虫を調べる ノミバエ科ノミバエ亜科
最近はハエばかり調べているのですが、どれも難しいものばかりです。今回も相当に難しくて、合っているのかどうかはっきり分かりません。それでも、もう5日ほど抱えているので、そろそろまとめてみることにします。
今回調べたのはこんなハエです。翅脈が変わっていて、検索をしないでもノミバエ科であることはすぐに分かります。これは2月20日に撮った写真ですが、この日は2匹いて、どちらを採集したのか忘れてしまいました。でも、たぶん、同じ種ですね。普通のノミバエと比べると、圧倒的に大きなノミバエで、ちょっとびっくりしました。
ノミバエの検索表は次の論文に載っています。
金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
ちょっと古いのですが、まずはこの検索表で調べてみることにしました。実際に検索をしてみると、ノミバエ亜科のSpiniphora属になったのですが、属は違っているかもしれません。とりあえず、その検索過程を見ていきたいと思います。
検索は①→②→③→④→⑤a→⑥と進むのですが、⑤がはっきりしなかったので、もう一つの選択肢も書いておきました。とりあえず、この検索過程を写真で確かめていきたいと思います。
まずは全体像です。体長は3.8mm。普通よく見るノミバエの体長が2mmくらいなので、かなり大きく感じられます。後脚が太くて長いですね。また、口吻が異常に大きいです。後脚の脛節、跗節に波のような模様があります。ぱっと見ても面白い特徴のあるハエです。とりあえず、検索をしてみます。この写真では翅があることを見ます。
次は頭部の拡大写真です。刺毛については論文に書かれていた名前をそのまま書いたので、現在の名前とはだいぶ違うかもしれません。②の額には細かい毛が一面に生えていますが、微毛というのはこれのことかな。触角上棘毛は横の方向の斜め上に向かって生えています。②は多くの項目が書かれていて、そのうちの一つなので多分大丈夫でしょう。
①は中胸側板が前胸気門を取り囲むように前の方まで延びていることを示しています。確かに横から見ると、前胸側板も前胸気門もよく見えますが、背側からだとたぶん見ることができないでしょう。②の5つに仕切られるというのはよく分かりませんが、一枚板であることは確かそうです。ただし、MNDでは「上前側板」になっていたので、定義の問題かもしれません。
これは胸部を拡大したものです。最初、この写真を見てびっくりしました。何と長い毛がいっぱい生えているではないですか。でも、後からこの部分は前胸側板らしいことが分かりました。中胸側板の部分には小さな毛は生えているのですが、長い剛毛はないのでたぶん④はOKかなと思います。でも、小さな毛まで問題にするのなら違っているかもしれません。
次は翅脈です。変わった翅脈で、これを見るとノミバエ科であることはすぐに分かります。翅脈の名称は論文で用いられている名称が一般的でなかったのでMNDを参考にしました。R2+3とR4+5に分岐しているのは間違いないので③は大丈夫でしょう。
次は翅脈のRsとR4+5を拡大してみました。どう見ても毛は生えていません。それで⑥はOKです。
次は中脚です。この脛節の基部背面近くに1対の剛毛が生えています(白矢印)。これがあるので、いつものMegaselia属が含まれるトゲナシアシノミバエ亜科ではなく、ノミバエ亜科になります。
次の後脚脛節で迷いに迷ってしまいました。この写真を見る限り、⑤aは問題なく合っていそうです。
でも別の角度で撮った写真では白矢印で示したように溝らしきものが見えています。ただ、⑤bに書かれているような「2~3の剛毛列」は見えません。このような剛毛列が跗節にあることはこの写真でも見られます。
それでさらに拡大してみました。これは背側の写真です。浅い溝らしきものは見えるのですが、剛毛列はともかくなさそうです。これで、Spiniphora属になったのですが、あまり自信はありません。「日本昆虫目録第8巻」(2014)によると、日本産Spiniphora属は3種、そのうち本州産はフチグロマイマイノミバエ atricostataとミヤママイマイノミバエ nipponensisの2種が載っています。これ以上の情報がないのでよく分かりませんが・・・。
自信のない理由は論文がかなり古いので、載っていない属が多いのではという心配があるからです。それで、ノミバエ亜科に属する属について「日本昆虫目録第8巻」(2014)と比較してみました。
左がKaneko氏の論文、真ん中が「日本昆虫目録(Catalogue of the Insects of Japan)第8巻」(2014)です。括弧内の数は日本産の種数です。やはり属の数がかなり増えていました。それで、MNDについても調べてみました。それが右端です。MNDにも検索表は載っているので、この二つの検索表を併用すると赤字で示した3属を除いて網羅することができます。それで、次回はMNDに載っている検索表で調べた結果を示すことにします。
雑談)今回のハエは採集してすぐに冷凍庫に入れておきました。その後、顕微鏡写真を撮るので、取り出したのですが、検索がうまくいかないので、これから何度も写真を撮り直すかなと思って、密閉性のよい「ニューPPサンプル管」にノンアセトンタイプのエナメルリムーバを染み込ませたティッシュペーパを入れた中に入れておきました。これで、この5日間はまったく乾燥せずに撮影できました。いちいち、冷凍庫に入れたり解凍したりを繰り返すよりは簡便です。
今回調べたのはこんなハエです。翅脈が変わっていて、検索をしないでもノミバエ科であることはすぐに分かります。これは2月20日に撮った写真ですが、この日は2匹いて、どちらを採集したのか忘れてしまいました。でも、たぶん、同じ種ですね。普通のノミバエと比べると、圧倒的に大きなノミバエで、ちょっとびっくりしました。
ノミバエの検索表は次の論文に載っています。
金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
ちょっと古いのですが、まずはこの検索表で調べてみることにしました。実際に検索をしてみると、ノミバエ亜科のSpiniphora属になったのですが、属は違っているかもしれません。とりあえず、その検索過程を見ていきたいと思います。
検索は①→②→③→④→⑤a→⑥と進むのですが、⑤がはっきりしなかったので、もう一つの選択肢も書いておきました。とりあえず、この検索過程を写真で確かめていきたいと思います。
まずは全体像です。体長は3.8mm。普通よく見るノミバエの体長が2mmくらいなので、かなり大きく感じられます。後脚が太くて長いですね。また、口吻が異常に大きいです。後脚の脛節、跗節に波のような模様があります。ぱっと見ても面白い特徴のあるハエです。とりあえず、検索をしてみます。この写真では翅があることを見ます。
次は頭部の拡大写真です。刺毛については論文に書かれていた名前をそのまま書いたので、現在の名前とはだいぶ違うかもしれません。②の額には細かい毛が一面に生えていますが、微毛というのはこれのことかな。触角上棘毛は横の方向の斜め上に向かって生えています。②は多くの項目が書かれていて、そのうちの一つなので多分大丈夫でしょう。
①は中胸側板が前胸気門を取り囲むように前の方まで延びていることを示しています。確かに横から見ると、前胸側板も前胸気門もよく見えますが、背側からだとたぶん見ることができないでしょう。②の5つに仕切られるというのはよく分かりませんが、一枚板であることは確かそうです。ただし、MNDでは「上前側板」になっていたので、定義の問題かもしれません。
これは胸部を拡大したものです。最初、この写真を見てびっくりしました。何と長い毛がいっぱい生えているではないですか。でも、後からこの部分は前胸側板らしいことが分かりました。中胸側板の部分には小さな毛は生えているのですが、長い剛毛はないのでたぶん④はOKかなと思います。でも、小さな毛まで問題にするのなら違っているかもしれません。
次は翅脈です。変わった翅脈で、これを見るとノミバエ科であることはすぐに分かります。翅脈の名称は論文で用いられている名称が一般的でなかったのでMNDを参考にしました。R2+3とR4+5に分岐しているのは間違いないので③は大丈夫でしょう。
次は翅脈のRsとR4+5を拡大してみました。どう見ても毛は生えていません。それで⑥はOKです。
次は中脚です。この脛節の基部背面近くに1対の剛毛が生えています(白矢印)。これがあるので、いつものMegaselia属が含まれるトゲナシアシノミバエ亜科ではなく、ノミバエ亜科になります。
次の後脚脛節で迷いに迷ってしまいました。この写真を見る限り、⑤aは問題なく合っていそうです。
でも別の角度で撮った写真では白矢印で示したように溝らしきものが見えています。ただ、⑤bに書かれているような「2~3の剛毛列」は見えません。このような剛毛列が跗節にあることはこの写真でも見られます。
それでさらに拡大してみました。これは背側の写真です。浅い溝らしきものは見えるのですが、剛毛列はともかくなさそうです。これで、Spiniphora属になったのですが、あまり自信はありません。「日本昆虫目録第8巻」(2014)によると、日本産Spiniphora属は3種、そのうち本州産はフチグロマイマイノミバエ atricostataとミヤママイマイノミバエ nipponensisの2種が載っています。これ以上の情報がないのでよく分かりませんが・・・。
自信のない理由は論文がかなり古いので、載っていない属が多いのではという心配があるからです。それで、ノミバエ亜科に属する属について「日本昆虫目録第8巻」(2014)と比較してみました。
左がKaneko氏の論文、真ん中が「日本昆虫目録(Catalogue of the Insects of Japan)第8巻」(2014)です。括弧内の数は日本産の種数です。やはり属の数がかなり増えていました。それで、MNDについても調べてみました。それが右端です。MNDにも検索表は載っているので、この二つの検索表を併用すると赤字で示した3属を除いて網羅することができます。それで、次回はMNDに載っている検索表で調べた結果を示すことにします。
雑談)今回のハエは採集してすぐに冷凍庫に入れておきました。その後、顕微鏡写真を撮るので、取り出したのですが、検索がうまくいかないので、これから何度も写真を撮り直すかなと思って、密閉性のよい「ニューPPサンプル管」にノンアセトンタイプのエナメルリムーバを染み込ませたティッシュペーパを入れた中に入れておきました。これで、この5日間はまったく乾燥せずに撮影できました。いちいち、冷凍庫に入れたり解凍したりを繰り返すよりは簡便です。
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