昨日の続きでモリノキモグリバエ属らしきハエを調べました。
対象としたのはこんなハエで、12月30日に捕まえたものです。昨日、MND(Manual of Nearctic Diptera)に載っている検索表で検索した結果、モリノキモグリバエ属 Rhodesiellaにはなったのですが、MNDにはこの属に1種しか載っていないようなので、ちょっと不安に思って別の検索表でも調べてみました。
P. T. Cherian, "Chloropidae (Siphonellopsinae and Rhodesiellinae) Part-1", "Fauna of India", Vol. IX, Zoological Survey of India (2002). (
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用いたのはこの本に載っている検索表です。ただし、MNDではRhodesiella属はナガミャクキモグリバエ亜科 Oscinellinaeに入っているのですが、この論文ではRhodesiellinae亜科Rhodesiellini族に入っていました。「日本昆虫目録第8巻」(2014)はMNDと同じなのですが、2012年に出されたチェックリストによるとRhodesiellinae亜科になっていました。
E. P. Nartshuk, "A check list of the world genera of the family Chloropidae (Diptera, Cyclorrhapha, Muscomorpha)", Zootaxa 3267, 1 (2012).(
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どちらがよいのでしょうね。このチェックリストによれば、日本産キモグリバエ科でRhodesiellinae亜科に入っているのは次の3属でした。
Stenoscinini族 Psilacrum
Rhodesiellini族 Rhodesiella
Scoliophthalmini族 Scoliophthalmus
いずれも違う族に入っているので、族の検索だけでも調べることができそうです。Cherianの本に載っている検索表に従って調べていくと、やはりRhodesiellinae亜科Rhodesiellini族になりそうなことが分かりました。その先の属については日本にはいないいろいろな属が載っているので、Rhodesiella属に関する項目だけを使うことにしました。検索表で必要なところだけ書くと以下のようになります。
ⒶからⒸまでが亜科の検索、ⒹとⒺが族の検索、それに属の検索表のうちRhodesiella属に関するものだけ書いたものがⒻです。これをいつものように写真で調べていきたいと思います。
まずは横からの写真です。この写真からはⒺの項目を調べることができます。
次は顔面を斜め下から撮ったもので、狭い頬を示す写真です。実は、Ⓔに頬が直線状と書かれている意味が分からなかったのですが、この写真を見ると、何となく分かります。頬の下縁に毛も生えています。
Ⓐ、Ⓓ、Ⓔはいずれもこの写真から分かります。
剛毛の長さの比較は写真では分かりにくいので、こんな写真を撮りました。これならよく分かりますね。
Ⓐはすぐに分かります。Ⓕは写真では分かりにくいのですが、確かに翅後剛毛の方が長くなっていました。Ⓓの前半については、ネットで調べると、属によっては盾板に黒い縦筋の模様のあるものもいるようです。後半についてはちょっと見た感じでは盾板を横切る横溝など見えないような気がしますが、横から撮るとはっきり分かります。
いずれにしても盾板の中心部分は見えないので、ⒹでOKだと思われます。
次は胸部側面です。上前側板には毛が生えています。下前側板にも少し生えていますが、剛毛と呼ばれるようなものは生えていません。
これは小盾板を写したものです。形が三角形状というのはよく分かります。小盾板端剛毛が瘤あるいはいぼ上に生えるというのは写真の矢印の部分の突起を指しているようです。その部分を拡大します。
あまり綺麗に写らなかったのですが、わりに形のよい台座の上から剛毛が垂直に生えているのが分かります。これのことかなと思いました。端剛毛の横にある亜端剛毛は短いのですが、同じような台座から生えていました。
最後は翅脈です。R4+5脈が末端部分で前方に曲がるというのはよく分かりませんでした。本に載っているRhodesiella属の翅脈を見ても曲がっているようには見えません。その他の項目についてはその通りだと思いました。
ということで、項目はほぼ満足されたので、たぶん、モリノキモグリバエ属 Rhodesiellaで合っているのではと思っています。これから先の種の検索表はインドと日本では種がまったく異なるので、ちょっと適用することができそうにありません。ただ、ヤマギシモリノキモグリバエRhodesiella yamagishiiはこの本で、R.. hirtimanaとシノニムとされています。これについては以前にも
このブログに書いたことがあります。これに対して、翅脈は明らかに違うので別種であるというのが上宮氏の主張です。
K. Kanmiya, "Chloropidae (Diptera) from the Akasaka Imperial Gardens, Tokyo", Mem. Natn. Sci. Mus., Tokyo, (39), March 25 (2005). (
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そこで言われている翅脈の比較もしてみたのですが、ちょっとはっきりしないところもあるので、また、別の機会にします。