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廊下のむし探検 昨日の虫

廊下のむし探検 第860弾

レコード大賞を見ながら、昨日のマンションの廊下で見た虫の写真の整理をしています。





ぱっと見渡して廊下にはほとんど何も見えません。そんな時は諦めて、今頃たくさんいるキモグリバエを写すことにしています。このハエは、毎年、冬になるとマンションの東側の壁にびっしりついています。窓を開けたりすると、わっと入ってきて大変なことになります。でも、キモグリバエの仲間というだけで、名前は分かりません。



廊下をぶらぶら手持無沙汰で歩いていたら、やっと虫らしい虫に出会えました。キリガの仲間です。これには似た種がいたのでしたね。過去の記事を見ると、いろいろと苦労しながら名前を決めていました(こちらこちらをご覧ください)。その時の知見からだと、これはヤマノモンキリガでしょうね。





これはこの間もいたハエです。翅脈からオドリバエではないかと思ったのですが、よく見ると、翅脈が結構変わっています。



そこで、翅脈に名前を付けてみました。名称は「双翅目(ハエ目)昆虫の検索システムに関する研究」という三枝豊平氏の科研費の報告書(この題目で検索するとpdfがダウンロードできます)に載っている図によっています。?マークにしたのは、こんなところに脈があるのはおかしいなと思ったからで、また、CuA+CuPはほとんど脈らしい脈がなくて折り目にしか見えなかったからです。翅脈で変わっているなと思ったのは、1)Sc脈が急に曲がって前縁に達しているところ(通常のオドリバエでは前縁に平行になって先端が不明瞭になっていることが多い)、2)R4がR5と大きな角度で分岐した後に急に曲がってR5にやや平行に近く走っている(通常は、分岐した後、そのまままっすぐ伸びていることが多い)、それに、3)M2とM3+4をつなぐ脈が曲がっているところ、4)CuA+CuPが不明瞭になっているところなどです。こんなところに注目して、MND(Manual of Nearctic Diptera)を見てみると、Hilara属の翅脈が似ていることに気が付きました。それで、三枝氏の報告書の中にある検索表で確かめてみました。一か所、「口吻は長く下方を向く」というのが、この写真では確かめられません。でも、もしこれが合っているのならば、Hilara属Hilara亜属に到達します。一応、採集したので、今度確かめてみます。





これはユスリカの♂です。腹部末端にある把握器の先端が曲がっています。それで、ユスリカ亜科ではないことだけは確かです。たぶん、エリユスリカ亜科だと思うのですが、これも採集したので、今度、調べてみます。



最後はクモでネコハグモです。

このほかにも虫が数種いたのですが、もう少し調べてから出すことにします。冬になって虫は少なくなってきたのですが、それなりに調べる虫がいて意外に忙しいです。
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廊下のむし探検 ハエの標本づくり

先日から小さなハエやハチを検索表を使って調べていたのですが、調べた虫を標本として置いておいた方がよいかなとふと思い立ち、標本づくりをしてみました。といってもいい加減なのですけど・・・。



まずはだいぶ前に検索したユスリカたちです。小さいので針を刺すわけにもいかないし、どうやったらいいかなと思ったのですが、とりあえず手元にある微針をペフ板を四角に切ったものに刺し、針に接着剤を付け、それにくっつけてみました。まあ、何とかくっついているみたいです。



ハエはこんな三角形の台紙の上にくっつけてみました。




三角形の台紙は挨拶状によく入っている厚紙を切って作りました。



一つの大きさはこのくらい。後ろの黒い筋の中心に針を刺して、前にある黒い筋の前側に接着剤をつけます。接着剤は「一寸のハエにも五分の大和魂・改」に載っていた方法を使いました。木工用ボンドに少し水を加え、ほんのちょっと中性洗剤を界面活性剤のつもりで加えました。三角形の台紙の先に接着剤を付け、ハエの翅をピンセットで持ってその上に置くだけなので結構簡単です。今のところ、まぁ、くっついているみたいです。こんな標本が後で役に立つかどうか分かりませんが、置いておくと何かと安心なので・・・。(追記2016/12/29:接着剤はこちらに載っていました。三角台紙はもっと小さい方がよかったのかなぁ。幅3mm、長さ9-10mmと書いてあった

廊下のむし探検 虫は少ない

廊下のむし探検 第859弾

23日にマンションの廊下を歩いて見つけた「むし」たちです。やはり今頃になると少なくなりますね。



この日の最初はこの蛾からです。ウスミドリナミシャクです。蛾はこれ1匹だけでした。それにしても今年は蛾が少ないですね。例年の今頃だとフユシャクが何種か見られるはずなのですが・・・。改修工事でマンションの壁を塗り替えたのが関係しているのかなぁ。



カメムシではケブカカスミカメを時々見ます。



それからヒメナガカメムシ。(追記2016/12/29:菅井 桃李さんから、「ヒメナガカメムシではなく、同属のセスジヒメナガカメムシですね。小盾板に黒いTなら、セスジヒメナガカメムシの方です。」というコメントをいただきました。そんなのがいるのは初めて知りました。確かに、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」には載っていますね。小盾板が側縁を除き、全体に黒色ならばヒメナガカメムシ。小盾板は広い黄色部をもち、T字状の黒色紋を具えるとセスジヒメナガカメムシ。確かに今回のはセスジヒメナガカメムシのようです。これまで撮った写真も見直してみなくちゃ。貴重な情報をどうも有難うございました

(追記2016/12/30:ヒメナガカメムシとセスジヒメナガカメムシの比較図を作ってみました。



これまで撮った写真を見てみると、ポツポツとセスジが混じっていました。よく分からない個体もいましたが・・・




前翅長2.7mm。小さいヨコバイだと思うのですが、名前が分かりませんでした。(追記2016/12/29:そらさんから、「小さなヨコバイは、ヨツモンヒメヨコバイに似ていますが、こんなに色の濃いのがいるのかは分かりません。」というコメントをいただきました



これはケナガスグリゾウムシかな。





ハエは例によって名前はおろか、科も分かりません。これは採集したのかなぁ。

追記2016/12/29:そらさんから、「ゾウムシの次の最初のハエは「ご近所の小さな生き物たちフォト」掲載のアシナガバエ科の仲間1に似ているように見えます。」というコメントをいただきました。さらに、菅井 桃李さんから、「件のアシナガバエ科の仲間1は、1から3枚目と、4から7枚目は、腿節の色から別種かも。このアシナガバエは、長野で11月10日に見た「やけに遅くまで居る大きなMedetera」と思ったものに似てますねえ。未同定な上に少なくとも別種に見えますが…。」というコメントをいただきました。どうやら、アシナガバエ科のMedetera属みたいです。以前、菅井 桃李さんから紹介していただいた田悟敏弘、「関東地方にて採集したアシナガバエ科の記録」、はなあぶ 30-2、1 (2010)にはMedeteraはgrisescens一種類だけが載っていて、この個体と比べると確かにR4+5とM1+2が翅縁に向かって接近しているところなどは似ている感じです。ただ、この種は「日本昆虫目録第8巻」によると、日本では石垣島だけに産することになっていました。また、Medetera属はこの「目録」によると15種。そのうち、本州産は5種になっていました。

K. Masunaga and T. Saigusa, "A Taxonomic Study of the Genus Medetera Fischer von Waldheim of Japan (Diptera: Dolichopodidae)", Entomol. Sci. 1, 611 (1998). (ここからダウンロードできます)

この論文には日本産Medetera属15種とその検索表が載っていました。写真を使ってざっと検索してみると、M. grisescensになりそうな感じですが、脚の色に関しては「はなあぶ」の記述とは違っています。冷凍庫を見てみると、一応、この写真の個体は採集していたので今度調べてみます。ただ、なぜか触角が取れていた・・・。検索には重要なのに・・
・)



これは採集しようと思いました。まずは撮影からと思って撮っていたら逃げられてしまいました。写真のピントも今一つだし、やはり採集か撮影かどちらかに決めてしまわないとだめですね。



だいぶ注意して撮影したのですが、Sc脈が写っていません。前縁脈に達している風でもないので、たぶん、ガガンボ科だとは思うのですが・・・。ガガンボの撮影は難しい。



この間から、このミカドオオアリをよく見ます。



趣味的に顔を拡大してみました。まぁ、どうってことはないですね。



これはひょっとして昨日検索したヒラフシアリかもしれません。



これは変わった形のクモです。「日本のクモ」で調べてみると、ガザミグモみたいです。去年の3月と5月に見ていました。



これはササグモ



そして、ヤミイロカニグモです。

こうやって書いていくと、そこそこの数の「むし」くんがいましたね。目立った種はいなかったのですが・・・。今日も廊下を歩こうと思っていたのですが、風花が飛んでくるような寒さと強い風が吹いていたため諦めました。

虫を調べる ヒラフシアリ?

冬至も過ぎ、もう冬真っ盛りと思われるのですが、マンションの廊下でこんなアリを見つけました。



体長は3.4mm。アリは見ただけではよく分からないので、とりあえず採集してきました。今日、「日本産アリ類図鑑」の検索表を用いて調べてみました。まず、これは翅が落ちた跡があるので、雌有翅アリだったみたいです。以前、雌有翅アリについて検索しても、中胸気門の位置が翅があるために違っていて行き詰ったことがありました。それでまたかなぁと思ったのですが、試しに検索してみると、意外や意外、すんなりと種まで行くことができました。カタアリ亜科ヒラフシアリ属ヒラフシアリ Technomyrmex gibbosusです。合っているかどうかは分かりませんが、とりあえず、記録として載せておきます。



まずは、検索表のうち、必要な部分だけを抜粋したものです。種まで行ったにしては全部で6項目。意外に少なかったですね。例によって、検索順ではなくて、部位別にこれらの項目を確かめていきたいと思います。



最初は全体像からです。パッと見て、腹柄節の出っ張りがずいぶん小さいこと、それに腹部がそれに覆いかぶさっている様子が分かります。まず、①の「腹柄節が1節」はOKでしょう。②の丘部が小さいというのはその通りで、どれが丘なのかよくわからない感じがします。したがって、次の「丘部の幅が狭い」というのはこの際、無視します。腹部第1節と第2節の間にはくびれがありません(②→)。また、腹部第1節の背板と腹板は融合していません(②→)。⑤の「中胸と前伸腹節の間が深くくぼむ」はやや微妙な感じです(⑤→)。深いというほどではないので・・・。また、次の「前伸腹節は隆起する」というのも同じく微妙です。でも、最後の「腹部は外側から見て5節を数える」は確かそうです。これが4節だったら、コヌカアリ属になるのですが、5節なのでヒラフシアリ属になりました。最後の⑥は「腹部第1背板から第3背板に立毛はない」というのはこの写真でも分かりますが、その通りです。また、体色もそんな感じです。



これは腹柄節付近の拡大ですが、腹柄節が管状というのも何となく分かります。また、腹部が腹柄節に覆いかぶさっているというのはまさにその通りですね。



これは腹部末端の写真です。ヤマアリ亜科は先端に丸い穴があいて、まるで火山の噴火口みたいですが、これは横長の穴が開いています。これはカタアリ亜科の特徴です。



最後は頭部の写真です。大腮がごついですね。頭盾には特に異常はないので、①はOKでしょう。

これでカタアリ亜科ヒラフシアリへの検索過程をすべて調べたことになります。途中、ちょっと微妙なところもあったのですが、合っているといいですね。いつもは働きアリの検索をしていましたが、今回は雌有翅アリの検索でした。初めてだったかどうかは忘れてしまったのですが、とりあえず、検索ができて嬉しく思いました。図鑑によると、ヒラフシアリは体長は2.5mm。樹上性で、8月から10月にかけて結婚飛行が行われるようです。今回の個体は3.4mmとちょっと大きかったのは雌有翅アリだったからかもしれません。それにしても、今頃、何をしているのでしょう。

廊下のむし探検 ハエとハチ

廊下のむし探検 第858弾

21日のハエとハチの名前調べが残っていました。まだ検索が終わっていないので、科も分からないものばかりですが・・・。小さなハエは本当に大変ですね。





まず、この間調べたノミバエからです。これはトゲナシアシノミバエ亜科のMegaselia属でしたね。この間、ちょっと調べたので、この日はリバースレンズを使ってちょっと拡大してみました。でも、被写界深度が狭くなるので、なかなかうまく写りませんね。





中脚脛節背面に長い刺毛が2本が出ています。これはノミバエ亜科の方です。これについては以前も載せた次の2つの論文に検索表が載っています。

金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)





写真がはっきりしないのですが、1)R2+3脈とR4+5脈に分枝する、2)中胸側板に毛がない、3)後脚脛節背側が細い溝で別れた剛毛列があるというので、Diploneura属かなと思いました。2)と3)は写真がはっきりしていていないので怪しいですが・・・。さらに、M1脈がS字型というので、Diplonera亜属まではいきそうです。本当かどうか分かりませんが・・・。ノミバエもしょっちゅう見ているといろいろな種類のいることが分かるようになりますね。





後はクロバネキノコバエと思われるハエです。左右の複眼がつながっています。



この間もいたヒゲナガヤチバエ



これはヤドリバエの仲間かなぁ。





この2種のハエはなんだか分かりませんでした。もし、採集していたら、今度調べてみます。(追記2016/12/28:そらさんから、「『これはヤドリバエの仲間かなぁ。』の次の写真はアタマアブ科の仲間で、その次はイエバエ科のシナホソカトリバエに似ていますね。」というコメントをいただきました。アタマアブ科というのは初めて聞きました。イエバエ科だったら、「日本のイエバエ科」があるので調べられるのですが、果たして採集してたかなぁ。今度調べてみます。そらさん、どうも有難うございました









この手のハチは今のところお手上げです。翅脈から、ヒメ、コマユ、ヒメ、ヒメかと思ったのですが、違っているかな。



このアリは採集したので、今度、調べてみます。早く冬が終わってもう少し大きな虫が出てくるといいのですけど、まだ、当分の間、この小さなハエやハチと相手をしなければなりませんね。(追記2016/12/27:この写真のアリの検索をしてみました。まず、これは翅の取れた雌アリでした。検索の結果、カタアリ亜科ヒラフシアリみたいです。有翅雌アリでも検索表が使えるようなので、ちょっと嬉しくなりました。これから顕微鏡写真を撮って、再度、確認してみます

廊下のむし探検 クモとチャタテムシ

廊下のむし探検 第857弾

21日にマンションの廊下を歩いてみました。主だった虫はもう出したので、残りの虫です。今日はクモが中心です。



廊下を歩いたら、こんな場面に出会いました。クモはオチバカニグモの仲間です。小さい虫の方はチャタテムシです。さて、これからどんなドラマが展開されるのだろうと思って、楽しみに見ていると、



チャタテムシはどんどんクモに近づいていき、もう触角がクモの肢に触れています。まさに、クモの手中にあるっといった感じですね。



で、何事もなかったのように、チャタテムシは向きを変えてそのまま離れていきました。クモは全く動きません。何も起きなかったので、ちょっと残念だったけど・・・。



ところで、このチャタテムシは縁紋が四角なので、ウスイロチャタテ科ですね。



ちょっと拡大してみました。こんな感じの虫です。これは以前、ブリッグスウスイロチャタテとした種と似ていますね。このときは、最終的に生殖下板の先端突起の形を見て決めたので確かだと思うのですが、今回は生態写真だけなのではっきりとはわかりません。でも、外見がよく似ているので、たぶん、ブリッグスウスイロチャタテで決まりでしょう。



ほかのクモです。これはコカニグモかなと思います。この写真もそうなのですが、どうも最近はピントが合わなくて困っています。利き目が使えなくなったのでそのせいなのかなぁ。




これはミスジハエトリだと思います。後はハエとハチが残っているのですが、小さなのが多いので、整理が面倒で・・・。

廊下のむし探検 フユシャク、カメムシなど

廊下のむし探検 第856弾

21日の「廊下のむし探検」の結果です。最近は小さなハエやハチを写しているせいか、12月末になっても結構たくさん虫が見つかります。この日もクモも含めて30種以上もいました。でも、小さな虫ばかりなので、名前調べは大変。



今年は本当に蛾が少ないですね。いつもなら、今ごろでも数種は必ず見つかるものなのですが・・・。とりあえず、フユシャクの一種、チャバネフユエダシャクがいました。





カメムシはそこそこいます。これはムラサキナガカメムシです。



それにヒメナガカメムシ



それにマツヘリカメムシ。いつまでもいますね。



このカメムシの名前調べが大変でした。最初、カスミカメだと思って、図鑑を見てもなかなか見つかりません。ひょっとしてナガカメムシの仲間かなと思って、「日本原色カメムシ図鑑第3巻」を見て、それらしい仲間を見つけました。ヒョウタンナガカメムシ科のツヤナガカメムシ属です。日本産のこの属は3種で、前脚腿節腹面の棘状突起の数が違うようです。オオは3本、クロは2本、チビは1本です。また、体長もかなり違います。



この写真では矢印で示した2本が見えていて、それ以上は分かりませんが、ちょっとピントのずれた写真では2本だけだったので、たぶん、クロツヤナガカメムシだと思われます。図鑑によれば大きさが4.8mm内外となっていますが、これは4.9mmで、ピタリです。



これはヨコバイだと思うのですが、まだ、名前が分かりません。もう少し調べてみます。



これはアブラムシの仲間なのかなぁ。よく分かりません。(追記2016/12/25:ネットの画像検索で探していてそれらしい種を見つけました。アブラムシ科オオアブラムシ亜科のヤノクチナガオオアブラムシというのに似ています。これは学名ではStomaphis yanonisとなり、Stomaphis属はみなこのような形態をしているみたいでこの写真の個体の種まではよく分かりません。この後ろまで長く伸びているのは、産卵管ではなくて口吻だそうです。これについては次の論文に詳細が載っていました。

宗林正人、「アブラムシの植物汁液吸収に関する生理学的ならびに形態学的研究」、Bulletin of the University of Osaka Prefecture. Ser. B, Agriculture and biology 18, 95 (1966). (ここからダウンロードできます)
J. Brozek et al., "The structure of extremely long mouthparts in the aphid genus Stomaphis Walker (Hemiptera: Sternorrhyncha: Aphididae)", Zoomorph. 134, 431 (2015). (ここからダウンロードできます)

アブラムシの口器は上唇、口吻(下唇)、大腮針と小腮針と呼ばれる2対の口針から成り立っています。Stomaphis属では上唇は短いのですが、口吻と口針は長く、体長の2倍を超えるものもあるそうです。後者の論文によると、この口吻は全部で5節にわかれます。



論文に載っている図を参考にして番号をつけてみるとこの写真のようになります。休息時はこのように口吻は後ろに伸びた状態なのですが、食事をするときはこれが短くなり体の中に埋め込まれます。この時の仕組みを後者の論文では調べているのですが、口吻第I節の中心に第II節が埋め込まれるようにささっていき、さらに第I節は第II節を含んだまま体内に埋め込まれてしまいます。こうして表には第III節以降だけが出るようになります。植物体に口吻を差し込むにはいったん短くしなければいけないのですが、これがこんな仕組みになっているようです


追記2016/12/25:ついでにアブラムシなどのカメムシ目の口についても調べてみました。上の宗林氏の論文と次の論文の記述や絵を参考に口吻断面の模式図を描いてみました。

R. Bansal, T.-H. Jun, M. A. R. Mian and A. P. Michel, "Developing Host-Plant Resistance for Hemipteran Soybean Pests: Lessons from Soybean Aphid and Stink Bugs", in "Soybeen - Pest Resistance", edited by Hany A. El-Shemy, InTech (2013). (ここからダウンロードできます)



口吻の下側には下唇溝があり、その中に4本の口針が入ります。この中に入ると2本の小腮針は向かい合って接着し、その間に二つの隙間をつくります。一つは食物管で植物体から汁を吸い上げるのに使います。もう一つは唾液管で酵素を含んだ液を植物体に注入するのに用いられています。大腮針の先端は鋸歯状になっていて、2本の
大腮針が交互に動いて植物体の中に口針を突き刺していくそうです。これはアブラムシだけでなく、カメムシ目一般的な口の構造みたいです。面白い構造をしていますね。ちょっと勉強になりました)



あとはスズキクサカゲロウ



それにヒゲナガカワトビケラ



あとはナミテントウ



それに、この間もいたヨツモンキスイ





これもこの間いたアカハバビロオオキノコでした。これで、ハエとハチ以外の虫は終わりです。あとはハエがいっぱい残っています。ちょっとうんざりですね。

虫を調べる ヌカカ科

先日、マンションの廊下で小さな虫を見つけました。



体長は1.9mm。結構小さいのですが、最近は小さい虫ばかり扱っているので、それほど小さいという感じはしませんでした。触角の途中から節の形が急に変化するので面白いなと思って採集しました。ハエの仲間であることは翅の脇から白い平均棍が見えていることから分かります。何科かは分からなかったのですが、翅脈を見ると何となくタマバエ科かなと思って検索をしてみました。用いた検索表は「新訂 原色昆虫大図鑑III」に載っているものです。何度か調べていったのですが、どうしてもタマバエ科にはなりません。結局、ヌカカ科になってしまいました。ヌカカというと、いつも見ているのは毛むくじゃらで、蚊みたいな虫なので、半信半疑で以前撮ったヌカカ科の触角の写真を見ると確かによく似ています。また、MND(Manual of Nearctic Diptera Vol. 1 (ここからダウンロードできます))を見ると翅脈もよく似た種が載っていました。それで、間違いないだろうと思って顕微鏡写真を撮り始めました。



まずは、「大図鑑」に載っている検索表のその部分を抜き書きしたものです。ヌカカ科に進むには①から④までを確かめればよいことになります。タマバエ科かヌカカ科はこの一番上の項目〇か①かで決まります。つまり、前縁脈が翅を取り巻くか、R脈の末端をやや越えた部分で終わるかです。



これは翅脈の図ですが、前縁脈はCと書いた外側の脈です。この写真だとR4+5と書いたところくらいまでしか伸びていないようなので間違うことはなさそうです。



こちらは透過照明で撮影したものですが、これだと何となく細い脈が一周回っているように見えます。それで、いつも間違ってしまいます。でも、タマバエ科の方に進むと途中で行き詰ってしまいます。だから、たぶん、ヌカカ科側に進んでよいのでしょう。③はM脈以降も普通に翅脈が発達しているので問題なさそうです。④は翅にM1とM2という2本のM脈を持つという内容ですが、これにはちょっと注釈がいります。実は「大図鑑」とMNDでは翅脈の名称のつけ方が違っています。MND風につけると上の方の写真の( )内のようになります。こうすると、M脈は確かに2本になりこの項目はOKとなります。たぶん、同じ「大図鑑」でも執筆を分担する人で翅脈の名称のつけ方が違っていたのではと思いました。



②の単眼は撮り忘れました。この写真はちょっとピントが合っていないのですが、頭部を横から撮ったもので、これでも単眼がなさそうなことは少し分かります。③の触角は確かに長いですね。

これで、すべての項目を確認し終えたので、ヌカカ科に落ち着きました。ポイントは翅を一周する前縁脈をちゃんと見分けられるかどうかですね。



次はMNDに載っている属、亜属への検索表です。原文は英語で私の拙い語学力で訳しているので、違っているかもしれません。この検索表を使うと、最終的にAtrichopogon属Atrichopogon亜属になったのですが、その過程を見ていきたいと思います。いつもと同じように、検索の順ではなく、部位別に見ていくことにします。



はじめは頭部の写真です。この個体の触角はぼうぼうとしていないので、たぶん、♀の方です。口吻はほぼ真っ直ぐです。それから複眼は無毛です。これで各項目は確かめられました。それにしても、こんな口吻を突っ込まれたら痛いでしょうね。といっても、MNDによると、Atrichopogon属は哺乳類の吸血はせず、トンボや蛾などの大型昆虫の体液を吸うようです。



触角の鞭節は全部で13節でした。



翅脈についてはr-m脈(2枚目の写真参照)を持つことくらいなのですが、翅にある毛についての項目が多くありました。はっきりとは分からないのですが、マクロトリキアというのは大きめの毛、ミクロトリキアは小さな黒い点のように見える毛のことではないかと思いました。また、後縁には長い毛と短い毛が交互に一列に並んでいました(赤矢印)。



次はr1室とr2+3室の大きさ比較です。検索項目ではr2+3室がr1室の長さの2倍となっていましたが、この個体では3-4倍ほどはありそうです。ここがちょっと気になりました。でも、いろいろと種によって変化があるのかなと思ってそのままにしています。



次は肢の爪が曲がっていること、爪と爪の間に爪間体という毛みたいなものが発達している点です。この毛がおそらく、壁やガラスなどに止まるときに吸着するもとになるものでしょう。



最後はこれも撮り忘れたのですが、腹部腹板に突起があるかないかで、そんなものは見当たらないのでOKとしました。これはMNDに図が載っているので、それと比較することで分かります。

ということで、ヌカカ科Atrichopogon属Atrichopogon亜属にはなったのですが、日本産に限ってもこの属には山ほどの種(「日本産昆虫目録第8巻」によると、Atrichopogon属は29種、また、亜属区分はされていませんでした)が載っています。だから、ここから先の種まではまだ先が長そうです。でも、ヌカカにもいろいろといるのだというのが分かったのがプラスだったかな。

追記2016/12/28:「こちらのヌカカは、Atrichopogon femoralis Tokunaga モモグロヒラタヌカカと思われます。「はなあぶ」No.36に記載しています。」というコメントをいただきました。送っていただいた「ハナアブ」の記事に出ている図を見ると確かによく似ています。それでも、やはり手書きの図には写真では分からないような詳しい部分が描かれているのに感心しました。もう少し写真を頑張らなければ。コメントどうも有難うございました

廊下のむし探検 小さなハエとハチ

廊下のむし探検 第855弾

18日にマンションの廊下を歩いて、小さな虫まで徹底的に写真を撮ってきたのですが、極小のハエが多くてなかなか名前調べが進みません。一部は採集して冷凍庫に入れてあるのですが、ともかく、年末で忙しい忙しい。学校の先生でもないのにどうしてこうも忙しいのだろうか。18日分の名前調べがまったく進んでいないのに、昨日、また廊下を歩いてきて、たくさんの写真を撮ってきました。というわけで、名前がまだほとんど分かっていないのに、とりあえず出すことにしました。後で分かった分は「追記」で出すか、「虫を調べる」で出そうかなと思っています。



まずはこのハエです。触角の途中から節の形が急に変化するので面白いなと思って採集しました。写真で翅脈を見たのですが、何科かよく分かりませんでした。平均棍らしい白いものが見えるので、ハエ目は間違いなさそうですが・・・。(追記2016/12/22:先ほど検索をしてみました。翅脈や雰囲気からタマバエ科かなと思って、検索してみたのですが、どうしてもタマバエ科にはなりません。代わりにヌカカ科になってしまいました。こんなヌカカがいるのかなと思って調べてみると、どうやら本当にヌカカ科みたいです。確かに、以前撮ったヌカカの触角もMNDに出ている翅脈もこれとよく似ています。そこで、MNDに載っている検索表を使って属の検索をしてみました。あまり迷うことなく、Atrichopogon属Atrichopogon亜属になったのですが、本当かな)(追記2016/12/28:「こちらのヌカカは、Atrichopogon femoralis Tokunaga モモグロヒラタヌカカと思われます。「はなあぶ」No.36に記載しています。」というコメントをいただきました。送っていただいた「ハナアブ」の記事に出ている図を見ると確かによく似ています。それでも、やはり手書きの図には写真では分からないような詳しい部分が描かれているのに感心しました。もう少し写真を頑張らなければ。コメントどうも有難うございました



次はタマバエっぽい感じです。タマバエは属の検索表があったので、採集をしようと思って近づいたら、逃げられてしまいました。これも取りたかったのですが・・・。



これは何でしょうね。採集したかどうかも忘れてしまいました。sc切目があります。後単眼剛毛が交差しているみたいですが、まだ科が分かりません。(追記2016/12/22:そらさんから、「3枚目は、だいぶ前にブログに掲載して教えてもらったアジアコブカタキモグリバエ(キモグリバエ科)どと思います。冬らしく、地味な感じの虫が多くなってきましたね(^^)。」というコメントをいただきました。そらさんの記事に載せられている次の論文を見ると、確かによく似ています。

K. Kanmiya, "Chloropidae (Diptera) from the Akasaka Imperial Gardens, Tokyo", Mem. Natn. Sci. Mus. 39, 337 (2005). (ここからダウンロードできます)

キモグリバエの仲間だったのですね。そらさん、どうもありがとうございました





死んでいるのかと思ってピンセットで起こそうとしたら、突然、動き出しました。逃げられそうなので、すぐに採集してしまったので、上からの写真がありません。



これは翅脈から、どうやらオドリバエみたいです。これも採集すればよかったのですが、見逃してしまいました。(追記2016/12/30:検索したわけでもないのですが、翅脈の特徴(例えば、R4がR5と大きな角度で分かれ、その後、R5とほぼ平行に走るなど)を見ていると、オドリバエ科オドリバエ亜科のHilara属かもしれません。さらに、「大図鑑」の記述を読むとHilara亜属に入るようです。ただ、この亜属には23種記録されているので種までは遠そうです)(追記2016/12/30:三枝氏の図解検索システムを見ると、口吻の長さと向きが検索表に入っているのですが、横から写していないのでこれが分かりません。もし、長く下方を向くを選べば、Hilara (Hilara)に達するのですけど・・・。やはりいろいろな向きから写しておかないといけませんね。ついでにこれは腹端が尖っているので♀のようです



これは以前も調べたヒゲナガヤチバエでしょうね。一応、採集したのですが、まだ、毒瓶の中です。



写真を見ると、わりときれいなハエですね。たぶん、逃げられてしまったのではと思います。(追記2018/02/14:ちゃんと検索していないのではっきりとは分からないのですが、キモグリバエ科のヤマギシモリノキモグリバエではと思っているハエです。詳細はこちらを見てください



今頃のキゴシハナアブはもうまったく動きません。まだ、生きているみたいですが・・・。





ヌカカの♂です。以前、検索表を翻訳したことを思い出し、一応、採集しました。でも、小さいからなぁ。(追記2018/02/15:コメントをいただき、Forcipomyia属らしいことは分かりました。まだ、調べていないのですが、一応、そのように記録しておきます



キンバエの仲間です。これについては次の論文にクロバエ科の検索表が載っています。

田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

屋内害虫に限られているのですが、キンバエ亜科では8種、オビキンバエ亜科では5種が載せられています。「日本昆虫目録第8巻」(2014)を見ると、このほかに本州では、キンバエ亜科でカエル、ニセミヤマの2種が、オビキンバエ亜科ではマルヤマトリ、シナノトリ、ヤドリトリの3種が載っています。それでも、上の論文でかなり網羅されている感じです。そこで、この写真でも分かるような外見上の特徴に限って検索表を作り直してみました。



検索表の項目の一部だけを抜き出しているので、あまり正確ではないのですが、だいたいの見当ぐらいはつけられるかもしれません。ここで、R脈の基幹部と前縁脈基部片は次の部分です。



この個体は左右の複眼の間が開いているので♀です。前縁脈基部片の色が真黒というわけではないのがちょっと気になるのですが、もし、黒だとすれば、キンバエか、コバネキンバエかというところになります。こんな感じで、キンバエの仲間も少しずつ整理していこうかなと思っています。





小さなハチは探すと結構いるのですが、ヒメバチ科あたりとしかわかりません。とりあえず、ハエを少しずつ調べてからハチも調べてみたいと思います。



最後は、この間も調べたミカドオオアリではないかと思います。これで18日分の写真整理が終わりました。

廊下のむし探検 ノミバエがいっぱい

廊下のむし探検 第854弾
一昨日、マンションの廊下を歩いた時に、小さな虫をたくさん見つけました。その整理が大変だったのですが、調べてみると、ノミバエだけで10数枚も撮っていました。以前、ノミバエをいろいろと調べたことがあったのですが、もうすっかり忘れてしまっていました。それで、以前に撮った写真の整理をしながら思い出してみました。



ノミバエというのはこんなハエで、体長は2mmほどの小さな小さなハエです。昔のブログを調べてみたら、昨年1月ごろにトゲナシアシノミバエ亜科Megaselium属に属する2種を調べていました。このとき用いた検索表は次の二つの論文に載っているものです。

金子清俊ほか、「日本産ノミバエ科に関する研究 第1報」、衛生動物 12, 238 (1961) (ここからダウンロードできます)
田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

このように採集すると、一応、亜属レベルまでは調べられるのですが、写真だけでも属くらいまでは何とかたどり着けます。



検索表に載っている事項を全部調べているわけではないのではっきりしないこともあるのですが、一応、見分け方を書いてみます。まず、脛節基部2/3に独立した剛毛を持つか持たないかを調べます。この写真で示した通りです。もしなければ、トゲナシアシノミバエ亜科になります。もし剛毛をもっていればノミバエ亜科です。これはないのでトゲナシアシノミバエ亜科になります。トゲナシアシノミバエ亜科は触角上刺毛が下を向いていて、ノミバエ亜科は上を向いているので、そこでも見分けられます。

次は、後脚脛節に黒い筋があるかどうかを調べてみます。この黒い筋は短い剛毛列とさらに短い毛列からできています。詳細はこちらの記事の一番最後の写真を見て下さい。とりあえず、ここに黒い筋があればMegaselia属である可能性が高くなり、なければWoodiphora属になります。Megaselia属の場合はこの後、胸の側面の毛を見ると亜属が分かるのですが、この写真では黒い筋は見えるのですが、胸の側面の毛までははっきりしないので属止まりになります。昨年の1月に調べたときはこれに似た種がMegaselia属Megaselia亜属だったので、たぶん、これも同じだと思われます。



この個体も似た色ですが、複眼の間が暗い色なので、別種のようです。これも脛節に剛毛がなく、後脚脛節に黒い筋が入っています。たぶん、Megaselia属でしょうね。



これはたぶん、最初と同じ種でしょうね。





こんな黒い個体もいました。これは以前調べてMegaselia属Aphiochaeta亜属としていた種と似ています。



これも似た感じですが、脚が基節まですべて単色なのところが違っています。Megaselia属であることは確かそうですが・・・。



この個体は上の個体と同じかどうかよく分かりません。なんとなく違う感じもしますが・・・。以前、Ziramさんから、「Megaselia属は未記載種だらけ属で、現状としては約1600種程度の記載がありますが、未記載種を含めるとその10倍前後いるのではないかと言われていますので、種まで分類するのは困難かと思います。」というコメントをいただいたことがあります。これでは種までは到底たどり着きそうにありませんね。それにしても1600種でも16000種でも、天文学的な数字ですね。





ノミバエ以外のハエです。これはともにクロバネキノコバエの仲間。(追記2018/02/21:翅脈から上はタマバエ科のようです





これはシマバエ科で、上はSteganopsis dichroa、下はSteganopsis vittipleuraだと思われます。両方とも以前、詳しく調べたことがあります。前者はこちら、後者はこちらを見てください。



これは今頃いっぱいいるキモグリバエの仲間です。名前まではわかりません。一度、検索してみたいなと思うのですが・・・。





これはキノコバエの仲間だと思うのですが、名前の調べ方が分からなくて今のところ写真だけが溜まっていっています。まだまだほかにも虫がいたのですが、とりあえずここまで。

廊下のむし探検 小さな虫たち

廊下のむし探検 第853弾

今日の昼間は気温も10度以上に上がり、ちょっと暖かい感じでした。そこで、午後から虫探しに出てみました。小さな虫も見逃さないぞと思いながら、マンションの廊下を歩いてみると、いるわいるわ全部で30種ほどの虫の写真が撮れました。ただ、どれも小さな虫ばかり。このうち、何匹かは採集してきたので、また、暇々に調べていこうかなと思っています。とりあえず、ハエやハチなどを除いて、分かったものだけ。





まずはチャタテムシからです。この模様、ちょっと記憶がありました。調べてみると、今年の4月に似たような模様のチャタテを調べていました。チャタテ科のTrichadenotecnum属だと思います。

K. Yoshizawa, "Systematic revision of Japanese Trichadenotecnum Enderlein (Psocodea: 'Psocoptera': Psocidae: Ptyctini), with redefinition and subdivision of the genus", Invertebrate Taxonomy 15, 159 (2001). (ここからダウンロードできます)

この論文には日本産Trichadenotecnum属22種について詳細に載っています。このうち、本州に棲んでいそうなのは8種。さらに、模様を比較すると、T. nothoapertumあたりがよく似ています。ただし、検索表は交尾器によるものなので、この写真では無理ですが、採集したので、今度、少し見てみようかな。



次はこのカスミカメ。たぶん、ケブカカスミカメだと思います。





これは小さなハムシです。体長を測ってみると3.6mmでした。調べてみると、以前にも見たことがあり、アカイロマルノミハムシだと思われます。





これはもっと小さな甲虫です。体長はわずか2.4mm。手作りの図鑑が役に立ちました。前胸背板の形、触角などがキスイムシ科に似ています。



早速、「原色日本甲虫図鑑III」を開いてみると、似た形の虫が載っていました。最終的には、前胸背板側縁の突起(写真の矢印)が前寄りという記述から、ヨツモンキスイにしたのですが、どうでしょうね。手作り図鑑、もう少し頑張って作ると私の住まい周辺の虫を調べるにはかなり役に立つようになるかも。





体長は測っていないのですが、1cmほどの比較的小さなハネカクシです。ハネカクシについては以前も書いたのですが、柴田ほか、「日本産ハネカクシ科総目録(昆虫綱 :甲虫目)」、九州大学総合研究博物館研究報告 11, 69-218 (2013). (ここからダウンロードできます)によると、日本産398属2262種。属さえ調べる意欲をなくしてしまいました。

虫を調べる シロガネコバエ科??

先日来、マンションの廊下の壁に止まっている小さなハエ。今回はこれを調べてみました。今回の検索はかなり怪しいので、出そうかどうか迷ったのですが、もう何日も抱えているし、とりあえず出すだけ出そうと思って書いてみました。



対象とするのはこんなハエです。検索項目が書き込んでありますが、気にしないでください。体長3mm。小さいといえば、小さいのですが、先日、体長1.3mmのミギワバエらしきハエの検索をした後なので、かなり大きく感じました。このくらいの大きさなら結構扱いやすいです。と言っても、翅を持ってあっちに向けたりこっちに向けたりしていたら、翅がぼろぼろになってしまいましたが・・・。

今回は「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表を使って検索をしてみました。何度も何度も検索してみたのですが、最終的にはシロガネコバエ科という聞いたことのない科にたどり着いてしまいました。極めて怪しいのですが、その過程を見ていき、どこでどう迷ったのかも書いておこうと思います。まず、短角亜目無弁翅類であることは確かそうなので、その先の項目を順に書くと次のようになります。



全部で15項目ありますが、最初の①から⑥までの項目は特定の科を除外する項目なので、ここでは省略して、⑦以降の項目について写真で確かめていきたいと思います。検索の順番に見ていってもよいのですが、あっちの図、こっちの図と次々に図が変わっていって大変なので、部位別に書いていきます。まず、一番上の写真では⑧の体肢が長細くないというのを見ます。これはアシナガヤセバエ科などの細長い種を除外する項目です。私自身は見たことがありませんが・・・。



次は顔の拡大写真です。中央にある丸いのは触角第3節です。左側にあるのは口器です。ここでは触角第2節(硬節)の先端が突き出していないことを見ます。これはクチキバエ科でないことを確かめる項目です。次は前額幅が中庸。なんだか分かりませんが、対抗するニセミギワバエ科というのはきっと広いのでしょう。見てあまり違和感がないので、これはOKとしました。



触角が出たついでに触角刺毛も見てみました。まっすぐに伸びていますが、途中までは黒く太くなっています。ここが変わっているなと思いました。



次は口器の写真です。口器が特に大きいという感じもしなく、また、頬にも剛毛がないので、⑪はよいのでしょう。口の周りに生えているのは鬚剛毛ですが、向かって右側ははっきり写っているのに左側はほとんど写っていません。これは写真の焦点の問題です。この写真は顕微鏡の焦点位置を少しずつ変えながら、全部で40-50枚ほど撮って深度合成したものですが、鬚の先端まで写真に加えるかどうかで後で見たときに鬚が写っているかどうかが決まってしまいます。鬚の先端まで写していくと、どうしても枚数が多くなるので、それを省略するとこんな写真になってしまいます。



次は頭部の刺毛(剛毛)です。これは迷いに迷いました。実は、これは先日載せた写真とは別の個体の写真です。先ほども書きましたが、顕微鏡写真では刺毛がうまく写っていないこともあるので、今回は写真をプリントアウトして、鉛筆でなぞり、それを再びスキャナーで取り込みました。顕微鏡で見直したので、たぶん、大丈夫だと思うのですが、間違っているかもしれません。ここに出ている記号は以下の通りです。

ors: superior fronto-orbital setae  上額眼縁刺毛
ori: inferior fronto-orbital setae  下額眼縁刺毛
fr: frontal setae [fr s] 額刺毛
(orb: orbital setae) 眼縁刺毛
vti: inner vertical setae [i vt s] 内後頭刺毛
vte: outer vertical setae [o vt s] 外後頭刺毛
pvt: postocellar setae [poc s] 後単眼刺毛
oc: ocellar setae [oc s] 単眼刺毛
if: interfrontal setae 額内刺毛
ar: arista [ar] 触角刺毛
vi: vibrissa [vb] 鬚刺毛

刺毛の名前や省略法には流儀があるようで、文献によって結構違いがあります。一番迷ったのは(ori)と書いた刺毛です。内側に曲がっていますが、これを下額眼縁刺毛に入れるかどうかで迷ってしまいました。この辺りの刺毛の呼び方は結構難しくて私もよく分かりません。とりあえず分かっていることだけ書くと、複眼の内側は固くなっていてそれを前額眼縁板と呼んでいます。そこに生えている剛毛が額眼縁刺毛です。前額眼縁板が下までずっと続いている場合は何も問題がないのですが、途中で途切れてしまい、その下側では別の板状のものができている場合があります。この部分を前額板と呼んでいます。場合によると、前額眼縁板と前額板の間にも板状のものがあることがあって、これを中額板と呼ぶそうです。

ややこしいのは、その板の種類によって刺毛の呼び方が変化することです。一般には、前額眼縁板の背方にあるものを上額眼縁刺毛と呼び、下側にあるものを下額眼縁刺毛と呼んでいます。ややこしいのは、下側が前額板になっている場合で、なっていない場合の呼び方をそのまま継承していて、本来ならば前額板の上は額刺毛と呼ぶべきなのですが、そこに生える目立つ刺毛も下額眼縁刺毛と呼ぶことが慣習になっているようです。たぶん。ただ、人によっては前額眼縁板、前額板といっても基本的には同じものなので、そこ生える刺毛を眼縁刺毛とまとめて呼ぶべきだと書いてある論文もありました。

で、上の写真を見ると、前額眼縁板はくびれがなく下まで続いているようです。強いて言えば構造がなくはなさそうのなので、その場所を「(前額板)」を書いてみました。この前額眼縁板は下にいくほど太くなっていてその縁に内傾した太い刺毛が1対生えています。したがって、これはたぶん、下額眼縁刺毛と呼ぶべきだろうと思って「(ori)」と書いておきました。この判断が違うと検索では別の道に進んでしまいます。あまり自信はないのですが、とりあえずそう解釈しておきます。この刺毛、それほど確固として生えてくるものではなさそうで、orsと書いた刺毛は手前では3本、向こう側は2本になっています。



これは先日載せた別の個体での写真ですが、(ori)と思しき刺毛は2対あるようです。

とりあえず以上の解釈で検索項目を見てきます。まず⑪は側傾の額眼縁剛毛というのは外側に向いた刺毛のことを指すと思うのですが、このハエではありません。したがって、0なのでOKということになります。次は⑬で下額眼剛毛というのは先ほど問題にした(ori)と書いた剛毛で、内傾しています。したがって、OKです。最後は⑮で多数の整列されない額剛毛というのは上の写真でfrと書いた刺毛ではないかと思いました。だいぶ、怪しいのですが、こんなところでOKということにします。



次は翅脈です。⑧はR4+5とM1(M1+2)がほぼ平行かというところですが、ちょっと接近していますが、まぁ平行ということでしょう。⑩はsc切目を持っているかということで、はっきりした切目を持っています。



その切目の部分の拡大です。Sc脈がはっきり写っていて、⑦にあるように、R1とは独立に切目の中心向かって走り、途切れたC脈の先端に合流しています。⑫はR1の背の刺毛ですが、目立った刺毛はありません。強いて言えばC脈と合流する近傍で細かい毛が生えています。これがミクロトリキアなのかな。C脈を左に追いかけていくと、一時、脈が途切れます。これがh切目で、したがって、⑭はOKです。



次は翅の基部の拡大ですが、CuA、CuPと書かれた部分はややこしくなっています。CuAはM+Cuから分かれ、bm室の下辺を走ったあと、M脈への横脈と分かれて下に曲がり、ちょっと戻ってCuPと合流しているように見えます。このちょっと戻ってというところで引っかかりました。というのは、曲がり方があまりに小さいので⑫の「CuA脈は内彎しない」というのでよいのか、「内彎するのでcua室は先が尖る」という方を選ぶのか迷ったからです。ここで、cua室というのはCuAとCuPで囲まれた室です。後者を選ぶと、チーズバエ科になるのですが、画像検索をするとなんとなく雰囲気が違います。ということで、前者を選んだのですが、ここがちょっと気になりました。(追記2016/12/18:CuA+CuPがこの写真のように根元部分だけの短い脈なのか、3つ上の写真のように翅縁近くまで届く長い脈なのかが判然としません。翅の折り目と脈の違いがぱっと見ではよく分からなくって・・・。もう一度調べてみます



次は側面からの写真です。胸の側面を拡大してみます。



ついでに「大図鑑」を見ながら、部位の名前を書き入れたのですが、ここで見るのは⑮の上前側板に剛毛がないことです。この写真のように剛毛はないのでこれはOKです。

ということで一応曲がりなりにもすべての項目を調べて、シロガネコバエ科であることを確かめました。途中、怪しいところが何か所かありました。
1.まず、(ori)とした刺毛は本当にそれでよいのか。もしこれを下額眼縁刺毛ではないとすると、実は、セダカショウジョウバエ科になってしまいます。これは外見がだいぶ違うので大丈夫かなと思っていますが・・・。
2.次はCuAが内彎しているかどうかで、ここが内彎しているとすると、先ほども書いたチーズバエ科になります。

こんなにすっきりしたハエなのですが、ハエの検索は本当に難しいですね。特に各刺毛の定義が「大図鑑」でさえ、あいまいで(特に下額眼縁剛毛あたり)困りました。でも、いろいろと勉強になったことがプラスかな。

廊下のむし探検 クモぐらい

廊下のむし探検 第852弾

ブログに出すネタがないので、今日の午前中にマンションの廊下を歩いてみました。でも、冷たい風が強くて、普段いるハエさえ見つかりません。仕方ないのでクモでも撮ろうかなと思って・・・。



これも小さいのですが、いつものズグロオニグモ



外壁に止まっていたウリハムシです。普段もいるのですが、今日は虫がいないので・・・。



風で後翅が出てきてしまっていますが、必死につかまって頑張っているナカオビアキナミシャク



このハチは何だろう。ヒメバチなのかなぁ。



これはヒメグモの仲間かな。頭の下にある黒いのは大顎なのでしょうか。捕まえて調べればよいのですが、クモはどうも苦手で・・・。



キゴシハナアブももう瀕死の状態です。



あまりに虫が少ないので、公園にも行ってみました。途中の倉庫の壁にいたアブラムシです。アブラムシはどう調べていったらよいのやら、まったくわかりません。









公園では葉っぱの上や木の幹を探し回ったのですが、いるのはこのイダテンチャタテばかり。





公園の端を流れる用水路脇にこんな赤い実がたわわになっていました。トキワサンザシです。5月に見たときは白い花がいっぱいでした。



その横の畑には八重のスイセンが咲いていました。今頃は花や実の方が綺麗でいいですね。

廊下のむし探検 マツバウンラン、後はハエ、カメムシ

廊下のむし探検 第851弾

マンションの廊下を歩いても、ハエとカメムシばかり。ハエも調べ始めると大変なのでできれば避けたいところ。それで、ちょっとだけマンションの庭を見てみました。廊下ではないのですけど・・・。



こんな綺麗な花が咲いていました。マツバウンランという帰化植物です。「日本帰化植物写真図鑑」によると、北米原産でアジア、南米に帰化しているそうです。日本では1941年に京都市伏見区向島で採集されたのが初めてで、現在では北関東、北陸以西に分布しているようです。この図鑑にはゴマノハグサ科になっていますが、最近、植物の分類は何が何だか分からなくなっています。「植物分類表」(アボック社、2009)にはDNAを基にしたAPG IIの分類が載っていますが、これによると、実にオオバコ科だそうです。ほかにもオオイヌノフグリやクワガタソウなんかも入っています。



ヒメジョオン?の花にはウスモンミドリカスミカメがいました。

後はマンションの廊下です。



クヌギカメムシの仲間がいました。この間は、後ろから撮って♂生殖節の形が分かり、ヘラクヌギカメムシだと分かりました。



今回も撮ったのですが、翅が邪魔でちょっと見えませんね。



これはヒメバチの仲間でしょうが、ヒメバチはなかなか調べる意欲が湧きません。後はハエです。





大きなハエです。たぶん、キンバエの仲間ですね。ネットでいろいろと調べたのですが、オビキンバエあたりのハエかなと思ったのですが、田中氏の「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」(ここからダウンロードできます)に載っている検索表では翅の基部の毛などを見なければいけなくてやはり採集した方がよさそうです。



これもよく見る格好のハエですが、ヤドリバエ科でしょうか。



これはシマバエの仲間かな。捕まえようとしたら、逃げられてしまいました。



そして、この間からいるこのハエ。以前、採集した個体があったので、昨日、検索をしてみました。



こんな図まで作って・・・。これは写真を撮って、剛毛だけ赤鉛筆でトレースしたものです。「大図鑑」の検索表で何度か検索を試みたのですが、迷いに迷って最終的には以前も到達したシロガネコバエ科になりました。ただ、後単眼剛毛(pvt)が交差しているところがどうも気になります。MNDによると、平行もしくはやや収斂程度で、いろいろな絵に載っているのもみなそのようです。やはり違うのかもしれません。(追記2018/04/09:シロガネコバエ科は「日本昆虫目録第8巻」によるとクロコバエ科になっていました。また、その後、検索をしてみてミナミクロコバエ Desmometopa micropsではないかと思っています。詳細はこちらこちら





ニセケバエですね。以前、花に来ている種についてMNDに載っている検索表で調べたことがありました。この時は検索表が変なのか、属の検索もうまくいきませんでした。おまけに、菅井 桃李さんからは、相当数の未記載種がいるというコメントまでもらって・・・。まだ、採集していないのですが、一度、調べてみようとは思っています。





把握器の先端が折れ曲がっているので、たぶん、この間からいるエリユスリカ亜科の♂ですね。ダニがくっついているので採集しませんでした。



こちらはその♀かな。

先日来、小さなハエの検索をしているのですが、1匹を調べるのに何日もかかっています。だいぶ、慣れたと思っていたのですが・・・。特に頭部の剛毛には悩まされます。それで、写真を撮って毛をなぞって一本一本見ていくようなことをしています。この間のミギワバエらしきハエも大変でしたが、今回のハエも大変でなかなか最終的な結論に達しません。もう少しの我慢なのかなとも思うのですが、もうめげそうです。

虫を調べる ミギワバエ科 つづき

昨日の続きでミギワバエ科らしきハエの検索です。昨日は「新訂原色昆虫図鑑III」に載っている検索表を使って、科の検索をしてみたのですが、その続きで属の検索もしてみました。肝心のミギワバエ科が違っていると、徒労に終わるのかもしれませんが・・・。でも、何事も経験ですから、どんな風に調べていくのかだけでも分かると勉強になるかなと思ってやってみました。



対象とするハエはこんなハエで、体長はわずか1.3mmしかありません。「絵解きで調べる昆虫」にミギワバエ科の属への検索が絵解きで載っていました。実は随分前にも別の種で試みたことがあったのですが、ほとんど歯が立たずという状態だったのですが、いろいろな虫で検索をしてきたせいか、今回は書いてある内容がわりあいよく分かったので、それだけでも進歩かなと思っています。

ところで、検索結果は今のところまだ極めて怪しい段階です。でも、まとめのつもりで書いてみます。検索をしてみた結果、Nostima属になってしまいました。検索項目としてはそれほど多くはなくて次の6項目です。



これをまた写真で確かめていこうと思います。まず、⑭は上の写真でも分かりますが、前脚は捕獲脚にはなっていません。



次は顔面ですが、顔面はこの写真のように突き出しています。そこに目立つような毛は生えていません。これで⑮はOKだと思いました。



次は中胸背〈盾板)の剛毛です。ここには目立つ剛毛は2対ありました(黄矢印)。これは背中剛毛(dorsocentral seta; dc)と呼ばれる剛毛列です。通常はその内側にもう一対の剛毛列があります。これを中剛毛(acrostichal seta; acr)と呼びますが、この個体には目立った剛毛はありません。2対あるdcの向かって左側に見える剛毛は盾板を前後に分ける横溝のほぼ上に載っています。この個体では横溝がはっきりしないのですが、両側に少し凹みがあるのでその部分を結ぶ線と思えばよいと思います。dcの1対はそのほぼ上に載っています。これが⑯、⑰、⑲の内容です。



これは顔を斜め下から写したものですが、口の穴は通常の大きさで、それほど大きいとは思えません。



次は問題です。まず、⑰ですが、原文では「ocは外側に傾く、・・・」となっていました。ocというのは単眼剛毛のことです。本に載っている図を見ると、単眼剛毛ではなく、上額眼縁剛毛を指しているので、たぶん、or(上額眼縁剛毛)の間違いではないかと思いました。ここをorに直してこの個体の眼縁を改めて見てみると、眼縁の上部には2本の短い毛が生えています。あることはあるのですが、他の剛毛に比べるとかなり小さいものです。いずれにしても眼縁に沿って向いているので、⑰に書いてあるような外傾はしていません。そこで、もう一つの選択肢を選ぶと、「orは前後に傾く;小盾板前のacrを有する」となり、前半はよいのですが、先ほども見たように後半の記述が違います。そこで、眼縁に生えている毛は短いので剛毛とは呼ばないのではと思い、⑰の「orは外側に傾くか、これを欠く:小盾板前のacrを欠く」の「orを欠く」を選ぶと、後半の記述も合って、一応、整合性が取れます。かなり怪しいのですが、そういう風にしてみました。次の⑲はその通りでした。

以上で属の検索が終わりました。怪しさいっぱいの検索でしたが、検索結果はNostima属になってしまいました。正しいかどうかまったく分からないので、少し文献を探してみたら次の報告が見つかりました。

J. F. Edimiston and W. N. Mathis, "A Revision of the New World Species of the Shore-Fly Genus Nostima Coquillett (Diptera: Ephydridae)", Smithsonian Contributions to Zoology No. 623 (2005). (ここからダウンロード可能です)

この報告にNostima属の特徴も載っていました。dcが2本で1本は横溝上、背側剛毛が2本で前側が短く、後ろ側は背側についているなど、ぱっと見たところではよく一致しているような気がしましたが、今度もう少し詳しく調べてみます。その前に、これがミギワバエ科で合っているのかどうか、Nostima属でよいのかどうか、はっきりとわかるとよいのですけどねぇ。

追記2016/12/13:「日本昆虫目録第8巻」によると、日本産Nostima属にはpictaとversifronsの2種が載っていました。これで画像検索すると、私が無視した⑲ビロード状の小盾板の目立つ画像が何枚も出ていました。今回の種はNostima属ではないかもしれませんね。どこで間違ったのか分かりませんが、もう一度検討してみます)(追記2016/12/13:間違っているとすると、⑮かなと思うのですが、「顔面中央から口縁部にかけて毛を装おう」を選ぶと、Synops属になるのですが、日本産Synops属は1種、fluvialisのみ。検索表に書かれている性質が合っているとすれば、いくつかの点で特徴が合いません。ここでいよいよ迷子になってしまいました

追記2018/12/30:フトツリアブさんから、「大阪市立自然史博物館に行った際にミギワバエ科の収蔵標本と比較してみました.やはり写真のミギワバエは,Nostima sp.2 ヒゲブトヒメミギワバエでした。」というコメントをいただきました。すごいですね。こんな写真から名前が分かるとは・・・。Nostima属が当たっていただけでもちょっと感激です。ヒゲブトというのは何となくそんな感じがしますね。もっとも肝心のハエのことはもうすっかり忘れてしまっていました。自然史博物館に標本があるのですね。でも、私が見ても分かるかなぁ

検索に用いなかった写真も載せておきます。







最後は眼頬比を測るために写したのですが、使いませんでした。

虫を調べる ミギワバエ科?

冬になると虫がいなくなるので、ついつい小さなハエを調べることになってしまいます。昨日は小さな小さなハエを調べてみました。



写真がいまいちはっきりしていないのですが、小さい割に動き回るので、こんな写真になってしまいました。



採集して冷凍庫に入れておいて、取り出したのがこの写真です。体長はわずか1.3mmしかありませんでした。短角亜目無弁類であることは確かなので、「新訂原色昆虫大図鑑III」に載っている検索表でその先を調べてみました。何度も何度もやり直して、やっと到達したのはミギワバエ科でした。まだ、合っているかどうかは完全には分からないのですが、とりあえずその検索過程を載せておきたいと思います。



この13項目を調べていかないといけないので、かなり大変です。このうち、①から⑥までは特定の科ではないことを確かめる項目なので、今回は⑥を除いて省略します。⑥以降の項目について、いつものように部位別に見ていきたいと思います。



最初は頭部の剛毛についてです。写真だとどうしても剛毛がうまく写らないので、プリンターで一度打ち出し、剛毛を鉛筆でトレースした後、スキャナーで読み取ってこの図を作りました。⑧は額眼縁剛毛に関してですが、複眼のすぐ脇にある剛毛を指しています。この剛毛の中で内側を向くものがないというのが⑧です。実は、他の剛毛に比べてこの部分の毛がだいぶ小さいので、果たして剛毛に入れてよいのかはやや疑問です。次の⑬に書いてある後単眼剛毛は単眼の後ろに後ろ向きに生えている剛毛なのですが、この個体にはありません。その代わり、単眼のすぐ後ろに前向きに小さな毛が生えています。これが偽後単眼剛毛だと思います。先端がやや離れているので離反的だということです。(追記2016/12/13:上の図は剛毛を鉛筆でなぞったのですが、予断が入っているといけないので、元の図も載せておきます



生物顕微鏡の10xの対物鏡で撮り、深度合成をしました




顔を斜め下から写したものですが、⑬で書いてあるように顔面が少し膨らんでいます(黄矢印)。また、触角刺毛は片側だけに枝が出ています(黄矢印)。(追記:2016/12/13:⑩について吟味するのを忘れていました。実は、これもだいぶ迷った項目でした。というのは、⑩に対立するケシショウジョウバエ科の項目には、「顔面下部は左右から横圧されるか下縁中央が突出し、鼻状に見え、突出部またはその下に1対の剛毛を生じる。内頭頂剛毛は退行的で収斂する。」と書かれていて、鼻状に突出しているというのはまさにそのように見えます。ただ、突出部かその下にある1対の剛毛というのは見当たりません。また、内頭頂剛毛が退行的というのはやや後ろを向いているという意味だと思うのですが、そのようでもありません。ただ、断言はできないので、MNDの説明を読んでみました。いくつか違いが見られました。まず、翅では、bmとdmは分離しています。また、M3+4の下にある脈(MNDではA1+CuA2)が強く、翅縁近くまで伸びています。一方、C脈はR4+5付近の翅端までしか伸びていません。さらに、Sc脈は不完全ですが、先が鋭く上に曲がり、sc切目がありません。触角刺毛は腹側が背側に比べると毛は少ないのですが、それでも両側に羽毛状です。頭部の剛毛では、やや強い額眼縁剛毛が中間部に垂直に立ち、離反的な後単眼剛毛がある等々。カナダ産と日本産の違いはありますが、今回の個体とはかなり違うようです)(追記:2016/12/13:さらに、気になったので、次の論文もぱらぱら見てみました。

W. N. Mathis and A. Rung, "Redescription of the genus Diopsosoma Malloch (Diptera, Periscelididae)", Revista Brasileira de Entomologia 48, 303 (2004). (ここからpdfをダウンロードできます)

この論文には
ケシショウジョウバエ科の説明も載っていたのですが、額眼縁剛毛は1-2本、後単眼剛毛は離反的か欠如、触角刺毛は櫛歯状、bmとdmは分離、CuA2が強くcup室を作る、C脈はR4+5またはMまで伸びる、Scは未発達で前縁には達せず、R1と融合もしない、前縁脈には切目がなく、h横脈付近で弱まるだけ等々。多少、微妙にはなってきましたが、触角刺毛、bmとdmの分離、sc切目の有無などははっきり違うようです)



次は翅脈です。実はここがうまく写らなくていろいろな方法で何度も写し直しました。ポイントはSc脈についてです。



これは生物顕微鏡の透過照明で撮ったものですが、2枚の翅が重なっていて少し見にくくなっています。前縁脈(C)にはh切目(h-break)とsc切目(sc-break)という切目が入っています。これはもともと飛ぶときに上に羽ばたくときには翅を折って空気抵抗を少なくするための折り目に当たるところです。⑫はその切目が2つあることを示しています。⑪に書いてある「CuA脈とcua室を欠き」というのは、たぶん、通常のハエではCuA脈が途中で下に折れて、さらに基部に戻り小さな室を作るのですが、それがないということだと思います。また、第2基室(bm)と中室(dm)は合体して一つの室になっています。さらに、Sc脈は先端が少し薄くなっていますが、次に拡大した写真を載せます。



これはSc脈辺りを拡大してみました。Sc脈の先端は薄くなっていて直角に曲がっている様子はありません。それで、⑥はOKです。ミバエ科はここが直角に曲がって前縁脈に達します。次の⑨にはだいぶ悩みました。bm+dm室の後縁脈に微弱な湾曲があるかないかですが、見ると一か所途切れている部分があります。これは前縁脈の切目と同様に翅を折り曲げるときの折り目になっているところです。この部分を微弱な湾曲とするとキモグリバエ科になってしまうのですが、以前、キモグリバエ科について調べてみたことがあったので、その時に撮った写真と比べてみました。



キモグリバエ科には折り目とはちょっと異なる膨らみが翅脈にあります。やはり、キモグリバエ科に見られる湾曲とは違うようです。それでこの項目はOKとしました。Sc脈についてはちょっと分かりにくいので、透過照明ではなくて、上からの照明も試してみました。



まあ、これを見るとSc脈は不完全だというのが何となく分かるので、⑦に書かれているのはOKにします。



次は脚の脛節背面の末端近くの剛毛が生えているかどうかですが、この写真で見る限り、前脚にも中脚にもなさそうです。ということで、一応、すべての項目が確かめられたことになるので、ミギワバエ科でよいのではないかと思いました。特に、⑬はミギワバエ科の特徴を書いたものですが、これがどれも該当するのでたぶん大丈夫かなと思っています。この後、属の検索もしたのですが、ちょっと長くなったので、ここで一旦やめておきます。

廊下のむし探検 ハエばかり

廊下のむし探検 第850弾

昨年もそうだったのですが、冬が近づくと虫がいなくなるので、どうしてもハエばかり目についてきます。昨年はそれでハエの検索をいくつかやって、少しだけハエが分かるようになりました。それでも、普段よく見るハエは見ても科すらわからないので、捕まえて一つ一つ検索をしていくしか方法がありません。今年の冬は何をするのかまだ決めていないのですが、どうせハエくらいしかいないなら、とりあえず、いろいろな科のハエの検索をして、パッと見で何科か分かるようになりたいなと思っています。



科別に分けて書くのも面倒なので、見た順に書いていきます。今日の最初はこんなハエからです。この姿見覚えがあります。以前、ヌカカだろうと書いたら、MSWiさんからForcipomyiaかと教えていただきました。一度検索をしてみようと思って、MNDやら論文に載っている検索表を翻訳したところまでは準備したのですが、その後、止まってしまっていました。一度調べてみないといけないですね。どうも小さな虫は調べるのが億劫になりますね。手作り図鑑のヌカカの項に入れたコラムを載せておきます。





最近は寒いのでキゴシハナアブもじっと止まったままですね。



この手の小さな虫が結構いっぱいいます。



左右の複眼が中央で接しているので、たぶん、クロバネキノコバエの仲間です。





小さなハエです。翅のsc切目の辺りが変わっています。また、h切目もあります。ミギワバエ、ショウジョウバエ、Milichiidae付近のハエかもしれませんね。一応、採集したので、今度、刺毛を調べてみます。(追記2016/12/12:体長1.3mm。大変小さいハエです。苦しんで、苦しんで検索を続けた結果、ミギワバエ科の可能性が高くなってきました。これから属の検索も試みてみます



次はユスリカです。ふさふさの触角をしているので♂ですね。捕まえてもよかったのですが、体長はわずか2.2mm。ちょっとためらってしまいました。代わりにリバースレンズで拡大してみました。



これは触角を撮ったものです。



そして、これは腹部末端。把握器がこんな風に先端が曲がるのはエリユスリカ亜科かもしれません。



ちょっと脛節と跗節第1節の長さ比べをしてみると、明らかに脛節の方が長いので、たぶん、エリユスリカ亜科で間違いないのではと思います。ユスリカ亜科は逆に跗節第1節の方が長くなります。



こういうハエはパッと見ても何科か分かりません。もう少し感を養わないといけませんね。





一応、顔と額の写真は撮ったのですが、何科か分からないと話になりません。でも、あまりにハエっぽいので採集するのはちょっと・・・。





これはこの間、菅井 桃李さんからオオクロバエだと教えていただいたハエに似ています。ただ、「一寸のハエにも五分の大和魂・改」の記事を読むと、似た種にケブカクロバエというのもいるそうです。その違いについては、いつもお世話になっている次の論文に載っていました。

田中和夫、「屋内害虫の同定法(3)双翅目の主な屋内害虫」、屋内害虫 24, 67 (2003) (ここからダウンロードできます)

いろいろと違いはあるのですが、要は内外方の横溝前剛刺毛があればオオクロバエ、内方の横溝前剛刺毛がなければケブカクロバエだということみたいです(内方、外方の意味が分かりません)。刺毛はすっかり忘れてしまっていたので、思い出すつもりで、上の写真の毛に名前をつけてみました。



だいたいは付けられたのですが、肝心の横溝前剛刺毛(iaを上に延長して、横溝(sut)を過ぎた直後にある刺毛)あたりが分かりません。別の写真を見たのですが、どうもないような感じです。だとすると、ケブカクロバエなのですが、ケブカクロバエ♂の左右の複眼はもう少し離れていて(頭幅の13~15%)、オオクロバエはくっついているので、どうやらこれはオオクロバエみたいな感じです。やはり採集しないと駄目なのかなぁ。どうもこういうハエっぽいのは苦手です。しかもこれは大きいし・・・。



この間、科が分からなかったガガンボ類がまたいました。今度こそと思って撮影してみました。



まずは頭部。後から考えたら、もう少し横から撮れば、鼻状突起の有無が分かったかもしれなかったですね。



そして翅脈。やはり肝心のSc脈がどれかよく分かりません。またしても、失敗。うーむ。



これはツマグロキンバエ



それにノミバエの仲間。これも小さいですね。



公園をのぞいたのですが、大したものはいませんでした。小さな虫が飛んできて木の幹に止まったと思ったら、マンションにもいたクロバネキノコバエでした。



夏によく見かけたムラクモハマダラミバエが1匹だけですが、まだいました。公園も寂しくなりましたね。この公園、閑静な住宅地にあるのですが、夜はシカが来ているという話や、イノシシの子供を見たという話や、近くでクマを見かけたという話も聞きました。意外にワイルドですね。

虫を調べる タマヤドリコバチ

先日、マンションの廊下の手すりのところで、小さなハチが止まっていました。



何気なく写してみたのですが、雨に濡れてぼとぼとになっていました。それにしても全身が金属光沢があって大変綺麗です。一応、採集してきて、昨日、「絵解きで調べる昆虫」に載っている検索表で検索をしてみました。その結果、タマヤドリコバチ科という初めての科になりました。たぶん、合っているんじゃないかなと思うのですが、顕微鏡で写した画像を基にして確かめていきたいと思います。



まず、「絵解きで調べる昆虫」に載っているコバチ上科の科への検索表のうち、タマヤドリコバチ科への検索過程を抜き書きすると上のようになります。これを例によって部位別に確かめていきたいと思います。



まず、全体像です。体長は3.4mm。小さいのですが、この仲間にしては大きめみたいです。ここでは、前脚脛節が普通の長さであることと、前胸背板が背側から見えること、触角が肘状に折れ曲がっているところを見ます。



これは前脚跗節の写真ですが、全部で5節になっています。



翅脈は簡単です。前縁に太い脈があるだけです。前縁脈がちょっと延長している部分を後前縁脈と呼ぶようですが、これがあります。



次は頭部です。ホソハネコバチ科は触角の上の部分に左右の複眼を結ぶ溝があるのですが、この個体にはありません。また、触角は中心付近に集まっています。



これは主に脚を見せるために写した写真です。④はノミコバチ科というのを除外する項目で、この個体も後脚基節は十分に大きいのですが、ノミコバチ科はもっとずっと大きいので、それに比べると大きくはないということになります。また、⑤に書いてあるように、後脚脛節は湾曲していません。なお、脚をピンセットで引っ張っていたら、後脚跗節が取れてしまって・・・。



これは脚の基節と胸部側面を写したものです。後脚基節は前脚基節よりはるかに大きいことが分かります。また、prepectusというのは矢印で示した部分だと思うのですが、小さくて前脚基節には届いていません。



最後は腹部背面の点刻を写したものです。各節の前半はべとっとクリームがついたような模様があり、後方は網目のような鱗状の構造がついています。これを点刻と呼ぶのかどうかは分からないのですが・・・。

いずれにしても、これですべての項目を確かめることができたので、たぶん、タマヤドリコバチ科で合っているのではと思っています。

Informtaion station of Parasitoid wasps」によると、日本産タマヤドリコバチ科はOrmyrus属だけで、pomaceus、flavitibialis、ibarakiの3種の名前が挙げられていました。また、これらの載っている論文も紹介されていました。

M. D. Zerova and L. Ya, Seryogina, "Review of Palearctic Ormyridae (Hymenoptera, Chalcidoidea), with description of two new species". Vestnik zoologii, 40, 27 (2006).(ここからpdfがダウンロードできます)

この論文には上記3種を含んだ検索表も載っていたので、試しに検索をしてみました。この3種に限って検索表を書いてみると、次のようになります。



原文は英語なので、私の拙い語学力で訳しています。違っているかもしれませんので、そのつもりで読んでください。㋐と㋑は触角についてです。触角の写真を載せます。



funicular segmentというのは触角の節のうち、形の大きな部分を指しているようです。funicularというのはリーダーズ英和辞典によると、ロープの、ロープによる吊りおもり作用の、【解】索状の、【植】珠柄の、という意味でした。この各節の縦横比が問題になっているので、一つ一つ測ってみました。その結果を図に書き込んでいます。第1~4節までは長さの方が幅より少し長いか正方形状で、第5~6節は幅がやや広めで、㋐と㋑bはこの選択でよいのではと思いました。いずれにしても、これでibarakiを除外することができました。

次の㋒は腹部背板の点刻についてですが、ここで迷い始めました。



これは横から写したもので、T1からT6のTは腹部背板tergumの略です。これによるとT2~T5までは、先ほどの述べた奇妙な模様がついています。各節の前半はクリームでもついたような模様、後半は鱗のような模様です。T1の前半の黒い部分と緑色の前半1/4の部分は艶のある滑らかな構造になっており、後半は鱗のような模様がついています。

このT1前半の滑らかな部分に注目すると、㋒bを選ぶことになるので、次の㋓に進むことになります。でも、ここで脚の色と体長に問題が出てきます。flavitibialisは前・中腿節、前脚の脛節・跗節が明るい黄色になるはずですが、この個体の腿節はすべて緑褐色、また、後脛節も緑褐色で、体長も書いてあるものよりもかなり大きなものになっています。もう一方のpomaceusの体長は♀では範囲内に入っているのですが、T1前半の滑らかな部分の記述がないし、前脛節が緑褐色というところが違います。ということで、ここで行き止まりです。個体変異の範囲内なのか、これらとは別種なのか・・・。

ついでに検索に用いなかった写真も載せておきます。





これは腹部と腹部末端を腹側から写したものです。これは♀なのでしょうか。よく分かりません。

今回は初めてコバチ上科の検索をしてみました。科の検索はまあまあできたのではないかと思うのですが、その先の種の検索では例によって迷子になってしまいました。やはり難しいですね。それにしても、コバチの仲間は拡大するとびっくりするほど綺麗なので、写しがいがありますね。

廊下のむし探検 ハエ以外の「むし」

廊下のむし探検 第849弾

昨日の「廊下のむし探検」の結果です。途中でいつもの公園に行ってみたので、そこで見た虫もついでに出しておきます。といっても、虫がいるなと思って撮ると、たいていはハエの仲間ですけどね。ハエの名前調べはなかなか厄介なので、後に回すことにして、残りの虫をまず紹介します。



見た順に書いていきます。最近、やたらによく見るヤサイゾウムシです。以前も調べたかもしれませんが、少し古い報文を探してみました。

湯淺啓温、「ヤサイゾウムシについて」、昆蟲 18, 3 (1950). (ここからダウンロードできます)
安江安宣、「ヤサイゾウムシの生態に関する研究 第1報 特に食餌植物に就て」、農学研究 40, 151 (1952). (ここからpdfをダウンロードできます)

これらを見ると、ヤサイゾウムシは南米原産の外来種で、わが国では1942年に岡山県で見つかったのが初めてのようです。現在では全世界に広がっている野菜の害虫です。1年1世代ですが、冬季にも活動を続けます。冬季には成虫、卵、幼虫の各態が見られ、その代り、夏季は休眠しているようです。原産地では寄生蜂、寄生蠅、線虫類、虫生菌類などが天敵と知られていますが、わが国にはこれら天敵がいないので繁殖しているようです。



次はアブラムシの有翅型ですね。アブラムシはどうやって名前を調べていったらよいのでしょう。



公園に行くために、マンションの入り口を出たところでクヌギカメムシの仲間を見つけました。この仲間には、クヌギカメムシ、ヘラクヌギカメムシ、サジクヌギカメムシの3種がいて、パッと見では分かりません。「原色日本カメムシ図鑑第3巻」には検索表が載っています。腹部腹面の気門が黒く縁取られ、♂生殖節の中央突起が先細りになればクヌギカメムシ、気門の縁取りがなくて、♂生殖節の側縁がほぼ平行でへら状になればヘラクヌギカメムシ、同じく気門の縁取りがなくて♂生殖節側縁が先端に向かって広がってさじ状になればサジクヌギカメムシとなっています。まず、腹部腹面の気門を撮ろうと思って横から撮っていたら、ちょっと後ろを向いてくれました。



それで、生殖節の中央突起がうまく写りました。中央にある突起がそれです。側縁はほぼ平行になっているので、たぶん、ヘラクヌギカメムシだと思います。





公園に行ってもなかなか虫が見つかりません。それでいつものイダテンチャタテを写してみました。ほとんどが翅をつけています。上が♀、下が♂かな。



これは途中の壁で見つけたミナミトゲヘリカメムシです。



最後はマンションの倉庫の壁にいたクモです。小さなクモなのですが、触肢の先端が太くなっているので、こんなに小さくても♂成体なのでしょうか。これはサラグモの仲間かな。頭胸部の側縁にぎざぎざがあって面白い感じなのですが、「日本のクモ」を見ても分かりませんでした。

廊下のむし探検 ハエとハチ

廊下のむし探検 第848弾

昨日は大学病院に行っていました。一か月前に右目の視力が急激に落ちてしまったのでその治療です。この1か月の間に徐々に回復してきて、景色が少しずつ見えるようになってきて喜んでいたら、「あなたの目は中心部分から周辺まで全体がやられているので、見えるようになってきたといっても一時的で、すぐに見えなくなりますよ。」だって・・・。大学の先生というのはどうしてこうも正直なんでしょうね。少しくらいは患者を元気づけてくれてもよいのに・・・。

12月5日の「廊下のむし探検」の残りです。蛾、甲虫、カメムシ、クサカゲロウ、ガガンボを出した後なので、残りは若干のハエとハチだけになってしまいました。



キノコバエの仲間です。なかなかいわくつきのハエでしたね。詳細は以前書いたので、ここでは省略です。一応、Allactoneura属の一種としておきます。



このハエねぇ。この間、採集して試しに検索してみたら、シロガネコバエというまったく知らない科になってしまいました。怪しさいっぱいで、もう一度調べてみないといけないのですが、そのままになっています。翅の前縁にあるSc切目の部分が変わっています。検索してみたときは、下額眼縁に短い毛が並んでいてこれを下額眼縁剛毛と呼ぶのかどうか悩んでしまいました。いずれにしても今度もう一度調べてみます。(追記2018/04/09:シロガネコバエ科は「日本昆虫目録第8巻」によるとクロコバエ科になっていました。また、その後、検索をしてみてミナミクロコバエ Desmometopa micropsではないかと思っています。詳細はこちらこちら



ミツバチが冷たい雨にあってへばっていました。後翅の翅脈が辛うじてみえるので、これはセイヨウミツバチみたいです。片目が見えなくなってから、手作り図鑑づくりがやや滞っているのですが、暇を見つけてはちょこちょこ書き足しています。セイヨウミツバチとニホンミツバチの違いについて書いた部分を載せておきます。



次はこのハチです。



格好いいので、つい調べてみたくなるのですが、これがなかなか難物です。とりあえず科だけ。



2m-cuがあって、Rs+MとRsを結ぶ翅脈のないのはヒメバチ科です。なお、翅脈の名称はAmerican Entomological Instituteいうページに載っているRoss system veinsによっています。以前からここに載っている名称を使っているのですが、いつも参考にさせていただいているImformation station of Parasitoid waspsに載っている名称と若干違います。私もちょっと混同していて、以前書いたものは2cu-aのところが違っていました。今回のが正しい名称です。このやり方だと、Rs脈はC+Sc+Rから分かれて、翅脈を半分ぐらい進んだ後、ヒメバチ科にはなくて、コマユバチ科にはある斜めの翅脈を進んで、Rs+Mと1m-cuと書かれた翅脈の真ん中あたりに到達し、その後、鏡胞の2辺を通って、翅縁に行くことになっています。ハチの翅脈の名称については翅脈の勉強を始めた頃に両者の比較をしていたので、そちらをご覧ください。



ひょっとして検索をするかもと思って横からも撮ったのですが・・・。ヒメバチ科トガリヒメバチ亜科の検索は以前、試みたことがありました。もう一度読み直してみたのですが、大変複雑で、採集しないと到底無理のようです。



コバチの仲間が雨に濡れていました。コバチにもいろいろな科があって、まだ勉強したことがないので、さっぱりわからないのですが、今回は採集したので今度調べてみます。(追記2016/12/09:「絵解きで調べる昆虫」に載っている検索表で調べてみると、あまり問題になるところもなくタマヤドリコバチ科にたどりつきました)(追記2016/12/09:タマヤドリコバチ科は「Informtaion station of Parasitoid wasps」によると、日本産はOrmyrus属だけで、pomaceus、flavitibialis、ibarakiの3種が挙げられていました。また、これについての論文名も載せられていました。

M. D. Zerova and L. Ya, Seryogina, "Review of Palearctic Ormyridae (Hymenoptera, Chalcidoidea), with description of two new species". Vestnik zoologii, 40, 27 (2006).(ここからpdfがダウンロードできます)

この論文には上記三種を含んだ検索表も載っていたので、試しに検索をしてみました。まず、ibarakiは触角の節の形状から直ちに除外できました。次にpomaceusは腹部第1節背板が網目状であることが最初の特徴で挙げられていますが、この種は前半部分がスムーズで光沢があります。これはflavitibialisの特徴とよく一致しています。ただ、flavitibialisは前、中腿節および、全部の脚の脛節、跗節が明かるい黄色だそうです。写真の個体は腿節が先端を除いて黒褐色、後脛節も黒褐色になっていて、脚の色に関しては一致しませんでした。一方、pomaceusは前脛節が緑褐色だそうで、これも若干違っていました。気持ちとしてはflavitibialisかその近縁種のような気がしますけど・・・。pomaceusはナラ、カシに虫こぶをつくるタマバチ科への寄生種、flavitibialisはコナラの虫こぶをつくるタマバチ科への寄生種だそうです


ということで、12月5日分の整理が終わりました。

廊下のむし探検 ガガンボの整理

廊下のむし探検 第847弾

昨日、「廊下のむし探検」をしたのですが、その時、ガガンボが何種かいたので、調べるついでにガガンボの整理をしてみました。



ガガンボは図鑑によって分類がまちまちです。それで、一昨年、ガガンボとそれによく似たニセヒメガガンボ科、ガガンボダマシ科、コシボソガガンボ科を加えて、その変遷を追いかけてみたことがありました。今回はその後、手に入った「日本昆虫目録」(2014)を加えて、少し書き直してみました。「日本昆虫目録」(2014)は、基本的には「新訂原色昆虫大図鑑」(2008)と同じなのですが、下目、上科という上位分類がなくなっていました。おそらく、まだ、説が固まっていないのでしょう。

いずれにしても、現在のガガンボ類が4科、それ以外が3科なので、その検索過程を「新訂原色昆虫大図鑑」と「日本産水生昆虫」(2005)に載っている説明や検索表を使って、図示してみました。



検索はまず、コシボソガガンボ科、ニセヒメガガンボ科、ガガンボダマシ科でないことを確かめてから、ガガンボ類の検索に入るという手順になっています。昨日歩いて見つけたのは、ヒメガガンボ科とガガンボ科だったので、それ以外の科については手元にある標本で検索のポイントを示してみました(写真は昔撮ったものです)。



まずはコシボソガガンボ科です。①で書かれているように、R4とR5が途中で分かれ、長い共通柄R4+5のあることが分かります。また、②のように、A1脈が見当たりません。③はこの写真では分からないのですが、この翅脈の特徴が見られれば、コシボソガガンボ科だろうということが分かります。(追記2016/12/07:翅脈の名称をM3→M3+4と変えました。昔の図をそのまま使っていたのですが、M脈は基本4本に分かれると考え、こうした方がよいような気がしました



これはガガンボダマシ科ですが、③のようにA1脈が短くて、先端が急に折れていればガガンボダマシ科ということになります。ここで、dmはdiscal medialの略で、中室を意味します。



また、頭部が写せると②で示すように単眼があることが分かります。①に書いてあることはよく分かりませんでした。



コシボソガガンボ科、ガガンボダマシ科、ニセヒメガガンボ科でないことが分かると、次はSc脈の先端に注目します。この写真のようにSc脈が翅縁に達していると、ヒメガガンボ科か、オビヒメガガンボ科だということになります。この両者は翅脈ではsc-r横脈がRs脈の起点より基部よりに位置することからオビヒメガガンボ科であることが分かりますが、例外もあるので、複眼の毛を見る方がよいと思われます。



この写真を見ると毛が生えていることがよく分かります。

これだけの予備知識を持って最近撮ったガガンボを調べてみます。





これは12月2日に撮ったものですが、コシボソガガンボ、ガガンボダマシ、ニセヒメガガンボのいずれとも違うので、ガガンボ類の検索に進みます。Sc脈が翅縁に達しているので、ヒメガガンボ科かオビヒメガガンボ科ということになりますが、sc-r脈がRs脈の起点より外側にあるのでヒメガガンボ科であることが分かります。



これから先は「日本産水生昆虫」に族の検索表が載っているのですが、これはなかなか一筋縄ではいかない感じです。一応、赤字で書いた部分を補ってみましたが、まだ、ホシヒメガガンボ族とヒメガガンボ族を明確に分ける形質が分からないので、未完成です。この表によると、脛節端の距棘を見る必要があるのですが、写真を見た限りでは距棘はなさそうです。また、Rs脈は3本に分かれています。初め、R1に合流するR2脈も数えていたのですが、これは数えないようです。②でもRs脈は3本に分かれているので、ホシヒメガガンボ族になります。問題は2本に分かれる時で、この時、ホシヒメガガンボ族とヒメガガンボ族が分かれません。この先、属の検索をすると、Cladura属になるのですが、あまり自信がないので、まだ、保留にしておきます。





次からは昨日見つけたガガンボです。この場合もSc脈は翅縁に達しているので、ヒメガガンボ科かオビヒメガガンボ科になるのですが、sc-r脈の位置が分かりません。写真からは複眼に毛が生えていないようなので、たぶん、ヒメガガンボ科かなと思います。さらに、Rs脈は2本に分かれているので、たぶん、ヒメガガンボ族と思われます。写真を撮るときに何に注目して撮ればばよいのかだんだんと分かってきますね。





これはsc-rの位置がよく見えます。これがRsの起点より外側なので、ヒメガガンボ科であることは確かそうです。さらに、Rsは3本に分かれているので、たぶん、ホシヒメガガンボ族ですね。(追記2016/12/07:M3脈が途中までしか伸びていないのですが、もう一枚の翅の方を見ると翅縁まで達しているようです。何らかの不具合で翅脈が途中で伸びるのが止まったと考えられます







次はこのガガンボです。これもガガンボ類ですが、Sc脈がR1に合流しています。したがって、ガガンボ科であることが分かります。下顎鬚の末端節はぐにゃっと曲がっているところだと思いますが、確かにかなり長いことが分かります。(追記2016/12/07:鼻状突起についてはこちらにエゾホソガガンボの写真があります





最後はこのガガンボですが、Sc脈がどれか分かりません。それで先に進めません。最低限、翅の前縁部分をきちんと写しておかないと駄目ですね。

廊下のむし探検 ハチ・ハエ以外

廊下のむし探検 第846弾

今日の「廊下のむし探検」の結果です。朝、歩いてみたのですが、昨夜の雨が激しかったせいか、廊下は水浸しになっていました。ハエとハチはいろいろと調べることが多いので、後で出すことにします。



フユシャク第一号のクロスジフユエダシャクです。過去の記録も見てみたのですが、2012年は12月8日、2013年は12月4日、2014年は11月22日、2015年は11月28日、そして今年は12月5日。今年は毎日は歩いていないのではっきりとは分かりませんが、まぁまぁ例年並みでしょうか。



蛾のついでにエゾギクトリバです。



シロオビノメイガ



これはワモンノメイガかな。



そして、これはヘリオビヒメハマキあたりの蛾です。似た種がいるので、はっきりとは分かりません。



後はウリハムシ



ムラサキナガカメムシ



モリチャバネゴキブリの幼虫。



そして、これはたぶん、スズキクサカゲロウ。溝に入り込んでいたので、横から写せませんでした。



こんな色になるのはヤマトクサカゲロウかな。ヤマトクサカゲロウは冬以外は緑色なのですが、冬になるとこんな茶色になります。この体色変化については以前調べたことがありました。詳しくはそちらをご覧ください。

廊下のむし探検 コマユバチ、ガガンボなど

廊下のむし探検 第845弾

一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。最近、虫は少ないのですが、その分、普段あまり調べない虫まで調べるので、かえって名前調べに時間がかかっています。



最初はこのハチからです。体長は10.2mm。一見、アメバチに似た感じなのですが、いつも見ているアメバチとはちょっと違うようです。そこで、いつも利用させていただいているInformation Station of Parasitoid waspsに載っている検索表を利用させていただきました。

まずは翅脈です。



ハエと違って、ハチの場合は左右の前翅が重なり、さらに後翅まで重なるので、生態写真から翅脈を調べるのは意外に大変です。それで何とか、前翅だけの翅脈を読み取り、それを黄色の線でトレースしてみました。これを使ってまずはヒメバチか、コマユバチかを見分けます。



検索表だと①がそれに相当します。翅脈でRs+M脈があればコマユバチ科、なければヒメバチ科になります。上の写真を見るとRs+M脈があるので、これはヒメバチ科のアメバチではなくて、コマユバチ科であることが分かります。この先のコンボウコマユバチ亜科か、オオアメイロコンボウコマユバチ亜科かは前翅翅脈が使えないので、なんとか写真でその部位を写したものを探してみました。



これは横から撮ったものですが、後体節と後脚基節の基部が接近しています。このことからコンボウコマユバチ亜科の可能性が出てきました。さらに、後体節背板の基部に気門のようなものが見えます。これもこの亜科を示唆しています。



ただ、ちょっと問題点もありました。このハチの口ひげは結構長くて頭部の厚みよりは長そうですが、これはオオアメイロコンボウコマユバチ亜科の方の性質です。でも、たぶん、コンボウコマユバチ亜科でよいのだろうと思いました。先のサイトによると、この亜科には日本ではHomolobus属1属だけが記録されています。この属はさらに5亜属に分けられ、合計13種が載っていました。まだまだ先は長そうです。



ハチついでにこの羽アリも載せておきます。体長は3.5mmと大変小さいのですが、意外にごつい顔をしています。図鑑で調べたのですが、残念ながらよく分かりませんでした。



次はハエ目です。最近、ガガンボをよく見ます。ガガンボは翅脈から科が分かるので、いつも翅がうまく写るように写しています。



で、このようにSc脈の先端(黒矢印)が前縁に達しているときは、いつもヒメガガンボ科だと言っていたのですが、「大図鑑」の検索表を見ると、オビヒメガガンボ科も同じような翅脈を持っているようです。検索表によると、さらに、sc-r横脈とRs脈の起点(黒矢印)との関係も見る必要があります。複眼が刺毛で覆われ、sc-r横脈がRs脈の起点より翅の基部側に近いとオビヒメガガンボ科、複眼が無毛で、sc-r脈がSc脈の先端(黒矢印)に近いとヒメガガンボ科だそうです。この写真の個体はこれでヒメガガンボ科だと思われます。ついでに、今日はこの基準を使って、以前撮った写真を見直してみました。例えば、Sc脈の先端がRs脈の起点よりかなり基部側に位置するものもいて翅脈だけだと疑問になる種もいました。複眼を拡大して撮っておかないといけないですね。





庭のヒメジョオンにいたハナアブです。たぶん、クロヒラタアブだと思ったのですが、似た種にニッポンクロヒラタアブというのもいて、まだ、違いがよく分かりません。



花に顔を突っ込んでいます。イエバエっぽい感じ。



これはツマグロキンバエなのかなぁ。いつものより色が薄い感じですが・・・。



残りの虫です。これはウスモンミドリカスミカメ



ルリマルノミハムシ



ヒメクダマキモドキ



後は蛾です。ウスモンミドリナミシャ。(追記2018/06/28:ウスミドリナミシャクの誤り



ニトベエダシャク



シロオビノメイガ



ナカオビアキナミシャク



ソトシロオビナミシャク



最後は大きなジョロウグモでした。

家の近くのむし探検 ケムシやカメムシ

家の近くのむし探検 第201弾

11月30日に家の近くの公園で見つけた「むし」たちです。マンションの廊下は虫が多いのですが、晴れた日には運動を兼ねて近くの公園にも行っています。





といっても、イダテンチャタテを除くと虫はほとんど見つからないのですが・・・。そう思って歩いていたら、ツツジの葉にこんな派手な毛虫がいました。ちょっとドクガの幼虫みたいですが、「原色日本蛾類幼虫図鑑」で調べてみたら、ヤガ科のキバラケンモンの幼虫みたいです。図鑑にはイバラ科、ツバキ科、ツツジ科が食草と書かれているので、ツツジにいてもおかしくないですね。



顔がよく分からなかったので覗いてみると、ツツジの葉を懸命に食べていました。図鑑によると、11月に営繭、3月に羽化だそうです。



虫がいないいないと嘆いていたら、「公園の主」さんが木の根元の皮をめくってくれました。そこにはカメムシやらダンゴムシやらがごそごそいました。



これもフタモンホシカメムシとクロホシカメムシという似た種がいます。ひっくり返すと分かるのでしたね。



と思ったら、たまたま横を向いた個体がいました。脚の基節が白いとフタモン、黒いとクロホシでした。以前写した写真と比べてみると、ピンク色の筋に見えているところがそのようです。たぶん、フタモンホシカメムシですね。



後はワラジムシみたいな虫くらいでした。



桜の木にこんなキノコがいっぱいついていました。



ひだを拡大するとこんな感じです。「日本のきのこ」をだいぶ見たのですが、結局、分かりませんでした。



最後はマンションの廊下の壁にいたハチですが、名前までは分かりません。

虫を調べる ミカドオオアリ?

先日、マンションの廊下の壁に大きめのアリがくっついていました。最初、クロヤマアリかなと思ったのですが、ちょっと艶があるし、色も褐色なので、何だろうと思って採集してきました。



調べたのはこんなアリです。いつものように、「日本産アリ類図鑑」に載っている検索表を用いて調べてみました。その結果、ヤマアリ亜科オオアリ属のミカドオオアリになったのですが、その検索の過程を記録として載せておきます。



まずは体長を推定してみました。採集しておいたアリを冷凍庫に入れておいたのですが、取り出したらこんな感じで曲がっていました。そこで、フリーソフトのImageJを用いて、黄色の破線に沿って寸法を測ってみました。計測は8.0mmになったのですが、あまり正確ではないのでだいたい8mmという感じですね。



最初に属への検索をしてみました。①から③を満足するとヤマアリ亜科になり、④から⑦が満足されればオオアリ属になります。これを例によって写真によって部位別に見ていきたいと思います。



まずは、全体写真からです。この写真からは、腹柄節が1節だけなこと、腹部第1節と第2節の間にくびれがないこと、それに腹部第1節の背板と腹板が分かれていることを見ます。さらに、④に書かれているように、トゲアリ属のような突起や刺がないことを見ます。



次は頭部です。①の頭盾前縁側方に突起がないので、クビレハリアリ亜科を除外します。⑤の大腮が三角形状という条件でサムライアリ属を除外します。



触角の節数を数えるために写した写真ですが、12節であることが分かります。この条件でアシナガキアリ属、ミツバアリ属、ヒメキアリ属、コツブアリ属を除けます。



これは胸部側面の写真です。アリの胸部は前胸、中胸に分かれ、後胸は真の腹部第1節と合体して前伸腹節になっています。真の腹部第2節が腹柄節になり、真の腹部第3節がみかけの腹部第1節に該当します。②の腹柄節が小さく、側面から見て幅が狭いというのはいずれも相対的な表現でこれだけではなんとも言えないのですが、ハリアリ亜科とノコギリハリアリ亜科との比較で書かれています。たぶん、そうなのでしょう。⑦はオオアリ属であることを示すポイントになるのですが、中胸気門が側面にあります。ヤマアリ属などでは上面との境にあり、明らかに位置が違います。



そして、これは腹部末端の写真です。腹部末端には噴火口のように丸い穴があいています。①と②はすぐに分かります。③はこういう穴が開いていて、その周りを毛が取り巻くことが書かれていますが、この個体ではわずかに毛が生えているだけで、取り巻いているというほどではありませんでした。いずれにしても、これですべての項目が調べられたことになり、オオアリ属になりました。



次は、種への検索です。⑧から⑬までの条件がすべて満足されれば、最初に書いたようにミカドオオアリになります。これも調べていきます。



まずは全体像です。これは体長8㎜なので、たぶん、小型働きアリに該当すると思うのですが、⑧に書かれているように前腿節は広がっていません。脚の根元が広がっているように見えるのは基節です。⑨、⑪、⑬は色と大きさに関するもので、だいたい書いてある通りではないかと思います。



⑫の頭盾前縁中央部の凹みは上の写真でも分かりますが、その部分を趣味的に拡大してみました。凹みは黄矢印で示した部分ですが、この写真でよく分かります。この条件でクロオオアリを除外することができます。



最後は前・中胸と前伸腹節の側面からの写真です。まず、⑩は前・中胸背面の毛ですが、2本しか見えないので、6本以下であることは確かです。この条件で、ミヤコオオアリ、ケブカクロオオアリ、ケブカツヤオオアリを除外できます。次に前伸腹節ですが、背面と後面が鈍角をなすというのは⑧と⑩で示したところだと思います。また、⑩で「後面は傾斜して腹柄節に連なる」という部分は⑩?で示した部分を指しているのかなと思います。また、⑬の前伸腹節後背部が多少とも角張るというのはかなり微妙な話でした。⑬?で示した部分を指すのかなと思ったのですが、はっきりとはしません。もし、これが角張らないとすると、ツヤミカドオオアリになるのですが、この種は奄美大島だけに生息し、脚が赤褐色から黒とのことで、たぶん、違うと思われます。したがって、ミカドオオアリでよいのではと思っています。

ということで、一応、検索表に沿って調べていってミカドオオアリに到達しました。「日本産アリ類全種図鑑」によると、ミカドオオアリの体長は8-11mm、全国に分布しています。枯れ竹や朽ち木中に巣をつくりますが、一匹の雌アリに属する働きアリを、1か所あたり300匹以下の小さい単位の巣に分散させて営巣する多巣性だそうです。したがって、巣の中に雌アリがいないことが多いようです。

廊下のむし探検 カメムシ、ハエなど

廊下のむし探検 第844弾

一昨日の「廊下のむし探検」の結果です。この日は結構寒くて、公園には行かずに、廊下で虫探しをしました。廊下にはそこそこ虫がいるので・・・。



まずはこの虫です。カスミカメムシ科シダカスミカメ亜科のMansoniella shihfanaeというカメムシです。この間からちょこちょこ見ています。詳細は以前の記事を見て下さい。(追記2018/06/02:立西さんから、「クスベニヒラタカスミカメ Mansoniella cinnamomiという種名で決着しているようです。あちこちで被害木を見かけますね。」というコメントをいただきました。この名で検索すると、「昆虫と自然」2016年の12月号にも載っていたようですね。貴重な情報、どうも有難うございました





途中からマンションの庭に出て、花壇も覗いてみました。これはウスモンミドリカスミカメですね。この日は寒かったためか、ハナアブはまったくいませんでした。



また、廊下に戻ってみると、こんな蛾がいました。たぶん、チャエダシャクだと思いますが、よくもこう鱗粉がみな取れてしまってるなと感心するくらいなくなっています。



この間から時々見ている小さなハエです。採集して検索しているのですが、なかなかの難物です。今のところ、シロガネコバエ科Milichiidaeという聞いたことのない科になっているのですが、まだまだ怪しいです。(追記2018/04/09:シロガネコバエ科は「日本昆虫目録第8巻」によるとクロコバエ科になっていました。また、その後、検索をしてみてミナミクロコバエ Desmometopa micropsではないかと思っています。詳細はこちらこちら



これはヤドリバエ科かなぁ。



ガガンボは脚の先まで写真に入れると本体が小さくなるので、本体だけにしました。



翅脈を見ると、Sc脈が翅端に達しているので、ヒメガガンボ科ですね。ここから先はよく分からないのですが・・・。



キゴシハナアブもこの日は廊下の壁に止まってじっとしていました。



これもこの間から見ているアリです。つやつやしているので、気になってこの日は採集してみました。体が細いので、てっきりヤマアリ属なのかなと思ったら、実にオオアリ属でした。検索をしてみると、ミカドオオアリになりました。今日顕微鏡写真を撮ったので、そのうちまとめて出したいと思います。このくらい大きいと顕微鏡写真も楽でした。





体長は3.3mm。小さなカスミカメです。「原色日本カメムシ図鑑第2巻」をぱらぱら見ていたら、それらしい種が載っていました。マツトビカスミカメです。もしこれだとすると、また「マツ」の名のつく虫が出たことになります。図鑑によるとアカマツに寄生するそうです。



最後はマエアカスカシノメイガでした。
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