虫を調べる ヒメカゲロウの検索準備
この間から、ヒメカゲロウとオオアザミウマを検索してみようと思って、その分類の変遷や違いを調べていました。とりあえず、ヒメカゲロウについてまとまったので忘れないうちに載せておきます。
ヒメカゲロウというのはこんな虫です。これは両方とも10月17日にマンションの廊下で撮影したものです。その後、翅脈などから上はホソバヒメカゲロウ、下はキバネヒメカゲロウではないかと思ったのですが、いつも曖昧な結果で終わるので、一度、きちんと検索をしてみようと思っていました。
これまでヒメカゲロウの検索には次の論文を用いていました。
W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915). (ここからダウンロードできます)
でも、なにぶん、かなり古いのでもう少し新しい検索表はないかと探していたら、次の論文を見つけました。
S. Kuwayama, "A revisional synopsis of the Neuroptera in Japan", Pacific Insects 4, 325 (1962). (ここからpdfがダウンロードできます)
これはアミメカゲロウ目全体について書かれた、かなり広範な論文です。ヒメカゲロウ科についても属の検索表が載っていました。一応、おぼつかない語学力で訳してみると次のようになります。
各属には種の検索表もついているので、私にとっては願ったりかなったりの論文です。でも、新しいといっても50年以上前のもの。どこまで使えるか不安でした。それで、この間、「日本昆虫目録第4巻」を購入するついでに、第5巻も購入することにしました。この巻には、ヘビトンボ目、ラクダムシ目、アミメカゲロウ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、ネジレバネ目が入っています。180ページほどの薄い本ですが、大変高価な本です。でも、自分で目録を作る手間を考えると、かなり安い買い物ではないかと思って買ってしまいました。
この目録によると、ヒメカゲロウ科は5亜科9属45種が載っています。これらをKuwayama氏の論文、それに九大の昆虫学データベースと突き合わせてみました。Kuwayama氏の論文ではヒメカゲロウ科は2つの亜科に分けられています。
これはそのうちのMicrominae亜科についてです。Kuwayama氏の論文には3属8種が載せられているのですが、九大昆虫学データベースでは5属12種に増えました。その対応を線で示しています。赤字はKuwayama氏の論文に載っていない種です。それが、日本昆虫目録(2016)ではかなり整理され、1属9種になっていました。赤字で黒枠になっているのはKuwayama氏の論文にも日本昆虫目録にも載っていなかった種です。
Hemerobiinae亜科はもっと大変です。九大昆虫学データベースの赤字はやはりKuwayama氏の論文に載っていなかった種、日本昆虫目録の欄の青字は九大に載っていなかった種です。日本昆虫目録はさらに2亜科に分けられていました。左から線を追いかけていくと現在ではどの属のなんという種になっていることが分かりますが、赤字や青字が多いので、Kuwayama氏の論文の検索表がどこまで使えるか甚だ疑問です。
それで、それらをまとめてみたのが次の表です。
この表は日本昆虫目録に載っている種すべてを書き上げたのですが、赤字はともかくKuwayama氏の論文に載っていなかった種です。そのうち、分布が南西諸島や北海道など、明らかに本州に分布していそうにない種を取り消し線で消しました。すると、Microminae亜科では赤字はなくなり、Kuwayama氏の論文で検索しても大丈夫なことが分かりました。また、Hemerobiinaeでは2種が新しく入っているだけなので、ほぼ大丈夫な感じです。日本産ヒメカゲロウ科は現在では5亜科に分かれているみたいですが、そのうち、Drepanepteryginae亜科では1種新たに増えているだけでした。残りのNotiobiellinae亜科とSympherobiinae亜科はKuwayama氏の論文にはまったく触れられていないので要注意です。とりあえず、最近の亜科の検索表を探す必要があります。(追記2017/10/31:Notiobiellinae亜科とSympherobiinae亜科はKuwayama氏の論文ではSympherobiidae科に入っていました。したがって、科の検索で区別できそうです。また、それに伴い、上の表を書き換えました)
実際にKuwayama氏の検索表を使って検索をしてみると、ホソバヒメカゲロウはほぼ間違いなさそうです。キバネヒメカゲロウは属の検索でMAとMPという翅脈がどれを指しているのかよく分からないのと、種の検索で翅室に透明な筋が入るというのが分からずつかえています。でも、たぶん、採集すれば大丈夫だと思うので、今度見つけたら調べてみることにします。いつのことになるか分かりませんが・・・。
ヒメカゲロウというのはこんな虫です。これは両方とも10月17日にマンションの廊下で撮影したものです。その後、翅脈などから上はホソバヒメカゲロウ、下はキバネヒメカゲロウではないかと思ったのですが、いつも曖昧な結果で終わるので、一度、きちんと検索をしてみようと思っていました。
これまでヒメカゲロウの検索には次の論文を用いていました。
W. Nakahara, "On the Hemerobiinae of Japan", 日本動物学彙報 9, 11 (1915). (ここからダウンロードできます)
でも、なにぶん、かなり古いのでもう少し新しい検索表はないかと探していたら、次の論文を見つけました。
S. Kuwayama, "A revisional synopsis of the Neuroptera in Japan", Pacific Insects 4, 325 (1962). (ここからpdfがダウンロードできます)
これはアミメカゲロウ目全体について書かれた、かなり広範な論文です。ヒメカゲロウ科についても属の検索表が載っていました。一応、おぼつかない語学力で訳してみると次のようになります。
各属には種の検索表もついているので、私にとっては願ったりかなったりの論文です。でも、新しいといっても50年以上前のもの。どこまで使えるか不安でした。それで、この間、「日本昆虫目録第4巻」を購入するついでに、第5巻も購入することにしました。この巻には、ヘビトンボ目、ラクダムシ目、アミメカゲロウ目、シリアゲムシ目、ノミ目、トビケラ目、ネジレバネ目が入っています。180ページほどの薄い本ですが、大変高価な本です。でも、自分で目録を作る手間を考えると、かなり安い買い物ではないかと思って買ってしまいました。
この目録によると、ヒメカゲロウ科は5亜科9属45種が載っています。これらをKuwayama氏の論文、それに九大の昆虫学データベースと突き合わせてみました。Kuwayama氏の論文ではヒメカゲロウ科は2つの亜科に分けられています。
これはそのうちのMicrominae亜科についてです。Kuwayama氏の論文には3属8種が載せられているのですが、九大昆虫学データベースでは5属12種に増えました。その対応を線で示しています。赤字はKuwayama氏の論文に載っていない種です。それが、日本昆虫目録(2016)ではかなり整理され、1属9種になっていました。赤字で黒枠になっているのはKuwayama氏の論文にも日本昆虫目録にも載っていなかった種です。
Hemerobiinae亜科はもっと大変です。九大昆虫学データベースの赤字はやはりKuwayama氏の論文に載っていなかった種、日本昆虫目録の欄の青字は九大に載っていなかった種です。日本昆虫目録はさらに2亜科に分けられていました。左から線を追いかけていくと現在ではどの属のなんという種になっていることが分かりますが、赤字や青字が多いので、Kuwayama氏の論文の検索表がどこまで使えるか甚だ疑問です。
それで、それらをまとめてみたのが次の表です。
この表は日本昆虫目録に載っている種すべてを書き上げたのですが、赤字はともかくKuwayama氏の論文に載っていなかった種です。そのうち、分布が南西諸島や北海道など、明らかに本州に分布していそうにない種を取り消し線で消しました。すると、Microminae亜科では赤字はなくなり、Kuwayama氏の論文で検索しても大丈夫なことが分かりました。また、Hemerobiinaeでは2種が新しく入っているだけなので、ほぼ大丈夫な感じです。日本産ヒメカゲロウ科は現在では5亜科に分かれているみたいですが、そのうち、Drepanepteryginae亜科では1種新たに増えているだけでした。
実際にKuwayama氏の検索表を使って検索をしてみると、ホソバヒメカゲロウはほぼ間違いなさそうです。キバネヒメカゲロウは属の検索でMAとMPという翅脈がどれを指しているのかよく分からないのと、種の検索で翅室に透明な筋が入るというのが分からずつかえています。でも、たぶん、採集すれば大丈夫だと思うので、今度見つけたら調べてみることにします。いつのことになるか分かりませんが・・・。
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