには、Pieris japonica japonicaは植物のアセビだったりして・・・。関係ないか。とりあえず、「フィールドガイド日本のチョウ」ぐらいがよさそうな感じですが、「日本昆虫目録」(2013)ではどうなっているのかな。

家の近くのむし探検 ササキリ、蛾など

家の近くのむし探検 第414弾

7月18日にいつもの道路わきの茂みで虫を探しました。最近は熱中症にならないように、虫探しも1時間くらいにしてちょこちょこ出かけるようにしています。





これは別の個体ですが、よく似ていますね。ササキリの幼虫だと思います。道路際の茂みは場所は良いのですが、車が通るたびに風が起きて、撮影は大変です。でも、この日はなぜか車が少なくて、意外にゆっくり撮れました。暑いからかなぁ。





こんな大きな毛虫も二匹もいました。タケカレハの幼虫です。



オニグモですね。以前、コゲチャオニグモと教えていいただいた個体とよく似ています。それかな。





ママコノシリヌグイの花についているのはムラサキシラホシカメムシ



ヒゲナガキバガ科は確かそうですが、似た種が多くてよく分かりません。たぶん、Lecithocera属だろうと思いますが・・・。



こちらはトビモンアツバ



このアリグモは「ハエトリグモハンドブック」の検索表で調べてみました。メス→腹部に光沢がある→胸部は強く盛り上がる、というところからヤサアリグモかなと思いました。



それに、風よけに止まっていたキイロカワカゲロウ



これはたぶん、オニドコロの雄花だと思います。ついでに花を拡大してみました。





こんな花でした。



それにクサギの花が咲き始めていました。まだ、ハエ、ハチ、甲虫が残っているのですが、難問ぞろいです。次回に回します。

家の近くのむし探検 公園での虫探し

家の近くのむし探検 第413弾

最近は異常に暑いのですが、運動を兼ねて16日午前中にちょっとだけ近くの公園に行ってみました。目的はアシナガバエのAmblysilopusの採集です。でも、肝心のアシナガバエは2匹見ただけで、共に逃げられてしまいました。



まずは出かける前にマンションの廊下で見たゴマフリドクガです。



これは外の倉庫の壁にいたものです。「標準図鑑」の図と見比べると、Salma属のオオフトメイガか、ナカアオフトメイガかというところです。図鑑によると、ナカアオは内横線と外横線の間は暗緑色を帯びるが、白色を帯びる個体もいるとのことです。その時はそれぞれの横線の外側は暗黒褐色で、オオのように赤褐色を帯びることがないとのことです。この個体は白色の帯で、外側が赤褐色なので、たぶん、オオフトメイガの方かなと思っています。



これは以前教えていただいたサクラサルハムシかなと思いました。



いつものハキナガミズアブ



これが目的としたアシナガバエのAmblysilopus属かなと思っている種です。この写真でも、すでに飛び出そうとしていることが分かりますが、撮った後、どこに行ったか分からなくなりました。



これはウロコアシナガグモあたりのクモです。♀なので、エゾとの区別がつきません。



これは公園の庭園灯の柱に止まっていたもので、アカシマメイガです。



そのすぐ脇の木の幹に止まっている蛾を見つけました。撮りにくかったのですが、辛うじて撮ってみたら、どうやらトサカフトメイガのようです。



ツツジにはマメコガネがいっぱいいました。



それにツマジロエダシャク





それからイトカメムシもたくさんいました。



ツツジの葉っぱにこんなヒシウンカの仲間がいました。暑いからか、日陰でじっとしています。



これはニレハムシかなぁ。



公園から帰ってきて、マンションの入り口で見たオニユリです。



マンションの廊下ではまたハナノミを見つけました。クリイロヒゲハナノミではないかと思っています。一応、採集したのですが、どうやって調べようかな。





雰囲気はウスモンツツヒゲナガゾウムシ♀のような感じです。「原色日本甲虫図鑑IV」を見ると、「前胸側隆起条は先1/3に達し・・・」と書かれています。よく見ると、前胸側縁には黒い筋が入っていて、中央かそれよりちょっと前まで伸びています。たぶん、これのことかなと思って、ウスモンツツでよいのではないかと思いました。

家の近くのむし探検 バッタ、ハエなど

家の近くのむし探検 第412弾

7月14日に道路わきの茂みで探した虫の続きです。



葉っぱの上にササキリの幼虫がいました。真上から撮って、次は横からかなと思ったら、葉裏に逃げてしまいました。





ハキナガミズアブが相変わらずいっぱいいます。この道路脇の茂みは虫探しにはちょうどよいのですが、車が通るたびに風が起き、写真のピントが合わなくて困ってしまいます。車が通らなくなるまで待てばよいのですが(近くに信号があるので・・・)、つい、いらいらして撮るとこんな具合にピントいまいちの写真になります。



これはヤマギシモリノキモグリバエかなと思っているハエです。これについては以前、属の検索をしたことがあるのですが、モリノキモグリバエ属らしいというところで止まっています(こちらこちら)。





これはシベリアカタアリです。この辺はこのアリが一番多い感じです。



これは何か見覚えがあったのですが、以前撮った写真を見ても載っていません。ネットで探して、ホオズキカメムシの幼虫かなと思っています。



これはヤブクロシマバエ Minettia longipennisかなと思っているのですが、まだ、確認ができていません。



こちらはベッコウハゴロモ



小さなハバチです。採集しようとしたら逃げられてしまいました。この写真で翅脈を見ると、



こんな感じになります。Aのところで、基脈と肘脈がほぼ一点で交わっていて、Bのところに径横脈がないので、ハバチ科ヒゲナガハバチ亜科ではないかと思っています。



ササの葉にいたタケトゲハムシです。それにしてもすごい棘をもっていますね。



最後はマンションの廊下にいたアオイラガです。

雑談)市役所のロビーで開かれる自然展に出展しようと思って、昨日まで準備していました。担当の方が明日の夕方にパネルを取りに来られるという連絡があり、ぎりぎり間に合いました。それにしても眼の写真ばかりなので、展示が浮いてしまわないかと心配です。間に合ったら、展示の横に「手作り図鑑」も置こうかと思って、今日はカメムシ図鑑の仕上げをしました。最後に和名索引と学名索引を入れたのですが、手作業で行ったので結構大変でした。でも、とりあえず完成しました。問題は印刷がうまくできるかですね。

家の近くのむし探検 チョウやトンボの眼の撮影

家の近くのむし探検 第411弾

来週、市役所で自然展が開かれます。それにパネルを出そうと思っています。主題は虫の眼にして、モンシロチョウやシオカラトンボの眼も出そうと思って、14日の日中に河原に採集に行きました。この日も最高気温は36度くらいにまで上がりました。それで、最初、さっさとチョウとトンボの採集をして、その後は日陰で虫探しをしました。それでも1時間半ほど外に出ていたら、暑さでふらふらになってきたので、慌てて家に戻りました。



これは家に戻ってから写したモンシロチョウの複眼です。中心にぼんやりとした黒い点があり、その周りにぼんやりとした斑紋がいくつかあります。このような紋を偽瞳孔(pseudopupil)と呼んでいます。中心の黒い部分は個眼の中にある視物質や色素により入ってきた光が吸収されて黒くなるのだと説明されるのですが、問題は黒い紋が表面になくてやや内部にあるような感じを与える点です。この現象はdeep pseudopupilと呼ばれているようです。何度か本を読んでようやく少し原因が分かってきたのですが、その周りに散在する暗い紋についてはまだ分かりません。



こちらはシオカラトンボの眼です。これにも暗い紋が散在するのですが、フラッシュで光ってしまい中心の黒い紋ははっきり見えません。周辺の複雑な模様の原因が気になりますが、展示では、複眼の上の部分と真ん中から下の部分で個眼の大きさが違うことを書こうと思っています。



個眼を線で結んでみました。途中で分岐する点が何か所かあります。列で数えてみると、上は8列、下は11列。確かに下の方が個眼が小さくなっているようです。この間、トンボの複眼の上と下とで検出される色が違うと書いたのですが、やはり上と下では個眼のサイズも違っていました。まさに、ミズアブと同じですね。

さて、この日はモンシロチョウとシオカラトンボを採集してから、いつもの道路わきの茂みで虫探しをしました。



これはクサギカメムシの幼虫です。「図説カメムシの卵と幼虫」(養賢堂、2004)に出ている絵と比較すると、4齢幼虫の様です。



イタドリの葉にカシルリオトシブミがいるので写したら、近くに別の虫もいました。



まず、カシルリオトシブミの方の拡大です。



こちらは成虫の写真と比べてみると、顔の部分が何となくウスグモスズに似ている感じです。その幼虫でしょうか。





これはいつも見ているセグロカブラハバチかなと思っていたのですが、一応、検索しておこうと思って、「大阪府のハバチ・キバチ類」に載っている検索表を見てみました。ところが、最初の「小盾板は黒色」というところで引っかかってしまいました。セグロカブラハバチの小盾板は黒色ですが、この写真の個体は橙色です。おかしいなと思って写真をよく見てみると、触角が3節です。これはミフシハバチ科。それで、ミフシハバチ科の検索表を調べてみると、アカスジチュウレンジになりました。これかな。





これは先日検索したトウキョウキンバエだと思われます。昨年は検索しようと思って、採集に行ってもなかなか見つからなかったのですが、今年は数が多いです。



これはヤブクロシマバエではないかと疑っているハエです。この日も2匹見たので、そのうち、1匹を採集してきました。顕微鏡写真も撮ったのですが、老人大学の準備やら、市役所での展示の準備やらでそのままになっています。



最後はシギアブ科だと思うのですが、これから先、どうやって調べていったらよいか分かりません。一応、採集しました。

追記2018/07/24:フトツリアブさんから、「シギアブ科と推測していますが,ナガレアブ科にも似たような斑紋の仲間が多いです.」というコメントをいただきました。そんな可能性もあるのですか。検索表によれば、下小盾板の発達の有無で分かりそうですが、シギバブ科は頭盾に特徴があるみたいなので、顔を見ると分かるかもしれません。早速、見てみます。ということで、調べてみると、

1)下小盾板は目立ったほどは飛び出していない
2)R1とR2+3はほぼ一点で交わる
3)頭盾は著しくは膨れていない

ということで、1)が引っかかるのですが、それ以外はナガレアブ科を示唆しているみたいです。さらに、詳しく調べてみると、下小盾板もはっきり見えました。それで、「原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表を使って、初めから検索してみたのですが、やはり、仰ると通り、ナガレアブ科になりました。さらに、Nagatomiにより属の検索もしてみました。その結果、Asuraginaになりました。

A. Nagatomi and B. R. Stickenberg, "Insecta: Diptera, Athericidae", in "Freshwater Invertebrates of the Malaysian Region", (2004). (ここからダウンロードできます)

翅の模様といい、額に黒い模様もあるので、たぶん、クロモンナガレアブ Aruragina caerulescensではないかと思っています。どうも有難うございました



まだ、いろいろといたのですが、次回に回します。道路わきにオニユリが咲いていました。

雑談)市役所の展示の準備がやっと終わりました。タイトルは「虫の眼の不思議」です。これをどのように展示しようかなと迷ったのですが、結局、パワーポイントで作った原案をポスター印刷でA3の4枚に印刷して、セロテープで裏面をくっつけた後で、展示用のコルクボードに大きめのホッチキスの針で打ち付けて止めました。こんなパネルが3枚です。例年はジグソーパネルを入れる大型のパネルに印刷した紙を貼り付けて出していたので、今年はちょっと小さ目のパネルになりました。家族はちょっとグロテスクだから小さい方がいいんじゃないと言っていますが・・・。ともかく、これで、7月の主な行事であった原稿の執筆と老人大学での話、市役所の展示のすべての準備が終わりました。とりあえずほっとしました。

廊下のむし探検 羽アリとハムシ

廊下のむし探検 第1016弾

最近は私のいるところでも35度を越えるような暑さになっています。うっかり虫を探しに行って、熱中症にでもかかると大変なので、あまり虫探しにもいけなくなりました。それで、以前撮った写真を少しずつ調べることにしています。今回は12日にマンションの廊下で羽アリを採集に行ったときに撮った写真です。



最初はこの羽アリです。これは♂アリで、先日検索をしてみました。その結果はオオアリ属になったのですが、自信はあまりありません。



次はこの♀有翅アリです。これは以前、Adachaneさんから、イトウオオアリか、ウメマツオオアリかと教えていただいた種と同じだと思われます。この個体は採集して、先ほど検索をしてみました。♀有翅アリの場合は、「日本産アリ類図鑑」に載っている働きアリ用の検索表で調べていきます。ヤマアリ亜科までは順調に行きますが、次の属の検索でいつも引っかかります。というのは、「中胸の気門は側面に位置する」か、「中胸の気門は背面もしくは背方寄りに位置する」という項目が翅が生えているので使えないからです。この項目はオオアリ属か、そうでないかを決める重要な項目なのですけど・・・。それで、とりあえず両方の道を進みました。オオアリ属でない方を選ぶと、次は前伸腹節気門の形になるのですが、ここでちょっと引っ掛かりました。というのは気門は横に細長くて、そういう選択肢はありません。それで、たぶん、オオアリ属かもと思って検索を進めると、まさにイトウオオアリか、ウメマツオオアリあたりに到達しました。最後は前・中胸背板、前伸腹節、腹柄節の形で決めないといけないのですが、翅が生えているので、どこまでこの検索表が使えるのかどうか分かりません。とりあえず、今のところはウメマツオオアリではないかと思っているのですが、また、今度、まとめて出すことにします。羽アリはともかく難しいですね。(追記2018/07/18:7月9日に一度、殺虫管に入れた羽アリに逃げられたと思っていたのですが(7月11日の記事の1枚目の写真)、実は、殺虫管に入っていました。今度調べてみます





これも採集したので、先ほど冷凍庫から出して検索してみました。まず、「日本産ハムシ類幼虫・成虫分類図説」に載っている検索表で調べてみると、前胸背板後縁前方に横溝があるので、どうやらカミナリハムシ属みたいです。さらに、Kimoto氏の検索表を用いると、上翅の点刻がはっきりしないところからスジカミナリハムシになりました。ついでに顕微鏡写真を撮っておこうと思ったら、触角の端がちょこちょこ動き始めました。どうやらまだ生きているようです。冷凍庫に入れたのが12日なので、もう6日も経っているのですが、寒さには強いのですね。

雑談)
〇市役所の自然展に出す展示は1枚目に成虫の写真だけを載せ、2枚目と3枚目にそれぞれの眼の拡大写真を載せることにしました。成虫写真を載せることで少しはグロテスクさが薄れるかもと思っています。

〇クモの話で書き忘れました。ハエトリグモの前側にある二つの大きな眼で、餌か、結婚相手かを見分けるのですが、どこで見分けるかというと脚のパターンだそうです。♂も♀も大きさがそれほど変化しないとすると、背の模様を見ることができません。横から見ることになると、脚ぐらいしか見えないからかもしれません。それから、横にある6つの眼は焦点を結ばないおかしな光学系になっているそうです。

家の近くのむし探検 ハエ、ハチなど

家の近くのむし探検 第410弾

7月11日に家の近くにある道路わきの茂みで探した虫の続きです。



これは前にも見たことがありました。ミスジガガンボというヒメガガンボ科でした。ガガンボで名前の分かるのはほとんどないので、貴重な存在です。



奥まったところに止まっていたので、「影とり」を外して直接フラッシュをたいて撮りました。かなり大きなハチだったのでヒメバチ以外も検討したのですが、該当する種がいないので、やはりヒメバチかなと思っています。



アリが何かの幼虫みたいなものを捕まえていました。アリも分からないし、幼虫も何だか分かりません。



フキバッタです。それも幸い、オスのようです。それで腹部末端を拡大してみました。



尾肢が強く曲がっています。「バッタ・コオロギ・キリギリス生態図鑑」の絵と比較すると、まず間違いなく、オマガリフキバッタ Parapodisma tanbaensisのようです。



いつも見ているヒメシロモンドクガの幼虫です。「みんなで作る日本産蛾類図鑑」のヒメシロモンドクガのページを見ると、バラ科、クワ科、ブナ科、ヤナギ科、ハンノキ科、マメ科、アサ科、アオイ科。かなりの雑食性です。

追記2018/07/24:通りすがりさんから、「ヒメシロモンドクガの幼虫はツツジ科も好きですし、サクラソウ科も食草とします。まだまだいろいろ食べてそうですね。」というコメントをいただきました。そうでしたね。公園では確かにツツジについていました。以前、アブラムシの勉強をしたときに植物の偏ったアミノ酸から動物に必要なアミノ酸を作り出すのに、腸内細菌が一度アミノ酸を分解して、再び合成しているというような話を読みました。都合のよい腸内細菌を持っているかどうかで食草が決まるということだった気がします。チョウや蛾の幼虫もたぶんそうじゃないかなと思っていたのですが、雑食性というのはどういうのでしょうね。いろいろな種類の腸内細菌をもっているということか、特別な仕組みを持っているということかと書いたら、さらに、「食草は腸内細菌か消化酵素を持っている物しか消化できないだろうから、その辺の事情で決まりそうですよね。確かハスオビヨトウだかヨトウガは、どんどん排泄していくことで、分子の大きな毒は消化しないで排泄していくと言う荒業的な対応で克服していた記憶が。」というコメントもいただきました。雑食性というはなんでもかんでも食べて消化できるものだけ消化するという訳ですか。何だかすごいですね



前翅横脈上の黒環があります。いずれにしても分からないマダラエダシャク類の一種です。



こちらはヨツスジトラカミキリ



こちらはコスカシバみたいです。これは「廊下のむし探検」初登場かもしれません。翅が青く光って綺麗でした。



これはワキグロサツマノミダマシかな。



最後は「日本産カミキリムシ」で検索をしてみました。たぶん、ナガゴマフカミキリでよいのでは。これで7月11日分は終わりです。この頃はまだ涼しくてよかったですね。今はまるで地獄です。

雑談)今日は市役所に展示するパネルの原案を作りました。「虫の眼の不思議」というタイトルにして、いろいろな虫の眼の拡大とちょっとした説明を載せたのですが、かなりグロテスクなパネルになってしまいました。このまま出してよいのかなぁ。ちょっと迷っています。

その準備で動物の眼について書かれた本を拾い読みしました。

M. F. Land and D.-E. Nilsson, "Animal Eyes", 2nd ed., Oxford Univ. Press (2012).

この本は以前衝動買いをして、そのままにしていました。読んでみると、なかなか面白い内容です。特にクモの眼について書かれたところは面白かったです。

ハエトリグモは全部で8個の眼があるのですが、そのうち、前の2つは大型です。大型といってもクモの眼は比較的に小さいので、その分、レンズを厚くすることができて、広い角度から光を取り込むことができます。カメラレンズで言えば、F2に相当し、かなりの広角レンズになります。ただし、受光部がかなり狭いので、狭い範囲しか見ることができません。この部分での視力を計算してみると、0.4くらいには達するみたいです。昆虫でもっとも視力の高いトンボの視力が0.06くらいなので、それよりもだいぶ良いみたいです。ただし、クモはヒトのようにレンズの厚さを変えたり、眼を動かしたりすることができません。その代わり、網膜に6個の筋肉がついていて、受光部の位置を動かすことで、見る方向や距離を変えているようです。また、ヒトの眼では網膜上にR、G、Bの3種の視物質が並列に並んでいるので、一か所ではR、G、Bのどれかしか検出できないのですが、ハエトリグモでは4種の視物質が層になって重なっているので、一か所で4色を同時に見ることができ、色の検出能力や空間分解能も高いと思われます。これに対して、残る6個の眼については分解能は低いのですが、さらに広い角度を見ることができ、もっぱら動きを検出しているとのことです。

この本には複眼を見たときに見える黒い点とか模様についても書かれていました。これは偽瞳孔(pseudopupil)と呼ばれているようです。基本的には個眼の中に入った光が内部にある視物質や色素によって吸収されて光が出てこないので、黒くなるということなのですが、暗い模様が広がったり、まだらになったりする場合はかなり複雑です。どうやら個眼が光の導波路(光ファイバーみたいなもの)になっていて、漏れた高次のモード(光ファイバーを横から見ても光が少し見えること)と色素の空間分布がそのようなパターンを作るという話のようです。かなり本腰を入れて読まないといけないみたいです。

羽アリの検索 オオアリ属?

この間からマンションの廊下にはたくさんの羽アリが来ています。羽アリは図鑑にも出ていないし、調べようがなくて、いつも羽アリとだけ書いていたのですが、先日来、いくつかのコメントをいただきました。ただ、それを確かめようがないので、まずは1匹ずつ捕まえて検索でもしてみようと思って、12日に廊下で2匹ほど捕まえてきました。そのうちの1匹の検索をしてみました。



調べたのはこんな羽アリです。頭部が小さいので、たぶん、♂有翅アリだと思います。♂アリについては「日本産アリ類画像データベース」に絵解きの検索表が出ています。調べてみると、これまで、オオハリアリ属トゲアリ属ケアリ属などの♂有翅アリの検索を試みたことがありました。何度か試みているのですが、ちっとも慣れないですね。それにしても、何で腹部が青いのだろう。



今回はこの13項目を調べて、オオアリ属になりました。検索表が属までしかないので、合っているのかどうかよくわからないのですが・・・。とりあえず、写真で確かめていきたいとお見ます。②と⑤の赤字は調べなかったところです。また、⑬の赤字の部分は検索表が間違っているのではないかと思ったところです。



まず、体長は4.1mmでした。この写真からは腹柄節が1節であることが分かります。⑦については脚、触角などに淡色部があるといえばあるので、何とも言えないのですが、⑦はサムライアリ属を除外する項目なので、たぶん、大丈夫だろうと思います。




①と⑫は写真で判断できます。⑦に関しては大顎は鎌状と言えなくはないので、ちょっと迷ったのですが、これはサムライアリかどうかを判定する項目で、サムライアリに比べると、鎌状ではないのだろうと思いました。⑬については文章の上からは複眼の下が当然狭くなるはずなのですが、なぜか広くなっています。たぶん、誤植かなと思ってOKにしました。



次は顔の拡大です。②については額隆起縁というのは矢印で示した部分だと思います。はっきりとはしないのですが、たぶん、あるということだと思います。④の頭盾は矢印で示した部分で、消失はしていません。大顎には粗い歯が1つあります。それで、⑤は大丈夫でしょう。



頭部を横から見たところです。触角挿入孔は大顎から十分離れています。



触角は数えてみると13節でした。



盾板と小盾板の間は単純な線になっています。それで、⑥はOKです。



脚が重なってはっきりとは見えないのですが、中胸側板には細かい鱗状の彫刻がなされています。



⑩と⑫は前伸腹節気門についてですが、比較的丸い穴が開いていて、場所もほぼ上下の中央に位置しています。それで、二つともOKです。次の⑪については、後胸側腺の孔が白矢印の部分にある種もいるのですが、これにはありません。



⑥は第2節の前部が第1節により覆われていることでOKだと思われます。また、⑬は第1節背板には剛毛が何本も生えています。ということで、一応、すべての項目を確かめたので、オオアリ属で合っているのだろうなと思ったのですが、さて、どの種かなと思って図鑑を見ても、ピンとくる種が見つかりません。それで、合っているかどうか不安に思っています。



ついでに、翅脈に名前を付けてみました。名称は次の論文を参考にしました。

K. S. Perfilieva, D. A. Dubovikoff, and G. M. Dlussky, "Miocene Ants (Hymenoptera, Formicidae) from Crimea", Paleontolog. J. 51, 391 (2017). (ここからダウンロードできます)

この論文の著者は以前、翅脈でアリの分類をしようとした方みたいです。

雑談)
〇今日は猛烈な暑さの中、公園へアシナガバエを探しに行きました。さすがにこれだけ暑いと虫はいませんね。Amblypsilopus属だと思われるのが2匹いたのですが、いずれも写真を撮っているうちに逃げられてしまいました。今日は運動もせずに早々に帰ってきました。

〇老人大学で話す内容がだいたい決まりした。この間の田んぼの虫とマンションの廊下での虫探しの様子を話すことにしました。配る資料も一応作ってこれでとりあえず安心です。残るは市役所の展示です。これがなかなか進みません。あまりアイディアもないので、手作り図鑑を作る方に逃げてしまいました。これまでいろいろな虫についてちょこっと調べた内容を手作り図鑑に付録として付けようと思って、カメムシ目についてその部分を作ってみました。その作業にほとんど1日かかってしまいました。それにしても、これまでいろいろ調べたなぁと我ながら感心してしまいました。確かに冊子の格好にしておけば、また、見ることもあるだろうし、役に立つかもと自己満足しています。でも、まだ、カメムシ目だけ。後りが山のように残っていて、ちょっとうんざりです。

家の近くのむし探検 ハチ、ハエなど

家の近くのむし探検 第409弾

7月11日に近くの道路沿いの茂みに虫探しに行きました。道路沿いなので、車が通るたびに風が起きて写真がなかなか撮れないのですが、その代り、じっくり探すといろいろな虫が見つかります。





これは以前、ハエヤドリクロバチ科Diapriidaeだろうと教えていただいた種みたいです。体長は測っていないのですが、2-3mm程度の小さなハチです。何とか科ぐらいは確かめられないかと思ってちょっともがいてみました。まず、次の本には科の検索表が載っています。

Henri Goulet and John T. Huber (Editors), "Hymenoptera of the world, an identification guide to families", Research Branch, Agriculture Canada (1993). (ここからpdfをダウンロードできます)

ただ、腹部の節を見たり、大顎を見たりしないといけないので、やはりこの写真だけでは検索表が使えません。それで、ハエヤドリクロバチ科の項だけを調べてみました。

1.触角柄節は明瞭に長く、幅の少なくとも2.5倍以上
2.頭部を横から見ると、触角挿入孔は通常はっきり見える
3.翅の縁紋は直線状か点状で、めったに翅脈がなくなることはない

という項目が載っています。触角柄節はかなり長いですし、触角挿入孔が上からでも見えています。また、よく見ると短い線状の縁紋が見えています。一応、合っています。また、次の本には亜科と属の検索表が載っています。

G. E. J. Nixon, "Diapriidae (Diapriinae) Hymenoptera, Proctotrupoidea", Handbooks for the Identification of British Insects Vol. VIII, Part 3(di), Roy. Entomol. Soc. London, (1980).(ここからpdfが直接ダウンロードできま)

写真だけだとほとんど調べられないのですが、触角の節数くらいは分かります。♂♀もよく分からないのですが、とりあえず、この写真の個体は13節なので、これからDiapriinae亜科であることだけは分かりました。それ以上は採集しないと無理みたいです。でも、これでちょっとだけ採集意欲が出てきました。



これはハキナガミズアブです。この日はあちこちで見ました。これは♀の方みたいです。



これはアシナガバエの仲間ですが、フラッシュをたいて撮ると、きまってフラッシュがたかれる前のプレ発光で逃げてしまいます。諦めずに写し続けていると、向こうが諦めるのかやっと撮れます。名前はよく分かりません。



これはたぶんニレハムシだと思うのですが、前胸背板の黒紋がちょっと小さいのが気になりました。



このチャバネヒメクロバエは縄張りでも張っているのか50cmから1m間隔くらいでたくさん止まっています。このハエは以前調べたことがありました



これはグンバイムシの仲間です。「原色日本カメムシ図鑑第3巻」で調べてみると、こんな形をしているのはコアカソグンバイ Cysteochila fieberiかもしれません。初めて見ました。ちょうどこれを撮っているときに知人が近くに来られたので、道路際でおしゃべりをしてしまいました。その間にこの虫もどこかに行ってしまいました。(追記2018/07/24:通りすがりさんから、「コアカソグンバイではなくてヤブガラシグンバイかも。」というコメントをいただきました。索表を見ると、コアカソとヤブガラシは翼状片の膨らんだ部分が暗色かどうかで区別できるようです。コアカソは翼状片の色彩が一様で、膨らんだ部分の後方が広く凹むが、ヤブガラシは膨らんだ部分が広く暗色となってその前方の淡色の部分と対照をなし、後方が凹まないとのことです。凹むというところがよく分からないのですが、膨らんだところが暗色なのでヤブガラシの方みたいです。ご指摘どうも有難うございました





この間調べてトウキョウキンバエかなと思った個体はこの日に採集したものでした。この日は3匹いたので、捕虫網で2匹採集しました。でも、キンバエというとどうも汚いイメージなので、調べた後、手をしっかり洗いました。



これはササキリの幼虫です。



これはマミジロかマミクロかよく分かりませんが、ハエトリの雌です。何を捕まえたのだろう。



これはアワダチソウグンバイです。今頃、セイタカアワダチソウを見ると、いっぱいついています。



ヒメクロオトシブミですが、車が通るたびに風が起きるので、なかなかピントが合いません。



これもピントがあまり合っていないのですが、たぶん、ホソコバネナガカメムシだと思います。

長くなったので、ここで一旦終わります。続きは次回に。

廊下のむし探検 雑談

雑談1)毎年、7月になると老人大学で1回だけの話をすることになっています。もう10数年くらいは続いているのではないかと思います。初めのころはいろいろな話をしたのですが、最近は虫に夢中になっているのでもっぱら虫の話をしています。それに備えて、ここ数年、今頃になると「廊下のむし探検」で見た虫の集計を行っています。今年もやってみました。これまで「廊下のむし探検」に出してきた写真のデータがEXCELに入れてあるので、集計は比較的簡単です。



最初は分類別にこれまで分かった動物の種数を書いています。今年は田んぼの虫を調べたので、鰓脚綱なんていう変な綱が増えました。ホウネンエビです。カメムシ目が二つに分かれているのは、「原色日本カメムシ図鑑」で扱っているトコジラミ下目とカメムシ下目が「陸生カメムシ類」、その他の下目が「その他」になっています。2年前にマンションの改修工事があって、「廊下のむし探検」ができなくなってから、マンション外でも観察を始めたので、鳥綱とかチョウ、トンボの数がだいぶ増えました。




昆虫綱合計は最新の種数の和
%は最新の種数との比をとったもの
1) 日本産生物種数調査(2002) 
2) List-MJ 日本産蛾類総目録 version 2 βバージョン 2016.07.18
5) 日本産クモ類(2009)
6) 日本昆虫目録 第8巻 双翅目(2014)
7) 日本昆虫目録 第7巻 鱗翅目(第1号 セセリチョウ上科 - アゲハチョウ上科)(2013)
8) バッタ・コオロギ・キリギリス大図鑑(2006)
9) 日本のトンボ(2012)
10) 新訂原色昆虫大図鑑III(2008)
11)石綿進一、竹門康弘、陸水学雑誌 66, 11 (2005)
12) 竹松葉子、家屋害虫 28, 29 (2006)
13) 町田龍一郎、増本三香、家屋害虫 27, 73 (2006)
14) "Earwigs of Japan"
15) 日本列島の甲虫全種目録(2018)
16) 日本産昆虫目録 第4巻 (2016)
17) 日本産昆虫目録 第5巻 (2016)

この表は観察した種数を日本産の種数と比較したものです。一番右の欄の「日本産」はできるだけ最新のデータを載せようと思って文献を探したものです。その一番下の昆虫綱合計はそれらの数字を足し合わせ、データのないものは「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っているデータを足し合わせたものです。だから、かなりいい加減です。薄い黄緑色になっている欄が今までに観察した種数と、できるだけ最新の種数との比を取ったものです。

蛾は以前収集していたので見たら名前がだいたい分かるし、種数も多いので、統計的には一番信頼できるデータだと思います。後でお見せしますが、「廊下のむし探検」初登場の蛾の種数はこの1、2年でほぼ頭打ちになっているので、ここに出ている14%くらいがほぼ限界値に近いのではないかと思います。そういう目で全体を眺めてみると、カメムシの異翅類、バッタ、カゲロウ、チャタテムシなどは結構いい線を行っている感じです。これに対して、ハエ、ハチ、カメムシのうち同翅類、甲虫などの大票田が2-4%というのはまだまだこれからだなぁという感じを与えます。また、アザミウマとか、トビムシなどはまったく手の出せていないこともよく分かります。



これは蛾の月別の初登場数と累計種数を表したグラフです。EXCELにデータを入れておくと、こんなグラフもそれほど苦労せずに作れます。まず、データをブログの日付でソートします。それで、観察を始めた最初からある月の終わりまでで種数を調べます。種名には重複がいっぱいあるのですが、重複を除いて種数を調べる方法は以前書きました。ネットで見つけただけなのですが・・・。とにかく、こうやって毎月終わりまでの累計種数を調べて、前の月との差を取れば棒グラフができますし、そのまま折れ線グラフにすると累計種数の変化になります。2016年前半にマンションの改修工事があり、「廊下のむし探検」ができなくなり、それ以後は公園や道路わきの茂みで探すことが多くなったのですが、それほど違和感なくつながっています。でも、最近は増え方が少なくなってそろそろ限界に近付いているかなという感じです。なお、棒グラフのところに書いた数字は棒グラフの一番高いものの値です。



ついでに甲虫もやってみました。こちらはブログを始めた頃には名前がほとんど分からない状態だったのですが、その後、皆様のおかげで少しずつ知識も増えてきて、今まで分からなかった種も次第に分かるようになってきました。グラフを見ると、最初の年の増え方が蛾に比べるとかなり少なく、その後も少しずつ増えている様子が分かります。全体として見ると、最近になっても累計種数がほぼ直線的に増加しているので、まだまだ伸びしろが大きいことが分かります。蛾と同じ14%になるには1820種まで行かなくてはならないので、当然でしょうけど。

雑談2)この老人大学と一緒の頃に市役所ロビーで自然展が開かれます。これに協力して毎年パネルや標本などを展示しているのですが、今年もその季節がやってきました。蛾を出したり、カメムシを出したり、昨年は「すすきの葉はなぜ切れる」などの植物を出したのですが、いよいよネタ切れになってしまいました。それで、今年は虫の眼について出そうかなと思っていて、コカゲロウのターバン眼、クロバネキノコバエの眼橋、ハエトリグモの眼、トビムシの小眼、ツマグロキンバエの縞模様のある眼、この間撮った上下で異なるミズアブの眼などの写真を集めました。後、通りすがりさんから教わったモンシロチョウ、ヤマトシジミ、アミメカゲロウなどと、トンボの眼を写そうと思って、今日は網を持って採集に行こうと思っています。眼の写真と全体の写真、それに簡単な説明を入れたパネルにしようと思っていますが、期限はあと1週間。間に合うかな。

雑談3)この間、ちょっと変わったハエを見つけました。



よく見かけるハエなのですが、6月9日に用水路脇の茂みで見つけたものです。ネットで検索するとヤブクロシマバエ Minettia longipennisというのによく似ている感じです。実際にそうなのか、まずは属の検索をしてみようと思って意外な苦戦を強いられています。シマバエ科の属の検索には、いつも株式会社エコリスのホームページにある「日本のシマバエ科 属への検索試案」を使わせていただいているのですが、これ、意外に難しいです。例によって絵が載っていないのは仕方がないとして、MND以外には文献が手に入らないので、まさに検索項目を文章だけで理解していかなくてはなりません。昨日は「中胸側板の過剰剛毛」という言葉に引っかかってしまいました。これはMelinomyiaに関係する項目で出てきたのですが、過剰とはなんぞや。それで、Melinomyiaについて書かれている文献を探しました。笹川氏の論文が見つかり、中胸側板の前腹側に剛毛が一本あり、通常後縁部にある剛毛の3/4の長さを持つとのことです。その剛毛の有無を尋ねているみたいです。これでやっとその意味が分かりました。次は中胸背板の剛毛の名称です。普通、剛毛が列をなして並んでいるので、比較的容易に名付けられるのですが、このハエはぽつっぽつっと1本だけ生えている剛毛が多いので、どれに帰属してよいのやら分かりません。Minettiaの剛毛についてある論文を探しているところです。ハエ1匹に何日かかっていることか。

虫を調べる トウキョウキンバエ?

今日は7月11日に採集した次のキンバエについて調べたという話です。



この写真の個体はキンバエの仲間なのですが、普段よく見るキンバエと違います。実は、外観からトウキョウキンバエかもと思って、昨年9月に生態写真を使って悪戦苦闘していたのですが、結局、採集しないとよく分からないという結論になっていました。それで、今回は捕虫網を使って2匹採集してきました。

検索には田中和夫氏の次の論文に載っている検索表を用いました。

田中和夫、「屋内害虫の同定法 (3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003). (ここからダウンロードできます)

タイトルが屋内害虫なので、屋外で採集したものにどれだけ当てはめられるのかはよく分からないのですが、とりあえず調べてみました。



検索では上の4項目を調べることで、予想通りトウキョウキンバエに到達しました。特に④の前半部分の記述が重要で、これで普通のキンバエや、トウキョウキンバエによく似たミヤマキンバエなどと区別することができます。それで、写真を使ってこれらを確かめていきたいと思います。



横から撮った全体像を撮り忘れたので、こんな写真で全体を見てください。まず、体長は8.5mmでした。①は問題ないでしょう。④の後半部分の記述は腹部背板の色についてですが、どれを第1節にするのか分からなかったので、論文に載っている絵を参照しました。そうすると、第2節から見えていて、第2節は黒ないし濃紺色、第3,4節は後縁のみ濃紺色であることが分かります。ただ、同じような色のハエとして、ミヤマキンバエやニセミヤマキンバエがいるので、腹部の色だけだと区別がつかないようです。



次は翅の基部です。いつものように、赤字は確かめられなかったものです。まず、②のR脈の基幹部に毛がないのは一目瞭然です。これはこの間調べたホホグロオビキンバエと比べると違いがよく分かります。次の③の前半部分はこの写真で示したように前縁脈基部片の色は黒色で間違いありません。後半は亜前縁脈基部片なのですが、亜前縁脈はどうやらR脈基幹部の裏側を走っているようです。従って、その基部片はよく分かりませんでした。



次は胸部側面です。②の前半部分、翅下隆起は写真で示した通りで、毛の生えていないことは確かめたのですが、写真を撮るのを忘れていました。後半は中胸下前側板で、写真のように前側に2本、後ろ側に1本の刺毛が生えています。



で、問題の中胸下側背板の毛です。暗くて写しにくかったので、2枚ほど角度を変えて写したのですが、この写真で黒い直立刺毛がかなりの数生えていることが分かりました。これで、たぶん、キンバエやら、ミヤマキンバエやらの可能性を除外できたのではと思っています。



最後は下覆片についてです。下覆片は「新訂原色昆虫大図鑑III」には基覆弁と書かれている部分です。この上肋部という基部にある刺毛群が前後二つあるというのがよく分かりません。翅が邪魔をしてなかなか写せないので、最後展翅までして写したのですが、刺毛群1つは明確なのですが、もう一つがはっきりしません。写真の?マークの部分を指すのかなと思っていますが、よく分かりません。下覆片の上面に毛がないというのはたぶん大丈夫でしょう。ということで、ほとんどすべての項目をチェックして、特に④は確かそうなので、トウキョウキンバエで間違いないと思うのですが・・・。

ついでに、各部の名称をつけてみました。



まずは翅脈です。これは「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っているイエバエ科の図を参考にしながら、名称をつけてみました。



次は刺毛の配列です。やはり同じ図鑑のヤドリバエ科の図を参考にしてつけました。略号については以前書いたものを用いました。ただ、prs(presutural seta)というのは「絵解きで調べる昆虫」の検索表に載っていたもので、これの位置でクロバエとニクバエなどが分けられることになっています。また、subasとbsはそれぞれ、subapical scutellar seta、basal scutellar setaの略です。



次は側面です。これも図鑑を見ながら名前を付けてみました。



次は頭部です。



そして最後は腹部末端です。これは♂で、キンバエなどについては似たような構造の絵が論文に出ていました。ただ、トウキョウキンバエの図はなかったので、同じかどうか分かりません。

論文をぱらぱら見ると、トウキョウキンバエは東アジア、オーストラリアなどに広く分布する種で、特に法医学の面で注目されているそうです。というのはウジの生え方や成長の仕方で、死後の時間を割り出せるということだそうです。また、詳しく読んだら報告します。

家の近くのむし探検 大雨の後初めての公園

家の近くのむし探検 第408弾

一昨日、大雨の後、初めていつも行っている公園に行ってみました。ここより少し北にある能勢地方では3日間で400mmも降ったそうです。でも、公園はいつもと変わりありませんでした。





まずはこのハエトリグモです。いつものように、「ハエトリグモハンドブック」を見ると、カラスハエトリに一番近いようです。ヒメカラスハエトリにもちょっと似ていますが・・・。



それからいつのもマメコガネです。食べ跡がよく分かります。



ついでに横からも撮っておきました。





今頃はアシナガバエがいっぱいいます。翅脈から、Amblypsilopusかなと思っている個体なのですが、一度、調べてみようと思って検索表を見てみました。まず、亜科への検索表は「日本産アシナガバエ科の亜科への検索」に載っています。



そうすると、頭頂は凹むという条件で、一発でホソアシナガバエ亜科 Sciapodinaeになります。ここから先は次の論文に載っています。

D. J. Bickel, "The Australian Sciapodinae (diptera: Dolichopodidae), with a review of the oriental and Australasian faunas, and a world conspectus of the subfamily", Australian Museum Journal, Suppl. 21 (1994). (
ここからダウンロードできます)

この論文は東洋区とオーストラリア区のホソアシナガバエ亜科について書かれたもので、属への検索表も載っています。ただ、採集していないので、はっきり分からないところがあるのですが、気の付いた点を写真に書き込んでみました。



こんなところを見て、検索表を追いかけてみたのですが、どうもうまく行きません。そもそもAmblypsilopus属だけでも14種群に分けられています。一度、採集して調べてみるかなぁ。先が長い感じもしますが・・・。(追記2018/07/24:フトツリアブさんから、「Sciapodinaeの属の検索は,一寸のハエのスレッド(No.5792)に,三枝氏が作成したファイルがあります.参考にしてください.」というコメントをいただきました。情報をどうも有難うございました。
今度、採集してきて調べてみます。でも、アシナガバエは前にも挫折したことがあるので、ちょっと不安です



これはもっと小さなハエです。これもアシナガバエの仲間かな。



これはササグモ



それに桜の木に止まっていたツトガ





それに公園の照明に止まっていたホシホソバ





この日はこのハキナガミズアブが多かったです。



こちらはエサキモンキツノカメムシ



小さかったのでニイニイゼミの脱皮殻かな。



最後は照明の柱に止まっていたモトグロコブガです。この日はこんなところでした。

雑談)この間からExcelに入力していた画像リストが6月21日分までできました。これは今までこのブログに出してきた画像をまとめたもので、画像からその日のブログをすぐに見られるようにしたものです。最後まで迷っていたのは、ハエ目とハチ目です。これは前回種別の画像リストを作ったので見やすくなったのですが、データを更新しようとするととてつもなく大変です。それで、また、元の科別に戻してしまいました。これを基に写真を冊子にした「図鑑もどき」を作っています。写真はすでにほとんど貼り付けたのですが、学名を入れたり、コラムを加えたり、今までの「虫を調べる」で書いたものを付録や別冊にしたりする作業に時間がかかってしまい、まだ、あまり進んでいません。そうこうするうちに、また、画像リストの更新をしなければならないし・・・。いつまでこんなことをやっているのだろう。

廊下のむし探検 羽アリのオンパレード

廊下のむし探検 第1015弾

7月9日、外出からの帰りにマンションの廊下を通ったら、壁に何だか虫がいっぱいいるので、急いでカメラを取りに家に戻り、家の近くだけ撮ってみました。何とみんな羽アリ。名前はちっとも分かりませんが・・・。



これは小さな羽アリです。ハリアリ亜科かなと思ったので、また、家に戻って毒瓶を取ってきました。一応、中には入ったのですが、欲を出して、ほかの羽アリを入れようと口を開けた途端に逃げられてしまいました。ショックでこの日は採集はやめて写真だけにしました。



これは中っくらいの羽アリです。



これは今のと同じかな。(追記2018/07/24:Adachaneさんから、「ウメマツオオアリかイトウオオアリ」というコメントをいただきました



これはもうちょっと大きかったかな。この間、トビイロケアリだと思った種と同じかも。



これは上と同じ種かどうか分かりません。



やっと分かる種が出てきました。ヒラズオオアリです。頭が四角なのでよく分かります。



これは2番目の写真と同じ種かな。(追記2018/07/24:Adachaneさんから、「ウメマツオオアリかイトウオオアリ」というコメントをいただきました



これは床を結構速く動き回っていました。やはり何だか分かりません。(追記2018/07/24:Adachaneさんから、「8枚目はアメイロケアリと言ったとこだと思います。 」というコメントをいただきました。羽アリ、なかなか難しいです。そう思って、今日は2匹ほど捕まえてきました。今度、属の検索をしてみるつもりなのですが、できるかなぁ。コメントどうも有難うございました。



最後はチャハマキ。羽アリも捕まえてくれば、属くらいは分かったかもしれません。でも、今日はキンバエの同定で手一杯でした。

廊下のむし探検 蛾以外の虫

廊下のむし探検 第1014弾

7月8日にマンションの廊下で見つけた虫の続きです。久しぶりに歩いてみると、いろいろと虫がいるものです。



最初はこんな虫です。これは以前にも見たことがあります。たぶん、ナワコガシラウンカ。これまで3月と11月に見ていました。一年中いるのかな。



こんな甲虫がひっくり返っていたので、もとに戻してやりました。



カナブンみたいですね。それにしてもあちこちでひっくり返っているのですが、自分だけではどうにもならないのかな。





これはゴミムシダマシだろうというのは分かるのですが、それから先がよく分かりません。調べてみると、以前にも名前調べで迷っていました。そのときはコマルキマワリにしていたのですが、まだはっきりしません。



これはキボシツツハムシ



それにケブカカスミカメ



これはハナノミでしょうね。頭部の後縁が丸くえぐれているのが気になりました。過去の記録を見てみると、クリイロヒゲナガハナノミとした個体と似ているような気がするのですが、図鑑を見ても丸いえぐれのことは書いてありません。よく分かりません。



今頃、羽アリはたくさんいるのですが、ちょっと変わっていたので写しました。でも、何だか分かりません。(追記2018/07/24: Ada chaneさんから、「ハネアリはハリブトシリアゲアリあたりだと思います。 」というコメントをいただきました。羽アリはパッと見てもみな似ていてよく分かりません。これから勉強してみます。ご教示、どうも有難うございました



これはオオメコナガカワゲラだろうと思っている個体です。オオメコナガカワゲラ Flavoperta thoracicaはカワゲラ科モンカワゲラ亜科キコナガカワゲラ属に入っているのですが、「原色川虫図鑑成虫編」によると、キコナガカガゲラ属は、交尾器の特徴以外には、①単眼は2個、②体色は黄色あるいは黄褐色、③頭部側面の複眼より後方部分には長毛があるとのことです。一応、調べておきました。



①の単眼は確かに2個です。②はOKでしょう。③の長毛はちょっと暗くしてみると、微かに見ています。たぶん、大丈夫なのではと思いました。



トビケラはまだ手つかずです。ちょっと特徴がありそうなのですが・・・。



これはヒゲナガサシガメです。



背景に何もないときにフラッシュをたくとこんな風に背景が黒く写ってしまいます。はっきりしないのですが、この間、河原でたくさん見つけたアオバネサルハムシではないかと思います。



これはアナアキゾウムシ Dyscerus属の仲間ですね。Dyscerus属も種類が多くてよく分からないのですが、外形からはクリアナアキゾウムシとか、リンゴアナアキゾウムシとかが似ています。この両者の違いは「原色日本甲虫図鑑IV」に絵が載っています。小盾板、上翅端、触角第7中間節で見分けるようです。上翅端はこの写真ではよく分かりませんが、よく見ると小盾板は光沢がありそうです。



触角はこの写真のように中間節第7節は矢印で示したようなおわん型をしていて、図鑑の絵とよく似ています。従って、クリアナアキゾウムシが今のところ候補です。



これはドウガネサルハムシかな。(追記2018/07/24;通りすがりさんから、「サルハムシはアオバネサルハムシっぽいかな。」というコメントをいただきました。図鑑の説明をよく読むと、アオバネは、「前胸背板は基部のやや前方で最も幅広く、その先端は鋭く突き出し・・・」とあり、まさにその通りです。触角もアオバネの方が長い感じだし・・・。Kimoto氏の検索表では、BasileptaとScelodontaは跗節爪がbifidか、appendiculateかで分かれるので、写真じゃどうしようもないです。ご指摘どうも有難うございました



そして、シマサシガメ



それにマダラスズ♀。



天井からはヘビトンボがぶら下がっていました。

雑談)今月末、高齢者大学で話をしないといけないのですが、まだ話がまとまっていません。毎年話をしているのですが、今年はネタ切れです。それでとりあえず、これまで「廊下のむし探検」で見つけた虫の集計をしてみました。例年、今頃集計をしていますね。途中でデータを入力しているExcelが開かなくなったり、事故続きだったのですが、何とか集計が終わりました。また、今度、結果を出すことにします。

廊下のむし探検 蛾

廊下のむし探検 第1013弾

豪雨に襲われ、不要不急の外出は避けてくださいという緊急速報が来たので、3日間、家で缶詰になっていました。昨日の朝早く、やっと土砂災害警戒地域の解除が出たので、午前中にマンションの廊下を歩いてみました。久しぶりの青空が見えました。虫たちも雨宿りをしていたのか、探すと結構いました。まずは蛾です。





まずはこんな蛾です。この日は2匹いました。ツガヒロバキバガ。これまで6月と7月に見ていました。





これも2匹いました。マエモンシマメイガ



廊下に止まっていたこの仰々しい蛾はナシイラガだと思います。





これも2匹いました。たぶん、コウンモンクチバ



これはエゾギクトリバ



そして、これはホシオビコケガ。これはこれまで5月、7月、10月に見ていました。



これはウスモモイロアツバ



そして、これはウスキコヤガ



これはたぶん、ヤマガタアツバ



廊下の壁に大きな蛾が止まってきました。蛾もだいぶ慣れてきたのですが、こんなに大きな蛾がいると未だにドキッとします。たぶん、キシタバです。



これはクロモンアオシャク。蛾は結構いますね。



これはたぶん、マダラウスズミケンモン



そして、これは地下駐車場の天井に止まっていたアカシマメイガ





最後はこのメイガです。これは両方ともウスグロノメイガ Bradinaの仲間です。この仲間にはシロテン、ヒメアカ、アカ、モン、オオの5種がいます。いつもその違いがよく分からなくて困るので、一度まとめてみようと思って、それぞれの外観上の特徴を「標準図鑑」と「大図鑑」から読み取り、表にまとめてみました。でも、かなり長い文章を書き写したので、著作権に引っ掛からないかとだんだん心配になってきました。それで、表の方は載せるのを止めて写真だけにしました。



まずは上の方の個体です。腹部が長いので♂だと思われます。それで、♂の特徴と比較してみました。翅端が尖り、外横線は外方に緩やかに湾曲するというところから、アカウスグロノメイガ♂ではないかと思いました。アカウスグロノメイガ♂の後翅後縁部は袋状になっているという特徴があります。図の矢印の部分が折れているように見えるので、これのことかなと思ったのですが、どうだか分かりません。



これはもう一匹の方です。腹部が長くないので、♀かなと思いました。そうだとすると、前翅外横線がほぼ直線的なので、シロテンウスグロノメイガ♀ではないかと思ったのですが、どうでしょうね。

虫を調べる ミズアブ科Sarginae亜科

タイトルは「虫を調べる ミズアブ科Sarginae亜科」となっていますが、実は、先日検索をしたCephalochrysa属♂Microchrysa属♀の検索をもう一度ほかの文献に載っている検索表で試みてみたという内容です。この文献はフトツリアブさんから教えていただいたもので、本の中の一節です。

R. Rozkosny, "2.24 Family Stratiomyidae", in "Contributions to a manual of palaeartic diptera" Vol. 2, eds. L. Papp and B. Darvas, Science Herald, Budapest (1997). 

前回まではNagatomi氏の次の論文を用いていました。

A. Nagatomi, "The Sarginae and Pachygasterinae of Japan (Diptera: Stratiomyidae)", Transactions of the Royal Entomological Society 126, 305 (1974). (ここからダウンロードできます)

この論文はSarginaeとPachygasterinae亜科に関するものだけだったので、亜科の検索表が載っていませんでした。今回は亜科の検索から試してみたいと思います。写真はすべて先日のものを用いました。実は、昨日出そうと思って準備していたのですが、若干、引っかかるところが出てきたので、今日まで持ち越しました。例によって私の拙い語学力で訳しているので間違っているところもあるかもしれませんが、悪しからず。



Cephalochrysa属Microchrysa属に関係する部分だけを抜き出したものです。若干、翅脈の名称などが前回までとは違うので、翅脈が出てきたときに説明します。



まず、Cephalochrysa stenogaster♂ではないかと思っている個体です。この場合は上に書いてあるように①→②→③→④aという手順で検索を進めていきます。前回までの写真を使ってそれらを見ていきたいと思います。



まずは翅脈です。翅脈や翅室に括弧書きしてあるものが今回の名称で、括弧のないものは前回と共通の名称です。また、dmは中室のことです。①はM4(CuA1)がこの写真の矢印で示したように脈でつながるか、それとも中室に直接につながるかという点ですが、この写真の場合は脈でつながっているので①はOKです。③はR4脈がR5脈から十分な角度をなして離れているかということだと思います。また、この本の翅脈の名前の付け方ではM脈は全部で3本です。これで、③もOKです。



次の②は小盾板の後縁に突起ないし隆起が見られないかという項目ですが、これに対抗する項目では2つの明瞭な突起か先の尖った隆起があるということなので、そんなものは見られません。それで、②もOKです。この①から③までを調べることでSarginae亜科であることが分かりました。



次は触角鞭節がいくつに分かれるかということで、番号を振ったように3小節に分かれ、先端に触角刺毛が出ています。これで、Cephalochrysa属であることが分かり、日本産はstenogaster一種なので、これで決まりです。

次はMicrochrysa属の方を調べてみます。



こちらは①→②→③→④b→⑤aという具合に検索は進んでいきます。これも先日の写真で確認していきたいと思います。実は、若干問題がありました。



①と③は先ほどと同じで、共にOKです。問題は⑤です。肛室はcua(cup)と書いた翅脈で囲まれた翅室のことです。肛室の幅と長さの比を測るのに、Aと書いたように一番長い距離と一番幅の広い距離の比を取ると3.52倍になりました。検索表の表現では長さが幅の約2倍だったらMicrochrysa、2倍以上ならそのほかの属になります。それで、⑤b→⑥→⑦a, bに進んでみたのですが、⑦でそれ以上進めなくなってしまいます。上のRozkosny氏には翅脈の絵が載っており、Nagatomi氏の論文には写真があるので、同じ方法で測ってみました。



ついでに検索表の⑦で出てくる属についても調べてみました。Aと書いた欄が長さと幅の比です。実は、Rozkosny氏の論文の絵もNagatomi氏の写真でも共に2倍をはるかに越えてしまいます。それでも、その他のPtecticusやSargus、Chrysochromaが5倍前後なので、それと比べるとMicrochrysaはかなり小さな値だと言えます。ついでに、最初に調べたCephalochrysaについても最下欄に載せておきました。これと比べてもやや小さいことが分かります。

2倍というのはいったいどこを測ったのだろうと思って翅脈をつらつら眺めていたのですが、長さとしてbm室とcua(cup)室の境にある脈の長さを測って比を取ってみました(上の写真でBと書いてあるところ)。そうして求めた結果がこの表のBの欄の値です。そうすると、Microchrysa属はすべて2倍以下になり、その他の属では2倍以上になるので、2倍という基準で区別することができます。実際にはどの値を測るのかは知りませんが、とりあえず、このように測るとMicrochrysa属だけを分離できそうです。ということで、cua(cup)室が論文の絵や写真に比べるとこの個体は若干狭いのですが、たぶん、Microchrysaでよいのではと思いました。



小盾板後縁の突起はありません。



最後は触角鞭節の小節の数です。Nagatomi氏の論文では3節と数えていたのですが、今回のは先端の黒い毛のある部分も数えて4節としているようです。また、触角刺毛は先端ではなく、そこから少しずれた位置から出ています。これが亜末端という意味かと思われます。ということで、この個体はMicrochrysa属だろうということになりました。確かに、フトツリアブさんの言われるようにこちらの方が簡単な感じがします。

ところで、ちょっと気になることが出てきました。Nagatomi氏の論文ではMicrochrysa flaviventris♂の鞭小節は数が少なく、これがjaponicaとの区別点になっていました。そのことはRozkosny氏の論文の検索表には触れられていません。



それで、赤字で書いた④bに注釈をつけておいた方がよいかもと思いました。下に書いたように、( )内に但し書きで入れておいたらよいかなと思ったのですが、どうでしょう。検索も複数の検索表で試すといろいろと勉強になっていいですね。検索結果にも確信が持てるようになるし・・・。

雑)今日は朝から晴れで、昨日までの雨がうそのようです。3日間ほど強い雨が降ったり、弱まったりが続いていました。その間、危ないので外出を控えておりました。何度も何度もびっくりするような音でスマホの緊急速報が鳴っていましたが、ようやくそれも終わりました。と思ったら、突然、緊急速報がけたたましく鳴りだしました。土砂災害警報が解除になり、一部地域の避難指示が避難勧告になったそうです。解除するのにあんなに大きな音は要らないのですけどねぇ。

廊下のむし探検 雑談

スマホの緊急速報がとてつもなく大きな音を立てるので、そのたびに飛び上がっています。マンションの窓から外を覗いてみると、いつも行っている川も水量が増し、水がごうごうと音を立てて流れています。こんな日に虫探しをするのもどうかと思って、今日は家でじっとしていることにしました。



1)ハナアブ科Cheilosia属の検索をしているときに、検索表に出てくる後基節橋がよく分からないと書いたら、フトツリアブさんから、後基節窩の後ろ側にある構造で、MNDに絵が載っていると教えていただきました。それで、早速、その部分の写真を撮影してみました。これは後脚の根元を後ろ側から写したものです。MNDの絵と比べてみると、黄矢印の部分がそれだと思うのですが、どう見ても膜質のような感じです。「橋」というからには硬質のものだと思うので、この個体は後基節橋がないのかなと思いました。

2)今日は次の論文を読んでみました。

R. Futahashi et al., "Extraordinary diversity of visual opsin genes in dragonflies", Proc. Nat. Acad. Sci. 112, E1247 (2015). (ここからダウンロードできます)

トンボの視覚に関係するオプシンというタンパク質をコードする遺伝子を調べたら、15~33種もあり、幼虫と成虫の複眼の背側、腹側、単眼でそれぞれ種類が違っていたという内容の論文です。

二橋亮、「トンボのRNAseq解析とオプシン遺伝子―マニュアル・アセンブリの重要性―」、蚕・昆虫バイオテック 85, 13 (2016). (ここからダウンロードできます)

日本語の解説もあったのですが、テクニカルな内容がほとんどで、どうしてこんなにオプシンの種類が多いのかとか、幼虫、成虫の複眼の背側、腹側、単眼でなぜ異なるオプシンが使われているのかというような、知りたい部分についてはほとんど書かれてはいませんでした。いろいろなトンボの種で調べておられるのですが、簡単のためにアキアカネに限って要約してみることにします。

まず、動物の眼には視物質があり、これが光を検出する一番根本の物質になっています。この視物質はロドプシンと呼ばれ、オプシンというタンパク質とレチナールという色素がくっついてできています。オプシンの構造が微妙に変わるとレチナールとの結合の仕方が変わり、検出する色も変化するという仕組みになっています。ヒトの場合には、赤、緑、青の三原色に対応する3種類のロドプシンと、暗いところで明暗を検出するロドプシンの4種類のロドプシンを持っています。この4種類のロドプシンに対応して、4種類のオプシンがあり、それぞれ4種類の遺伝子が対応しています。

哺乳類はもともと夜行性だったので色覚については3種類のロドプシンだけを持っていますが、鳥などは紫外線を検出するロドプシンも持っているので、4原色になっています。一方、たいていの昆虫は赤色が見えないので、紫外、青、緑の3原色になっています。これに対して、トンボはこれが10数種以上もあるということなのです。それらをアキアカネでまとめてみると次の表のようになります。



Rhはロドプシン、UVは紫外線、SWは短波長、LWは長波長の略です。従って、RhUVと書いたものは紫外を検出するロドプシンに対応するオプシン(正確には遺伝子かな)という意味だと思います。つまり、紫外線を検出する視物質は幼虫でも成虫でも変わりがないということです。短波長というのは青色付近、長波長というのは赤色付近を表していると思いますが、これを検出する視物質は幼虫、成虫の背側、腹側でそれぞれ違います。

視物質の種類が多いというのは、それだけ色を精密に検出できるのだと解釈すれば、幼虫では主に赤色側を検出し、成虫の複眼の背側は主に青色付近を、そして腹側は赤色付近、それに単眼も赤色付近を検出していることになります。このような違いは幼虫や成虫の生活環境や生活様式に適応しているのだと考えられます。例えば、成虫の複眼の背側は主に青空を見ているので青色付近の視物質の種類が多いということは分かりますが、普段はそれほど色を細かく見る必要がなさそうな気もします。これに対して、筆者はたそがれ時の狩りのときに、シルエットになって飛ぶ餌となる虫を見分けないといけないので、それに役立つかもしれないと考えているようです。一方、複眼の腹側は縄張りや♀を発見するとき、餌をとるときなどに使うので、青よりは赤色の色検出を精密にした方が有利だというようなことだと思います。ただ、ヒトでは3原色で十分に細かい色の違いを検出しているのに、どうしてこれほどまでに多くの視物質を用意しないといけないのかというのはよく分かりません。ひょっとすると、3原色の視物質の情報からそれを色に変換する脳の機能が十分でないからかもしれません。いずれにしても、複眼の上下で検出する色が違うことだけは確かみたいです。

追記2018/07/12:通りすがりさんから、「トンボが色を見分けるのに多くの視物質が必要なのは、脳が発達していないから…と言うのはありそうな話ですね。昆虫の脳は小さな脳神経節ですし。また、他の昆虫より多いと言うのであれば、トンボが比較的原始的な特徴を残していることにも関係あるのかもしれませんね。複眼の模様を見る度にいろいろ想像できるネタですね。アミメクサカゲロウやモンシロチョウの複眼の模様、ヤマトシジミと言った極普通のチョウの複眼が何故他のシジミチョウと違うのか…なんて疑問に思うと、かなり深みに嵌まりそうですが。」というコメントをいただきました。

虫の色覚は面白そうですね。ヒトの場合はR、G,Bの視物質で検出した光量をアナログ的に組み合わせて無限に多くの色を検出しているのですが、トンボはデジタル的に取り出しているのかもしれません。例えば、AからEまでの5つの視物質がある場合、これはAとCが検出されたから〇色、これはA、B、Dが検出されたから〇色という具合にです。そうすると、全部で32通りの色が検出できることになります。幼虫と成虫複眼の上下の違いは生活をしていく上で必要な色が少しずつ異なるので、別の視物質を用意したということかな

3)夕方から次のハエを調べてみました。



これは6月9日採集したものですが、吸虫管で吸ってそのまま冷凍庫に入れておいたら、翅は破れ、触角が取れてしまっていました。それでも、「絵解きで調べる昆虫」で検索してみると、シマバエ科になりました。そこで、株式会社エコリスのホームページにある「日本のシマバエ科 属への検索試案」を使って調べてみました。その結果、Minettia属になったのですが、どうだか分かりません。今、顕微鏡写真を整理しているところです。

4)雨も降っているし、何もできないなと思って、頼まれていた原稿を書いてみました。2ページの量だったので意外に早く書きあがりました。やはり日ごろブログをせっせと書いているのが役に立ってますね。

虫を調べる ハナアブ科Cheilosia属♂?

最近は雨が多くて、虫探しにいけなくて困っています。やむをえず、以前採集して冷凍庫に入れていた虫を少しずつ取り出しては調べています。今回は6月14日に採集したハナアブらしい個体です。



記録を見ると、これはいつもの公園ではなく、田植え体験をしていた山裾の用水路脇で見つけたものです。雰囲気、ハナアブ科だと思ったのですが、それ以上は分からないので、採集していました。翅脈を見ると、ハナアブ科は確かそうなので、いつものMND(Manual of Nearctic Diptera Vol. 2;ここからダウンロードできます)で調べてみました。この本にはハエ目のいろいろな科についての検索表と豊富な絵が載っていてとても重宝しています。この中のハナアブ科の属への検索表を使って調べてみました。



まずは全体像です。体はほとんど黒いのですが、脚は黄色で、後脚腿節の先端近くと、跗節が黒くなっています。体が曲がっているので、体に沿って体長を測ってみました。すると、6.8mmになりました。また、最初の写真から左右の複眼が中央で接しているので♂のようです。MNDの検索表で調べて、紆余曲折した結果、Cheilosia属になりました。





この13項目を調べるとCheilosiaであることが確かめられるのですが、一つずつの項目が長いので意外に大変でした。(こんなことを書いていたら、スマホがけたたましい音を出して緊急速報を知らせました。家のすぐ近くまで避難準備が出たようです)いつものように赤字は確かめられなかったところで、青字は記述と違うところです。検索の順に見ていくとややこしいので、部位別に見ていくことにします。



これは背側からの写真です。特に見るところはないのですが、⑩の「点刻状」とは何でしょうね。一応、"Body not punctate"を訳したつもりだったのですが・・・。



このハナアブの顔面は非常に特徴的です。まるで仮面をかぶっているみたいです。⑧は顔面の前縁が中央で窪んでいるように見えるところを指しているのだと思います。また、前額ー顴溝は矢印で示した部分だと思います。「顴」という字は見たことがなかったのですが、「原色昆虫大図鑑III」のハエ目には載っていました。辞書で調べると、「かん」と呼んで、頬骨を意味するようです。以前、昆虫の頭の構造について書いたことがあったのですが、たぶん、at(anterior tentorial pit)と呼ぶ孔のことを指しているのだと思います。これが孔ではなくて溝になっているということでしょうね。⑬はその通りです。



⑫もだいぶ迷いました。原文には顔面はtuberculateとなっていて、辞書で引くと「結節がある」という意味になっています。しかし、対抗する項目を見ると"without a tubercle"となっています。tubercleは辞書で引くと隆起となっています。たぶん、日本語への訳し方だと思うのですが、⑫を「顔面は隆起する」と訳すと、黒矢印で示した部分に隆起が見られます。また、下縁は突出しないというのは赤矢印の部分が飛び出していないことを指しているのだと思います。これで⑫もOKとしました。



次は複眼の毛についてです。これが写真には撮りにくい。まず、左側と右側でもさもさ生えている部分は前額と単眼三角板の部分です。黒矢印ところを見ると微かに毛が生えていることが分かります。



それで複眼の部分を拡大してみました。すると個眼と個眼の間の黄矢印で示した部分に三つに分かれた黒い筋が見えます。これが毛のある場所です。照明を三方から当てているので、その影が黒く写っていると思われます。個眼と個眼の間にすべてあるわけではなくて、こんな風に飛び飛びに生えています。



次は触角の拡大です。②はOKです。④については触角刺毛には軟毛が生えていますが、それほど長い毛ではありません。⑦の柄節についてはこの写真ではよく分からないのですが、それほど長いわけではなさそうです。また、第1鞭小節は長円形みたいです。



次は胸部側面の写真です。後で出てくる後前胸背板と上前側板の位置を示しました。



後前胸背板の付近を拡大しました。よく見ると、毛の生えていることが分かります。また、外からその部分が見えていることも分かります。この項目はヒラタアブ亜科か、アリノスアブ亜科・ハナアブ亜科かを分ける重要なポイントです。



上前側板は前半部と後半部に分かれ、前半部は平坦で無毛、後半部はやや隆起して有毛であることが分かります。これで⑦、⑩、⑫はOKです。



これは小盾板を撮ったのですが、⑧と⑫は何のことかあまりよく分かりませんでした。ただ、とにかく縁取りなどがなくて、周囲は滑らかに湾曲しているので、たぶん、OKだろうと思いました。



次は翅脈です。③と⑦はOKです。⑨はM1脈が途中二か所で直角近くに曲がらず、⑨↑で示した部分がほぼ直角であることを確かめたらOKです。⑬はr-m横脈がdm室の基部側で交わっていることを見ます。



⑤と⑨はたぶんOKでしょう。⑬については脚は黄色で黒くはないのですが、項目が「たいてい」なのでOKとしました。



腹部背板の節はどれが1なのかよく分からなかったのですが、MNDの絵を見て基部の部分を1としました。第2節が長くて途中でくびれている感じがします。



その部分を拡大してみます。黄矢印で示すように少しくびれているだけで、節の境にはなっていないようです。それで、上の①はOKとしました。



後胸腹板の付近には特に異常は見られないので、⑥はOK。⑦にある後基節橋がどこにあるのかよく分かりませんでした。ということで、ほとんどすべての項目を確かめたので、たぶん、Cheilosia属でよいのだろうと考えています。ただ、この属に属する種は大変多く、「日本産昆虫目録第8巻」でも62種が載せられています。種までは検索表なしではとても到達できそうにありません。

いつもお世話になっている「ハナアブの世界」のハナアブ写真集をみると、Cheilosiaは複眼が無毛のグループA、複眼も顔面も有毛のグループB,複眼有毛、顔面無毛のグループCに分けられています。この範疇だとこの個体はグループCになります。この写真集に載っている種のうち、脚の色を基準に比べてみると、ニッコウクロハナアブCheilosia nikkoensisというのが一番似ています。この種は「日本産昆虫目録第8巻」によると、命名者がShiraki 1930となっているので、その記載論文を探してみました。

T. Shiraki, "Die Syrphiden des Japanischen Kaiserreichs, mit Berucksichtigung benachbarter Gebiete", Mem. Fac. Sci. Agric. Taihoku Imp. Univ. Vol. I (1930). (ここからダウンロードできます)

原文はドイツ語なのでよく分からないですが、C. nikkoensisについては♀について記載されていました。その顔面の絵も出ていたのですが、上の写真で見たような仮面をかぶったような姿をしていました。たぶん、これではないかなと期待半分で思っています。「日本産昆虫目録第8巻」によると、本州での分布は山形、栃木、京都と限られているのですが、京都が載っているので、大阪も可能性はあるかなと思っています。当たらずと言えども遠からずならよいのですけど。

追記2018/07/12:フトツリアブさんから、「後基節橋は後脚転節と第1腹板との間にあります.斜め後ろ下から見ます(MNDの図79-80参照).写真のCheilosiaは亜高山帯に分布するC. nikkoensisではなく,C.albipesに近縁な不明種です.触角や脚の色の違いが,地域変異や個体差なのか種差なのかわかっていません.日本のCheilosia属は既知種の整理がついていないので,上手く使える検索表が出来ていません.」というコメントをいただきました。後基節橋、分かりました!MNDに絵が載っていたのですね。早速、調べてみます。どうも有難うございました。nikkoensisは亜高山帯ですか。albipesについてははまったく知らないのですが、ネットで調べてみると、農研機構にHolotypeの写真が載っていました。
http://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/inventory/insect/dbdiptera/c_albipes.htm
顔面の隆起とか、脚の色などは似ている感じですが、それ以上はよく分かりません。ネットで文献を探してみたのですが、それも見つかりません。Cheilosiaもなかなか大変な世界のようですね

追記2018/07/12:後基節橋がありそうな部分の写真を撮ってみました。
でも、膜質が見えるだけで、橋らしいものは見えませんでした。この種ではないのかもしれません

廊下のむし探検 雑談

最近は何とはなしに忙しくて、なかなか「廊下のむし探検」ができません。たまに時間ができても天気の悪い日が多くて出かける気になれません。雨の日でもマンションの廊下を歩けば、それなりの数の虫は見つけられるだろうとは思うのですけど・・・。そんなわけでとうとうネタ切れになってしまいました。それで、以前撮った顕微鏡写真でそのままになっているのをまとめるのに時間を費やしています。昨日までで2種類のミズアブについてまとめ作業が終わりました。でも、まだ、ハナアブ科のCheilosia、ヒラタカメムシ、ルリアリ、コガネコバチなどが写真を撮ってそのままになっています。最近は顕微鏡写真を撮る作業はほとんど抵抗がなくなってきたのですが、それらをまとめる作業が大変で、ついつい後回しになってしまいます。そうすると、この写真は何のために撮ったのかが分からなくなって、まとめるのがさらに難しくなってきます。冷凍庫にはまだこれから調べなければならない虫が山のように入っているし、どうしようかなぁ。標本にしてしまえば手っ取り早いのですが、顕微鏡写真は生きているときと同じような状態のときに撮っておきたいし・・・。悩みはつきません。

とうとう7月になってしまいました。7月は何かと忙しいです。恒例の市役所での展示に協力したり、老人大学で話をしたり、頼まれていた原稿を書いたりと、気だけはせくのですが、結局、何もできません。小学校に話をしにいったときにお土産にと思って、この地域にいる虫を載せた「図鑑もどき」を作り始めたのですが、結局、その時には完成しなくて一部だけもって行くことになりました。その後、暇ができたら作っていたので、一応、大まかにはでき上がりました。今は学名を入れたり、コラムを入れたりして体裁を整えています。タイトルは岐阜聖徳学園大学の川上先生の「進化する昆虫図鑑」に似てしまったのですが、「成長し続ける図鑑」としました。種類数も前者が2500種、私のが2200-2300種なのでだいぶ追いついてきました。違うところは前者は同定がしっかりしているのに対し、私のは怪しさいっぱいなところです。

カメムシ目はほぼ完成しました。内容はこんな感じです。



ただ、写真と名前が入っているだけなのですけど・・・。




ところどころにこんな風にコラムを入れています。





また、各冊子の最後にこれまで「虫を調べる」という名前でブログに出していたもののうち、比較的一般的な内容のものを付録として載せました。検索などについては煩雑になるので同じ形式で別冊にしました。ブログをそのままコピペして、体裁を整えているだけで、従って、pdf版にはリンクも張られているので、意外に便利かもと思っています。でも、内容的には中途半端に難しくなってしまい、小学校に持っていくわけにもいかず、結局、自分用にしか使えないかなと思っています。

ブログに載せている内容なので、pdfにして公開しても全く構わないのですが、私が使っている忍者無料レンタルサーバーはファイルサイズの制限が3MBとなっているので使えません。「図鑑もどき」は一冊が数10から100ページちょっとで全13冊になっています。写真が貼り付けてあるので、1冊のファイルサイズが数十MBにもなっていてどうしようもありません。(追記2018/07/04:Yahooボックスのようなファイルサーバーで公開の設定をすれば外部からでもリンクが張れそうです。完成したらやってみるかな

虫を調べる ミズアブ科Microchrysa属♀

先日、ミズアブ科♂の検索をしたばかりなのですが、もう一匹、6月14日に採集した♀が残っていました。もうだいぶ前に顕微鏡写真などは撮ったのですが、どうも納得がいかなくて、今まで抱え込んでいました。でも、もうそろそろ出しておこうと思って出してみることにしました。従って、かなり怪しい話なので、そのつもりで見ていただければ幸いです。



今回調べたのはこんな綺麗なミズアブです。よく見かけるのですが、一度、調べておこうと思って採集しました。まずは左右の眼が離れているので、♀の方です。先日と同様、「ミズアブ図鑑」を見ると、Sarginae亜科のMicrochrysa属辺りに似たような種が見られます。そこで、Sarginae亜科の検索表が載っている次の論文を利用しました。

A. Nagatomi, "The Sarginae and Pachygasterinae of Japan (Diptera: Stratiomyidae)", Transactions of the Royal Entomological Society 126, 305 (1974). (ここからダウンロードできます)

検索表を用いて調べてみると、Microchrysa属は間違いなさそうですが、その先がちょっとはっきりしなくなります。でも、一応、Microchrysa japonicaの♀だろうと思っています。



まずは属の検索です。検索は①→②bと進みますが、赤字ははっきりしなかったところや確かめられなかったところで、かなりいっぱいあります。とりあえず、それ以外の部分を写真で確かめていきたいと思います。



まずは側面から撮った写真です。体長は5.6 mmでした。



これは背面からの写真です。①の「腹部が比較的短くて広い」というのはこの写真でよく分かります。



前額は矢印で示した部分ですが、一番狭いのは触角の直上というのはその通りだと思います。



また、前額が隆起していないというのはこの写真でもよく分かります。



次は翅脈です。翅脈の名前はMNDを参考にしながら、「原色昆虫大図鑑III」風につけてみました。最初が大文字なのが翅脈名、小文字が翅室名です。②に書かれているのはcua室とbr+bm室の幅の比較です。実際に測ってみると1: 1.14になりました。先日、Cephalochrysa属だと思った個体は1: 1.38になったので、今回は同程度に広いと言えなくはないですが、やや微妙です。それよりも上の論文にはMicrochrysa japonica♂の翅の写真が載っているのですが、cua室が思いのほか広くてここでかなり迷ってしまいました。でも、M脈が翅縁にまで達していないことは確かです。それで、一応、Microchrysaだろうと思って進んでいきます。



thoracic squamaは胸弁と書いた部分だと思うのですが、これがfan状とはどのような状態を指すのでしょう。分かりませんでした。体の軟毛は先日見たCephalochrysa属よりは短そうです。(追記2018/07/12:フトツリアブさんから、「Microchrysa属の胸弁本体はほとんど裸体に近く,後縁毛があるだけです.写真の毛がふさふさしている部位が問題の扇状の突起です.標本を真後ろ側か下側から除くとよく見えると思います.」というコメントをいただきました。やっと見方が分かりました。今度、後ろ側か下側から見てみます。どうも有難うございました



最後はまた意味の分からないcerebraleです。これが頭部後縁を指すのなら、この写真のようになり、単眼三角板(B)の方がわずかに長くなります。絵が載っているとこんなに迷わなくてすむのですけど・・・。

ということで、紆余曲折しながら、やっとMicrochrysa属になりました。Cephalochrysa属との差で一番大きなのはM脈が弱いというところかなと思っています。

次は種の検索です。検索は③→④b→⑤と進むことになるのですが、ここでもかなり迷ってしまいました。



これも写真で確かめていきたいと思います。



複眼が離れていて♀であることは確かです。



♂だと触角鞭節の節数で種の区別ができるのですが、♀は共に3節なので節数では区別ができません。鞭節先端の毛というのは矢印で示した部分だと思うのですが、小さいことは確かです。ただ、論文に載っているMicrochrysa japonicaに比べると毛の生えている部分が少なすぎるようです。flaviventrisでは毛の生えている領域はさらに広いので、これでないことは確かそうなのですが、ここでも迷ってしまいました。



次は後脛節の先端近くにある暗色部分です。背面と腹面が暗色でないのかはこの写真でははっきりしないのですが、まぁ、大丈夫かなと思いました。これで、M. japonicaか、nigrimaculaのどちらかということになります。論文でも♀は区別がつかないそうなので、はっきりとはしたことは言えないのですが、後者の分布が九州、南西諸島なので、除外しても構わないかなと思っています。それで、とりあえずはMicrochrysa japonica♀かもという結論になりました。

次に、先日、行ったような翅の各部の長さを測ってみました。



測ったのは翅縁に沿った i と j の長さです。



それから翅脈のa~hの長さです。これを論文に載っている数値と比較してみました。



これは翅脈の長さの平均値を1と規格化してグラフ化したものです。横軸の1から8はaからhに対応しています。また、CsはCephalochrysa stenogaster、MfはMicrochrysa flaviventris、MjはMicrochrysa japonicaを表しています。赤線が今回の個体の値ですが、心持ち、青色で示したM. japonicaと似ているような気がしないではありません。


横軸の1から6はiからnに対応していますが、この個体では1と2だけが測定可能でした。それで、その部分を比較すると、やはり、M. japonicaに似ている感じです。やはりjaponicaでいいのかなぁ。はなはだ怪しい結果ではあるのですが、とりあえずはMicrochrysa japonica♀ではよいのではという結論になりました。また、機会があったら挑戦してみたいと思います。

ついでに撮った写真です。



これは口器の部分です。





それから、腹部末端の側面と腹面からの写真です。

これでミズアブ2種の検索を終わりました。どうやら、この辺には少なくとも2種のよく似たミズアブがいるようです。これから注目してみていきたいと思います。それにしてもなかなか難しい検索でした。でも、とりあえず、翅を撮影すれば属の違いくらいは分かるかもしれません。

家の近くのむし探検 アリとハチ

家の近くのむし探検 第407弾

6月26日に家の近くの公園に行って虫探しをしました。マンションの廊下と比べると、環境が豊富なせいでしょうが、さまざまなドラマが見られました。



公園に行く途中で、たぶん、ウバメガシではないかと思われる葉上で小さなゾウムシを見つけました。





葉の表面を舐めるように食べています。ゾウムシというと木の枝などに穴をあけるイメージですが、こんな感じに食べることもあるのですね。これはクチブトゾウムシの仲間です。模様から、最初はいつも見ているケブカクチブトゾウムシかと思ったのですが、模様がちょっと違うので、これまでのブログに出した写真を集めた画像リストで調べてみました。するとどうやらトゲアシクチブトゾウムシの様です。「原色日本甲虫図鑑IV」によると、脛節先端に刺があるのですが、写真ではそれは見えません。でも、前脛節内縁が強い2湾状というところは微かに写っている写真がありました。なお、この図鑑ではトゲアシゾウムシになっているのですが、いつもお世話になっている「日本列島の甲虫全種目録」によると、トゲアシクチブトゾウムシになっていたので、そちらを採用しておきます。



これも公園に行く途中の壁に止まっていた蛾です。以前も見たことがあります。たぶん、マルハキバガ科のスジモンキマルハキバガでしょう。



公園に着きました。公園に着いたらまずシラカシの幹で虫を探しを行うのですが、こんな土で作った蟻道が出来上がっていました。これは一昨年も見て、ちょっと感動したことがあります。





でも、今回はどうもちゃんと作られていなくて、あるいは、この間の雨で駄目になってしまったのか、道が途中で途切れたり、かなり広い場所に点々と土がついていたりしていました。アリたちも結構、道を通らず、外側を通っています。



根元の部分はこんな風にかなり太い道になっていました。以前、根元でアブラムシを飼うという話を読んだことがあったので、ひょっとするとここにアブラムシがいるのかなぁと思ってしまいました。



このアリについては以前検索をしたことがあるのですが、詳細はブログに出していなかったようです。そのときはトビイロケアリになったのですが、ケアリの検索は最後のところで、触角柄節の立毛の数を見なくてはいなくて、そこがいつも曖昧になってしまいます。今回は採集はパスしました。



公園ではネムノキが満開でした。



最初、肢に淡色の帯があるのでシマサシガメの幼虫かなと思ったのですが、どうやらオオトビサシガメの幼虫みたいです。齢も含めてもう少し検討してみます。



カマキリの幼虫はよく分かりませんが、この辺り、オオカマキリばかり見ているので、その幼虫ではないかと思います。



これはトックリバチが出た跡かなぁ。



そして、これはヒメガガンボ科のミスジガガンボ。こういうのを調べるときに、以前作ったハエ目の画像リストは種別にしたので、すごく見やすくなったのですが、いざ、更新しようとすると大変な手間になることが分かりました。それで、もう一度、科別にしようかどうか悩んでいます。



公園の砂場でハチが飛び回っています。中に大きなハチがいました。初めハナバチの仲間かなと思ったのですが、「学研生物図鑑昆虫III」を見てみると、ハナダカバチ Bembix niponicaがよく似ています。それで、「日本産有剣ハチ類図鑑」を見てみると、和名がニッポンハナダカバチになっていて、ギングチバチ科ハナダカバチ亜科ハナダカバチ族に入っていました。この近傍で似ている種はタイワンハナダカバチしかいなくて、これは南西諸島に分布しているので、ニッポンハナダカバチで間違いなさそうです。穴の前に止まってじっとしています。



しばらく見ていると小さい方のハチが飛んできました。これは一昨年調べたことがあるギングチバチ科ハナダカバチ亜科のヤマトスナハキバチだと思われます。大きさにこれだけ差がありました。



もうしばらく見ているともう一匹大きなハチが飛んできました。



そして、すぐ横に止まってじっと見守っているようです。このハチは触角先端の形状から♂のようです。



こんな格好でまったく動きません。







それで、もう一匹のヤマトスナハキバチの方を撮ることにしました。このハチは以前、採集して調べたことがあります。あちこちで止まってはこんな格好でじっとして、また、飛び立っては違う場所に止まります。新しい巣穴を作ろうとしているのか、それとも以前作った巣穴を探しているのでしょうか。



ひとしきりヤマトスナハキバチの方を撮って、さっきのハチのところに戻ってみると、もうちゃんと整地されていました。ドラマは終わったようです。
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