今年は「甲虫の年」に決めたので、この間からハムシを調べたりしていたのですが、いよいよ私にとっては本命中の本命のコメツキムシを調べてみました。「絵解きで調べる昆虫」に大平仁夫氏の詳しい説明があるので、何とかなるかなと思って何度か挑戦したのですが、いつももやもやで終わってしまい、挫折していました。今回は少し気合を入れてやってみました。でも、素人がやっていることなので、話半分程度で見ていただけると幸いです。
調べたのはこのコメツキです。特に理由があったわけでなく、たまたま家の近くにいたのを捕まえたので調べてみただけでした。いつものように冷凍庫に入れていたのですが、数日前に出してきて「絵解きで調べる昆虫」に載っている検索表と照らし合わせながら調べていきました。私にとって難しかったのは、用語がよくわからなかった点です。絵解きなので絵は載っているのですが、それを見てもどうも分かりませんでした。それでいろいろな文献やインターネットサイトを見ながら調べていったので、時間がかかってしまいました。
まず、この個体の亜科から調べていきました。「絵解きで調べる昆虫」の検索表を使って調べるとカネコメツキ亜科になったので、まず、その過程から見ていきます。
これはその検索過程を示したもので、①から⑥まではいろいろな亜科を除外するための項目で、最後に残った⑦でカネコメツキ亜科かコメツキ亜科かを決めます。この最後の⑦がいつもよく分からなかったのですが、今回はちょっと分かった気がしました。いつものように、検索順ではなくて部位別に見ていきます。
冷凍庫から出してそのまま置いていたらホコリまみれになってしまいました。ホコリを取ってから写せばよかったですね。この個体は体長13.9mm。かなり大きかったので楽だったのですが、意外とつるつるしていて、ピンセットで挟むと滑って飛んでいってしまうことが何度かありました。この写真からは⑤の翅端が丸いというところを見ます。これは翅端の尖ったヒゲコメツキ亜科を除外する項目です。
次は顔の部分です。この詳しい説明は後ほどするとして、この写真では触角の取付部が複眼の内側に接していることを見ます。これは離れているツツコメツキ亜科を除外する項目です。次の⑤の大顎の歯なのですが、毛が邪魔をして、あるようなないような。はっきりとは分かりませんでした。でも、⑤のもう一つの項目がOKだったので、たぶん、大丈夫でしょう。
さて、これは頭部を上から見たところです。ここがいつも迷ってしまうところでした。検索表の⑦は本来( )の部分がなくて、頭部が矩形状か、楕円形状かというのですが、どこが矩形なのか楕円形なのか分かりません。それで、先日
ブログにも書いたようにStibickの論文を見て、はたと気が付きました。
そこには矩形とか楕円形とかは書いてなくて、頭が平坦か丸いかと書かれていたのです。それならば、横から見ればよいと思って撮った写真がこれです。確かに頭頂部は矢印で示すように平坦です。さらに、こうやって見ると、口器は下前方に開くというのも何となく分かります。でも、ともに絶対的な記述ではなくて、相対的なので、コメツキ亜科と思われる個体と比べてみることにしました。幸い、アカハラクロコメツキというコメツキ亜科の標本があったので、それと比べたのが次の写真です。
頭部が丸いか平坦かはAとBを比べると何となく分かります。それよりも口器の位置がだいぶ違います。コメツキ亜科と思われるAでは確かに下の方についていますが、Bでは前の方についています。これは上から見た写真Dを見ても口器が上から見えていることからよく分かります。CとDは頭部を上から写したものですが、楕円形、矩形と言うのも分かるような気がしますが、私にははっきりとは分かりません。
次は腹側から見た写真です。ついでに「絵解きで調べる昆虫」を参考にして各部の名称を入れてみました。②の前胸腹板突起は中央に見える部分ですが、長く伸びています。この項目は突起の短いハナコメツキ亜科を除外する項目です。
次も分かりにくい項目です。中肢基節腔が「開く」か「閉じる」かということなのですが、この写真を見ると、黄矢印で示した中胸腹側板側が凹んでいます。たぶん、これが「開く」ということに対応しているのだと思われます。閉じているとミズギワコメツキ亜科になります。
最後は脚の爪です。③の爪の内側基部は多分、湾曲している内側の基部を指すのだと思うのですが、その部分には刺毛はありません。爪の基部にはありますが・・・。これはサビキコリ亜科を除外する項目なので、たぶん、大丈夫だと思います。⑥はクシコメツキ亜科を除外する項目で、櫛歯がないことを言っています。
以上で、亜科の検索が終わりました。多少、疑問になる点や調べられなかった部分があったのですが、たぶん、カネコメツキ亜科で大丈夫だろうと思っています。「絵解きで調べる昆虫」ではこの亜科は4群に分けられることになっています。ただ、その検索表はありません。それで、各群の特徴から調べてみました。その結果、第4群の中のツヤハダコメツキ族の可能性が高いことが分かりました。そこで、その属・亜属の検索を一気に試みてみました。その結果、ツヤハダコメツキ属Pseudathous亜属になったので、その部分の検索の過程をお見せします。
これも順番にお見せすれば良いのですが、同じ図をあっちこっちで参照してややこしいので、やはり部位別に見ていくことにします。
先程と同じ写真なのですが、⑪から⑬はいずれもこの写真から判断できます。
これも先程と同じ写真なのですが、⑨で迷ったのは前頭横隆起線と前頭横溝がどれを指すかというところです。隆起線は何となく分かるのですが、溝が分かりませんでした。それで、「
コメツキムシ談話会」の記事の中からその説明を見て、この写真のように判断しました。いずれにしても、この個体は隆起線も横溝もよく発達しています。隆起線が中央で不明瞭になる種もあって、それはシモフリコメツキなどが含まれるヒラタコメツキ族になります。
ここでは前胸腹側板線が一重であることを見ます。カネコメツキ属の様に第2群には2重になっている属もあります。また、前胸腹側板後縁の外角部分にとくにえぐれはありません。これはフトツヤハダコメツキ属を除外する項目です。
次は微妙ですが、前胸背板後角に見られる2本の隆起線についてです。この2本の隆起線が完全に平行ではなく、後角に向かって少し収斂しているように見えることからPseudathous亜属を選びました。しかし、これも比較の問題なので、ちょっと怪しいところです。
これは小楯板の拡大です。中央部分は平坦になっています。手元にあるルリツヤハダコメツキはMiwacrepidius亜属に入るのですが、ここが屋根型に膨らんでいます。
そして、ツヤハダコメツキ族を特徴づける脚の跗節の下の膜状構造です。ここでは第2、第3跗節末端に完全な、第1跗節末端にやや不完全な膜状構造が見られます。
拡大するとこんな感じになります。第4跗節にも微かにありそうなのですが、検索表の上からはこれはないと判断してよいようです。
ということで全ての項目を確認したので、ツヤハダコメツキ属Pseudathous亜属 Hemicrepidius (Pseudathous)でよいのではと思っています。どこかで間違ってとんでもない方向に行っているかも知れませんが・・・。この亜属にはクロツヤハダコメツキがいます。それで、その辺りの種ではないかと思っています。「
コメツキムシの部屋」というサイトよると、この亜属には11種載っていました。従って、種まではまだまだ大変そうです。せめて属が合っていると嬉しいのですけど・・・。
(
追記2017/07/01:通りすがりさんから、「クロツヤハダコメツキみたいですね。鞘翅の毛がよく写っていたんで、別種に感じてしまいました。」と、「鞘翅が毛深いクロツヤハダコメツキは、メスでした。どういう訳かメスは殆ど見ないので、完全に忘れてました。」というコメントをいただきました。すごい知識ですね。♂♀の違いなんて。私の持っている図鑑にはまったく書いてありませんでしたよ。甲虫の♂♀はよく分からなくて、いつも決めるときに困ってしまいます。貴重なコメントどうも有難うございました)